※本記事は、株式会社GA technologies の有価証券報告書(第13期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年1月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. GA technologiesってどんな会社?
同社は、AIを活用した不動産投資サービス「RENOSY」や不動産業界向けSaaS「ITANDI」を展開する不動産テック企業です。
■(1) 会社概要
2013年に設立され、2018年に東証マザーズ(現グロース)へ上場しました。2020年に中華圏向け不動産プラットフォーム運営会社、2021年にパートナーズを子会社化するなどM&Aを推進。2024年には米国のRW OpCo, LLCを子会社化し、グローバル展開を加速させています。
連結従業員数は1,665名、単体では663名です。筆頭株主は創業者の樋口 龍氏で、第2位は同氏の資産管理会社と思われる合同会社GGAです。第3位には、カストディ業務を行う銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 樋口 龍 | 25.82% |
| 合同会社GGA | 11.25% |
| THE BANK OF NEW YORK 133612 | 6.49% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長 執行役員CEOは樋口 龍氏が務めています。社外取締役比率は55.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 樋口 龍 | 代表取締役社長 執行役員CEO | 佐川急便、青山メインランドを経て、2013年3月に同社を設立し代表取締役社長に就任。以来、現職。 |
| 櫻井 文夫 | 取締役副社長 執行役員CSO | 三井不動産リアルティにて常務執行役員などを歴任。2021年に同社入社、2022年11月より現職。 |
| 樋口 大 | 取締役専務 執行役員 | オープンハウスグループを経て2013年に同社入社。2014年取締役就任。2023年11月より現職。 |
| 後藤 正徳 | 取締役常務 執行役員CTO | 富士通研究所、グーグル合同会社エンジニアリングディレクターを経て、2024年12月同社常務執行役員CTO就任。2025年1月より現職。 |
社外取締役は、久夛良木 健(元ソニー・コンピュータエンタテインメント代表取締役会長兼グループCEO)、グジバチ・ピョートル・フェリクス(元グーグル合同会社ラーニング・ストラテジー責任者)、松葉 知久(増田パートナーズ法律事務所パートナー)、桑原 利郎(元SMBCファイナンスサービス代表取締役)、庄司 愛(元アキュイティー取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「RENOSYマーケットプレイス事業」、「ITANDI事業」および「その他」事業を展開しています。
■RENOSYマーケットプレイス事業
AI不動産投資サービス「RENOSY」を通じ、不動産の購入・売却DX、高級賃貸、米国不動産投資、賃貸管理などのサービスを提供しています。タイ駐在員向けや中華圏投資家向けのプラットフォーム運営も行っています。
収益は、不動産の販売益、仲介手数料、賃貸管理料などが主な源泉です。運営は主に同社、パートナーズ、RENOSY Ricordi、Modern Standard、RW OpCo, LLCなどが行っています。
■ITANDI事業
不動産管理会社や仲介会社向けに、賃貸管理・仲介業務を支援するSaaSや、業者間サイト「ITANDI BB」などを提供しています。また、不動産売買仲介向けの営業支援SaaSも展開しています。
主な収益源は、SaaSプロダクトの利用料やプラットフォーム利用料です。運営は、イタンジ、ダンゴネット、Housmart、マーキュリーなどが行っています。
■その他事業
特定の業界に特化したM&A仲介サービスを提供しています。業界の深い理解とテクノロジーを活用し、スピーディで透明性の高いM&A支援を行っています。
収益は、M&A成立時の仲介手数料やコンサルティング料などから得ています。運営は、スピカコンサルティングが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は5期連続で増加しており、直近では2000億円を突破するなど力強い成長を見せています。利益面では、かつて赤字を計上していましたが、直近4期は黒字を継続しており、利益率も徐々に改善傾向にあります。当期利益も大幅に増加しており、収益性が高まっています。
| 項目 | 2021年10月期 | 2022年10月期 | 2023年10月期 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 749億円 | 1,136億円 | 1,466億円 | 1,899億円 | 2,489億円 |
| 税引前利益 | -15億円 | 5億円 | 16億円 | 30億円 | 62億円 |
| 利益率(%) | -2.1% | 0.4% | 1.1% | 1.6% | 2.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -9億円 | 4億円 | 10億円 | 17億円 | 39億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益の大幅な増加に伴い、売上総利益も拡大しています。売上総利益率、営業利益率ともに前期から改善しており、増収効果が利益率向上にも寄与していることが読み取れます。
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,899億円 | 2,489億円 |
| 売上総利益 | 161億円 | 217億円 |
| 売上総利益率(%) | 8.5% | 8.7% |
| 営業利益 | 37億円 | 71億円 |
| 営業利益率(%) | 1.9% | 2.8% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が138億円(構成比40%)、広告宣伝費が57億円(同16%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のRENOSYマーケットプレイス事業は、会員数増加や商品拡充により大幅な増収増益を達成しました。ITANDI事業もSaaS導入社数の増加等により増収となりました。その他事業も規模は小さいながら成長しています。全社的な増収効果により、連結全体でも大幅な増益となりました。
| 区分 | 売上(2024年10月期) | 売上(2025年10月期) | 利益(2024年10月期) | 利益(2025年10月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| RENOSYマーケットプレイス事業 | 1,848億円 | 2,414億円 | 89億円 | 127億円 | 5.3% |
| ITANDI事業 | 45億円 | 66億円 | 13億円 | 14億円 | 20.8% |
| その他事業 | 6億円 | 11億円 | 0億円 | 1億円 | 11.1% |
| 調整額 | -0億円 | -2億円 | -64億円 | -69億円 | - |
| 連結(合計) | 1,899億円 | 2,489億円 | 37億円 | 71億円 | 2.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは「健全型」です。営業活動で得た現金を原資に、投資活動を行いつつ、借入金の返済も進めており、財務基盤の健全化が進んでいる状態と言えます。
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 36億円 | 159億円 |
| 投資CF | -48億円 | -36億円 |
| 財務CF | 30億円 | -14億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「テクノロジー×イノベーションで、人々に感動を生む世界のトップ企業を創る。」を理念として掲げています。各産業や業界の課題をテクノロジーを用いて解決し、透明性が高く、なめらかな顧客体験を提供することを基本的な経営方針としています。
■(2) 企業文化
透明性が高く、なめらかな顧客体験の提供を重視しています。テクノロジーとリアルの融合を目指し、ネット不動産のパイオニアとして、各業界の課題解決に取り組む姿勢を持っています。また、イノベーションを通じて人々に感動を与えることを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
2026年10月期を最終年度とする中期経営計画を策定しています。不動産DXエコシステムの完成やグローバル化の加速、テクノロジー戦略の強化を通じて、売上収益や事業利益の拡大を目指しています。
* 売上収益:3,230億円
* 事業利益:100億円
* コア事業利益率:17.9%
■(4) 成長戦略と重点施策
不動産取引のワンストップ化やシェア拡大を進めるほか、海外展開を加速させ、米国・アジア・欧州でのクロスボーダー取引の基盤を確立します。また、データ活用によるマネタイズやAIによる業務効率化など、テクノロジー戦略を強化し、新たな収益源の創出とビジネスのスケール化を図ります。
* RENOSY市場シェア:20%以上
* ITANDI全国シェア:37%
* 海外売上:100億円以上
* データ活用ビジネス売上収益:20億円以上
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
パフォーマンスを最大化する仕組みとして、リファラル採用の強化や抜擢・育成プランの実行、シンプルで分かりやすい報酬制度の策定を進めています。また、安心して働ける環境構築のため、育児支援やLGBTQ制度の整備、フレックスタイムやリモートワークの導入などに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年10月期 | 32.5歳 | 3.7年 | 7,700,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 22.9% |
| 男性育児休業取得率 | 90.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 59.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 99.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康診断受診率(91.2%)、労災発生件数(9件)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 賃貸物件の空室時のリスク
販売した投資用不動産の一部について、空室時の家賃を同社グループが負担する契約を結んでいる場合があります。空室率低下の施策を講じていますが、空室が増加した場合は費用負担が増え、経営成績に影響を与える可能性があります。
■(2) 有利子負債の増加に伴う金利変動リスク及び在庫保有リスク
投資用不動産を長期間保有する場合、借入金が増加し、金利負担増や棚卸資産評価損のリスクが生じます。また、販売長期化に伴う値引き販売が必要となる可能性もあります。AIを活用した在庫管理等でリスク低減を図っていますが、顕在化した場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 不動産取引市場の動向
景気、金利、地価等の変動により不動産取引市場が冷え込んだ場合、顧客の投資意欲が減退し、業績に影響を与える可能性があります。市場動向を注視し柔軟に対応できる体制を構築していますが、リスクとして認識されています。
■(4) 競合について
不動産業界には多数の競合が存在し、M&A仲介業も参入障壁が比較的低いため、競争激化のリスクがあります。競争により価格競争や顧客離反が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。「RENOSY」やテクノロジー活用による差別化を図っています。



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