大東建託 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大東建託 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大東建託は東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場し、建物賃貸事業の企画・建築や不動産の仲介・管理を主力とする企業です。直近の業績は売上高1兆9,847億円と増収になり、営業利益も増益を達成するなど、建設事業と不動産賃貸事業を中心に安定した成長を継続しています。


※本記事は、大東建託株式会社の有価証券報告書(第52期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大東建託ってどんな会社?


建物賃貸事業の企画から建築、不動産の仲介・管理までを総合的に提供する企業です。

(1) 会社概要


1974年に名古屋市で大東産業として設立され、1988年に大東建託へ社名を変更しました。1989年に名古屋証券取引所市場第二部へ上場し、1992年には東京証券取引所市場第一部へ上場しています。近年では不動産開発事業の強化を進め、2025年にハウスコムやアスコットなどを完全子会社化しています。

同社の従業員数は連結で19,326名、単体で8,400名です。大株主の状況をみると、筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も信託業務を行うSTATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.42%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) 6.11%
光通信 5.69%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表取締役社長執行役員CEOは竹内啓氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
竹内 啓 代表取締役社長執行役員 CEO兼建築事業本部長兼東京建築開発事業本部長 1989年同社入社。テナント営業統括部長や取締役建築事業本部長などを経て、2024年4月に代表取締役社長執行役員CEOに就任。2026年4月より現職。
守 義浩 取締役常務執行役員不動産事業本部長 1994年同社入社。テナント営業推進部長や大東建託リーシング代表取締役社長などを務める。2023年4月より現職。
岡本 司 取締役常務執行役員管理本部長CFO 青山監査法人、あらた監査法人を経て2011年同社入社。経理部長や取締役管理本部長CFOなどを務め、2026年4月より現職。
天野 豊 取締役常務執行役員事業開発本部長 1997年同社入社。商品開発部長や事業戦略室長、取締役事業開発本部長などを務め、2026年4月より現職。
田中 良昌 取締役常務執行役員東日本建築事業本部長 1991年同社入社。営業統括部長や中国建築事業部長、取締役人的資本経営本部長などを務め、2026年4月より現職。
高橋 由崇 取締役上席執行役員建築事業本部長技術担当 1995年同社入社。経営企画室長やインヴァランス代表取締役社長などを経て、2025年6月より現職。
川合 秀司 取締役(監査等委員) 1989年同社入社。経営企画室長や常務取締役経営管理本部長兼関連事業本部長などを経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、入谷淳(元検察官・弁護士)、大和田順子(元リクルートキャリア執行役員)、阿部晃一(元東レ代表取締役副社長)、浅川京子(元林野庁次長)、松下正(元ファーストリテイリング取締役)、小林憲司(公認会計士)、大内智重子(元電通執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」「不動産賃貸事業」「不動産開発事業」「金融事業」および「その他事業」を展開しています。

(1) 建設事業


土地の有効活用を考える土地所有者に対し、企画の提案から建物の設計、施工までを一貫して提供しています。主に賃貸住宅や事業用建物の建築を請け負い、顧客の資産価値最大化を支援しています。

収益は、顧客である土地所有者からの建築請負代金から得ています。事業の運営は主に大東建託が行っており、大東建設やシマが一部の建築工事を請け負うほか、大東スチールやDAITO CANADA TRADING INC.が資材の供給を行っています。

(2) 不動産賃貸事業


建築された賃貸建物の入居者斡旋や、オーナーから建物を一括して借り上げ、入居者へ転貸する一括借上事業を行っています。また、自社保有のオフィスビルの賃貸なども手掛けています。

収益は、オーナーからの借上費用と入居者からの家賃収入の差額や、入居者からの仲介手数料などから得ています。運営は大東建託パートナーズが一括借上事業を、大東建託リーシングやハウスコムグループなどが仲介斡旋を行っています。

(3) 不動産開発事業


首都圏を中心とした資産運用型マンションの開発・販売や、物流施設、ホテルなどの収益不動産の買取リノベ再販、および開発・販売を幅広く展開しています。アメリカやドバイなど海外での不動産事業も進めています。

収益は、開発または買い取った不動産を投資家やテナント等に販売・賃貸することによる売買代金や賃貸料から得ています。運営は大東建託のほか、インヴァランス、大東建託アセットソリューション、アスコットなどが行っています。

(4) 金融事業


建物を建築する顧客に対し、金融機関から長期融資が実行されるまでのつなぎ融資などを提供するほか、不動産管理信託や家主・入居者向けの火災保険販売などを展開しています。

収益は、顧客からの貸付利息や信託報酬、保険販売に係る手数料などから得ています。運営は大東ファイナンスが大東みらい信託、ハウスリーブ、少額短期保険ハウスガードなどが各サービスを提供しています。

(5) その他事業


LPガス等の燃料販売事業や、デイサービスセンター・住宅型有料老人ホーム・保育施設の運営などの介護・保育事業、さらには再生可能エネルギーによる発電事業などを展開しています。

収益は、入居者からのガス利用料や、介護・保育サービスの利用者からの利用料などから得ています。運営はガスパルやケアパートナー、大東バイオエナジーなどの各事業会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は1兆5,830億円から1兆9,847億円へと継続的な増収を達成しています。経常利益も堅調に推移し、利益率は6%台から7.0%へと改善傾向にあります。当期利益は直近でやや減少したものの、全体として安定した収益拡大が確認できます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 15,830億円 16,576億円 17,315億円 18,424億円 19,847億円
経常利益 1,037億円 1,039億円 1,087億円 1,295億円 1,392億円
利益率(%) 6.5% 6.3% 6.3% 7.0% 7.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 430億円 592億円 586億円 999億円 867億円

(2) 損益計算書


売上高と各利益段階はいずれも前年度を上回っており、事業規模の拡大と収益性の向上が進んでいます。特に営業利益は増益幅が大きく、本業における稼ぐ力が着実に高まっていることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 18,424億円 19,847億円
売上総利益 1,368億円 1,382億円
売上総利益率(%) 7.4% 7.0%
営業利益 1,189億円 1,353億円
営業利益率(%) 6.5% 6.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が792億円(構成比37%)、賞与引当金繰入額が248億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の不動産賃貸事業と建設事業が売上高の大部分を占めており、安定した収益基盤となっています。また、不動産開発事業が前年度から大きく売上を伸ばしており、新たな成長ドライバーとして業績全体を牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
建設事業 5,410億円 5,443億円
不動産賃貸事業 11,647億円 12,031億円
不動産開発事業 513億円 1,471億円
金融事業 122億円 128億円
その他 732億円 775億円
連結(合計) 18,424億円 19,847億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業活動で生み出した資金や新たな資金調達をもとに、将来の成長に向けた積極的な投資を行っている積極型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 856億円 405億円
投資CF -465億円 -417億円
財務CF -458億円 372億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.5%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、オーナーや入居者の人生に寄り添い、想いを託され、それを次の世代や未来へとつないでいくことを存在価値としています。この考えのもと、グループパーパス「託すをつなぎ、未来をひらく。」を策定し、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指す経営を行っています。

(2) 企業文化


創業以来、業種にとらわれることなく顧客のニーズを的確にとらえ、社会の変化に対応し続ける「環境適応業」という考え方をグループ共通の価値観として継承しています。また、現場社員主導の「逆ピラミッド型組織」への変革を目指し、全社員が自律的に挑戦できる企業風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2030年のありたい姿として「DAITO Group VISION 2030」を掲げ、その実現に向けた第一フェーズとして2024年度から2026年度までの中期経営計画を推進しています。最終年度である2026年度に向けて、以下の目標を設定しています。

* 売上高:2兆500億円
* 営業利益:1,420億円
* ROE:20%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、「人的資本経営の推進」「強固なコア事業の確立」「新たな注力分野への対応」を重要テーマに設定しています。建設や不動産賃貸のコア事業において収益力強化を図る一方、不動産開発事業を成長領域として拡大し、取り扱う物件の多様化や海外展開を通じて事業基盤のさらなる強化を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


中期経営計画の主要な柱に「人的資本経営の推進」を掲げ、「みんなの個性を、会社の力に。」という方針のもと、従業員の「働きやすさ」と「働きがい」の両立を目指しています。自律的なキャリア形成を支援する研修プログラムや資格取得支援、社内ベンチャー制度などを通じて、多様な人材が能力を最大限に発揮できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.0歳 11.6年 9,656,096円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.5%
男性育児休業取得率 120.9%
男女賃金差異(全労働者) 66.0%
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※正規雇用および非正規雇用の男女賃金差異については、有報に該当する記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.95%)、喫煙率(36.5%)、適正体重維持者率(57.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料・資材の調達に関するリスク


建設事業において国内外から原材料や資材を調達しているため、世界情勢の不安定化や為替の変動、物流分野の人材不足などにより資材価格が高騰したり、調達が遅れたりすることで、工事の進捗や収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 税制・法規制改正に関するリスク


不動産賃貸事業に関連する固定資産税や相続税などの税制が改正され税負担が増加した場合、土地活用の需要が減少し受注高が変動するリスクがあります。また、建設・不動産関連の法規制が強化された際にも、対応コストの増加が懸念されます。

(3) 金利急上昇に関するリスク


建設事業において多くの顧客が金融機関からの借入で資金を調達しているため、経済情勢の変化等により金利が急激に上昇した場合、顧客の投資意欲が低下し、発注のキャンセルや需要の減少を招く可能性があります。

(4) 空室増加に関するリスク


将来の人口減少や経済状況の悪化により賃貸住宅の需要が減少した場合、空室の増加や賃料の下落が生じる可能性があります。同社の管理建物の大半は一括借上契約となっているため、賃料下落が直接的に収益の減少につながるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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