ダイダン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイダン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するダイダンは、空調衛生および電気工事の設計・施工等を主力とする総合設備企業です。直近の業績は、売上高が2,562億円(前年比2.5%減)と微減したものの、営業利益は345億円(前年比49.7%増)と大幅な増益を達成しており、高い収益性を確保しています。


※本記事は、ダイダン株式会社の有価証券報告書(第97期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダイダンってどんな会社?


空調衛生や電気工事などの総合設備工事を主軸とし、国内だけでなく海外や再生医療分野にも事業を展開しています。

(1) 会社概要


1933年に菅谷元治が大阪電気商会大阪暖房商会を設立し、冷暖房や電気設備等の各種請負工事を開始したのが同社の始まりです。1987年に現在のダイダンへと商号を変更し、1993年には東京証券取引所市場第一部への上場を果たしました。近年では、2020年に再生医療関連事業を担うセラボヘルスケアサービスを、2021年にはシンガポールに海外事業を統括するDAI-DAN INTERNATIONAL ASIAを設立するなど、新たな領域への進出を進めています。

同社グループの従業員数は連結で2,568名、単体で2,185名となっています。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位および第3位には従業員持株会などの持株会が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.53%
東京大元持株会 4.39%
ダイダン従業員持株会 3.68%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長執行役員は山中康宏氏が務めており、社外取締役の比率は33.3%となっています。

氏名 役職 主な経歴
山中康宏 代表取締役社長執行役員 1983年4月ダイダン入社。2011年横浜支店長、2017年執行役員営業本部長等を経て、2024年4月より現職。
藤澤一郎 取締役会長 1979年4月ダイダン入社。2010年取締役執行役員技術本部長、2018年代表取締役社長執行役員等を経て、2026年4月より現職。
笹木寿男 代表取締役専務執行役員東日本事業部長兼東京本社代表 1988年4月ダイダン入社。2016年産業施設事業部長、2022年取締役常務執行役員等を経て、2026年4月より現職。
佐々木洋二 取締役上席執行役員CIO兼業務本部長 1989年4月ダイダン入社。2011年技術研究所長、2020年上席執行役員CIO兼経営企画室長等を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、松原文雄(弁護士法人東京あすなろ法律事務所所属弁護士)、佐藤郁美(のぞみ総合法律事務所所属弁護士)、小酒井健吉(野村総合研究所社外取締役)、久德博文(元大阪瓦斯顧問)の4名です。

2. 事業内容


同社グループは、「設備工事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 設備工事業

同社グループの主力である設備工事業では、オフィスビルや工場などに対する空調衛生、電気工事の設計、監理および施工を提供しています。国内だけでなく、シンガポールやタイなどのアジア圏でも海外展開を進めており、多様な顧客のニーズに対応した空間価値の創造に取り組んでいます。
収益は、受注した設備工事の進行や完成に伴う請負代金として顧客から受け取ります。事業の運営は主にダイダンが担い、一部の施工についてはダイダンサービス関東やダイダンサービス関西などの国内子会社、および海外子会社が担当しています。

(2) その他(再生医療関連等)

その他の事業領域として、再生医療分野における事業展開を行っています。再生医療関連の機器販売をはじめ、細胞加工技術を用いた医薬品の受託製造などを提供し、医療業界の研究機関や企業向けにサービスを展開しています。
収益は、医療関連機器の販売代金や、治験薬などの製造受託に伴う手数料として顧客から受け取ります。この事業の運営は、子会社のセラボヘルスケアサービスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の連結業績を見ると、売上高は着実に拡大を続けており、安定した事業基盤を有していることがわかります。経常利益も成長傾向にあり、利益率は5.0%から14.0%へと大きく改善しました。これに伴い当期利益も順調に増加しており、収益力の飛躍的な向上が確認できます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1629億円 1860億円 1974億円 2627億円 2562億円
経常利益 81億円 93億円 119億円 235億円 358億円
利益率(%) 5.0% 5.0% 6.0% 8.9% 14.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 59億円 68億円 88億円 175億円 263億円

(2) 損益計算書


売上高は前年比で微減となったものの、売上総利益は大幅に増加しており、売上総利益率も15.7%から21.9%へと大きく改善しています。これにより、営業利益も堅調に伸びており、より高い収益性を確保する事業構造へと進化していることが伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2627億円 2562億円
売上総利益 413億円 561億円
売上総利益率(%) 15.7% 21.9%
営業利益 230億円 345億円
営業利益率(%) 8.8% 13.5%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が94億円(構成比44%)、減価償却費が14億円(同6%)、電算費が14億円(同6%)を占めています。また、売上原価(完成工事原価)の内訳は、外注費が745億円(構成比42%)、材料費が632億円(同36%)、経費が378億円(同22%)となっています。

(3) キャッシュ・フローと財務指標


同社の直近のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなる「改善型」の傾向を示しています。営業活動や資産の売却によって得た資金をもとに、借入金の返済などを進める改善局面にあることが分かります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 124億円 584億円
投資CF -8億円 4億円
財務CF 160億円 -285億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は22.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.2%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「地球と社会と私たちの未来に、安全・快適・信頼の空間価値を届ける」という企業理念を掲げています。社会や顧客が本質的、潜在的に求めている価値のある空間を創造し、ステークホルダーに満足を提供していく「空間価値創造」企業を目指し、変化の激しい時代においても持続的な成長を図ることを使命としています。

(2) 企業文化

同社は、「人材戦略を基盤とした人づくりの実現により企業価値を高める」という経営の基本方針を掲げています。「人は最大の資産である」との考えのもと、会社と従業員が大事にするべき価値観を明文化し、従業員が意欲的に働ける組織風土の実現と実践的な人材育成を重視する文化が定着しています。

(3) 経営計画・目標

同社は、2024年度を初年度とする3カ年の中期経営計画「Stage2030 Phase2《磨くステージ》」を策定しており、最終年度の2026年度に向けて以下の数値目標を掲げています。

* 完成工事高:2,700億円
* 営業利益:240億円
* ROE:12.0%以上
* 配当性向:40.0%以上かつDOE4.8%を下限

(4) 成長戦略と重点施策

中期経営計画において、建設業界全体で人手不足による施工力の制約がかかる中、総合的な施工力向上を最重要課題に位置づけています。人的資本投資を積極的に進めるとともに、以下の4つの事業領域を注力領域と定め、施策実行の徹底による事業基盤の強化と収益力の向上に取り組んでいます。

* 空調衛生工事
* 電気工事
* 海外事業
* 再生医療事業

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

同社は、長期ビジョンの実現に向け「信頼される人と組織の深化」を基本方針に掲げています。「働きがいと働きやすさの両立」および「戦略的な人材育成」を柱として人的資本への投資を加速させ、長時間労働の是正や多様な働き方の推進、教育効果の高い研修制度の構築などを通じて、すべての従業員が安心して活躍できる職場環境の実現を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与は東京証券取引所プライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.5歳 15.8年 11,768,023円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.2%
男性育児休業取得率 42.5%
男女賃金差異(全労働者) 58.5%
男女賃金差異(正規雇用) 62.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 62.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメントスコア(66.6)、離職率(2.4%)、従業員1人当たりの研修時間(56.77時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市況変動リスク

国内外の経済環境の悪化による設備投資の減少や、技術革新などの外部環境の変化によって建設需要が著しく減少した場合、同社の受注環境が悪化する可能性があります。外部環境のモニタリングや事業の多角化によるリスク低減に努めていますが、継続的な事業運営や業績に影響を及ぼすおそれがあります。

(2) 施工リスク

施工現場での安全環境の不整備による労働災害の発生や重大な品質事故、また資機材・労務費の高騰や納期遅延による施工の長期化といったリスクが存在します。同社は適切な原価計算や施工体制の構築に努めていますが、これらが顕在化した場合、対応費用の発生や工期遅延によって業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 人材リスク

建設業界における技術者の高齢化や若年層の入職者数減少を背景に、技術者の採用計画の未達や人材流出が生じるリスクがあります。これにより在籍社員への負荷増大や施工体制の構築が困難になる可能性があります。同社は、定年年齢の引き上げやITツールの利用促進などを通じて人材の確保と定着に取り組んでいます。

(4) 情報漏洩・サイバーリスク

標的型攻撃メールやマルウェアなどのサイバー攻撃、あるいは内部の不正により、個人情報や取引先の秘密情報が漏洩・改ざんされるリスクがあります。また、情報システムの破壊や停止が生じる可能性もあります。同社はセキュリティ教育やバックアップ体制の整備を行っていますが、被害が発生した場合は業績や社会的信用に影響を及ぼすおそれがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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