※本記事は、ダイダン株式会社 の有価証券報告書(第96期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ダイダンってどんな会社?
電気・空調・水道などの設備工事を行う総合設備工事会社です。工場やデータセンター向けの施工に強みを持ちます。
■(1) 会社概要
1933年に大阪電気商会大阪暖房商会として設立され、1949年に建設業者登録を行いました。1987年に現在の社名へ変更し、1993年には東京証券取引所市場第一部に上場を果たしています。近年では海外展開を加速させており、2024年10月にシンガポールのPresico Engineering Pte. Ltd.を連結子会社化するなど、グローバルな事業拡大を進めています。
同グループの従業員数は連結で2,445人、単体で2,070人です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位、第3位には従業員や役員等が加盟する持株会組織である東京大元持株会、大阪大元持株会が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.04% |
| 東京大元持株会 | 4.57% |
| 大阪大元持株会 | 3.67% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長執行役員は山中康宏氏が務めています。取締役8名のうち4名が社外取締役であり、社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 藤澤 一郎 | 代表取締役会長 | 1979年入社。産業施設事業部長、技術本部長、代表取締役社長執行役員などを歴任し、2024年4月より現職。 |
| 山中 康宏 | 代表取締役社長執行役員 | 1983年入社。営業本部長、東日本事業部長などを経て、2024年4月より現職。 |
| 笹木 寿男 | 取締役専務執行役員東日本事業部長兼東京本社代表 | 1988年入社。産業施設事業部長、エンジニアリング本部長、技術本部長などを歴任し、2024年4月より現職。 |
| 佐々木 洋二 | 取締役上席執行役員CIO兼業務本部長 | 1989年入社。技術研究所長、経営企画本部長などを経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、松原文雄(元国土交通省土地・水資源局長)、佐藤郁美(弁護士)、小酒井健吉(元三菱ケミカルホールディングス副社長)、久德博文(元大阪瓦斯副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「設備工事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 設備工事業
空調衛生設備工事および電気設備工事の設計、監理、施工を行っています。オフィスビル、工場、病院、データセンターなど幅広い施設を対象とし、空気調和、給排水衛生、電気設備などのインフラ環境を提供しています。国内だけでなく、シンガポールやタイなどの海外拠点でも事業を展開しています。
主な収益源は、顧客である建設会社や施主からの工事請負代金です。運営は主にダイダンが担い、一部の工事についてはダイダンサービス関東、ダイダンサービス関西などの国内子会社や、DAI-DAN INTERNATIONAL ASIA PTE. LTD.、Presico Engineering Pte. Ltd.などの海外子会社が施工を担当しています。
■(2) その他
再生医療分野における事業を展開しています。具体的には、細胞加工施設の提供や関連機器の販売、医薬品の受託製造などを行っています。再生医療の普及と発展に貢献することを目指し、設備技術と運用支援を組み合わせたサービスを提供しています。
収益源は、再生医療関連機器の販売代金や医薬品の受託製造料です。運営は子会社のセラボヘルスケアサービスが担当しています。同社は再生医療関連の機器販売及び細胞加工による医薬品の受託製造等を主な事業としています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は右肩上がりで推移しており、特に直近の2025年3月期は大幅な増収となりました。利益面でも、経常利益と当期純利益が順調に増加しており、2025年3月期には利益率も大きく改善しています。全体として、事業規模の拡大と収益性の向上が同時進行している好調な業績トレンドが見て取れます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,577億円 | 1,629億円 | 1,860億円 | 1,974億円 | 2,627億円 |
| 経常利益 | 93億円 | 81億円 | 93億円 | 119億円 | 235億円 |
| 利益率 | 5.9% | 5.0% | 5.0% | 6.0% | 8.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 63億円 | 59億円 | 68億円 | 91億円 | 174億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益および営業利益が大きく伸長しています。売上総利益率は13.3%から15.7%へ、営業利益率は5.5%から8.8%へとそれぞれ改善しており、収益性が高まっていることがわかります。増収効果に加え、採算性の向上が利益拡大に寄与している構造です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,974億円 | 2,627億円 |
| 売上総利益 | 262億円 | 413億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.3% | 15.7% |
| 営業利益 | 109億円 | 230億円 |
| 営業利益率(%) | 5.5% | 8.8% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が75億円(構成比41%)、通信交通費が13億円(同7%)を占めています。売上原価については、外注費や材料費などが主な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
※同社は設備工事業の単一セグメントであるため、本項目の記載を省略します。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**積極型**(営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態)
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6億円 | 124億円 |
| 投資CF | -6億円 | -8億円 |
| 財務CF | -28億円 | 160億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同グループは、「地球と社会と私たちの未来に、安全・快適・信頼の空間価値を届ける」という企業理念を掲げています。この理念の下、社会や顧客が求める本質的な価値のある空間を創造し、満足を提供することを目指しています。
■(2) 企業文化
「人材戦略を基盤とした人づくりの実現により企業価値を高める」という経営方針を掲げ、社員が意欲的に働ける組織風土の醸成を重視しています。また、社会や顧客が潜在的に求めている価値を創造する「空間価値創造」企業を目指し、変化の激しい時代においても確かな目標に向かって進む姿勢を共有しています。
■(3) 経営計画・目標
2024年度を初年度とする中期経営計画「Stage2030 Phase2《磨くステージ》」において、最終年度である2026年度(2027年3月期)の数値目標を掲げています。
* 完成工事高:2,700億円
* 営業利益:240億円
* ROE:12%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
長期ビジョンの第2フェーズとして、空調衛生工事、電気工事、海外事業、再生医療事業の4つの領域に注力しています。好調な建設需要を背景に、産業施設等の大型案件への対応や受注ポートフォリオの見直しを機動的に行います。また、人手不足に対応するため、採用増や教育研修への投資を積極的に行い、施工能力の確保に努めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を最も重要な経営資本と位置づけ、働きがいと働きやすさを両立する組織風土の形成と、個人の力を引き出す人材育成を推進しています。具体的には、働き方改革やコミュニケーション施策による風土改革、採用増と研修の質向上による育成強化に取り組んでいます。また、健康経営やコンプライアンス教育など企業基盤の強化にも努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.0歳 | 16.6年 | 10,664,362円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.4% |
| 男性育児休業取得率 | 33.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 58.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 62.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 63.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.42%)、従業員エンゲージメントスコア(63.0)、コンプライアンス教育の受講率(94.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市況変動リスク
国内外の経済環境悪化による設備投資の減少や技術革新などの外部環境の変化により、建設需要が著しく減少する可能性があります。これにより受注環境が悪化した場合、同グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす恐れがあります。これに対し、外部環境のモニタリングや事業多角化によりリスク低減に努めています。
■(2) 施工リスク
施工現場での労働災害、品質劣化、重大な品質事故の発生リスクがあります。また、資機材・労務費の高騰や納期遅延による施工長期化も懸念されます。これらのリスクが顕在化した場合、損害賠償やコスト増により業績に影響を与える可能性があります。安全衛生・品質環境リスクの把握や適切な施工計画の策定により、堅実な施工に努めています。
■(3) 人材リスク
技術者の採用難や人材流出により、施工体制の確保が困難になるリスクがあります。これにより在籍社員への負荷増大や士気低下が生じ、事業継続性に影響を及ぼす可能性があります。採用・育成の強化、定年延長、ITツール活用や業務効率化、地域限定正社員制度の導入などにより、人材確保と定着に取り組んでいます。
■(4) 海外リスク
海外事業における政情不安、法規制の変更、為替変動、商習慣の違い、自然災害などが事業に影響を与える可能性があります。特に新興国での事業展開においては、予期せぬリスクにより損失が発生する恐れがあります。赴任者への研修や情報共有を通じてリスク管理を行っていますが、顕在化した場合は業績への影響が避けられません。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。