※本記事は、セーレン株式会社 の有価証券報告書(第153期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. セーレンってどんな会社?
繊維加工技術を核に、自動車内装材から人工衛星部品まで多角的に展開する「生活価値創造企業」です。
■(1) 会社概要
1889年に福井で創業した精練業を起源とし、1923年に福井精練加工として設立されました。1973年に現社名へ変更し、東京証券取引所市場第一部(現プライム)へ上場しました。2005年にはカネボウの繊維事業を譲受しKBセーレンを設立。独自のデジタル生産システム「Viscotecs」を活用したビジネスモデル転換や、自動車内装材などの非衣料分野への進出により事業を拡大しています。
同社グループの連結従業員数は6,228名(単体1,317名)です。大株主構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う日本カストディ銀行で、第3位には事業会社である旭化成が名を連ねており、安定的な株主基盤を有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本カストディ銀行(信託口) | 14.25% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.53% |
| 旭化成 | 4.15% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役会長最高経営責任者は川田達男氏が務めています。社外取締役比率は30.8%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 川田 達男 | 代表取締役会長最高経営責任者 | 1962年入社。社長、KBセーレン会長等を経て2014年より現職。 |
| 山田 英幸 | 代表取締役経営執行責任者技術責任者研究開発・品質・生産技術統括 | 1987年入社。セーレン電子社長、研究開発センター長等を経て2024年より現職。 |
| 于 輝 | 代表取締役海外事業担当 | 1993年入社。世聯汽車内飾(蘇州)総経理、副社長執行役員等を経て2022年より現職。 |
| 川田 浩司 | 代表取締役戦略責任者マーケティング責任者グローバル営業統括、経営企画本部長 | 1997年入社。Seiren North America社長等を経て2024年より現職。 |
| 勝木 知文 | 取締役管理部門責任者業務統括本部長、グローバル業務監査室長 | 北陸銀行出身。2012年同社入社。管理本部長等を経て2024年より現職。 |
社外取締役は、北畑隆生(元経済産業事務次官)、佐々江賢一郎(元外務事務次官)、小林充佳(元西日本電信電話代表取締役社長)、橋野知子(神戸大学大学院経済学研究科教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「車輌資材」「ハイファッション」「エレクトロニクス」「環境・生活資材」「メディカル」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 車輌資材
自動車や鉄道車輌等の内装材(カーシート表皮材、ドアトリム等)およびエアバッグの製造・販売を行っています。特に「クオーレ」等の高機能合成皮革や、差別化されたファブリック素材を提供しています。
収益は、自動車メーカーや部品メーカー等の顧客に対する製品販売により得ています。運営は、同社、KBセーレン、およびSeiren North America(米国)、世聯汽車内飾(蘇州)(中国)、Saha Seiren(タイ)などの海外子会社が主に行っています。
■(2) ハイファッション
スポーツ・アウトドアウェア、インナーウェア、ファッション衣料等の各種衣料用繊維製品の製造・販売を行っています。独自のデジタル生産システム「Viscotecs」を活用した小ロット・短納期生産や、環境配慮型素材の開発に注力しています。
収益は、アパレルメーカーや商社等への製品・生地販売から得ています。運営は主に同社、KBセーレン、グンセン、Saha Seirenなどが行っています。
■(3) エレクトロニクス
電磁波シールド材、工業用ワイピングクロス、導電性繊維、電子機器、人工衛星部品等の製造・販売を行っています。また、シリコンウェーハの成膜加工なども手掛けています。
収益は、電子部品メーカーや精密機器メーカー等への製品販売および加工請負から得ています。運営は、同社、KBセーレン、セーレン電子、セーレンKSTなどが行っています。
■(4) 環境・生活資材
建築用資材、インテリア用資材、健康・介護商品、環境・土木資材等の製造・販売を行っています。
収益は、建材メーカーや商社、一般消費者等への製品販売から得ています。運営は主に同社およびKBセーレンが行っています。
■(5) メディカル
化粧品(「コモエース」シリーズ等)や医療用基材(貼付剤基布、絆創膏基布等)の製造・販売を行っています。シルクたんぱく質「セリシン」を応用した製品開発を行っています。
収益は、一般消費者への化粧品販売や医療品メーカーへの基材販売から得ています。運営は主に同社およびKBセーレンが行っています。
■(6) その他
上記セグメントに含まれない事業として、不動産賃貸管理、保険代理業、人材派遣、ソフトウェア開発等を行っています。
収益は、賃貸料、保険手数料、派遣料等から得ています。運営は、ナゴヤセーレン、セーレン商事、セーレンコスモなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで推移し、1,000億円規模から約1,600億円まで拡大しています。利益面でも、経常利益、当期利益ともに増加傾向にあり、特に直近の2025年3月期は過去最高益を更新するなど、好調な成長軌道にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 987億円 | 1,098億円 | 1,324億円 | 1,419億円 | 1,597億円 |
| 経常利益 | 95億円 | 119億円 | 153億円 | 162億円 | 193億円 |
| 利益率(%) | 9.6% | 10.9% | 11.6% | 11.4% | 12.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 52億円 | 62億円 | 94億円 | 101億円 | 122億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益が順調に伸長しています。売上総利益率は向上しており、付加価値の高い製品構成へのシフトやコスト管理が進んでいることが窺えます。営業利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,419億円 | 1,597億円 |
| 売上総利益 | 383億円 | 440億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.0% | 27.6% |
| 営業利益 | 141億円 | 179億円 |
| 営業利益率(%) | 9.9% | 11.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料賞与等が85億円(構成比32%)、試験研究費が29億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
車輌資材事業が売上・利益ともに全体を牽引し、海外市場での成長が貢献しています。ハイファッション事業やエレクトロニクス事業も増収増益となり、堅調に推移しました。一方、環境・生活資材事業とメディカル事業は利益面で苦戦しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 車輌資材 | 939億円 | 1,098億円 | 107億円 | 140億円 | 12.7% |
| ハイファッション | 202億円 | 219億円 | 10億円 | 15億円 | 7.0% |
| エレクトロニクス | 99億円 | 107億円 | 15億円 | 18億円 | 17.1% |
| 環境・生活資材 | 95億円 | 97億円 | 9億円 | 9億円 | 9.0% |
| メディカル | 75億円 | 68億円 | 9億円 | 7億円 | 10.2% |
| その他 | 9億円 | 7億円 | 5億円 | 5億円 | 71.1% |
| 調整額 | - | - | -15億円 | -15億円 | - |
| 連結(合計) | 1,419億円 | 1,597億円 | 141億円 | 179億円 | 11.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)をもとに、将来への投資(投資CFマイナス)を行い、借入金の返済や株主還元(財務CFマイナス)を進める「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 135億円 | 205億円 |
| 投資CF | -53億円 | -118億円 |
| 財務CF | -70億円 | -78億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.7%で市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「21世紀のグッドカンパニー」の実現を目指し、株主・取引先・社員・地域社会から高い信頼を得られる経営を基本方針としています。また、「のびのび いきいき ぴちぴち」という独自の経営理念を掲げ、社員一人ひとりが自主性・責任感・使命感を持ち、フェア精神とコンプライアンス精神を持って企業活動を行うことを重視しています。
■(2) 企業文化
同社は「五ゲン主義(原理・原則・現場・現物・現実)」を共通の意識として活動する企業文化を持っています。この方針に基づき、個々の役割と責任のもと、一人ひとりが付加価値を創り出すことを重視しています。また、仕事の目的を理解し、企業構造の革新と企業体質の改革に積極的に取り組む姿勢が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「未知の可能性への挑戦!」を中期方針とし、「素材から製品化、BtoBからBtoC」を中期事業戦略に掲げています。従来よりも付加価値の高い流通ポジションでの事業拡大を進め、高収益モデルへの転換を目指しています。
* 売上高営業利益率:10%以上
* ROE(自己資本当期純利益率):10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「イノベーションと顧客開発」および「企業体質の再建」を柱とし、以下の重点分野に注力しています。
* **IT化・ビジネスモデル転換**:独自のデジタル生産システム「Viscotecs」とSCMの高度化による在庫レス・オンネットビジネスの推進。
* **非衣料・非繊維化**:繊維技術を核とした8つの成長分野(次世代車種シート材、一貫生産エアバッグ、炭素繊維、人工衛星、半導体など)の拡大。
* **グローバル化**:新興国市場での収益拡大と、世界規模での最適地生産・仕入の強化。ハンガリー拠点を活用した欧州での拡販など。
* **企業体質の改革**:意識改革、研究開発力の強化、資本効率の向上、グループ連結経営の強化など。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、仕事を通じて社員の豊かな人生を実現することが企業の活性化と永続性につながると考えています。多様性と創造性が活かされ、夢とやりがいを持てる職場の提供を目指し、高度な専門性と総合力を発揮できる人材集団の形成を基本方針としています。新卒・キャリア採用による多様性の確保や、独自の働き方改革、女性活躍推進にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.8歳 | 19.6年 | 6,887,802円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | -% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 89.0% |
※女性管理職比率については、同社および連結子会社は公表義務の対象ではない等の理由により、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の平均勤続年数(男性比122.9%)、中途採用者の管理職比率(11.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 海外活動に潜在するリスク
同社グループは米国、アジア、欧州などグローバルに事業を展開しており、各国の法制・税制の変更や政治・経済情勢の変化が業績に影響を与える可能性があります。これに対し、グループ内外からの情報収集を行い、リスクの予防・回避に努めています。
■(2) 為替相場の変動
グローバル展開に伴い、現地通貨建て財務諸表の円換算時や輸出入取引において、為替レートの変動が財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、グローバルな生産拠点配置による最適地生産・仕入を行い、リスク軽減を図っています。
■(3) エネルギー・原材料価格の変動リスク
製品の多くが石油化学製品を原材料としており、原油価格の変動が仕入価格に影響します。また、電力等のエネルギーコスト上昇も業績に影響を与える可能性があります。これに対し、エネルギー転換や合理化投資、原価低減に取り組んでいます。
■(4) 急速な技術革新
特にエレクトロニクス分野等において技術革新が急速であり、競争力維持のために迅速な研究開発や施策が必要です。しかし、これらが予定通り進展しない場合、競争力を保てず業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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