【財務分析】1.2万人の大リストラ発表 日産は「量から質へ」に成功するか?

【財務分析】1.2万人の大リストラ発表 日産は「量から質へ」に成功するか?

日産自動車が、グローバルで計1万2500人に及ぶ人員削減を含むリストラ策を発表しました。業績の低迷、収益性の低下を受けて、いよいよ「膿を出し切る」大改革を行うようです。財務諸表を中心に会社の状況をまとめます。


日産自動車は2019年7月25日、2019年3月期の第1四半期の連結決算を発表しました。

米国での販売低迷に加え、自動運転など次世代技術に向けた開発費が嵩み、営業利益は前年同期比98.5%減の16億円となりました。

同社の西川広人社長兼CEOは、2022年度末までに6%台の売上高営業利益率を目指し、不採算商品の10%以上の削減と、グローバルで計1万2500人に及ぶ人員削減策を打ち出しています。

損益計算書(PL):営業利益率は2%まで下がる予想

日産自動車の2019年3月期の売上高は11兆5742億円で、前期比3.2%減。営業利益に至っては3182億円で、同44.6%減という大幅ダウンになりました。

売上原価は9兆6704億円で、前期比1.5%減となったものの、売上総利益は1兆9038億円で同10.9%減。粗利率は前期比1.4pt減の16.4%にとどまっています。

一方、販売費及び一般管理費は1兆5856億円と、前期比1.5%増となり、営業利益率は同2.1pt減の2.7%まで落ち込んでいます。

2019年4月24日に業績の下方修正が発表されると、900円台半ばだった株価はずるずると下落。5月14日の決算発表で、2020年3月期は売上高・営業利益ともに前期からさらに悪化する予想と判明すると、一気に700円台まで落ち込んでいました。

貸借対照表(BS):

総資産は18兆9523億円で、ここ数年微増しています。

純資産合計は5兆6235億円で、前年比1.1%減。固定負債は純資産合計と同じくらいの5兆5983億円で、同11.3%減でした。一方、流動負債は前期比14.6%増で、7兆7305億円となっています。

この結果、会社の財務体質の長期的な安全性を測る株主資本比率は28.0%で、前期比0.7pt減。この水準は輸送用機器業界平均の47.2%を大きく下回っています。

短期的な支払能力を測る流動比率は200%超で安全水域と言われますが、日産自動車は前期比23.0pt減の150.2%。流動負債が増えており、改善の余地があるでしょう。

キャッシュフロー計算書(CF):

営業活動によるキャッシュフローは1兆4508億円で、前の期に減っていることもあり、前期比35.4%増となっています。

売上を通じて現金を稼ぐ営業キャッシュフローマージンは12.5%と前期比3.5pt増どまり。とはいえ、輸送用機器業界の平均6.3%は上回っています。

投資活動によるキャッシュフローはマイナス1兆1335億円で、マイナス額は前期比1.2%増。自動運転など次世代技術に向けた開発の必要性を考えると、投資額はもっと増えてもいいのかもしれません。

財務活動によるキャッシュフローマイナス1271億円で、マイナス額は前期比445.4%増。増減率は大きいですが、金額としては小さいです。

なお、事業活動から獲得したキャッシュのうち自由に使うことができるフリーキャッシュフローは、ここ3期はマイナスでしたが、2019年3月期にプラスに転じています。

資本効率分析:ROE・ROA

2019年3月期の親会社株主に帰属する当期純利益は3191億円で、前期比57.3%減という大きなダウンになりました。

これに伴い、株主としての投資効率を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で、前期比8.6pt減となりました。これは輸送用機器業界の平均6.5%をやや下回る水準です。

また、会社の総資産を利用してどれだけの利益を上げられたかを示すROA(総資産利益率)は1.7%で、同2.3pt減と低下しています。こちらは輸送用機器業界の平均5.3%を大きく下回る水準です。

ROE・ROAいずれも、当期純利益の急減によって悪化しています。事業の効率化とコストカットによるう収益性の向上が喫緊の課題となります。

まとめ:

7月25日の西川社長兼CEOの会見で強調されていたのは、「量から質へ」「売上規模から利益率へ」というものでした。決算発表会資料にも、年間生産能力(台数)を落としながら、工場の稼働率を上げる方針が示されています。

不採算商品の開発・生産をモデル数にして1割以上打ち切り、事業および投資効率を適正化していくことも示されています。この過程で、グローバルで約1割の人員削減を行います。

このような取り組みによって、日産自動車は筋肉質な企業体質へ変貌していくことでしょう。しかし、この影響が部品会社などの取引先や、競合他社にどのような影響を与えるかは、まだ分かっていません。就職や転職、投資をする場合には、この点も注目ポイントとなるでしょう。

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