安藤・間 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

安藤・間 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

安藤・間は、東京証券取引所プライム市場に上場し、土木事業と建築事業を主力とする総合建設業を展開しています。直近の業績では、堅調な建設投資を背景に完成工事高が伸長し売上高は増収となりましたが、販売費及び一般管理費の増加などにより経常利益は減益となりました。インフラ整備から建築まで幅広い実績を持ちます。


※本記事は、安藤・間の有価証券報告書(第13期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 安藤・間ってどんな会社?


土木・建築事業を主力とし、国内外でインフラ整備や建築物の施工を手がける総合建設業を展開しています。

(1) 会社概要


同社の起源は、1889年創業の間組と1873年創業の安藤建設に遡ります。2003年10月に旧ハザマから建設事業部門を承継して設立され、同月に東京証券取引所市場第一部に上場しました。その後、2013年4月に間組と安藤建設が合併して現在の安藤・間が発足し、大規模土木や建築分野で実績を重ねています。

現在の従業員数はグループ全体で3,957名、単体で3,427名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に日本カストディ銀行となっています。第3位には安藤ハザマグループ取引先持株会が名を連ねており、取引先との安定的な関係性が伺えます。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 17.07%
日本カストディ銀行 5.54%
安藤ハザマグループ取引先持株会 4.72%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は国谷一彦氏が務めています。社外取締役比率は66.7%と過半数を占めています。

氏名 役職 主な経歴
国谷一彦 代表取締役社長 1988年旧ハザマ入社。経営企画部長、土木事業企画部長などを歴任。執行役員関東支店長、常務執行役員経営戦略本部長を経て、2023年より現職。
小松健 取締役専務執行役員建築事業本部長 1982年旧安藤建設入社。九州支店長、名古屋支店長、東京支店長、営業本部長などを歴任。2025年より現職。
宮森伸也 取締役常勤監査等委員 1983年旧ハザマ入社。財務部長、管理本部長などを歴任。取締役専務執行役員財務担当などを経て、2023年より現職。


社外取締役は、藤田正美(元富士通Japan社長)、北川真理子(月島倉庫社長)、桑山三恵子(元資生堂CSR部部長)、望月晴文(元経済産業事務次官)、川口理恵(元千倉書房取締役)、伊藤勝彦(元霞が関パートナーズ法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「土木事業」「建築事業」「グループ事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 土木事業


国内外において、トンネルやダム、道路などのインフラ整備を中心とした土木工事の施工を手がけています。官公庁や民間企業を主な顧客としており、技術力が求められる大規模かつ高難度なプロジェクトにおいて豊富な実績と強みを発揮しています。

顧客と合意した請負契約に基づき、工事の進捗に応じて段階的に収益を認識する請負型の収益モデルを基本としています。本事業の運営は、主に安藤・間が主体となって行っています。

(2) 建築事業


国内外において、生産施設、物流施設、教育施設などの多様な建築工事の設計および施工を手がけています。民間企業からの受注が中心であり、環境配慮型建築や省エネリニューアルなど、顧客の多様なニーズに応える建築物を提供しています。

顧客と合意した請負契約に基づき、完成引渡の実施等、履行義務の充足度合いに応じて収益を得るモデルです。本事業の運営は、主に安藤・間が主体となって行っています。

(3) グループ事業


建設事業を支援するための関連事業として、建設用資材の販売やリース、土木および建築工事の施工、さらには不動産の売買・賃貸・仲介などを手がけています。また、東南アジアを中心とした海外における建設事業も展開しています。

資材の販売による対価や、工事の施工完了に伴う請負収益、不動産の賃貸料などを主な収益源としています。運営は、安藤ハザマ興業、青山機工、菱晃開発のほか、海外子会社のハザマアンドウ(タイランド)などが行っています。

(4) その他


報告セグメントに含まれない事業として、保有する高度な技術や研究所施設を活用した調査および研究の受託業務のほか、太陽光発電等のエネルギー関連事業などを手がけています。

受託業務に係る成果物を顧客に引き渡した時点、あるいはサービスの提供に伴って収益を認識するモデルです。本事業の運営は、主に安藤・間が主体となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、建設投資の堅調な推移を背景に売上高は一貫して増加傾向にあります。利益面では一時的な落ち込みが見られた時期もありましたが、採算性の向上等により直近2期間は高い水準に回復しており、着実な成長と収益力の改善が伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3,403億円 3,721億円 3,941億円 4,252億円 4,396億円
経常利益 258億円 196億円 185億円 341億円 333億円
利益率(%) 7.6% 5.3% 4.7% 8.0% 7.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 166億円 145億円 130億円 258億円 290億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益状況を比較すると、完成工事高の増加に伴い売上高および売上総利益は順調に拡大しています。一方で、成長投資や人件費等の増加により販売費及び一般管理費が膨らんだため、営業利益はわずかに減少する結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 4,252億円 4,396億円
売上総利益 610億円 640億円
売上総利益率(%) 14.3% 14.5%
営業利益 352億円 336億円
営業利益率(%) 8.3% 7.6%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が95億円(構成比31%)、賞与引当金繰入額が37億円(同12%)を占めています。また、売上原価においては、完成工事原価が3,494億円(構成比93%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、主力の建築事業が全体の過半を占めており安定した基盤となっています。また、土木事業も堅調に推移して増収を牽引しました。グループ事業やその他事業の売上も増加傾向にあり、多角的な収益拡大が進んでいます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
土木事業 1,328億円 1,409億円
建築事業 2,613億円 2,623億円
グループ事業 238億円 265億円
その他 72億円 100億円
連結(合計) 4,252億円 4,396億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


なお、同社のキャッシュ・フローは、本業で安定的な資金を生み出しつつ、将来の成長に向けた事業投資を行い、並行して借入金の返済や株主還元を実施する「健全型」の傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 112億円 284億円
投資CF 16億円 -64億円
財務CF -58億円 -138億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.6%となっており、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「安藤ハザマVISION2030」の長期ビジョンとして「イノベーションの加速とたゆまぬチャレンジで新たな価値を創造、社会課題の解決に貢献」を掲げています。「お客様価値」「株主価値」「環境価値」「従業員価値」に「ビジネスパートナー価値の創造」を加えた5つの価値創造を基本方針として事業活動を推進しています。

(2) 企業文化


「建設業界で最も社員を大切にする会社」を目指し、社員一人ひとりの幸福感(Well-being)を高めることを重視しています。多様な人財がいきいきと能力を発揮し、社会のために挑戦できる組織風土の醸成を推進しており、「共育」「挑戦」「創造」の3つを人財へ期待する姿として定義しています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画2028」(2027年3月期~2029年3月期)において、最終年度における以下の定量目標を定めて事業を推進しています。

* 連結経常利益:365億円
* 連結ROE:12%以上
* 1株当たり配当金/年:80円以上(累進配当)

(4) 成長戦略と重点施策


事業戦略の深化と経営基盤の強化を両輪として持続的な成長を目指します。今後の成長が期待できる分野(トンネル、都市土木、生産施設、リニューアル、エネルギー関連など)に注力し、人財力と技術力を最大限に活用します。また、ICTやAI技術の開発による施工の自動化・省人化、DX戦略、脱炭素社会の実現に向けたサステナビリティ戦略などの各種施策を展開しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「建設業界で最も社員を大切にする会社」を目指し、採用・育成・配置を一体的に推進しています。従業員エンゲージメントを主要KPIに据え、満足度の高い処遇の実現、資格取得支援などの人財育成、多様な働き方に対応した環境整備を重視しています。また、中長期的な視点での人財ポートフォリオ最適化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.3歳 17.2年 10,633,244円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.5%
男性育児休業取得率 101.6%
男女賃金差異(全労働者) 52.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 61.4%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 36.3%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定年制社員女性比率(15.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競争環境の悪化


想定を上回る建設市場の縮小や競争激化が生じた場合、受注環境の悪化により同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は長期ビジョンや中期経営計画に基づき、環境の変化に迅速に対応すべく事業体制の見直しと強化に取り組んでいます。

(2) 気候変動リスク


カーボンプライシングの導入による資材調達費の増加や、夏季の平均気温上昇に伴う建設技能者の生産性低下などの物理的および移行リスクが存在します。同社は、脱炭素社会の実現に向けたサステナビリティ推進やリスクマネジメント体制の構築で対応しています。

(3) 労務費・資材価格の高騰


国内外の急激な経済情勢の変化を受けて、労務・資材・エネルギーの不足や価格の急激な高騰により建設コストが大幅に増加した場合、収益に影響を及ぼす懸念があります。集中購買や海外調達等によるコストダウンを図り、請負代金額の変更等で対策を実施しています。

(4) 技術者の不足


少子高齢化による建設技能労働者の減少や担い手不足が課題となっており、必要な技術系社員が確保できない場合、事業規模の縮小を余儀なくされる可能性があります。人的資本戦略を通じたエンゲージメント向上や、協力会社との連携強化により施工体制の維持に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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