スプリックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スプリックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の教育サービス企業。「森塾」「湘南ゼミナール」等の学習塾運営や、教育ITコンテンツの開発・販売を主力事業とします。直近の業績は、売上高351億円(前期比10.3%増)、経常利益22億円(同95.6%増)と、主力の個別指導塾が堅調で大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社スプリックス の有価証券報告書(第29期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. スプリックスってどんな会社?


個別指導塾「森塾」を中核に、集団指導塾や教育IT事業を展開する総合教育企業です。

(1) 会社概要


1997年に設立され、新潟県長岡市で個別指導塾「森塾」の1号校を開校しました。その後、首都圏を中心に展開エリアを拡大し、2018年に東証一部(現スタンダード市場)へ上場を果たしました。2020年には湘南ゼミナールを子会社化し、集団指導領域へも本格参入しています。近年は教育IT分野や基礎学力育成事業にも注力し、事業の多角化を進めています。

連結従業員数は1,550名(単体823名)です。筆頭株主は創業者の資産管理会社である有限会社フラットストーンで、第2位は代表取締役社長の常石博之氏、第3位は金融機関のUBS AG SINGAPOREとなっています。創業家および経営陣が株式の過半数を保有しており、オーナーシップの強い経営体制です。

氏名 持株比率
有限会社フラットストーン 48.62%
常石 博之 8.94%
UBS AG SINGAPORE 6.95%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名、計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は常石博之氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
常石 博之 代表取締役社長 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)出身。2004年にスプリックス取締役となり、2007年取締役副社長を経て、2018年12月より現職。
平石 明 取締役事業部門管掌 長岡第一ゼミ等を経て1997年にスプリックスを設立し代表取締役社長に就任。2018年12月より現職。創業経営者として事業部門を管掌。
平井 利英 取締役コーポレート部門管掌 エームサービスを経て2000年にスプリックス入社。管理部総務課長、個別指導事業本部管掌などを歴任し、2018年12月より現職。
赤澤 嘉信 取締役(常勤監査等委員) 藤田観光、パソナテック等を経て2010年にスプリックス入社。ヒューマンリソース部長、内部監査室長を経て、2020年12月より現職。


社外取締役は、菅井善朗(あすか製薬CVC担当アドバイザー)、松浦剛志(有限会社ウィルミッツ代表取締役)、浅見裕子(学習院大学名誉教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「森塾」「湘南ゼミナール」「河合塾マナビス」および「その他」事業を展開しています。

(1) 森塾


先生1人に生徒2人までの個別指導型学習塾「森塾」を運営しており、小学生から高校生までを対象としています。特に中学生に対しては、定期テストで「1科目20点以上成績が上がること」を保証する「成績保証制度」を導入している点が特徴です。

収益は、主に生徒からの授業料や講習料、教材費等で構成されています。運営は主にスプリックスが行っており、2025年9月期末現在、直営で249校舎を展開しています。同社グループの中核事業として、安定的な収益基盤を形成しています。

(2) 湘南ゼミナール


小・中・高校生を対象とした集団指導型学習塾「湘南ゼミナール」を運営しています。独自の授業スタイルである「QE授業(Quick Exercise)」を活用し、定期テスト対策から難関校受験対策まで幅広いコースを提供しています。発祥の地である神奈川県を中心に展開しています。

収益は、生徒からの授業料や講習料等から得ています。運営は株式会社湘南ゼミナールが行っており、2025年9月期末現在、200校舎を運営しています。集団指導の強みを活かし、多くの生徒に学習機会を提供しています。

(3) 河合塾マナビス


現役高校生を対象とした大学進学塾「河合塾マナビス」をフランチャイズ展開しています。高品質な映像授業と、学習ナビゲーションと呼ばれる対人サポートを組み合わせた指導スタイルが特徴です。

収益は、生徒からの受講料やテキスト代等から得ています。運営は株式会社湘南ゼミナールが株式会社河合塾マナビスのフランチャイジーとして行っており、2025年9月期末現在、全国に51校舎を展開しています。

(4) その他


学習塾「自立学習RED」「そら塾」の運営や、学習塾用教材「フォレスタ」シリーズの開発・販売、ダンススクール運営、プログラミング教育などを行っています。AIタブレット教材等の新規事業も含まれます。

収益は、直営教室の授業料、フランチャイズ加盟店からのロイヤリティ、教材販売代金、受講料など多岐にわたります。運営はスプリックス、株式会社湘南ゼミナール、株式会社プログラミング総合研究所などのグループ各社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は過去5期間で着実に拡大しており、259億円から351億円へと成長しています。利益面では2023年9月期と2024年9月期に一時的な利益率の低下が見られましたが、直近の2025年9月期にはV字回復し、利益率も6.3%まで改善しました。積極的な校舎展開と事業拡大が奏功しています。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 259億円 294億円 304億円 319億円 351億円
経常利益 24億円 28億円 13億円 11億円 22億円
利益率(%) 9.4% 9.5% 4.3% 3.6% 6.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 16億円 6億円 9億円 11億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で約32億円増加し、増収基調を維持しています。営業利益は約2倍に拡大しており、収益性が大きく向上しました。売上原価率や販管費率のコントロールが機能し、利益体質が強化されていることが読み取れます。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 319億円 351億円
売上総利益 99億円 110億円
売上総利益率(%) 31.2% 31.4%
営業利益 11億円 22億円
営業利益率(%) 3.4% 6.2%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が34億円(構成比38%)、研究開発費が12億円(同13%)を占めています。売上原価は売上高に対して69%程度で推移しています。

(3) セグメント収益


主力の「森塾」は売上・利益ともに伸長し、利益率は約26%と高い水準を維持しています。「湘南ゼミナール」や「河合塾マナビス」も増収増益となり堅調です。「その他」セグメントは新規事業への投資等が先行しており赤字ですが、売上規模は拡大しています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期) 利益(2024年9月期) 利益(2025年9月期) 利益率
森塾 163億円 186億円 39億円 48億円 25.8%
湘南ゼミナール 91億円 93億円 7億円 7億円 8.0%
河合塾マナビス 31億円 34億円 3億円 4億円 11.9%
その他 33億円 39億円 -13億円 -12億円 -30.8%
調整額 - - -25億円 -25億円 -
連結(合計) 319億円 351億円 11億円 22億円 6.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は本業で稼いだ資金(営業CFプラス)をもとに、借入金の返済(財務CFマイナス)を行いつつ、将来のための投資(投資CFマイナス)も実施する「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 19億円 36億円
投資CF -15億円 -16億円
財務CF -10億円 -10億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.2%で市場平均をやや下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、『教育で人生を新しく。』を企業ミッションとして掲げています。教育サービスを通じて、子どもたちが「やればできる!」という自信を身につけ、自らの力で人生を切り拓いていけるような力を育むことを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、ミッションの達成に向けて「コミュニケーション&エデュケーション」を重視しています。また、組織が健全かつ有効・効率的に運営されるよう、法令遵守の徹底や内部管理体制の強化に努めており、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指し、規模、収益性、資本効率を重視した経営を行っています。具体的には以下の指標を重要視しています。

* 規模:売上高増加率
* 収益性:売上高営業利益率
* 資本効率:ROE(自己資本当期純利益率)

(4) 成長戦略と重点施策


国内市場における少子化や競争激化に対応するため、中核事業である「森塾」の継続的な開校と「自立学習RED」のフランチャイズ展開を推進し、シェア拡大を図っています。また、IT化や基礎学力事業への成長投資、新規コンテンツ開発、販路拡大を通じて、収益の維持・拡大を目指しています。

* 「森塾」の関西地区等への新規開校の継続
* 「自立学習RED」のフランチャイズ展開推進
* IT化、基礎学力事業への成長投資
* 海外市場への進出検討

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最も重要な経営資源と位置づけ、採用環境が厳しくなる中でも積極的な投資を行っています。採用方法の改善や内部リクルートの強化による「適正人材の確保」、教務力向上のための研修やマネジメント研修による「人材の育成」に注力しています。また、従業員満足度の定点観測を通じた職場環境の整備も推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 29.9歳 3.6年 5,085,757円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.6%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 91.7%
男女賃金差異(正規雇用) 88.5%
男女賃金差異(非正規) 103.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、会社の理念への共感度(89.2%)、いい仲間に恵まれていると感じる割合(86.8%)、メンバーとしての総合的な満足度(76.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 少子化リスクと出店計画


同社グループの主要顧客である国内の学齢人口は少子化により減少傾向にあります。積極的な新規開校やエリア拡大を進めていますが、生徒数の減少や開校計画の未達、エリア展開の遅れが生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) フランチャイズ契約に関するリスク


「自立学習RED」等はフランチャイズ展開を行っていますが、加盟者に対する指導等の範囲外で契約違反などが発生した場合、同社グループのブランドイメージや業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) ブランド価値の毀損


中核事業である「森塾」等のブランド価値向上に努めていますが、顧客満足度の低下や風評被害、不測の事態によりブランド価値が低下した場合、生徒数の減少を通じて業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 競合・新規参入リスク


教育サービス業界は参入障壁が比較的低く、競争が激化しています。同社は指導力向上やIT化による差別化を図っていますが、競合他社の動向や新規参入により競争力を維持できなくなった場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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