※本記事は、セーレンの有価証券報告書(第154期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. セーレンってどんな会社?
同社は車輌用シート材やエアバッグなどの車輌資材を中心に、繊維や電子部品などをグローバルに展開する企業です。
■(1) 会社概要
1889年に福井市で京越組が設立され、輸出羽二重の精練業を開始したのが始まりです。1923年に統合により福井精練加工(現セーレン)を設立しました。1962年に大証二部に上場し、1973年には東証及び大証一部に指定替えされました。2005年にはカネボウの繊維事業を譲受し、事業分野を拡大しています。
従業員数は連結で6,506名、単体で1,320名規模の体制です。筆頭株主および第2位の株主は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には事業における中長期的な関係強化等を目的として資本提携等の関係を持つ北陸銀行が名を連ねており、安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本カストディ銀行(信託口) | 12.94% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.54% |
| 北陸銀行 | 3.99% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役会長最高経営責任者は川田達男氏が務めています。取締役9名中4名が社外取締役であり、経営の透明性を高めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 川田達男 | 代表取締役会長最高経営責任者 | 1962年同社入社。製品営業部長、常務取締役、代表取締役社長等を経て、2014年6月より現職。関係会社の取締役会長等を多数兼務。 |
| 山田英幸 | 代表取締役社長執行役員 兼 経営執行責任者 兼 技術責任者 | 1987年同社入社。開発研究第一グループ長、セーレン電子代表取締役社長、研究開発センター長等を経て、2022年4月より現職。 |
| 于輝 | 代表取締役副会長執行役員 | 1993年同社入社。Saha Seiren Co.,Ltd.取締役社長等を経て、2018年6月代表取締役副社長執行役員。2022年4月より現職。 |
| 川田浩司 | 代表取締役副社長執行役員 兼 戦略責任者 兼 マーケティング責任者 | 1994年清水建設入社。1997年同社入社。海外子会社社長等を経て、2022年4月より現職。経営企画本部長等を兼務。 |
| 勝木知文 | 取締役専務執行役員 兼 管理部門責任者 | 1984年北陸銀行入行。2012年同社入社。人事部長兼労務部長等を経て、2024年6月より現職。業務統括本部長等を兼務。 |
社外取締役は、北畑隆生氏(元経済産業事務次官)、佐々江賢一郎氏(元外務事務次官)、小林充佳氏(元西日本電信電話代表取締役社長)、橋野知子氏(神戸大学大学院経済学研究科教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「車輌資材」「ハイファッション」「エレクトロニクス」「環境・生活資材」「メディカル」および「その他」の事業を展開しています。
■車輌資材
自動車や鉄道車輌等の内装材(シート材、エアバッグ、加飾部品)の製造・販売を行っています。顧客は国内外の主要な車輌メーカーや自動車部品メーカーです。
収益源は、車輌シート材やエアバッグ等の販売代金です。運営は同社のほか、KBセーレンやNBセーレン、米国・タイ・中国・ハンガリー等の海外子会社がグローバルに担っています。
■ハイファッション
独自のデジタルプロダクションシステムを活用し、各種衣料用繊維製品の製造・販売や衣料用繊維加工を行っています。スポーツやアウトドア向け素材なども提供しています。
収益源は、衣料用繊維製品の販売代金および加工賃です。運営は同社を中心に、合成繊維の製造を行うKBセーレン、染色加工を担うグンセンなどが連携して事業を展開しています。
■エレクトロニクス
導電性素材、工業用ワイピングクロス、電子機器のほか、人工衛星および関連部品、シリコンウェーハの成膜加工等を提供しています。ITから宇宙分野まで幅広く対応します。
収益源は、電磁波シールド材や電子機器、ウェーハ成膜加工等の製品販売代金です。同社のほか、セーレン電子、セーレンアドバンストマテリアルズ等が運営しています。
■環境・生活資材
建築用資材、インテリア用資材、健康・介護商品、環境・土木資材などの製造・販売を行っています。病院や介護施設向けのベッド商材なども手掛けています。
収益源は、これら建築・生活関連資材の販売代金です。運営は同社が主体となり、NBセーレンが産業資材向け繊維や不織布、KBセーレンが生活資材の製造・販売を行っています。
■メディカル
スキンケア化粧品や、医療用資材(貼付剤基布、絆創膏基布など)、水処理用資材の製造・販売を行っています。
収益源は、化粧品や医療用基材等の販売代金です。運営は同社が化粧品や医療用基材を担い、KBセーレンやNBセーレンが医療用繊維製品や逆浸透膜スペーサー基材等を製造・販売しています。
■その他の事業
包装フィルムや容器類の原料販売、ソフトウェアの開発・販売、保険代理業、人材派遣事業、不動産賃貸管理事業などを幅広く展開しています。
収益源は、各サービスの販売代金や手数料、賃貸収入等です。運営はNBセーレン、セーレン商事、セーレンコスモ、ナゴヤセーレンなどのグループ各社がそれぞれ担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高および経常利益ともに右肩上がりの成長を続けています。特に車輌資材事業を中心としたグローバル展開や、高付加価値製品の拡販が奏功し、利益率も10%台から12%台へと着実に向上しています。安定した事業基盤と積極的な投資により、過去最高の業績を更新し続けています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,098億円 | 1,324億円 | 1,419億円 | 1,597億円 | 1,718億円 |
| 経常利益 | 119億円 | 153億円 | 162億円 | 193億円 | 220億円 |
| 利益率(%) | 10.9% | 11.6% | 11.4% | 12.1% | 12.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 62億円 | 94億円 | 101億円 | 122億円 | 145億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高の拡大に伴い売上総利益が着実に増加しています。売上総利益率は約27%水準を維持しつつ、各種コストの適正化や付加価値の高い製品構成へのシフトが寄与し、営業利益率は11.2%から12.1%へとさらなる改善を見せています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,597億円 | 1,718億円 |
| 売上総利益 | 440億円 | 471億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.6% | 27.4% |
| 営業利益 | 179億円 | 208億円 |
| 営業利益率(%) | 11.2% | 12.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料賞与等が89億円(構成比34%)、試験研究費が27億円(同10%)を占めています。売上原価は1,246億円で、売上原価合計に対する構成比は73%となっています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上動向を見ると、主力の車輌資材事業が国内メーカーの生産回復や海外拠点の受注拡大により堅調に推移しています。エレクトロニクス事業はゲーム機向け部材や人工衛星の売上が寄与して大幅増収となり、環境・生活資材事業やその他の事業も新規連結の影響等により大きく売上を伸ばしています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 車輌資材 | 1,098億円 | 1,153億円 |
| ハイファッション | 213億円 | 213億円 |
| エレクトロニクス | 110億円 | 134億円 |
| 環境・生活資材 | 100億円 | 133億円 |
| メディカル | 68億円 | 67億円 |
| その他 | 7億円 | 18億円 |
| 連結(合計) | 1,597億円 | 1,718億円 |
同社のキャッシュ・フローは、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型を示しています。
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.3%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.8%であり、いずれも市場平均を上回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 205億円 | 178億円 |
| 投資CF | -118億円 | -195億円 |
| 財務CF | -78億円 | -57億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
経営理念として「のびのび いきいき ぴちぴち」を掲げ、社員一人ひとりが自主性・責任感・使命感を持った企業活動を行っています。経営の基本方針としては「21世紀のグッドカンパニー」の実現を目指し、株主・取引先・社員・地域社会から高い信頼を得られる企業経営を目標としています。
■(2) 企業文化
企業文化として「五ゲン主義(原理・原則・現場・現物・現実)」活動を共通の意識として定着させています。不条理・矛盾を許さないフェア精神とコンプライアンス精神を持って仕事に取り組み、これらを推進することでより高い付加価値の創造と企業の社会的責任を果たすことを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
グループトータルの企業価値を最大にするための連結経営を基本とし、中短期の目標として高い収益性を目指しています。さらに、ROA(総資産事業利益率)、自己資本比率、キャッシュ・フローなどを念頭に置きながら企業価値を高めるための経営を行っています。
・売上高営業利益率 10%以上
・ROE(自己資本当期純利益率) 10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中期事業戦略として「素材から製品化、BtoBからBtoC」を掲げ、従来よりも付加価値の高いポジションでの販売拡大と高収益モデルへの転換を図ります。具体的には、「IT化・ビジネスモデル転換」「非衣料・非繊維化」「グローバル化」「企業体質の改革」の4つの基本戦略に基づき、DXの推進や成長8分野の拡大を進めていきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
個々人の多様性と創造性を組織の付加価値として活かし、働くことに夢とやりがいを持てる職場環境を整備しています。新卒に加えキャリア採用も積極的に行い、高度な専門性と総合力を駆使して企画・提案ができる人材集団を形成することで、環境変化に自ら成長・変化できる環境の提供を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.9歳 | 19.7年 | 7,140,994円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 78.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 82.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 91.0% |
※女性管理職比率について、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の平均勤続年数(23.3年)、中途採用者の管理職比率(11.8%)、新卒女性採用比率(26%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 海外活動に伴うカントリーリスク
米国、ブラジル、タイ、中国など海外に子会社を設立し製造・販売活動を行っています。各国の法制や税制の変更、通商・関税政策の動向、地政学リスクの顕在化など、様々なカントリーリスクが内在しており、予想を超える事象が生じた場合、業績等に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) エネルギー・原材料価格の変動
エネルギー源として原油・ガス・電気を使用しており、再生可能エネルギー発電促進賦課金の上昇や電力調達コスト増加に伴い電気料金が上昇するリスクがあります。また、石油化学製品を原材料とする製品が多く、原油価格の変動により仕入価格が影響を受ける可能性があります。
■(3) 急速な技術革新と競争環境の変化
エレクトロニクスなどの分野においては技術革新の速度が顕著であり、AI技術の急速な進展は事業機会となりうる一方で、既存のビジネスモデルや競争環境に変化をもたらす可能性があります。研究開発や施策が予定通り進展しなかった場合、競争力を保てないリスクがあります。
■(4) 専門性を有した人材の確保
高付加価値新規事業の創出やグローバル事業の拡大を重点的に推し進めるうえで、新たなニーズにマッチングする人材の不足が懸念されます。専門性を有した人材の確保や育成ができない場合、同社グループの競争力低下や事業活動の停滞を招く可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。