※本記事は、日清製粉グループ本社の有価証券報告書(第182期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日清製粉グループ本社ってどんな会社?
小麦粉を中心とした製粉事業を中核に、食品や中食・惣菜事業を幅広く展開しています。
■(1) 会社概要
1900年に館林製粉として創立し、1908年に日清製粉を合併して社名を変更しました。1949年に東京証券取引所へ株式を上場しています。その後、配合飼料やペットフード、医薬品などへ事業を多角化し、2001年に持株会社体制へ移行して現在の日清製粉グループ本社となりました。近年は海外の製粉会社や国内惣菜会社の買収を推進しています。
現在の体制として、連結従業員数は9,624名、単体では364名です。大株主の属性を見ると、筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は日本生命保険相互会社、第3位は山崎製パンとなっており、金融機関や事業提携先である事業会社が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 15.00% |
| 日本生命保険相互会社 | 6.90% |
| 山崎製パン | 6.04% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役取締役社長は瀧原賢二氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 瀧原賢二 | 代表取締役取締役社長 | 1988年同社入社。日清製粉取締役、同社常務執行役員などを経て2022年6月より現職。 |
| 坂本賢二 | 代表取締役専務執行役員人事・労務本部長 | 1986年同社入社。日清製粉取締役管理部長などを経て2025年6月より現職。 |
| 鈴木栄一 | 取締役常務執行役員経理・財務本部長 | 1987年同社入社。同社執行役員経理・財務本部経理部長などを経て2023年6月より現職。 |
| 髙橋誠一郎 | 取締役常務執行役員技術本部長 | 1990年同社入社。日清製粉取締役鶴見工場長などを経て2024年6月より現職。 |
| 岩橋恭彦 | 取締役常務執行役員 | 1987年同社入社。日清製粉ウェルナ専務取締役などを経て2023年6月より現職。 |
| 池田晋一 | 取締役常務執行役員 | 1989年同社入社。トオカツフーズ社長などを経て2024年6月より現職。 |
| 山田貴夫 | 取締役執行役員 | 1983年同社入社。日清製粉社長、同社専務執行役員などを経て2026年4月より現職。 |
| 大内章 | 取締役(常勤監査等委員) | 1983年同社入社。同社執行役員経理・財務本部財務部長などを経て2019年6月より現職。 |
社外取締役は、伏屋和彦(元国税庁長官)、永井素夫(元みずほ信託銀行副社長)、遠藤信博(元日本電気社長)、富田美栄子(元東京地方裁判所民事調停委員)、安藤隆春(元警察庁長官)、金子寛人(元あずさ監査法人常務理事)です。
2. 事業内容
同社グループは、「製粉」「食品」「中食・惣菜」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 製粉
小麦粉やふすま(副製品)等の製造・販売を行っています。顧客はパンや麺類などを製造する食品メーカーなどの法人顧客や、業務用の特約店が中心です。国内だけでなく、北米やアジア、オセアニアなどグローバルに拠点を展開しています。
収益モデルは、製造した小麦粉等の製品を販売することで対価を得ています。国内では主に日清製粉と熊本製粉が製造・販売を担い、海外ではアメリカのMiller Milling CompanyやオーストラリアのAllied Pinnacleなどの子会社が事業の運営を行っています。
■(2) 食品
プレミックス、家庭用小麦粉、パスタ、冷凍食品などの加工食品や、製パン用等の食品素材、生化学製品の製造・販売を行っています。一般消費者向けから業務用まで幅広い顧客層に対し、多様な食のニーズに応える製品を提供しています。
収益モデルは、加工食品や食品素材等の販売による収益が柱です。主に日清製粉ウェルナがプレミックスや加工食品の販売を担い、マ・マーマカロニがパスタや冷凍食品の製造を行っています。また、オリエンタル酵母工業がイーストなどの食品素材や生化学製品を提供しています。
■(3) 中食・惣菜
コンビニエンスストアやデパート等の流通小売業を主要な顧客とし、弁当や惣菜、調理麺といった調理済食品の製造・販売を行っています。中食市場の拡大に合わせて、多様な食事スタイルに対応する製品を企画・提供しています。
収益モデルは、製造した弁当や惣菜等の販売代金として顧客から対価を受け取る仕組みです。事業の運営は、トオカツフーズを中心にジョイアス・フーズやイニシオフーズが担っており、日清製粉デリカフロンティアが中間持株会社として事業活動の支援や管理を行っています。
■(4) その他
穀類・食品・化学製品等の生産加工設備の設計・工事請負などのエンジニアリング事業や、メッシュクロスおよび成形フィルターの製造・販売を展開しています。また、配合飼料の製造・販売や貨物自動車運送・倉庫業などの物流サービスも含まれます。
収益モデルは、設備工事の請負代金や製品の販売代金、物流・保管サービスの手数料などから成り立っています。運営主体として、日清エンジニアリングが設備工事や粉体加工を担い、NBCメッシュテックがメッシュクロス等の製造・販売を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2022年3月期から2026年3月期にかけての売上高は右肩上がりで推移しており、着実な事業成長が見られます。経常利益も直近数年間は500億円前後で安定して推移し、利益率も5%台後半に向上しています。当期利益についても2025年3月期以降は増加傾向にあり、堅調な業績を維持しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 6,797億円 | 7,987億円 | 8,582億円 | 8,515億円 | 8,650億円 |
| 経常利益 | 326億円 | 331億円 | 500億円 | 492億円 | 514億円 |
| 利益率(%) | 4.8% | 4.1% | 5.8% | 5.8% | 5.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 168億円 | 155億円 | 131億円 | 185億円 | 243億円 |
■(2) 損益計算書
2025年3月期と2026年3月期の損益構成を比較すると、売上高が増加する中で売上総利益も順調に伸びており、売上総利益率は22%台で安定しています。営業利益率も5%台を維持しており、原価や販管費の適切なコントロールのもと、収益性を確保していることがうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 8,515億円 | 8,650億円 |
| 売上総利益 | 1,902億円 | 1,947億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.3% | 22.5% |
| 営業利益 | 464億円 | 467億円 |
| 営業利益率(%) | 5.4% | 5.4% |
販売費及び一般管理費のうち、販売運賃が536億円(構成比36%)、給料が257億円(同17%)を占めています。
■(3) セグメント収益
2026年3月期のセグメント収益は、製粉事業において海外での小麦相場下落等の影響により減収となりましたが、食品事業や中食・惣菜事業が堅調に推移し増収を牽引しました。特に食品事業は出荷増や価格改定の効果により大幅な増益を達成し、全体の収益向上に貢献しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 製粉 | 4,436億円 | 4,285億円 |
| 食品 | 2,063億円 | 2,166億円 |
| 中食・惣菜 | 1,561億円 | 1,646億円 |
| その他 | 456億円 | 553億円 |
| 連結(合計) | 8,515億円 | 8,650億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFと財務CFはマイナスとなっており、本業で稼いだ資金で借入金を返済し、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー構造となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 552億円 | 692億円 |
| 投資CF | -350億円 | -325億円 |
| 財務CF | -354億円 | -408億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「信を万事の本と為す」と「時代への適合」を社是に掲げています。また、「健康で豊かな生活づくりに貢献する」を企業理念とし、事業を通じて社会貢献を果たし、食の中心企業として成長を続けることを目指しています。さらに、「健康と信頼をお届けする」というコーポレートスローガンに基づき、長期的な企業価値の極大化を図っています。
■(2) 企業文化
同社グループは、安全・安心な製品を提供するため、消費者視点からの品質保証を第一とする文化が根付いています。すべてのステークホルダーを大切にし、世の中から信頼される企業を目指す姿勢を重視しています。また、持続可能な社会の実現に向けて、環境への対応を経営の最重要事項と位置づけ、事業戦略と関連させたサステナビリティ経営を実践しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、2026年度を最終年度とする「日清製粉グループ 中期経営計画2026」において、以下の数値目標を掲げています。事業ポートフォリオの再構築やESGの経営方針への取り込みを進め、EPS成長を継続することで適切な株主総利回りの実現を目指しています。
* 売上高8,700億円
* 営業利益460億円
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の事業成長に向けて、インフレ等の環境変化に対応する「複合的なインフレ対抗策の実行」や、「事業ポートフォリオの再評価と成長戦略の実行」を最優先課題に位置づけています。国内では高付加価値製品の拡販や自動化・省人化を推進し、海外事業では北米製粉事業の持続的成長や豪州事業の構造改革による事業再生を進めるなど、競争力の強化に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、「経営戦略の実現による中長期的な企業価値の向上は人材が支える」という考えのもと、人材力と組織力の向上を目指す人材戦略を実行しています。次世代の経営人材やデジタル人材、グローバル人材の育成に注力するとともに、新卒のグループ一括採用や多様なチャネルでの経験者採用を推進し、多様な価値観を持つ従業員が能力を発揮できる環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.0歳 | 15.2年 | 8,980,584円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 20.0% |
| 男性育児休業取得率 | 88.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 77.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 48.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年間総実労働時間(一般社員)(1,947時間)、年次有給休暇取得率(80.6%)、総合健康リスク値(83)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国際貿易交渉の進展と麦政策の変更
国際貿易交渉の進展による貿易の自由化や、主要国における農業政策・貿易制度の見直しが国内事業に影響を及ぼす可能性があります。特に、小麦の国家貿易等の管理手法の変更が生じた場合、国内小麦粉市場における競争環境の変化や再編が進み、製粉事業や加工食品事業の業績に悪影響を与えるリスクが懸念されます。
■(2) 製品安全に関するリスク
食の安全・安心に対する社会的関心が高まる中、自社工場や外部委託先における製品安全管理の想定を超えた事象が発生するリスクがあります。異物混入等のトラブルが起きた場合、大規模な製品回収や出荷不能品が発生し、社会からの信頼低下や業績の悪化につながる可能性があります。
■(3) 原材料調達に関するリスク
海外の紛争や天災等の影響による原材料供給の停滞や、異常気象に伴う小麦など農産物の不作が発生するリスクがあります。これにより原材料の高騰や供給不足が生じ、調達コストの上昇分を製品価格に十分に転嫁できない場合、利益が圧迫されるおそれがあります。複数の購買先確保や代替原料の探索によりリスク低減に努めています。
■(4) 海外事業展開に伴うリスク
同社は北米、オセアニア、アジア等の海外市場へ積極的に展開していますが、進出先における予期せぬ政治・経済の変動や法規制の変更、紛争の発生などが事業活動の制約につながる可能性があります。これらが顕在化した場合、海外事業の継続に支障をきたし、グループ全体の業績が悪化するリスクが存在します。



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