【19年3月期】在来線の9割超が赤字のJR九州 駅ビル・不動産・ホテル事業を強化

【19年3月期】在来線の9割超が赤字のJR九州 駅ビル・不動産・ホテル事業を強化

九州旅客鉄道(JR九州)が2016年10月に東証1部上場を果たして早2年。鉄道事業に加え、飲食業や不動産事業、「ななつ星」をはじめとする寝台列車や観光列車などの多角化戦略で、9期連続の増収と過去最高収益を達成しています。その一方で在来線の9割超が赤字という問題も。財務分析を中心に、会社の現状と今後の課題を整理します。


損益計算書(PL):過去最高収益も利益は減少

JR九州の2019年3月期決算の営業収益は前年比6.5%増の4,404億円と、9期連続の増収と過去最高収益を記録しました。

営業利益は、減価償却費の増加などにより前年比0.1%減の639億円。営業利益率は前期比1.0pt減の14.5%となりましたが、陸運業界平均の7.2%(日経調べ)と比べると高い水準です。ただし後述するように、この数字には会計上の工夫によるものが含まれており注意が必要です。

2020年度3月期の通期予想は、昨年度の決算発表の際に公表されたものから修正はなく、営業収益は4423億円で前期比0.4%増、営業利益は前年比11.4%減の566億円の見込みです。減価償却費の増加や、国から受けていた固定資産税の減免措置の廃止などの影響を受けています。

なお、JR九州の営業利益率が高い水準にある理由は、2016年3月期に行った会計上の2つの工夫によるところが大きいです。

1つめは「減損会計」。会社が保有している資産が十分な利益を生み出せなくなった資産の帳簿上の価値を減損する手続きのことで、これにより2017年3月期以降の鉄道事業の減価償却費が約220億円減少しました。

2つめは、整備新幹線を建設する鉄道・運輸機構に対する「九州新幹線の鉄道施設使用料の全額一括前払い」。これにより2017年3月期以降の新幹線貸付代が約100億円減少しています。

これらの工夫により、2016年3月期に4330億円の当期純損失という巨額赤字を記録した後は、民営化以降赤字が続いていた鉄道事業を黒字転換させることができました。ただし、今後新たな設備投資を行えば、再び減価償却費が膨らみ利益を圧迫することになります。

セグメント分析:駅ビル・不動産事業が高収益

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この記事の執筆者

都内の国立大学に通う大学生です。来年四月の証券アナリスト一次試験合格を目指し、日々勉強しています。専門は企業財務・企業評価です。まだまだ分析不慣れですが、よろしくお願いします。


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