積水化学工業の平均年収は867万円
まずはじめに積水化学工業の平均年収を見ていきましょう。積水化学工業の平均年収は867万円です(2021年3月期有価証券報告書)。キャリコネに投稿された給与明細を参考に積水化学工業の年代別年収レンジを算出したところ、20歳代で520〜620万円、30歳代で700〜800万円、40歳代で870〜970万円という結果がでました。男女あわせた民間の正規雇用者の平均年収は503.5万円(国税庁・平成30年分民間給与実態統計調査結果)ですから、それと比較しておよそ1.73倍の額です。
■積水化学工業の平均年収推移
過去5年間は減少を続けるが
積水化学工業・5年間の平均年収・平均年齢・従業員数(単体)の推移
決算月 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数 |
---|---|---|---|---|
2021年3月期 | 867万円 | 43歳 | 15.2年 | 2745人 |
2020年3月期 | 903.8万円 | 40.3歳 | 14.3年 | 2666人 |
2019年3月期 | 911.8万円 | 42.7歳 | 15.4年 | 2617人 |
2018年3月期 | 927.6万円 | 42.6歳 | 15.8年 | 2615人 |
2017年3月期 | 933.4万円 | 42.8歳 | 16.2年 | 2440人 |
出典:積水化学工業・有価証券報告書
積水化学工業の過去5年間の平均年収を見てみると、2017年3月期の933.4万円から毎年徐々に減少し、2021年3月期には867万円まで下がってきています。
同社の業績は、2018年3月期までは過去最高益の更新を続けていましたが、それ以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、減収減益が続いています。後に詳述しますが、同社の賞与は、カンパニーごとの営業利益に連動する形式をとっているため、こうした業績が平均年収に影響を与えたことが推測されます。
2022年3月期については、「大幅増収・大幅増益」「営業利益は19年度並み水準を回復」することが見込まれています。平均年収についても、再び上昇することが期待できます。
積水化学工業の年代別平均年収と中央値
■積水化学工業の年収中央値は30代で668.5万円
積水化学工業の平均年収は収入における目安のひとつですが、全社員の平均なので、実際にもらえる年収額とはかけ離れている可能性があります。積水化学工業の年収実態により近い年収中央値を見ることが有効です。20代から60代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値は以下の通りです。
積水化学工業の年収実態
年代 | 平均年収 | 平均月収 | 平均ボーナス | 年収中央値 |
---|---|---|---|---|
20代 | 566.5万円 | 32.3万円 | 90.6万円 | 509.85万円 |
30代 | 742.8万円 | 42.4万円 | 148.5万円 | 668.5万円 |
40代 | 917.2万円 | 52.4万円 | 183.4万円 | 825.48万円 |
50代 | 1065.5万円 | 60.8万円 | 213.1万円 | 958.95万円 |
60代 | 676万円 | 38.6万円 | 135.2万円 | 608.4万円 |
※キャリコネの口コミ、有価証券報告書、厚労省・経産省・国税庁発表の調査資料を元に、編集部で独自に算出
高機能樹脂、住宅、環境を3本柱とする化学メーカーである積水化学工業は、業種でいうと「製造業」に分類されます。この業種の平均年収は、全業種平均に比較すると、やや低いことが特徴です。例えば30代の場合、全業種平均が320.6万円であるのに対し、製造業平均は288.2万円と、約32万円下回っている、という具合です。
こうした製造業において、積水化学工業の年収中央値は、すべての年代において業種別平均を大きく上回っています。同じく30代の年収中央値は668.5万円と、業種別平均の約2.3倍、380万円以上も上回っています。社員の口コミを見ても、「給与水準は高い」という声が多く見られ、このデータからもその通りであることが分かります。
積水化学工業の年収が高い理由
■賞与はカンパニーによって支給額が異なる
積水化学工業の年収の高さの理由として、まず大きいのは賞与のボリュームの大きさです。同社の賞与については、「大体6ヶ月分ほど」「1回当たり平均2.5ヶ月分ほど」という口コミが見られ、年間5.5~6ヶ月分という高い水準です。また、「どんなに業績が悪くても一定の額が保証されている」と、労働組合の存在感の強さを感じさせる口コミも見られます。さらに、賞与額の算出方法について、「カンパニーごとの営業利益額に基づく計算式での変動制」が採用されています。このため、好業績のカンパニーはさらに賞与が上乗せされることが分かります。
また賞与以外にも、後に詳述しますが、福利厚生・諸手当類の充実も見逃せません。特に既婚者・世帯主に対する補助については、「結婚して年収が100万円以上上がった」という声も。さらにこれは、「賞与の算定基準に含まれる」とのことで、上記の賞与がさらにアップする仕組みにつながっています。
積水化学工業の給与体系・内訳
■福利厚生・諸手当が高水準
積水化学工業の給与体系は、基本給と諸手当からなる月給と、年2回の賞与で構成されています。諸手当としては、通勤手当、家族手当、住居手当などの他、福利厚生が充実していることが同社の大きな特徴です。福利厚生は、以下の通り、分野別に多彩な制度が整備されています。
●住宅関連:独身寮、転勤者住宅、単身赴任寮など
●会員サービス:約14000アイテム以上のサービスを 会員特別料金で利用できる会員制の福利厚生サービス
●ライフイベント関連:新婚生活補助、新婚家賃補助、出産育児補助、海外勤務支援など
●ステップアップ支援:自己啓発支援補助、フィットネスクラブ費用補助など
●その他:財形貯蓄制度、持株会、社員食堂、グループ保険など
上記のうち、社員からも満足の声が多いのは、「新婚生活補助」です。新婚者かつ世帯主には、「ビジネスキャリアコース(総合職)は53000円/月、エキスパートコース(一般職)は60000円支給される」とのことです。このことから、「結婚してから年収が100万円アップした」という声も多数寄せられています。独身者にも寮が用意されているほか、家賃についても「家賃補助は独身で30%程度」支給されるとのことで、「福利厚生は充実」「社員のことを考えてくれたシステムが整っている」という声が多く見られます。
積水化学工業社員の給与明細(キャリコネ)
30代で年収900万円に迫る
20代営業(非管理職)の 給与明細
30代営業(非管理職)の 給与明細
20代から30代で年収2倍以上に!
20代技術(非管理職)の 給与明細
30代技術(非管理職)の 給与明細
積水化学工業の職種別年収
■2つの職種、異なる賃金体系
積水化学工業の職種は、「ビジネスキャリアコース」と「エキスパートコース」の大きく2つに分類されます。それぞれの職種の役割の違いは以下の通りです。
●ビジネスキャリアコース:早い段階から幅広い経験を吸収し、経営を担う人材への成長を目指すコース
●エキスパートコース:専門領域において実務力を高め、経営基盤を支える人材への成長を目指すコース
それぞれの職種によって賃金体系が異なっており、初任給についても以下の通り、職種別・学歴別に設定されています。
<初任給>
●ビジネスキャリアコース:博士了/月給276,750円、修士了/月給242,000円、学士卒/月給225,500円
●エキスパートコース:修士了/月給208,900円、学士・高専専攻科卒/月給198,300円、高専本科卒/月給188,900円
「ビジネスキャリアコース」に絞った場合、年代・職位別の年収目安としては、一般社員=専任担当職は400~600万円、係長クラスは700~800万円、課長クラスになると1000~1100万円、部長クラスは1200~1400万円となります。
積水化学工業社員の給与明細(キャリコネ)
年齢と基本給が逆転するケースも
20代技術(非管理職)の 給与明細
20代営業(非管理職)の 給与明細
30代中盤で1000万円超え
30代管理部門(非管理職)の 給与明細
30代技術(非管理職)の 給与明細
積水化学工業で年収を上げる方法
■年功序列が根強いが、係長以降は個人差が
積水化学工業の「ビジネスキャリアコース」は、階層によって分けられており、それぞれの階層と年収が紐づいています。階層は、大まかに3つ(専任担当職→基幹職→経営幹部)で、専任担当職はさらに4つ(初級→中級→上級→主事)に分けられています。つまり、同社で年収を上げるためには、階層を上げることが必要になります。
昇格の仕組みについては、「典型的な日本企業」「年功序列的な傾向が強い」という声が散見され、「30歳くらいまではよぼ横並び」です。しかし、係長クラスへの昇格時期、そして基幹職に昇格できるかどうかについては個人差が大きくなり、ここに到達できるかどうかで年収は「大きく変わってくる」そうです。
また、昇格するためには、昇格試験を受ける必要があることも同社の特徴です。入社年次によって目安が設けられており、大学院修了の場合、「入社2年目に中級に昇級、係長昇格は最短で6年目に試験、基幹職は早くて10年目に試験」とのことです。
積水化学工業社員の口コミ(キャリコネ)
年功序列の風土が根強い
「古い体質が残っているため、組織力が求められる 年功序列であるため、上司の意向を聞くことが……」
賞与にはカンパニーと個人の業績が反映される
「ボーナスは成果主義で期初に設定した目標の達成度合いで決まる 管理職は資格によって報酬が決まる……」
積水化学工業のライバル企業と比較
■同業他社に大きく差をつける
積水化学工業のライバル企業として、カネカ(合成繊維、樹脂、電子材料など事業多彩)、富士フィルムホールディングス(写真、医療機器、医薬、液晶フィルムを展開)、三井化学(三井系の総合化学メーカー、自動車向け等の機能材料に注力)の3社を取り上げます。
積水化学工業の平均年収が867万円であるのに対し、カネカは734.3万円、富士フィルムホールディングスは1002.8万円、三井化学は837.6万円です。富士フィルムホールディングスは持株会社のため、比較が難しいですが、他2社に対しては大きく上回っています。冒頭でご紹介した社員からの「給与水準は高い」という口コミ通りであると言えます。
社名 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数(単体) | 売上高 |
---|---|---|---|---|---|
積水化学工業 | 867万円 | 43歳 | 15.2年 | 2745人 | 3330.6億円 |
カネカ | 734.3万円 | 41歳 | 17.5年 | 3551人 | 2797.7億円 |
富士フィルムホールディングス | 1002.8万円 | 42.7歳 | 17.2年 | 228人 | 3567.9億円 |
三井化学 | 837.6万円 | 41歳 | 17.1年 | 4659人 | 5954.6億円 |
出典・参考
厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2019年企業活動基本調査速報-2018年度実績-」
国税庁「平成30年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2020年版 業種別 モデル年収平均ランキング」
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東京大学卒業後、大手自動車メーカー入社。人事部門に配属。女性の働き方プロジェクトリーダーを担当。