大東建託 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大東建託 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場。建物賃貸事業の企画・建築から仲介・管理までを一貫して提供する建設・不動産会社です。直近の決算では、建設事業の順調な進捗や不動産開発事業の大幅な伸長等により、売上高・各利益ともに前期を上回る増収増益を達成しています。


※本記事は、大東建託株式会社 の有価証券報告書(第51期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大東建託ってどんな会社?


土地活用の提案から建築、入居者斡旋、管理までを一貫して行う「賃貸経営受託システム」を主力とする企業です。

(1) 会社概要


1974年に大東産業として設立され、1978年に大東建設、1988年に大東建託へ商号変更しました。1992年に東京証券取引所市場第一部へ上場し、2006年には独自の「賃貸経営受託システム」を導入しました。2017年には主要3社体制へと移行し、2025年にはハウスコムを完全子会社化するなど、事業基盤の強化を進めています。

連結従業員数は18,814名、単体では8,299名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は外国銀行、第3位は通信回線販売などを手掛ける事業会社です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 16.03%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 5.75%
光通信 5.41%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名、計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長執行役員 CEO兼建築事業本部長は竹内 啓氏です。社外取締役比率は38.5%です。

氏名 役職 主な経歴
竹内 啓 代表取締役社長執行役員 CEO兼建築事業本部長 1989年入社。首都圏営業部長、テナント営業統括部長等を歴任。2014年取締役執行役員。建築事業本部長を経て、2024年4月より現職。
守 義浩 取締役常務執行役員不動産事業本部長 1994年入社。大東建託パートナーズ取締役、大東建託リーシング代表取締役社長等を経て、2023年4月より現職。
舘 正文 取締役上席執行役員建築事業本部長技術担当 1991年入社。設計統括部長、首都圏建築事業本部部長等を歴任。2021年取締役。2025年5月よりインヴァランス代表取締役社長を兼務。
岡本 司 取締役上席執行役員管理本部長CFO兼グループ財務経理統括部長 1997年青山監査法人入社。2011年同社入社。経理部長等を経て、2024年4月より現職。
天野 豊 取締役上席執行役員事業開発本部長 1997年入社。商品開発部長、東首都圏建築事業部長、事業戦略室長、不動産流通開発本部長等を経て、2024年4月より現職。
田中 良昌 取締役上席執行役員人的資本経営本部長 1991年入社。営業統括部長、中国建築事業部長、業務本部長等を経て、2025年4月より現職。
高橋 由崇 取締役上席執行役員建築事業本部長技術担当 1995年入社。経営企画室長、不動産流通開発部長、インヴァランス代表取締役社長等を経て、2025年5月より現職。
川合 秀司 取締役(監査等委員) 1989年入社。経営企画室長、経営管理本部長兼関連事業本部長等を経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、入谷 淳(長島・大野・常松法律事務所弁護士)、大和田 順子(元リクルートキャリア執行役員)、松下 正(元アダストリア代表取締役)、庄田 隆(元第一三共代表取締役社長兼CEO)、小林 憲司(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」、「不動産賃貸事業」、「不動産開発事業」、「金融事業」および「その他」事業を展開しています。

建設事業


土地所有者に対して土地の有効活用に関する企画を提案し、アパート・マンション等の建築請負、設計および施工を行っています。また、大東スチールによる資材供給や、海外現地法人による木材調達も行っています。

収益は、顧客との建築請負契約に基づく工事代金から得ています。運営は主に同社が行い、一部の工事請負を大東建設、公営住宅等の施工をシマが担当しています。

不動産賃貸事業


オーナーから建物を一括して借り上げる「賃貸経営受託システム」による一括借上事業や、入居者の仲介斡旋、建物の管理、家賃保証などのサービスを提供しています。

収益は、入居者からの家賃収入や仲介手数料、保証料などから得ています。運営は、一括借上を大東建託パートナーズ、仲介を大東建託リーシングやハウスコムグループ、家賃保証をハウスリーブが行っています。

不動産開発事業


資産運用型マンションの開発・販売や、収益不動産の買取リノベーション再販などを行っています。また、物流施設やホテルの開発・販売も手掛けています。

収益は、顧客への不動産販売代金から得ています。運営は、同社が物流施設等を担当し、インヴァランスが資産運用型マンション、大東建託アセットソリューションやアスコットが収益不動産の開発・販売等を行っています。

金融事業


建築資金の融資や、不動産管理信託を中心とした信託業務、家主および入居者向けの少額短期保険の販売などを行っています。

収益は、融資に対する利息や信託報酬、保険料収入などから得ています。運営は、大東ファイナンス、大東みらい信託、少額短期保険ハウスガードなどが担当しています。

その他事業


LPガスの供給・販売、デイサービスセンターや保育施設の運営、海外でのホテル事業など、多角的なサービスを提供しています。

収益は、ガスの販売代金、介護・保育サービス利用料、ホテル宿泊料などから得ています。運営は、ガスパル、ケアパートナー、海外現地法人などがそれぞれの事業を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して右肩上がりの成長を続けています。経常利益も第49期以降増加傾向にあり、直近では1,295億円に達しました。利益率も6%台から7%台へと改善しており、当期純利益も大幅に増加して過去最高水準となっています。全体として堅調な拡大基調にあると言えます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 14,889億円 15,830億円 16,576億円 17,315億円 18,424億円
経常利益 906億円 1,037億円 1,039億円 1,087億円 1,295億円
利益率(%) 6.1% 6.5% 6.3% 6.3% 7.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 468億円 430億円 592億円 586億円 999億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しています。売上原価率は一定の水準を維持しつつ、営業利益率が改善しており、収益性が向上していることが分かります。販管費も増加していますが、増収効果がそれを上回っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 17,315億円 18,424億円
売上総利益 2,848億円 3,159億円
売上総利益率(%) 16.4% 17.1%
営業利益 1,048億円 1,189億円
営業利益率(%) 6.1% 6.5%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が731億円(構成比37.1%)、賞与引当金繰入額が224億円(同11.4%)を占めています。

(3) セグメント収益


建設事業は工事の進捗が順調で増収増益となり、利益率も向上しています。不動産賃貸事業は一括借上の増加で増収となりましたが、利益は微減しました。不動産開発事業は投資用マンションや買取再販が好調で大幅な増収増益を達成しました。金融事業、その他事業も概ね堅調に推移しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
建設事業 4,924億円 5,410億円 289億円 471億円 8.7%
不動産賃貸事業 11,292億円 11,647億円 820億円 803億円 6.9%
不動産開発事業 311億円 513億円 21億円 52億円 10.0%
金融事業 116億円 122億円 62億円 67億円 54.9%
その他 671億円 732億円 122億円 132億円 18.0%
調整額 -295億円 -438億円 -266億円 -336億円 -
連結(合計) 17,315億円 18,424億円 1,048億円 1,189億円 6.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で獲得した現金を、借入金の返済や配当金の支払いに充てつつ、将来のための投資も行っている健全な状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 909億円 856億円
投資CF -131億円 -465億円
財務CF -968億円 -458億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は21.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は38.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、創業50年を機に、ステークホルダーからの信頼に応え、次の50年、100年を見据えたパートナーであり続けるため、グループパーパス「託すをつなぎ、未来をひらく。」を策定しました。土地活用を通じて託された想いを次世代へつなぎ、変革と挑戦を重ねながら未来を切り開く企業成長を目指しています。

(2) 企業文化


同社は事業活動の指針として5つの経営基本方針を定めています。「顧客第一主義に徹する(CS重視の経営)」、「重点主義に徹する(経営資源の重点的な投入)」、「顧客の要望に合わせ、同社を創造する(市場環境への適応)」、「現金取引主義を貫徹する(キャッシュ・フロー重視)」、「高い生産性を背景とした高賃金主義に徹する(成果主義の人事処遇)」です。

(3) 経営計画・目標


2030年に向けた「DAITO Group VISION 2030」の実現を目指し、最初の3カ年(2024~2026年度)を対象とした中期経営計画を推進しています。人的資本経営の推進、強固なコア事業の確立、新たな注力分野への対応を柱とし、最終年度の目標として以下を掲げています。

* 売上高:2兆円
* 営業利益:1,400億円
* ROE:20%以上

(4) 成長戦略と重点施策


建設事業では都市部エリア戦略やデジタル化、ZEH賃貸住宅の供給に取り組みます。不動産賃貸事業では仲介事業の強化を図り、不動産開発事業では買取再販の全国展開や非住宅物件の開発、北米等でのグローバル展開を推進します。また、エネルギーや介護・保育などの新規事業育成や、他社との提携も積極的に進めていく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人的資本経営の推進」を中期経営計画の柱の一つとし、「グループ全社員の力」の最大化を目指しています。優秀な人材の確保に加え、女性育成プログラムによる管理職登用や、次世代経営者の育成、DX人材の育成に注力しています。また、成果主義に基づき、高い生産性を背景とした高賃金を実現する方針を掲げています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.3歳 11.1年 9,177,163円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.1%
男性育児休業取得率 107.8%
男女賃金差異(全労働者) 65.2%
男女賃金差異(正規) -
男女賃金差異(非正規) -


※男性育児休業取得率は、配偶者が出産した男性従業員数を分母として算出しています。正規・非正規の区分ごとの数値は有価証券報告書の表に含まれていませんが、本文中で「正社員全体で65.2%」「臨時従業員を含めた全従業員で見た場合、54.7%」と言及されています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性労働者割合(17.2%)、障がい者雇用率(3.00%)、健康診断受診率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 税制改正による業績への影響


同社は、土地所有者に対し土地の有効活用策として賃貸建物の建設を提案し、受注を獲得しています。現在、土地活用の有効な手段として建物賃貸事業が認知されていますが、将来的に税制改正が行われ、建物賃貸事業に関連する税負担等に変更が生じた場合、顧客の投資意欲に影響を与え、受注高の変動を通じて業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 個人情報の漏洩等のリスク


同社グループは、事業活動を通じて土地所有者や入居者など多くの顧客の個人情報を保有しています。これらの情報の保護には対策を講じていますが、万一外部への漏洩等が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償請求などにより、同社の業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 品質管理等に関するリスク


施工基準書に基づき、施工業者、工事監督、設計者による確認を行うなど品質確保に努めています。しかし、予期せぬ事象により重大な品質問題が発生した場合、レピュテーションの低下を招き、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 建設技能労働者減少に関するリスク


建設業界全体で建設技能労働者の減少が進んでおり、同社も部材のユニット化や省力化、外国人技能実習生の受入れ支援などの対策を講じています。しかし、想定を超える労働者不足や高齢化の進行により、生産性の低下や工期の長期化が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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