【20年3月期】株価急上昇のJストリーム ポストコロナの「動画配信」需要に期待集まる

【20年3月期】株価急上昇のJストリーム ポストコロナの「動画配信」需要に期待集まる

企業向けに動画配信プラットフォーム、CDN(コンテンツデリバリネットワーク)、ライブ配信、映像制作、Webサイト構築などのサービスを提供するJストリーム。取引先にはフジテレビやテレビ朝日などテレビ局のほか大企業が並びます。好決算を受けて株価は急上昇中。財務諸表などを基に会社の現状と課題を整理します。


損益計算書(PL):売上利益ともに大幅増

Jストリームの2020年3月期の決算は、売上高は前期比24.5%増の84億4300万円、営業利益は同74.8%増の5億4700万円と急増。営業利益率も同1.9pt増の6.5%と改善しました。

売上総利益も前期比21.2%増の29億1600万円と増えていますが、外注費の大幅増などにより売上原価が同26.3%増の55億2700万円と嵩んだため、粗利率は前期比0.9pt減の34.5%と微減。販売費及び一般管理費も人員増による人件費増加で前期比13.2%増の23億6900万円と増えています。

このほか、このほか、営業外収益が前期比38億円増、営業外費用が52億円減、特別利益が29億円増、特別損失が同1162億円増となりましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比27.0%増の2億4900万円と伸長しています。

2021年3月期の連結業績予想については、新型コロナウイルス感染症の影響により現時点で合理的な算定が困難であることから、開示されていません。業績予想の開示が可能となった時点で速やかに開示するとしています。

セグメント分析:ストリーミングなどの「配信事業」が主力

Jストリームは企業向けに、動画配信プラットフォーム、コンテンツ制作、サイト構築及び映像制作などのサービスを提供している企業で、事業は「配信事業」「制作・システム開発事業」「その他の事業」といったセグメントに分けられます。

  • 配信事業ライブストリーミングやオンデマンドストリーミング、配信利用に付随するアプリケーションのカスタマイズなどを行っています。動画配信プラットフォームとしては国内最大級で、2000アカウント以上の企業が導入している「J-Stream Equipmedia(イクイップメディア)」や、国産CDN(Contents Delivery Network)サービスである「J-Stream CDNext(シーディーネクスト)」などが代表的なサービスです。

    J-Stream CDNext(シーディーネクスト)

  • 制作・システム開発事業:ウェブサイトや配信システム、映像制作及びコンテンツの受託制作を行っています。
  • その他の事業:多チャンネル事業や向けの設備導入業務や、動画広告を中心とした広告代理業に類するサービスを提供しています。

ただし、2020年4月30日開催の取締役会において「動画ソリューション事業」の単一セグメントへの変更が決議されています。顧客要件の多様化に対して、新たにソリューション推進本部を設けて諸サービスを複合して提案することで、すべての動画関連需要の獲得を目指すとのことです。

主要取引先は、フジテレビやテレビ朝日をはじめとするテレビ局や、カルビーなどの食品メーカー、Panasonicなどの電機メーカーから大手証券会社、学習塾など様々な分野にわたります。

出典:2020年3月期本決算説明会

セグメント別の売上高構成比は、配信事業が50.1%で42億3000万円(前期比20.0%増)、制作・システム開発事業が40.9%で34億4300万円(同36.9%増)となっています。

配信事業の売上高増加は、年度を通じてメディア系の大型運用案件や配信受注が継続したこと、第4四半期に特に医薬系業界からの需要が多かったこと、オンデマンドの利用が増加したことなどによるものだとしています。

制作・システム開発事業の売上高増加は、8月に連結子会社とした医療系デジタルコンテンツの制作のビッグエイムズワイの売上が好調であることなどによるものだとしています。一方で映像制作子会社がスタジオ稼働率の低下等によって業績が悪化しているとのことです。

セグメント別の営業利益構成比は、配信事業が60.0%で3億2800万円(前期比26.2%増)、制作・システム開発事業が17.2%で9400万円(同11.9%増)となっています。配信事業が主力事業であるといえるでしょう。

加えて、業種別売上比率も公表されており、主力業種である医薬医療製造・卸が全体の35.0%、放送が23.0%を占めており、どちらの売上高も前年と比べて20%以上増加しています。

出典:2020年3月期本決算説明会

キャッシュフロー計算書(CF):営業CFが微減も優良企業型

2020年3月期の営業CFは前期比11.0%減の6億1700万円でした。売上高は前期比増で税金等調整前当期純利益の4億4700万円の計上があったものの、法人税等の支払い額が前期より1億2000万円ほど多かったためです。

これに伴い、売上を通じて現金を稼ぐ力を測る営業CFマージンは前期比2.9pt減の7.3%と悪化しています。これは情報・通信業の平均8.0%をやや下回る水準です。

投資CFはマイナス4億2800万円で、マイナス額は前期比33.3%減です。内容は子会社株式の取得1億3300万円などによるものですが、減少の主な要因は、投資有価証券の取得による支出が前期と比較して2億円以上減ったことです。

フリーCFは前期の3.7倍となる1億8900万円と大幅に増加しました。

財務CFはマイナス1億7500万円で、マイナス額は前期比9.4%増でした。これは主に、配当金の支払い5900万円やリース債務の支払い8100万円があったためです。

営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスなので、JストリームのCFは優良企業型であるといえます。

貸借対照表(BS):純資産を積み上げ財務安全性は十分

2020年3月期末の資産合計は前期比16.8%増の58億8600万円。流動資産は同24.0%増の42億400万円で、主に売掛金が6億9800万円ほど増加したため。固定資産は同2.0%増の16億8200万円で、主にリース資産が1億2100万円ほど増加したためです。

流動負債は前期比61.3%増の13億8100万円で、主に未払金が2億3700万円増加したため。固定負債も同101.3%増の3億1600万円と大幅に増加しましたが、主な要因はリース債務が5800万円増加したことなどです。有利子負債残高も同67.3%増の2億8600万円と増えました。

純資産合計は前期比4.0%増の41億8900万円と順調に積み上げています。

短期の支払能力を測る流動比率は前期比91.7pt減の304.4%。大きく悪化しましたが、流動比率は一般に120%以上であれば安全とされるため問題ありません。

長期の支払能力を測る固定比率は前期比1.3pt減の42.4%。固定比率は低いほど良く、改善しており不安はありません。

長期的視点での財務安全性を測る株主資本比率は前期比7.6pt減の67.4%。株主資本比率は、業種によっても異なりますが一般に50%以上で優良企業とされるため、長期の財務安全性には全く問題ないでしょう。

投資分析:ROE・ROAは改善も業界平均未満

2020の3月期の親会社株主に帰属する当期純利益は前期比27.0%増の2億4900万円と増加したことに伴い、ROE(自己資本利益率)は同1.2pt増の6.4%、ROA(総資産利益率)は同0.6pt増の4.6%となりました。ただし、前期から改善はしたものの、情報・通信業の平均(6.9%/8.6%)と比べるとやや低い水準にあります。

当期純利益の増加を受けて、EPS(1株当たり利益)は前期比27.4%増の21.42円。純資産も順調に増加していることから、BPS(1株当たり純資産)は同5.0%増の340.90円と増加しています。

配当性向は前期比並みの30.1%です。

まとめ:「放送局のビジネスモデル変革」「製薬マーケティングのデジタル化」を支援

Jストリームの株価は、年初から大きく上下しながらも上昇傾向にありましたが、新型コロナウイルスの影響による世界同時株安もあり、2020年3月13日に638円の年初来安値を付けました。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う各種イベントの中止や外出自粛要請により、主力事業である配信事業等への需要が高まるにつれて株価は上昇しました。2020年5月1日には前日の好決算発表を受けて2032円の年初来高値を付け、現在も1800円台で推移しています。

2021年3月期の経営方針は、通信事業者以外の企業によるコンテンツ配信に関連する市場の「メディアOTT(Over-the-Top)領域」と、主に一般企業によるビデオコミュニケーションを用いたインターネット動画の活用に関連する市場の「EVC(Enterprise Video Communications)領域」、そして「医薬領域」の3つに焦点を当て強みを活かすとしています。

メディアOTT領域では、放送局の環境、戦略変化に対して「放送同時配信」や「見逃し配信」を中心にビジネスモデル変革を支援していくとのことです。EVC領域では企業のデジタル化を支援し、医薬領域では薬価の引き下げや後発医薬品普及で国内市場の競争が強まるなかで、製薬マーケティングのデジタル化を支援するとのことです。

また、新型コロナウイルスの影響で臨時休校対策を取る学校法人に対し「J-Stream Equipmedia」と「Photron-Mobile Video Creator」を申込みから3ヶ月間無償で提供しています。これらは、スマートフォン等で撮影した授業動画を視聴用URLやQRコード経由で生徒向けに動画配信ができるサービスで、休校解除後も休校中の学習内容の振り返りに活用できるということです。

このように新型コロナウイルスの影響でコミュニケーションをネットに置き換えるライブ配信等の受注が増加しており、Jストリームの業績の追い風となっています。その一方で、エンターテインメント関連やセミナー等ビジネス系においては、各種イベントの手控えや延期、販売促進予算の絞り込み等のネガティブな影響が発生するおそれもあります。

出典:2020年3月期本決算説明会

この記事の執筆者

興味深い財務分析ができるよう、日々勉強しています。