島本遼太郎 (しまもと・りょうたろう):CRiPT consulting代表 (株式会社タイムチケットコンサルティング事業部責任者)。外資系大手コンサルティングファームにて、AIやロボティクスなどの最先端技術を活用した新規ビジネスの創出支援や、業務プロセスの改革・効率化などをプロジェクトリーダーとして牽引し、お客様の売り上げ向上・コスト削減に貢献。近年では自治体様のスマートシティ化に向けた戦略策定・共創オフィスの設立・SaaSの販売戦略立案/実行支援など、多様なプロジェクトを責任者として推進している。
2023年5月にタイムチケットコンサルティング事業部『CRiPT(クリプト) consulting』を立上げ、事業責任者に就任。お客様に真の価値を提供するために、プロフェッショナルのコンサルタントと、多様な知見を有する領域エキスパートコラボレートを実現し、適切な価格設定でコンサルティングサービスを提供している。
幼少期から培った経営に携わる者の信条
私は奈良県出身で、母方の祖父が大阪で味噌屋を営んでいます。大正3年に創業した歴史ある味噌屋で、祖父は小さな1件の店舗から自社ビルを持つほどまでに事業を大きくした経営手腕の持ち主でした。
初孫だった私は、そんな祖父の寵愛を受けて育ちました。旅行や食事をともにしたり、小学校に入った頃にはゴルフを教えられました。
また、経営者としてあるべき心構えも幼少の頃から教えられていました。人に雇われる経験をしていない祖父は、私の将来に対して「遼太郎の好きなように生きなさい」と言ってくれていましたが、自分で会社をやることも考えるといい、とも言いました。
祖父の思いは次のようなものです。会社を経営するということは、従業員やお客さんに責任を持って仕事をしなければいけない。社会に対する責任は、ただ社会人になるよりも、当然重いものになる。社会に大きなインパクトを与えたいのなら、自分で起こすことも考えてみるといい。
その影響もあって、小学校くらいから「将来は会社をやるんだろうな」と思っていました。どんなキャリアを築けばいいのかと具体的に想像するようになったのも、その頃です。
ゴルフで国体出場。プロを目指したこともあった
小学校を卒業する頃はゴルフに夢中でした。奈良県で実施していた育成プログラムに参加するようになり、プロゴルファーでJLPGAジュニアゴルフコーチの杉本真美さんに師事して技術を磨きました。杉本さんは一切こども扱いをしない方で、私に対しても一人の大人として敬意を持って接してくださったことが非常に心に残っています。人とのコミュニケーションにおいて大切にするべきことやマナーを学んだとともに、もちろん技術指導もしていただいて、私は当時最年少で国体に出場することができました。
こうしたことから、一時は経営者になろうという思いよりプロゴルファーになることを考えたりもしたのです。しかし実際のプロが放つ打球を目の前で見て圧倒されました。自分の力量では活躍できるプロにはなれないと感じたんですね。そこから方向転換、進学に向けて勉強に勤しむようになりました。
同時期に、サラリーマンだった父が起業をするという大きな変化もありました。もともとは国内大手カード会社に勤めていた父ですが、自ら事業を起こして以降は経営者として顔つきがどんどん変わっていきました。気苦労は大きかったでしょうが、私は「格好のいい変化だ」と、間近に見ていて思えた。父の起業と自ら進むべき道筋が見えた時、「私もいつか必ず自分で会社をやる」と確信しました。
人との交流が充実した大学生活。学生にゴルフを教える事業を展開し成功
進学した近畿大学では、学業以上に友人と過ごすプライベートの充実を大事にした学生生活でしたが、学生であることを生かした事業を起こして成功しました。アルバイトをするような感覚で「得意としているゴルフを活かして稼ぐことはできないか」と考えたのをきっかけに、大学生にゴルフを教える事業を始めたのです。
この事業はゴルフ連盟をはじめ、ゴルフ用品メーカーの出資・協力を受けて運営しました。時にゴルフ業界は若年層のゴルフ離れが大きな課題としてありましたので、若者を取り込みたい業界のニーズにも合致し、多くの団体や企業の協賛を得ることができたんですね。学生側の反応もよく、数百から数千人の生徒を集めることができました。
ゴルフ事業の運営、友人との遊びにも忙しい日々でしたが、カナダ留学なども経験させてもらい非常に充実した学生生活だったと思います。大学を首席で卒業し、外資系大手コンサルティングファームのアクセンチュア株式会社に就職しました。
大学を首席で卒業し外資系コンサルティングファームでスキルを磨く
アクセンチュアでは大手精密機材メーカーや通信事業などにアサインされ、AI・RPA導入や業務プロセスの改革、共創オフィスの立ち上げをはじめ幅広い案件を経験しました。印象深いのはファーストアサインの企業で、当時の上司に厳しくも暖かい指導を受けながら、AIを活用した業務効率化の提案を作り、それが採用されたことですね。まだ入社から1年未満でしたのでアナリストという一番低い立場でしたが、私の下にさらにアナリストの部下を携え、プロジェクトリーダーとしてマネジメントをする立場になりました。
また、通信事業会社のご支援時に携わった、共創オフィスの設立と運営支援も非常にいい経験になりました。コンセプト策定から運用設計、プロモーションまで一気通貫で提案するという仕事がコンペで採択され、その業務に加えてその後の営業活動にも支援に入ることができました。
さらに、政令指定都市のスマートシティ化に携わった際には、企業や自治体に加え地域の議会の理解をどのように得ていくのかなど難易度の高いコンサルティングではありましたが、成功を見ることができたのはうれしいことでした。
見えてきたコンサルタントの在り方と課題感
コンサルティングを遂行するには業種や産業の垣根を超えた多様な知見と知識を必要とされるわけですが、常に我々はプロであるという高い意識を持って実行してきました。お客様よりもその業界や解決したい課題について詳しくあらねばならないという基本の姿勢は、入社当初に厳しく指導していただいた上司から学んだことです。
業界特有の知見に加えてゼネラリストとしてのスキルも非常に求められます。お客様の困り事をつまびらかにして課題を体系的に見る上で、ゼネラリストは当然必要とされるスキルではありますが、一方で業界のスペシャリストではないので尖った知見を持ち合わせているわけではありません。
大手コンサルファームのコンサルタントはそうした「ゼネラリスト」がほとんどです。お客様にしてみたら、高額な費用をかけているが、自分より事情に少しばかり詳しく地頭のいい人がそれっぽいことを言っている、コンサルってそういうもの…という状況が出来上がっている。往々にして業務を内製化していく方向に進んでいくわけですが、私はこの状況に対して非常に課題感を持っていました。
ゼネラリストとして適切な施策を打ち出していこうとするとき、その領域の本当の専門家が入って施策を実行していかなければ、他社に比べ圧倒的に差別化できるような施策は出てこないのです。真にお客様の利益を追求しようとするなら、ゼネラリストの役割に加え、専門的な知見から提案し実行できる体制が必要とされるのです。
また、コンサルタントとして働く側の視点から見える業界の未熟さがありました。
コンサルタントの中には、よくわかっていないにもかかわらず「できます、できます」と言って案件を獲得し、お客様の課題解決の核心を掴んだとは言えないまま仕事を終えていく者もいます。もちろん大きな成果を挙げる者もいるわけですが、お客様はどちらにも法外な値段を払います。そしてフィーのほとんどがコンサル会社に入っていき、優秀なコンサルタントにとっては正当なフィーを得られない状況があるのです。このような状況は打開していかなければなりません。
業界が成熟していくには、成果の中でそれぞれのコンサルタントがどのような役立ちをし、どのくらいのアウトプットで貢献したかが定量的に把握できる仕組みを構築する。それに基づいてお客様から正当なフィーをいただき、コンサルタントにも還元していくという仕組みが必要だと感じていました。
コンサルティングのあり方に課題感を持ちながらもキャリアを積み重ねていた中で、当社の社長である各務との出会いがありました。
各務と深く話をしていくと、コンサル業界に対する課題認識やコンサルタントの労働集約型の働き方に対する課題感など、多くの点で意見が一致。さらに、コンサルティング事業の担い手を求めていた各務の期待と、いつかは自分の手で事業を起こそうと考えていた上に、コンサルティングを極めたいという思いを持っていた私の考えもピッタリと合わさりました。
コンサルティングのあるべき姿を実現するべく、アクセンチュアを退社しタイムチケット社の新たな事業部「CRiPT(クリプト)コンサルティング」を立ち上げ、事業部長に就任しました。
お客様・社会・自社の三方よしのコンサルティングを実現する「CRiPT(クリプト)コンサルティング」
CRiPT(クリプト)コンサルティングの「CRiPT」とは、「Creative」、「Partnership」、「Transformation」からそれぞれ文字を取った造語で、お客様と共に新たな価値を創造(Creative)する唯一無二の事業パートナー(Partnership)として変革(Transformation)を支援する、という理念を表しています。
お客様には、国内外のトップコンサルタントによるコンサルティングを適正な価格で提供します。前述しましたように、従来のコンサルでは高額な料金が発生するものの、他社を圧倒するような施策を打ち出せるだけの専門性を持ち合わせていなかったり、業務変革の依頼に対して実際の業務を変えるに至らなかったり、ということが非常に多いのが実情です。やはりそれではお客様はハッピーではないし、コンサルタントにとってもいいことではありません。
こうした状況を変えるためにも、まずはしっかりとしたコンサルティングのノウハウを有した人によるコンサルを実行し、かつ、それぞれの領域で日本トップクラスのプロフェッショナルを集め、知見を提供したいと考えています。その際に法外な価格を請求するのではなく、お客様に対してどのような価値を提供できるのか、提供したことによってどれだけ売り上げが上がるのかという実利に伴った価格設定をしていきます。
また、コンサルタントには成果に対する適正な評価とインセンティブが受けられる仕組みを用意しています。どれだけのアウトプットを創出したか、お客様にどれだけ貢献したかを定量的に把握し、正当に還元していきたいと考えています。そうすることによってコンサルタント自身の自己研鑽や日々の業務に対するやりがいにつながるのではと思っています。
支援領域は広く、包括的な支援を可能としています。新規事業の創出に向けた動きの中でも市場調査やサービス立ち上げの支援、パートナー探しなども一気通貫に行っていくほか、DX推進支援においては、「なぜ今の取り組みで成果が上がらないのか」の棚卸しから携わることが可能です。また、データ収集/分析支援では、社内で塩漬けになってしまっているデータレイクの利活用促進や、そもそものデータを収集・蓄積するところから、実ビジネスに貢献可能なインサイトの抽出まで一気通貫で支援していきます。
こうした支援をするにあたって大切にしたいと考えているのは、絵に描いた餅ではなく「現実解」を提供することです。また、確実なスキルを持つ人材による実行力で効果を刈り取るまで伴走型の支援を行っていくことで、確実な価値提供を実現していきます。
「蒔いたとおりに花は咲く」惜しみない努力が大輪の花を咲かせる
座右の銘というほどの大それたものではありませんが、好きな言葉に「蒔いたとおりに花は咲く(中村天風)」があります。この言葉は、正しいフィールドで正しい種を蒔き、正しい育成方法をしないと花は咲かないという意味だと私は捉えています。花を咲かせるために水を与え肥料を与え、どれだけ努力をしても種を蒔くフィールドを間違えていたら芽は出ません。一方でフィールドが優れていて種のポテンシャルが高くても、水を与える努力をしなければ芽は出ず、花は咲きません。
私は、自分の手で事業を起こしたいという思いを幼少から抱き、今、CRiPTコンサルティング(タイムチケット)を新たな種を蒔くフィールドに選びました。努力を惜しまず、業界の変革という大輪の花を咲かせたいと考えています。