※本記事は、日東富士製粉株式会社の有価証券報告書(第128期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日東富士製粉ってどんな会社?
同社グループは、製粉及び食品事業とファーストフード店舗を展開する外食事業を中核とする企業です。
■(1) 会社概要
同社は1914年に埼玉県で設立され、1938年に東京証券取引所へ上場しました。その後、複数回の合併を経て2006年に現在の日東富士製粉へ社名を変更しています。翌2007年には三菱商事による公開買付けにより、同社が親会社となりました。近年は海外での合弁子会社設立など事業を拡大しています。
同社グループは連結で799名、単体で406名の従業員を擁しています。筆頭株主は親会社である三菱商事で約6割の株式を保有しており、第2位および第3位には資産管理業務などを行う信託銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三菱商事 | 64.74% |
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 4.64% |
| 日本カストディ銀行 | 1.51% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.0%です。代表取締役社長は宮原朋宏氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 宮原朋宏 | 代表取締役社長 | 1989年三菱商事入社。同社生活消費財本部アジア消費財部長等を経て、2023年より現職。 |
| 太田大志 | 取締役常務執行役員管理本部長兼業務監査室担当 | 1997年三菱商事入社。欧州三菱商事会社取締役CFO等を経て、2023年より現職。 |
| 堤隆敏 | 取締役常務執行役員営業開発本部長 | 1995年三菱商事入社。同社食料本部戦略企画室長等を経て、2024年より現職。 |
| 中田昭久 | 取締役顧問 | 1983年同社入社。同社常務執行役員生産技術本部長等を経て、2026年より現職。 |
| 長﨑剛 | 取締役 | 1999年三菱商事入社。同社製粉製糖部長等を経て、2023年より現職。 |
| 中庭聡 | 取締役(監査等委員) | 1993年三菱商事入社。ローソン取締役常務執行役員CFO等を経て、2022年より現職。 |
社外取締役は、豊島ひろ江(中本総合法律事務所パートナー)、宮下律江(エターナリア代表取締役)、小倉朋子(トータルフード代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「製粉及び食品事業」「外食事業」「運送事業」を展開しています。
■製粉及び食品事業
小麦などの農産物を原料として、小麦粉、ふすま、ミックス粉、食品などの製造を行っています。多様な顧客ニーズに応じた特徴ある製品の開発を推進し、日本国内のほかアジア等の海外成長市場へも事業を展開しています。
収益源は特約店等を通じた製品の販売代金です。事業の運営は同社および増田製粉所、隅田商事のほか、海外子会社などが主体となって事業を展開しています。
■外食事業
ケンタッキーフライドチキンなどのファーストフード店舗の経営を行っています。主に関東および東海地区において事業活動を進めており、店舗展開を通じた多角的なサービスを提供しています。
主な収益源は、店舗を利用する一般顧客からの飲食代金などです。事業の運営は、連結子会社であるさわやかがトップフランチャイジーとして担っています。
■運送事業
製粉及び食品事業で取り扱う原料小麦や、製造された各種製品の運送を担っています。グループのサプライチェーン全体を支え、物流機能の高度化や配送効率の向上を図っています。
主な収益源は、グループ内からの運送業務受託による運送料です。事業の運営は、関連会社であるM&Fロジスティクスが主体となって大部分の運送業務を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、593億円から728億円へと順調に規模を拡大しています。一方、経常利益は50億円台で推移していましたが、直近ではコスト上昇の影響などにより44億円へと減少し、利益率も6.0%となっています。当期利益は概ね30億円台で安定して推移しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 593億円 | 695億円 | 726億円 | 723億円 | 728億円 |
| 経常利益 | 49億円 | 57億円 | 58億円 | 56億円 | 44億円 |
| 利益率(%) | 8.2% | 8.2% | 8.0% | 7.7% | 6.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 32億円 | 34億円 | 39億円 | 34億円 | 35億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前年からわずかに増加して728億円となったものの、売上総利益は172億円から168億円に減少し、利益率も低下しています。これに伴い、営業利益も51億円から38億円へと減少し、減益となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 723億円 | 728億円 |
| 売上総利益 | 172億円 | 168億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.8% | 23.1% |
| 営業利益 | 51億円 | 38億円 |
| 営業利益率(%) | 7.1% | 5.2% |
販売費及び一般管理費のうち、販売運賃が35億円(構成比27%)、給与及び手当が28億円(同22%)を占めています。
■(3) セグメント収益
製粉及び食品事業は、老朽化設備の修繕費増加やコスト高騰の影響を受け減益となりました。一方、外食事業は新店舗開業などにより増収を確保しましたが、人件費やフードコストの増加で減益となっています。運送事業は連結範囲から持分法適用会社へ変更された影響を受けています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 製粉及び食品事業 | 608億円 | 605億円 | 46億円 | 35億円 | 5.8% |
| 外食事業 | 114億円 | 122億円 | 4億円 | 2億円 | 1.8% |
| 運送事業 | 1.4億円 | 0.7億円 | 0.4億円 | 0.4億円 | 60.0% |
| 連結(合計) | 723億円 | 728億円 | 51億円 | 38億円 | 5.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 51億円 | 47億円 |
| 投資CF | -22億円 | -9億円 |
| 財務CF | -23億円 | -26億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社はパーパスとして「小麦の持つ無限の可能性で、世界の多様なニーズに挑戦し続ける」を掲げています。また、ビジョンとして「事業基盤の強化により持続的に成長する企業となる」「能動的に細かなニーズを捉え、新規領域での成長に挑戦し続ける」ことを目指し、社会的意義の明確化と企業価値の持続的な向上を図っています。
■(2) 企業文化
同社は、企業としての行動指針を定めています。具体的には、「環境に配慮した製品・サービスの開発と提供により、社会に貢献し続ける」「法令と社会規範を遵守し、誇りを持って仕事に臨み続ける」「グローバルな視野をもち、多様な文化を受け入れ、すべてのステークホルダーの満足度を高め続ける」という価値観を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画を毎年度更新するローリング方式を採用し、事業環境の変化に機動的に対応しています。2028年度を目標とする中期財務目標では、以下の指標達成を目指しています。
・連結純利益:35億円以上
・連結ROE:6.9%以上
・基礎収益:25億円以上
・基礎収益ROA:3.6%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は供給体制の強靱化と製販統括機能の強化を重点課題としています。調達・開発・営業・生産の一体化や統合データ基盤の再構築により、生産効率の改善と多様な顧客ニーズへの対応を進めています。また、エンジニアリング体制の強化や老朽化対策による安定供給基盤の確立、さらに独自製品の拡販や海外事業の拡大にも取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材を重要な経営基盤と位置付け、「人事制度の運用推進」「人財開発の強化」「多様性の推進」を柱に組織基盤の強化を図っています。職務と役割を基軸とする評価制度への転換、次世代リーダーの育成やリスキリングの拡充、さらに女性活躍や外国籍人材の活用などのダイバーシティ推進を通じて、従業員の自律的な挑戦を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.1歳 | 16.0年 | 6,561,419円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.6% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 79.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 61.8% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.2%)、ストレスチェック受検率(97.0%)、新卒採用女性比率(37.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 小麦粉原料調達リスク
主原料である輸入小麦は政府が一元的に管理しており、国際貿易交渉や農政の動向によって調達環境が変動する可能性があります。気候変動や為替変動等による調達コストの上昇分を適切に製品価格へ転嫁できなかった場合、同社の業績に影響を及ぼす恐れがあります。
■(2) 事故災害リスク
大規模な自然災害や火災などが発生した場合、製造設備の損壊やインフラの遮断により生産・出荷が停止するリスクがあります。特に主要拠点である関東地区で長期間の事業中断が生じた際は、多額の改修費用が発生し、経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 設備・固定資産に関するリスク
同社は多数の製造設備を保有しており、導入から長期間経過した設備の老朽化による故障や性能低下が懸念されます。生産効率の悪化や修繕費の増加が業績を圧迫するリスクがあり、計画と乖離した場合には減損処理が必要となる可能性も存在します。



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