【財務分析】増収減益が続く鹿島建設 注目は「1株当たり純資産(BPS)」

【財務分析】増収減益が続く鹿島建設 注目は「1株当たり純資産(BPS)」

スーパーゼネコンの一角を占める鹿島建設。売上高は2兆円を突破し、ここ数期は増収減益となっているものの、大きな利益を上げています。ただし人口動態の変化などの影響で、五輪後には需要が減ると不安視する見方も。財務分析を基に、会社の現状と今後の課題について整理します。


損益計算書(PL):増収減益が続く

2019年3月期の連結決算は、増収減益でした。売上高は1兆9742億円で前期比7.8%増。一方で売上原価も同9.6%増え、粗利益は同3.0%減の2511億円となっています。

販管費も前期比で8.0%増えており、営業利益は前期比9.9%減の1426億円。営業利益率は7.2%と前期比で1.5pt下がっています。経常利益も同9.3%減の1629億円となりました。

ただし鹿島建設の営業利益率は、2015年3月期以前は2%以下が続き、2010年3月期には赤字となっています。これと比べると現在の営業利益率は大幅に改善されているといえます。

なお、鹿島建設は、2019年11月12日の第2四半期決算で通期予想を上方修正しています。

売上高は海外関係会社における減少を主因に対期首予想比2.0%減の2兆円としたものの、営業利益は同2.1%増の1210億円、経常利益は同2.4%増の1300億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同5.6%増の950億円としています。

セグメント分析:建築事業が利益の過半数

鹿島建設の事業セグメントは、大きく以下の5つで構成されています。

  • 土木事業:建設事業のうち土木工事に関する事業
  • 建築事業:建設事業のうち建築工事に関する事業
  • 開発事業等:不動産開発全般に関する事業および意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業
  • 国内関係会社:主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、綜合リース業、ビル賃貸事業等
  • 海外関係会社:北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等

出典:2018年度決算説明会

セグメント利益で見ると、最も大きいのが建築事業の796億円で全体の55.7%と過半数を占めています。次いで土木事業の352億円(全体構成比24.6%)で、この2つの事業を合わせると8割を超えます。

残りの2割弱は、開発事業等が54億円(同3.8%)、国内関係会社が165億円(同11.5%)、海外関係会社が62億円(4.3%)となっています。

2019年3月期の増収減益は、建設事業において首都圏の大型工事など豊富な手持ち工事の施工が着実に進捗したことによる原価増と、土木事業の完成工事減による粗利益減が影響しています。

貸借対照表(BS):純資産を着実に積み上げ

2019年3月期の総資産額は2兆911億円で、前期比0.8%増。総負債額は1兆3343億円で同5.0%の減となりました。これにより純資産合計は7569億円で、同13.0%増と大きく好転しています。

流動資産は1兆3223億円で前期比0.6%減少しましたが、流動負債も3.8%減っています。短期的な支払能力を測る流動比率は200%超で安全水域といわれる中、同4.0pt増の124.5%にとどまっています。とはいえ、ここ4期間で一貫して右肩上がりであり、巨額な資金が必要な建設業でもあることから、特に不安はないと考えられます。

会社の財務体質の長期的な安全性を測る株主資本比率は、前期比3.9pt増の36.0%。建設業の平均49.0%を下回ってはいますが、こちらも改善傾向にあります。

キャッシュフロー計算書(CF):未収金増で営業CFが大幅減

営業活動によるキャッシュフローは304億円で、前期比74.8%減。仕入債務が254億円減ったものの、建設工事の進捗による完成工事未収入金が794億円増えています。これにより売上を通じて現金を稼ぐ力を測る営業キャッシュフローマージンは1.5%となり、同5.1pt減少しています。

投資活動によるキャッシュフローはマイナス253億円で、マイナス額は前期比46.5%減となりました。有価証券の取得支出が同108億円増となったものの、有価証券の含み益が増えています。

財務活動にによるキャッシュフローはマイナス750億円で、マイナス額は前期比41.3%増となっています。社債の償還支出が300億円、配当の支払い支出が270億円、コマーシャル・ペーパー(企業が短期資金調達の目的で公開市場で割引形式で発行する無担保の約束手形)の発行による支出が260億円となっています。

資本効率分析:純利益減でROE・ROA低下

2019年3月期のROE(自己資本利益率)は前期比5.4pt減の15.5%、ROA(総資本利益率)は同1.0pt減の5.3%でした。この背景には、純利益の減少と、自己資本の増加があります。

まとめ:「1株当たり純資産」に注目

2020年3月期に入り、鹿島建設の株価は大きく変動しています。2019年8月6日の第1四半期決算では営業利益が前年同期比36.4%減となり、株価は大きく下落しました。

しかし同年11月12日の第2四半期には営業利益が前年同期比1.5%減にまで改善し、前述した通り通期予想も上方修正しています。

人口動態の影響を受け、東京五輪後に需要が激減すると予想され、鹿島建設の株価の将来性を不安視する見方があります。その一方で、財務分析によって別の切り口で考えることもできます。

企業の安定性を測る指標に「1株当たり純資産(BPS)」がありますが、前述した純資産の増加により、鹿島建設のBPSが近年上昇しています。

これに伴い、株価が「1株当たり純資産(BPS)」の何倍になっているかを示す「PBR」が2019年11月29日現在で1.01倍となり、現在の株価は適正といえます。ただし、2008年度にはPBRが3を超えていたことを考えると、比較的お買い得になっているといえるかもしれません。

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