ヤクルト本社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヤクルト本社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の乳酸菌飲料メーカー。乳酸菌シロタ株を含む「ヤクルト」類の製造販売を国内外で展開するほか、化粧品や医薬品事業、球団運営も行う。当連結会計年度の業績は、売上高4,997億円(前期比0.7%減)、経常利益759億円(同4.3%減)と、国内の販売減などが響き減収減益となった。


※本記事は、株式会社ヤクルト本社 の有価証券報告書(第73期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヤクルト本社ってどんな会社?


「予防医学」「健腸長寿」を掲げ、乳酸菌飲料「ヤクルト」等を世界規模で展開するヘルスケアカンパニーです。

(1) 会社概要


1935年に福岡市で「代田保護菌研究所」として発足し、1955年にヤクルト本社が設立されました。1964年には台湾で初の海外事業を開始し、グローバル展開の礎を築きました。1969年にプロ野球興行事業へ参入し、1981年には東京証券取引所市場第一部(現プライム市場)へ上場しました。2016年には国立市に新しい中央研究所を完成させ、研究開発体制を強化しています。

連結従業員数は29,254人、単体では2,859人です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は球団運営や広告出稿等で協力関係にある事業会社のフジ・メディア・ホールディングスです。第3位も資産管理を行う信託銀行となっており、安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 13.13%
株式会社フジ・メディア・ホールディングス 4.35%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 3.71%

(2) 経営陣


同社の役員は男性15名、女性4名の計19名で構成され、女性役員比率は21.1%です。代表取締役社長 社長執行役員は成田 裕氏です。社外取締役比率は26.3%です。

氏名 役職 主な経歴
成田  裕 代表取締役社長社長執行役員 1974年入社。国際部長、取締役、常務執行役員、専務執行役員等を経て2021年6月より現職。
星子 秀章 取締役専務執行役員管理本部長 1981年入社。法務室長、執行役員、常務執行役員等を経て2024年4月より現職。
鈴木 康之 取締役専務執行役員生産本部長 1979年入社。生産管理部長、執行役員、常務執行役員等を経て2025年4月より現職。
平野 宏一 取締役 1979年入社。開発部長、常務執行役員、専務執行役員等を経て2025年4月より現職。
梛良 昌利 取締役 1980年入社。執行役員、常務執行役員、専務執行役員等を経て2025年4月より現職。
島田 淳一 取締役常務執行役員国際事業本部長 1984年入社。国際部長、執行役員、常務執行役員を経て2023年6月より現職。
渡辺 秀一 取締役常務執行役員 1980年入社。経理部長、執行役員、常務執行役員を経て2024年6月より現職。
川畑 裕之 取締役常務執行役員経営サポート本部長 1981年入社。総務部長、執行役員、常務執行役員を経て2024年6月より現職。
内藤  学 取締役 1983年電通入社、1987年同社入社。水戸ヤクルト販売代表取締役社長を経て2022年6月より現職。


社外取締役は、戸部直子(弁護士)、永沢裕美子(元日興証券)、阿久津聡(一橋大学教授)、マシュー・ディグビー(弁護士)、福澤俊彦(元みずほ信託銀行副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「飲料および食品製造販売事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 飲料および食品製造販売事業(日本)


国内において、乳酸菌飲料「ヤクルト」類、「ジョア」等の乳製品、麺類、清涼飲料などの製造・仕入・販売を行っています。顧客は一般消費者が中心であり、独自の宅配システムを持つヤクルトレディや、量販店・自動販売機などの店頭チャネルを通じて商品を提供しています。

収益は、主に全国のヤクルト販売会社(連結子会社および関連会社含む)への製品販売や、消費者への直接販売から得ています。製造はヤクルト本社および岩手ヤクルト工場などの連結子会社が行い、販売は東京ヤクルト販売などの販売会社が行っています。

(2) 飲料および食品製造販売事業(米州)


米国、メキシコ、ブラジルなど米州地域において、乳酸菌飲料「ヤクルト」等の製造・販売を行っています。健康志向の高まりを背景にプロバイオティクス製品の普及を図っています。

収益は、現地における製品販売から得ています。運営は、アメリカヤクルト、ブラジルヤクルト商工などの連結子会社が担っています。

(3) 飲料および食品製造販売事業(アジア・オセアニア)


中国、インドネシア、フィリピン、タイ、韓国などアジア・オセアニア地域において、乳酸菌飲料「ヤクルト」等の製造・販売を行っています。ヤクルトレディによる宅配システムを導入している国も多く、地域に根差した普及活動を行っています。

収益は、現地における製品販売から得ています。運営は、中国ヤクルト、広州ヤクルト、上海ヤクルトなどの連結子会社および韓国ヤクルトなどの関連会社が行っています。

(4) 飲料および食品製造販売事業(ヨーロッパ)


オランダ、ベルギー、イギリス、ドイツなど欧州地域において、乳酸菌飲料「ヤクルト」等の製造・販売を行っています。オランダに製造拠点を持ち、欧州各国へ製品を供給しています。

収益は、現地における製品販売から得ています。運営は、ヨーロッパヤクルトおよび各国の販売子会社が行っています。

(5) その他事業


化粧品、医薬品の製造販売およびプロ野球興行などを行っています。化粧品は訪問販売や通信販売等で展開し、医薬品は抗がん剤などを医療機関へ販売しています。また、プロ野球球団「東京ヤクルトスワローズ」の運営も行っています。

収益は、化粧品・医薬品の販売代金や、プロ野球のチケット・グッズ収入等から得ています。運営はヤクルト本社およびヤクルト球団などの連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は第72期まで増加傾向にありましたが、当期はわずかに減少しました。経常利益も第72期をピークに当期は減少しています。利益率は15%〜16%台で安定的に推移しています。当期純利益については、第72期まで増加していましたが、当期は減少に転じました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,857億円 4,151億円 4,831億円 5,031億円 4,997億円
経常利益 576億円 685億円 780億円 793億円 759億円
利益率(%) 14.9% 16.5% 16.1% 15.8% 15.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 393億円 449億円 506億円 510億円 455億円

(2) 損益計算書


前期と比較すると、売上高はほぼ横ばいですが、売上総利益および営業利益は減少しました。売上原価や販管費の負担増が利益を圧迫しており、営業利益率は前期の12.6%から11.1%へと低下しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,031億円 4,997億円
売上総利益 2,999億円 2,955億円
売上総利益率(%) 59.6% 59.1%
営業利益 634億円 554億円
営業利益率(%) 12.6% 11.1%


販売費及び一般管理費のうち、販売手数料が322億円(構成比13%)、広告宣伝費が183億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本事業の売上が減少した一方、米州およびヨーロッパ事業は大幅な増収となりました。アジア・オセアニア事業は微増収でした。その他事業は減収となりました。国内市場の競争激化等による苦戦を、海外事業の成長が補う構図が見られますが、全体としては微減収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
飲料および食品製造販売事業(日本) 2,432億円 2,338億円
飲料および食品製造販売事業(米州) 822億円 918億円
飲料および食品製造販売事業(アジア・オセアニア) 1,333億円 1,348億円
飲料および食品製造販売事業(ヨーロッパ) 104億円 121億円
その他事業 340億円 271億円
連結(合計) 5,031億円 4,997億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で得た資金を投資と借入返済・株主還元に充てている健全型です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 707億円 847億円
投資CF -439億円 -610億円
財務CF -395億円 -315億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「私たちは、生命科学の追究を基盤として、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献します」という企業理念を掲げています。この理念に基づき、世界の人々の健康に貢献し続けるヘルスケアカンパニーを目指して企業活動を推進しています。

(2) 企業文化


創始者である代田稔の考え方に基づく「代田イズム」を原点としています。これは「予防医学」「健腸長寿」「誰もが手に入れられる価格で」という3つの柱からなります。また、コーポレートスローガン「人も地球も健康に」のもと、地球環境全体の健康も視野に入れた活動を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2025年度から2030年度までの中期経営計画を策定しています。2030年度の定量目標として以下の指標を掲げています。

* グローバル乳本数:4,500万本/日
* 連結売上高:7,000億円
* 連結営業利益:900億円
* EPS:250円
* ROE:10%

(4) 成長戦略と重点施策


「Yakult Group Global Vision 2030」の実現に向け、事業領域の拡大とビジネスモデルの進化、地域社会との共創とグローバル展開の進化、成長を支える経営基盤の強化を重点テーマとしています。海外では市場の深耕と拡大、新たな成長モデルの構築を図り、国内では高付加価値商品の開発やサービス開発により需要獲得を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「事業戦略と連動した成長エンジンの確立」「個の成長と組織力の向上」「価値観のさらなる体現」を柱とし、イノベーティブな人材やグローバル人材の育成に注力しています。また、週休3日制や在宅勤務の導入など働きやすい環境づくりを進めるとともに、ダイバーシティ推進として女性管理職比率の目標設定や中途採用者の登用等を行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.8歳 17.9年 8,384,792円


※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.4%
男性育児休業取得率 107.0%
男女賃金差異(全労働者) 67.1%
男女賃金差異(正規) 73.5%
男女賃金差異(非正規) 43.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ヤクルト類への依存および競争環境等に関するリスク


同社グループの売上高の大部分は「乳酸菌 シロタ株」を使用したヤクルト類が占めており、特に海外事業での依存度が高まる可能性があります。競合製品との競争激化や、プロバイオティクスの安全性・効用に対する消費者の認識変化などによりヤクルト類の販売に悪影響が生じた場合、業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 事業のグローバル化に伴うリスク


世界各国で事業を展開しており、各国の政治・経済的変化や法規制の予期せぬ変更が事業に影響を与える可能性があります。特に、プロバイオティクスに関する健康強調表示の規制などが導入された場合、宣伝方法に制約が生じる恐れがあります。また、海外事業の拡大に伴う投資が想定通りの成果を上げられない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 商品の安全性に関するリスク


国内外を問わず食の安全性への関心が高まる中、品質管理体制の強化に努めていますが、予期せぬ事態により回収や製造停止が発生した場合、ブランドイメージの毀損や費用の発生を招く恐れがあります。また、根拠のない風評等により消費者の信頼が低下した場合も、販売に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) グループの販売体制に関するリスク


独自の「ヤクルトレディ」による宅配チャネルが販売の重要な柱となっていますが、販売会社やヤクルトレディとの良好な関係維持が困難になった場合や、人材確保ができない場合、販売活動に支障をきたす可能性があります。また、販売会社の経営状況悪化等により支援が必要となる場合、財政状態に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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