日清製粉グループ本社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日清製粉グループ本社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する製粉業界の最大手企業です。製粉事業を中核に、食品、中食・惣菜事業等を展開しています。2025年3月期の業績は、売上高が微減収、営業利益・経常利益は減益となりましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は増益を確保しました。


※本記事は、株式会社日清製粉グループ本社の有価証券報告書(第181期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日清製粉グループ本社ってどんな会社?


製粉業界のリーディングカンパニーであり、小麦粉の安定供給を基盤に、加工食品や中食・惣菜、酵母・バイオ事業などを幅広く展開する持株会社です。

(1) 会社概要


1900年に群馬県館林町にて館林製粉として創立され、1908年に日清製粉を合併し社名を改めました。1949年に東京証券取引所に上場し、戦後の復興とともに事業を多角化しました。2001年には持株会社体制へ移行し、現在のグループ体制を確立しました。近年では2019年に豪州の製粉会社Allied Pinnacleを買収するなど、グローバル展開を加速させています。

連結従業員数は9,731名、単体では361名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は日本生命保険相互会社、第3位は取引先である山崎製パンです。安定株主や取引先が上位を占める構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 15.54%
日本生命保険相互会社 6.68%
山崎製パン 5.86%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役取締役社長は瀧原賢二氏です。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
瀧原 賢二 代表取締役取締役社長企画本部長 1988年入社。執行役員、取締役、常務執行役員、日清製粉専務取締役等を経て2022年より取締役社長。2023年4月より現職。
増島 直人 代表取締役専務執行役員総務本部管掌兼人事・労務本部管掌 1983年入社。日清製粉常務取締役、同社取締役総務本部長、常務執行役員等を経て2022年より取締役専務執行役員。2023年6月より現職。
山田 貴夫 取締役専務執行役員 1983年入社。日清製粉取締役東京営業部長、同社常務取締役営業本部長、専務取締役等を経て2017年より日清製粉取締役社長。2022年6月より現職。
鈴木 栄一 取締役常務執行役員経理・財務本部長 1987年入社。経理・財務本部経理部長、執行役員等を経て2020年より執行役員経理・財務本部長。2023年6月より現職。
髙橋 誠一郎 取締役常務執行役員技術本部長 1990年入社。2019年日清製粉取締役鶴見工場長。2023年より同社執行役員技術本部長。2024年6月より現職。
岩橋 恭彦 取締役常務執行役員 1987年入社。日清フーズ取締役、同社常務取締役、同社専務取締役を経て、2023年4月より日清製粉ウェルナ取締役社長。2023年6月より現職。
池田 晋一 取締役常務執行役員 1989年入社。トオカツフーズ専務取締役を経て2021年より同社取締役社長。2024年6月より現職および日清製粉デリカフロンティア取締役社長。
大内 章 取締役(常勤監査等委員) 1983年入社。経理・財務本部財務部長、執行役員、監査役を経て2019年6月より現職。


社外取締役は、伏屋和彦(元会計検査院長)、永井素夫(元みずほ信託銀行副社長)、遠藤信博(日本電気特別顧問)、富田美栄子(西綜合法律事務所代表)、安藤隆春(元警察庁長官)、金子寛人(金子寛人公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「製粉」「食品」「中食・惣菜」および「その他」事業を展開しています。

製粉事業


小麦粉、ふすま(副製品)等の製造・販売を行っています。国内では業務用小麦粉のトップシェアを誇り、海外ではアメリカ、カナダ、タイ、ニュージーランド、オーストラリアにて事業を展開し、グローバルに製品を供給しています。

運営は主に日清製粉、熊本製粉が行っています。海外ではMiller Milling Company,LLC(米国)、Rogers Foods Ltd.(カナダ)、Allied Pinnacle Pty Ltd.(豪州)などが製造・販売を担っています。

食品事業


家庭用および業務用のプレミックス、パスタ、パスタソース、冷凍食品、製パン用食品素材、イースト、健康食品、医薬品原薬等の製造・販売を行っています。消費者向けの「マ・マー」「青の洞窟」などのブランド製品や、業務用加工食品を展開しています。

運営は主に日清製粉ウェルナ、日清製粉プレミックス、マ・マーマカロニが行っています。また、酵母・バイオ事業はオリエンタル酵母工業、健康食品事業は日清ファルマが担っています。

中食・惣菜事業


コンビニエンスストアやスーパーマーケット向けに、弁当、おにぎり、惣菜、調理麺、冷凍食品等の調理済食品を製造・販売しています。また、デパート等での直営店舗による惣菜販売も行っています。

運営はトオカツフーズ、ジョイアス・フーズ、イニシオフーズが行っており、日清製粉デリカフロンティアが中間持株会社として事業活動の支援・管理を行っています。

その他事業


食品・化学製品等の生産加工設備の設計・工事請負、粉体機器の販売、メッシュクロス・成形フィルターの製造・販売、配合飼料の製造・販売、貨物自動車運送事業・倉庫業、スポーツ施設の経営などを行っています。

運営は日清エンジニアリング、NBCメッシュテック、日清丸紅飼料(持分法適用会社)、日本ロジテム(持分法適用会社)などが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2024年3月期まで増加傾向にありましたが、当期は微減となりました。利益面では、2023年3月期に一時的な落ち込みが見られたものの、その後は回復基調にあります。当期純利益は変動がありますが、当期は投資有価証券売却益等の計上により増益となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 6,795億円 6,797億円 7,987億円 8,582億円 8,515億円
経常利益 299億円 326億円 331億円 500億円 492億円
利益率(%) 4.4% 4.8% 4.1% 5.8% 5.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 190億円 175億円 -104億円 317億円 347億円

(2) 損益計算書


売上高は微減となりましたが、売上総利益は増加し、売上総利益率も改善しました。一方で、販売費及び一般管理費の増加により営業利益は減少し、営業利益率も低下しました。全体としてコストコントロールと付加価値向上のバランスが課題となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 8,582億円 8,515億円
売上総利益 1,841億円 1,902億円
売上総利益率(%) 21.5% 22.3%
営業利益 478億円 464億円
営業利益率(%) 5.6% 5.4%


販売費及び一般管理費のうち、販売運賃が507億円(構成比35%)、給料が249億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の製粉事業は、国内における小麦粉価格改定や海外の小麦相場下落の影響等により減収減益となりました。一方、食品事業は価格改定等により増収となったものの、コスト増により減益でした。中食・惣菜事業およびその他事業は、販売増や大型工事の増加等により増収増益を達成しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
製粉事業 4,582億円 4,436億円 286億円 281億円 6.3%
食品事業 2,011億円 2,063億円 84億円 64億円 3.1%
中食・惣菜事業 1,536億円 1,561億円 54億円 58億円 3.7%
その他 454億円 456億円 54億円 63億円 13.7%
調整額 - - 1億円 -2億円 -
連結(合計) 8,582億円 8,515億円 478億円 464億円 5.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであるため、本業で稼いだ資金を借入金の返済や株主還元に充てつつ、将来への投資も行っている健全型と言えます。

企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.0%でプライム市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.4%でプライム市場平均を上回っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 732億円 552億円
投資CF -309億円 -350億円
財務CF -195億円 -354億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「信を万事の本と為す」と「時代への適合」を社是とし、「健康で豊かな生活づくりに貢献する」を企業理念として掲げています。1900年の創業以来、事業を通じて社会貢献を果たし、食の中心企業として成長を継続することを目指しています。

(2) 企業文化


グループ各社は、「健康と信頼をお届けする」をコーポレートスローガンとしています。これは、「健康」を常に念頭においた製品やサービスの開発・提供に努め、「信頼」を築き上げるという決意を表しています。長期的な企業価値の極大化を基本方針とし、ガバナンス強化やサステナビリティ経営を推進することで、ステークホルダーからの支持獲得を目指す姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2022年度から2026年度までの5年間を対象とする「日清製粉グループ 中期経営計画2026」を推進しています。最終年度である2026年度の数値目標は以下の通りです。

* 売上高:9,500億円
* 営業利益:570億円
* EPS(1株当たり当期純利益):140円
* ROIC(全社):7%

(4) 成長戦略と重点施策


「事業ポートフォリオの再構築によるグループ成長力の促進」を基本方針の一つとし、コアビジネス(国内製粉、加工食品、酵母)の発展と、成長事業(海外、中食・惣菜)の収益拡大に取り組んでいます。2025年度は、インフレ環境下でのコスト増への対応や、豪州製粉事業の構造改革、インドイースト事業の黒字化に向けた業績向上、自動化・省人化施策の加速を最優先課題として掲げています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材力向上」と「組織力向上」の2点から人材戦略に取り組んでいます。人材確保ではグループ一括採用やリファラル採用を実施し、育成面では経営人材、デジタル人材、グローバル人材の育成に注力しています。また、働き方改革や健康経営、ダイバーシティ推進を通じて、従業員が活き活きと働ける環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.9歳 15.1年 8,934,042円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 17.2%
男性育児休業取得率 113.3%
男女賃金差異(全労働者) 70.1%
男女賃金差異(正規雇用) 76.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 48.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職社員における女性の割合(13.5%)、女性育児休業復職後定着率(73.3%)、男性育児休業取得者割合(88.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国際貿易交渉の進展と麦政策の変更


CPTPPや日EU・EPA等の国際貿易交渉の進展により、小麦粉関連製品の競争激化や需要変動が予想されます。また、国内麦政策の見直しによる国家貿易制度等の変更が、製粉・加工食品事業における市場環境の混乱や業界再編を引き起こす可能性があります。これに対し、同社はグローバル生産体制の整備や国内工場の集約・効率化、海外事業の拡大を進めています。

(2) 製品安全


食の安全・安心への関心が高まる中、想定外の事象により製品回収や出荷停止が発生するリスクがあります。同社は「消費者視点での品質保証」を基本とし、全従業員への教育、安全性評価(セイフティレビュー)、食品防御(フードディフェンス)、国際規格(ISO・FSSC)の認証取得・維持、委託先管理の徹底などにより、品質保証体制の強化に努めています。

(3) 災害・事故・感染症


地震、風水害等の大規模自然災害、火災・爆発事故、新たな感染症の流行が発生した場合、損害や製品供給への支障が生じる可能性があります。同社は工場の耐震補強や水害対策、事故防止体制の強化、BCP(事業継続計画)やタイムラインの整備、定期的な訓練を実施しています。また、南海トラフ地震等の巨大地震や感染症への対応体制も維持・整備しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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2001年各事業が分社化し、日清製粉グループを統括している日清製粉グループ本社への転職。採用面接は新卒の場合と違い、仕事への取り組み方やこれまでの成果を具体的に問われる他、キャリアシートだけでは見えてこない「人間性」も評価されます。即戦力として、共に働く仲間として多角的に評価されるので事前にしっかり対策しましょう。