※本記事は、トヨタ紡織株式会社 の有価証券報告書(第100期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月10日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. トヨタ紡織ってどんな会社?
トヨタグループの自動車内装システムサプライヤーとして、シートや内外装部品等の製造・販売を行っています。
■(1) 会社概要
1918年に豊田紡織として創立後、1943年にトヨタ自動車工業へ合併されましたが、1950年に民成紡績として分離独立しました。2004年にはアラコの内装事業およびタカニチと合併し、現在のトヨタ紡織へ商号変更しました。2022年の東京証券取引所の市場区分見直しにより、プライム市場へ移行しています。
同社グループの従業員数は、連結で45,004名、単体で8,501名です。筆頭株主は事業会社であり主要取引先でもあるトヨタ自動車で、第2位は同じくトヨタグループの事業会社であるトヨタ不動産です。トヨタグループの中核企業として、強固な資本関係を有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| トヨタ自動車 | 32.43% |
| トヨタ不動産 | 10.27% |
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 8.96% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役社長は白柳正義氏です。社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 豊 田 周 平 | 取締役会長代表取締役 | 1977年トヨタ自動車工業入社。トヨタ自動車取締役、トヨタモーターヨーロッパ取締役社長等を経て、2004年トヨタ紡織取締役副社長、2006年同社長に就任。2015年6月より現職。 |
| 白 柳 正 義 | 取締役社長代表取締役 | 1984年トヨタ自動車入社。同社専務役員、執行役員等を経て、2022年1月トヨタ紡織執行役員に就任。2022年6月より現職。 |
| 角 田 浩 樹 | 取締役執行役員 | 1985年荒川車体工業入社。トヨタ紡織常務役員、トヨタ紡織アジア取締役社長、執行役員等を経て、2024年6月より現職。 |
| 岩 森 俊 一 | 取締役執行役員 | 1989年豊田紡織入社。同社常務理事、執行役員等を経て、2022年6月より現職。2025年4月よりトヨタ紡織アメリカ取締役社長を兼務。 |
| 五百木 広 志 | 取締役技監 | 1977年荒川車体工業入社。トヨタ紡織常務役員、トヨタ紡織アジア取締役社長、専務役員、執行役員、取締役執行役員を経て、2025年4月より現職。 |
社外取締役は、小山明宏(学習院大学名誉教授)、塩川純子(三浦法律事務所パートナー)、瀬戸章文(金沢大学理工研究域教授)、山崎康彦(デンソー代表取締役副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「北中南米」「中国」「アジア」「欧州・アフリカ」の報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 日本
国内において、自動車用シート、ドアトリム等の内装品、フィルター製品、ユニット部品等の製造および販売を行っています。主要な顧客はトヨタ自動車などの自動車メーカーです。
収益は、自動車メーカーへの製品販売による対価として得ています。運営は主にトヨタ紡織、およびトヨタ紡織東北、トヨタ紡織九州などの国内子会社が行っています。
■(2) 北中南米
米国、カナダ、メキシコ、ブラジル、アルゼンチンなどの北中南米地域において、自動車部品の製造および販売を行っています。現地の自動車メーカー工場への供給が主たる事業です。
収益は、各国の自動車メーカーへの製品販売から得ています。運営は、地域統括会社であるトヨタ紡織アメリカをはじめ、トヨタ紡織インディアナ、トヨタ紡織ブラジルなどの現地子会社が担っています。
■(3) 中国
中国において、自動車部品の製造および販売を行っています。急速に変化する中国市場のニーズに対応した内装システムなどを提供しています。
収益は、中国国内の自動車メーカーへの製品納入により得ています。運営は、地域統括会社である豊田紡織(中国)や、広州桜泰汽車飾件などの現地子会社が行っています。
■(4) アジア
タイ、インド、インドネシア、ベトナムなどのアジア地域において、自動車部品の製造および販売を行っています。新興国市場の拡大に対応した生産体制を構築しています。
収益は、各国の自動車メーカーへの製品販売から得ています。運営は、地域統括会社であるトヨタ紡織アジアや、トヨタ紡織ゲートウェイ(タイランド)などの現地子会社が行っています。
■(5) 欧州・アフリカ
フランス、トルコ、ポーランド、南アフリカなどの欧州・アフリカ地域において、自動車部品の製造および販売を行っています。現地の自動車メーカー向けに内装部品などを供給しています。
収益は、現地の自動車メーカーへの製品販売から得ています。運営は、地域統括会社であるトヨタ紡織ヨーロッパや、トヨタ紡織トルコ、トヨタ紡織南アフリカなどの現地子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は第96期から増加傾向にあり、第100期も前期比で微増となりました。一方、税引前利益および親会社の所有者に帰属する当期利益は、第99期に大きく伸長しましたが、第100期では減益となりました。利益率は第99期が高い水準でしたが、第100期は低下しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1兆2,721億円 | 1兆4,215億円 | 1兆6,040億円 | 1兆9,536億円 | 1兆9,542億円 |
| 税引前利益 | 573億円 | 645億円 | 523億円 | 880億円 | 471億円 |
| 利益率(%) | 4.5% | 4.5% | 3.3% | 4.5% | 2.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 312億円 | 393億円 | 147億円 | 585億円 | 167億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益は前期とほぼ同水準を維持しましたが、売上総利益および営業利益は減少しました。特に営業利益は前期比で大きく減少しており、営業利益率も低下しています。その他の費用が増加したことが影響しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 1兆9,536億円 | 1兆9,542億円 |
| 売上総利益 | 2,115億円 | 2,092億円 |
| 売上総利益率(%) | 10.8% | 10.7% |
| 営業利益 | 793億円 | 424億円 |
| 営業利益率(%) | 4.1% | 2.2% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が562億円(構成比41.2%)、その他が317億円(同23.2%)を占めています。また、売上原価のうち、従業員給付費用は2,982億円(売上原価合計に対する構成比17.1%)となっています。
■(3) セグメント収益
日本セグメントとアジアセグメントでは売上収益が増加しましたが、北中南米、中国、欧州・アフリカセグメントでは減少しました。特に北中南米セグメントは減産影響や減損損失の計上により営業損失となりました。日本や中国、アジア、欧州・アフリカセグメントでは黒字を確保していますが、前期比で減益となった地域が多く見られます。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 9,228億円 | 9,393億円 | 107億円 | 102億円 | 1.1% |
| 北中南米 | 5,004億円 | 4,891億円 | 6億円 | -260億円 | -5.3% |
| 中国 | 2,362億円 | 2,335億円 | 185億円 | 166億円 | 7.1% |
| アジア | 2,739億円 | 2,862億円 | 376億円 | 362億円 | 12.6% |
| 欧州・アフリカ | 1,313億円 | 1,182億円 | 119億円 | 55億円 | 4.6% |
| 調整額 | -1,110億円 | -1,121億円 | 0.1億円 | 0.5億円 | -0.0% |
| 連結(合計) | 1兆9,536億円 | 1兆9,542億円 | 793億円 | 424億円 | 2.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、過去の買収に係る会計処理の確定を踏まえ、連結ベースの現金及び現金同等物の期末残高を増加させています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益や減価償却費等により増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出により減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、リース負債の返済や配当金の支払いにより減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1,749億円 | 1,218億円 |
| 投資CF | -867億円 | -610億円 |
| 財務CF | -916億円 | -544億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「基本理念」として、社会との調和ある成長を目指す良き企業市民であること、革新的な技術開発でお客さまに喜ばれる商品を提供すること、革新的経営で株主の信頼に応えること、労使相互信頼を基本に働きやすい職場をつくること、取引先と長期安定的な成長を目指すことを掲げています。
■(2) 企業文化
同社グループは、創業者である豊田佐吉の考えをまとめた「豊田綱領」に基づき基本理念を実践しています。グローバルでの共通の価値観や行動パターンとして「TB Way」や「トヨタ紡織グループ行動指針」を制定し、共有しています。現地現物による問題発見と改善の仕組みを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2030年を見据えた中期経営計画において、2030年の財務目標として以下の数値を掲げています。
* 売上収益:2兆2,000億円
* 営業利益:1,500億円
* 営業利益率:7%
■(4) 成長戦略と重点施策
「インテリアスペースクリエイター」として快適な移動空間を実現し、社会課題の解決に貢献するCSV経営を目指しています。具体的には、企画提案力と技術開発力の向上、サプライチェーン全体での「ものづくり競争力」の確保、世界中の顧客から選ばれるための販売能力の引き上げ、そしてこれらを支える経営基盤の強化に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
インテリアスペースクリエイターの実現に向け、多様なアイデンティティを持つ人材が集まり、新しい価値を創出できる環境づくりを進めています。必要な専門スキルを持つ人材の確保、ローカル化の推進、外国籍者や障がい者の積極採用を行っています。また、若手・女性・外国籍社員の育成や、ダイバーシティ&インクルージョンの浸透にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.6歳 | 17.9年 | 7,763,995円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.0% |
| 男性育児休業取得率 | 69.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 74.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 72.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、工場GHG排出量削減率(総量)(▲40%)、外国籍社員数(153人)、定期健康診断後の精密検査受診率(99%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国際的活動及び海外進出に潜在するリスク
同社グループは日本、北中南米、中国、アジア、欧州などグローバルに事業を展開しており、各国における予期せぬ法規制や税制の変更、インフラの未整備、政治的・経済的混乱、労働問題、テロや戦争、感染症などが事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 経済状況および自動車市場の変動
製品の需要は提供地域の経済状況の影響を受けるため、主要市場における景気後退や自動車需要の縮小は、業績に悪影響を与える可能性があります。また、競合他社の現地生産による低価格化や為替変動による競争激化もリスク要因となります。
■(3) 特定の取引先への依存
売上収益の約23.0%をトヨタ自動車向けが占めており、同社の自動車販売動向が同社グループの経営成績および財務状況に大きな影響を与える可能性があります。
■(4) 原材料・部品供給元への依存および価格変動
原材料や部品を外部の供給元に依存しており、供給逼迫や災害、事故等による調達難が生じた場合、生産遅延やコスト増につながる可能性があります。また、エネルギー価格の高騰も製造原価を押し上げる要因となり得ます。



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