安藤・間 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

安藤・間 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の安藤・間は、土木事業と建築事業を柱とする総合建設会社です。大型土木や建築工事に強みを持ち、国内および海外で事業を展開しています。直近の業績は、売上高が前期比7.9%増の4,252億円、経常利益が同83.6%増の341億円と大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社安藤・間の有価証券報告書(第12期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 安藤・間ってどんな会社?


同社は、ダムやトンネル等の大型土木工事と、オフィスビル等の建築工事を得意とする準大手ゼネコンです。

(1) 会社概要


同社の起源は1889年創業の間組と1873年創業の安藤建設に遡ります。両社は2003年の資本業務提携を経て、2013年4月に合併し、現在の安藤・間が発足しました。2022年4月には東京証券取引所の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しました。

同グループは連結従業員数3,753名、単体3,333名の体制です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に日本カストディ銀行です。第3位には同社グループの取引先持株会が名を連ねており、安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 19.24%
日本カストディ銀行 6.06%
安藤ハザマグループ取引先持株会 4.65%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は国谷一彦氏が務めています。社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
国谷 一彦 代表取締役社長 旧ハザマ入社後、経営企画部長、常務執行役員経営戦略本部長などを経て、2023年4月より現職。
小松 健 取締役専務執行役員営業本部長 旧安藤建設入社後、九州支店長、東京支店長、常務執行役員営業本部長などを歴任。2025年4月より現職。
宮森 伸也 取締役監査等委員 旧ハザマ入社後、財務部長、専務執行役員管理本部長などを経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、藤田正美(元富士通代表取締役副社長)、北川真理子(月島倉庫代表取締役社長)、桑山三恵子(元資生堂CSR部部長)、望月晴文(元経済産業事務次官)、川口理恵(税理士)、伊藤勝彦(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「土木事業」「建築事業」「グループ事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 土木事業


国内外におけるダム、トンネル、橋梁、道路などの土木工事全般を請け負っています。官公庁や民間企業などの発注者が顧客となります。

収益は、発注者から受け取る工事請負代金が主な源泉です。運営は主に安藤・間が行っています。

(2) 建築事業


国内外におけるオフィスビル、工場、マンション、商業施設などの建築工事全般を請け負っています。民間企業や個人、官公庁などが顧客となります。

収益は、発注者から受け取る工事請負代金が主な源泉です。運営は主に安藤・間が行っています。

(3) グループ事業


建設用資材の販売・リース、土木・建築工事の施工、不動産の売買・賃貸・仲介などを行っています。

収益は、資材販売代金、リース料、工事代金、不動産売買代金などが源泉です。運営は、安藤ハザマ興業、青山機工、菱晃開発、およびハザマアンドウ(タイランド)等の子会社が行っています。

(4) その他


PFI事業や再生可能エネルギー事業、技術研究の受託業務などを行っています。

収益は、事業運営に伴う収益や受託業務の対価などが源泉です。運営は主に安藤・間が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は第9期に一旦減少しましたが、その後は増加傾向にあり、当期は4,252億円に達しました。利益面では、原材料価格高騰などの影響を受け第10期、第11期と減少傾向でしたが、当期は建築工事の採算性向上などにより大幅な増益となり、過去5期で最高水準の利益率を記録しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,521億円 3,403億円 3,721億円 3,941億円 4,252億円
経常利益 259億円 258億円 196億円 185億円 341億円
利益率(%) 7.4% 7.6% 5.3% 4.7% 8.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 172億円 177億円 152億円 139億円 264億円

(2) 損益計算書


当期は前期と比較して、売上高の増加に加え、売上原価率の改善により売上総利益が大きく伸長しました。営業利益率は大幅に向上しており、本業の収益力が回復しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,941億円 4,252億円
売上総利益 408億円 578億円
売上総利益率(%) 10.3% 13.6%
営業利益 186億円 352億円
営業利益率(%) 4.7% 8.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が79億円(構成比31%)、調査研究費が27億円(同11%)を占めています。売上原価については、完成工事原価が売上原価合計の93%を占めています。

(3) セグメント収益


主力の建築事業が増収増益となり、特に利益面で全体を牽引しました。土木事業は微減収ながら増益を確保しています。グループ事業は減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
土木事業 1,332億円 1,328億円 141億円 152億円 11.4%
建築事業 2,242億円 2,613億円 90億円 269億円 10.3%
グループ事業 317億円 238億円 18億円 11億円 4.5%
その他 51億円 72億円 2億円 7億円 9.4%
調整額 - - -64億円 -86億円 -
連結(合計) 3,941億円 4,252億円 186億円 352億円 8.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期は本業で現金を稼ぎ出しつつ、資産の売却等により投資CFもプラスとなり、借入金の返済や配当支払いを行った「改善型」(営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面)です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -111億円 112億円
投資CF -61億円 16億円
財務CF -91億円 -58億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、長期ビジョン「安藤ハザマVISION2030」において、「イノベーションの加速とたゆまぬチャレンジで新たな価値を創造、社会課題の解決に貢献」を掲げています。その実現のため、「お客様価値」「株主価値」「環境価値」「従業員価値」の4つの価値創造を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、人材育成の指針として「共育」「挑戦」「創造」の3つを掲げています。「共育」は一緒に働く仲間を大切にし共に成長すること、「挑戦」は志を持って困難に立ち向かいやり遂げること、「創造」は自ら考え新しい価値を創造することを意味し、これらを実現できる組織風土の醸成を目指しています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画2025」(2024年3月期~2026年3月期)を策定し、「企業価値向上」と「会社の魅力向上」を基本方針としています。最終年度の数値目標として以下を掲げています。
* 連結経常利益:265億円
* 連結ROE:12%以上
* 連結総還元性向:70%以上
* 従業員エンゲージメントスコア:80%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、「事業強化」「人的資本の価値向上」「ESG経営の推進」を経営課題としています。建設事業では営業力や現場力の強化、DXによる生産性向上を推進し、建設外事業ではエネルギー関連事業を核とした収益源の確立を目指しています。また、人的資本への積極投資やガバナンス強化にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「安藤ハザマVISION2030」において「従業員価値の創造」を掲げ、Well-beingを施策の中心に据えています。納得性の高い人事評価制度の整備や報酬水準の向上、自律的なキャリア形成支援、多様な働き方の実現などを通じて、従業員エンゲージメントを高め、会社と従業員が共に成長することを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.3歳 17.6年 10,050,302円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.5%
男性育児休業取得率 87.5%
男女賃金差異(全労働者) 53.1%
男女賃金差異(正規) 60.6%
男女賃金差異(非正規) 39.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定年制社員女性比率(15.3%)、従業員エンゲージメント関連項目の肯定的回答率(77%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競争環境の悪化


建設市場の想定以上の縮小や競争激化が生じた場合、受注競争が厳しくなり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は長期ビジョンや中期経営計画に基づき事業活動を行っていますが、想定外の環境変化には計画の見直し等で対応する方針です。

(2) 法令諸規制


建設業法や建築基準法、労働基準法など多岐にわたる法令の適用を受けています。法令の改廃や新設、あるいは法令違反による営業活動の制約が生じた場合、業績に影響が出る可能性があります。同社はコンプライアンス推進委員会を設置し、法令遵守の徹底を図っています。

(3) 諸外国における事業環境の変化


海外で事業を展開しているため、現地の法令変更、政治・経済情勢の変化、為替変動などのリスクがあります。これらが顕在化した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は専門家からの情報収集や社内体制の強化により、リスク管理に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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