【決算】増収増益のネットワンシステムズ テレワーク関連の業績期待で株価が上昇中

【決算】増収増益のネットワンシステムズ テレワーク関連の業績期待で株価が上昇中

独立系システムインテグレーターのネットワンシステムズ。循環取引の不正で一時株価が急落しましたが、コロナ禍を契機としたテレワークやクラウド化、セキュリティなどネットワーク関連の業績期待で右肩上がりに上昇しています。財務諸表などを基に会社の現状と課題を整理します。


損益計算書(PL):不正による損失発生も増収増益で着地

ネットワンシステムズの2020年3月期決算は、売上高が前期比6.5%増の1862億円、営業利益が同35.4%増の165億円と増収増益でした。

売上原価は前期比4.5%増の1373億円と増えましたが、粗利率は1.4pt増の26.3%とやや改善。販管費も同3.3%増の324億円と増加したものの金額が小さく、増収効果もあって営業利益率は同1.9pt増の8.9%に改善しています。

このほか、営業外収益が前期比で1億7800万円増、営業外費用が同41億5100万円増、特別損失として不正取引関連損失を11億2400万円計上していますが、親会社株主に帰属する当期純利益は前期の2.3倍となる101億円と大幅な最終増益となっています。

なお、不正取引関連損失については、20年3月期第3四半期に中央省庁営業担当マネジャーによる「循環取引」の不正が発覚。15年2月から19年11月までの間、少なくとも40件、売上高で計276億円にのぼっており、マネジャーは2月12日付けで懲戒解雇されています。

2021年3月期の業績予想は、売上高は前期比2.1%増の1900億円営業利益は同3.2%増の170億円親会社株主に帰属する当期純利益は同13.6%増の115億円としました。

2020年に日本でサービスを開始した新移動通信システム「5G」関連の通信機器受注が引き続き好調と予想しており、受注高は前期比0.3%増の2050億円と予想しています。

セグメント分析:「一般民間企業向け事業」が好調

ネットワンシステムズは独立系システムインテグレーター。顧客が必要とするクラウド活用に最適なシステム構築を支援しています。報告セグメントは顧客ごとに以下の5つに分かれています。

  • エンタープライズ事業:一般民間企業向け
  • 通信事業者事業:通信事業会社向け
  • パブリック事業:中央省庁・自治体・文教及び社会インフラ向け
  • パートナー事業:ネットワンパートナーズ(株)によるパートナー企業との協業
  • その他事業:(株)エクシードによるサーバーサービス事業等

出典:2020年3月期通期決算説明会資料

2020年3月期はエンタープライズ事業が好調に推移したことが業績向上につながっています。パートナー事業では3Qで5G向け機器の大型受注があったこともあり増収増益となりました。

2020年3月期の売上高成長率は、パートナー事業が前期比29.0%増と大きく伸び、エンタープライズ事業が同5.8%増となる一方、パブリック事業は同1.7%減、通信事業者事業が同1.0%減となっています。

この結果、売上高構成比は、パブリック事業が29.9%の5562億円、エンタープライズ事業が29.7%の5538億円と並び、パートナー事業が20.8%の3874億円、通信事業者事業が18.9%の3518億円、その他事業が0.7%の13億円となっています。

セグメント利益構成比は、エンタープライズ事業が36.3%の63億円(前期比92.9%増)、パブリック事業が24.8%の43億円(同12.0%増)、通信事業者事業が21.4%の37億円(同7.4%増)、パートナー事業が17.8%の31億円(同46.1%増)、その他事業が3900万円の赤字(前期は1億5300万円の黒字)です。

出典:2020年3月期通期決算説明会資料

商品群別の構成比は、売上高は機器が57.2%サービスが42.8%。機器については、米国の通信機器メーカー大手シスコシステムズ製品の取り扱いで国内トップの取り扱い実績を有しています。

2020年3月期では、5G向け機器への需要が高まったため機器の売上比率が高まり、2021年3月期においても引き続き好調が予想されます。背景には、コロナ禍によってテレワークやオンライン会議への需要が高まっており、オンライン会議システム等を提供しているシスコシステムズ製品への注目が集まっているためです。

キャッシュフロー計算書(CF):営業CFとフリーCFが急増

2020年2月期の営業CFは前期比83.8%増の123億円でした。主な要因は純利益の増加で、売上を通じて現金を稼ぐ力を測る営業CFマージンは同2.8pt増の6.6%に改善しています。しかし情報・通信平均の8.0%は下回っています。

投資CFはマイナス12億円と控えめで、マイナス額は前期比で16.2%減。子会社株式取得と投資有価証券の取得による支出が減少したことが減少要因です。

営業CFが増加し、投資CFが減少した結果、フリーCFは前期の2.1倍となる111億円に増加しました。

財務CFはマイナス51億円マイナス額は前期比で31.4%増マイナス額は前期比で31.4%増。主に、配当金の増加が要因です。

貸借対照表(BS):財務安全性に問題なし

2020年3月期末の総資産は前期比15.0%増の1361億円流動資産は同17.7%増の1250億円固定資産は同7.9%減の111億円。現預金や売掛金等が増加し、投資有価証券等が減少しています。

流動負債は前期比15.6%増の577億円固定負債は同33.4%増の117億円。流動負債及び固定負債の増加はリース債務が増加したことが要因で、流動負債のその他には、今回発覚した「過年度に渡る納品実体のない取引」によって発生した取引の取り消し処理に伴う債務52億円が含まれています。有利子負債残高はなく、無借金経営です。

純資産合計は前期比11.8%増の667億円で、利益剰余金の増加によるものです。

短期の支払能力を測る流動比率は前期比3.7pt増の216.6%。流動比率は一般に120%以上であれば安全とされ、全く問題ない水準です。

長期の支払能力を測る固定比率は前期比3.6pt減の16.7%。固定比率は低いほどよく、こちらも問題ありません。

長期的視点での財務安全性を測る株主資本比率は前期比1.5pt減の48.9%。株主資本比率は、業種によっても異なりますが一般に50%以上で優良企業とされます。不正対応による債務計上もあり50%を割ってしまいましたが、良好な水準を維持しているといえるでしょう。

投資分析:配当性向は悪化も配当金額は増えている

2020年3月期の親会社株主に帰属する当期純利益は101億円で前期の2.3倍でした。

これに伴い、ROE(自己資本利益率)は前期比8.7pt増の16.1%、ROA(総資産利益率)も同4.0pt増の8.0%といずれも改善しています。情報・通信業のROE・ROA業界平均は、それぞれ6.9%と8.0%で、ROEに関しては業界平均を大幅に上回っています。

EPS(1株当たり利益)は前期比2.3倍の119.52円。純資産の増加によりBPS(1株当たり純資産)は同11.6%増の783.55円となっています。

配当性向は前期比34.7pt減の37.7%と大幅に下がりましたが、上場企業平均の約30%を上回っています。2020年3月期の配当金は、前期より8円増の年45円(中間配当21.0円、期末配当24.0円)で、2021年3月期は3円増の年48円を予定しています。会社は連結配当性向30%以上を目標としており、大幅減は純利益増加に対して配当額の変動が少なかった要因で特段問題はありません。

まとめ:不正発覚による向かい風かコロナ禍の追い風を受けるか

ネットワンシステムズの株価は、循環取引の不正に関する報道を受けて、2020年1月28日に1657円の安値をつけました。

しかしその後は上昇に転じ、新型コロナウイルスの感染拡大による世界同時株安で一時は2000円近くまで下がったものの、一貫して右肩上がりとなっています。6月26日には3730円の年初来高値にをつけました。

新型コロナウイルスや不正を受けたネガティブな要素もありますが、株式市場は業績への期待が高まっています。テレワークの広がりによるWeb会議やビデオ会議システム需要、社内サーバーのクラウド化やセキュリティ対策、スマートファクトリーや5G案件など、注目の分野で業績をあげています。21年3月期は増収増益を見込んでいますが、上方修正の可能性もあるといえるでしょう。

出典:2020年3月期通期決算説明会資料

この記事の執筆者

コンサル会社員をしながら、副業ライターとして執筆活動を行っています。証券アナリスト取得を目指し日々邁進しております。


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