ホクシン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ホクシン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ホクシンは東証スタンダード市場に上場し、MDF(中密度繊維板)の製造・販売を主力とする企業です。直近の業績トレンドとしては、価格転嫁等の取り組みにより売上高は前年同水準を維持して微増となったものの、新設住宅着工戸数の減少やコスト増の影響が大きく、最終赤字に転落しています。


※本記事は、ホクシン株式会社の有価証券報告書(第76期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ホクシンってどんな会社?


MDF(中密度繊維板)の製造・販売を専門に行い、環境配慮型のリサイクル建材も提供するメーカーです。

(1) 会社概要


1950年に北新合板として設立され、合板の製造および販売を開始しました。1972年にはMDF(中密度繊維板)の製造販売に参入し、1985年には合板の製造販売を中止するとともに現在のホクシンへ商号を変更しました。その後事業をMDFに特化させ、1995年に東証一部(現在の東証スタンダード市場)への上場を果たしています。

同社単体の従業員数は167名です。筆頭株主は事業会社の兼松で、第2位および第3位も同じく事業会社のDAIKEN、永大産業となっています。

氏名 持株比率
兼松 26.53%
DAIKEN 14.91%
永大産業 3.53%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.0%です。代表取締役社長執行役員は高橋英明氏が務めており、取締役の過半数(57%)を社外取締役が占めています。

氏名 役職 主な経歴
高橋英明 代表取締役社長執行役員 1993年同社入社。技術開発部長、製造部長を経て2015年執行役員製造部長に就任。2019年に取締役執行役員製造部長、2020年に取締役執行役員技術開発部長等を歴任し、2022年6月より現職。
寺田恭久 取締役上席執行役員 1985年兼松江商(現兼松)入社。同社香港駐在兼松(香港)有限公司審査部長等を経て、2017年同社社外取締役監査等委員に就任。2019年に取締役執行役員となり、2022年6月より現職。
廣田昌俊 取締役上席執行役員 1996年同社入社。経営企画室長兼製造副部長、執行役員経営企画室長兼営業業務部長を経て、2022年6月に取締役上席執行役員経営企画室長に就任。2022年7月より現職。


社外取締役は、永田武(DAIKEN専務執行役員)、山田公徳(兼松ケージーケイ元取締役)、澤由美(澤・太田法律事務所開設・弁護士)、桂川恵利子(桂川公認会計士事務所代表・公認会計士)です。

2. 事業内容


同社は、MDF(中密度繊維板)事業の単一セグメントで事業を展開しています。

主力製品であるMDFの製造・販売を行っており、建材用途やフロア基材用途のほか、建築基準法改正に対応した構造用MDFも提供しています。代表的な製品ブランドとして「スターウッド」や「スターウッドTFB」を展開する一方、海外からのMDF製品の輸入販売や、繊維廃棄物を主原料とした環境配慮型リサイクル建材の量産・販売にも取り組んでいます。

収益は、これらのMDF製品および輸入商品の販売によって得ており、主に建材商社などを通じて住宅・非住宅市場へ供給されています。海外子会社等を持たず、製造および販売の全プロセスを同社単体で運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は安定して100億円〜120億円台で推移していますが、直近では新設住宅着工戸数の減少や原材料・エネルギー価格の高騰による影響を受け、経常赤字が続いています。当期は価格転嫁等を進めたものの、吸収しきれず最終赤字での着地となりました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 108億円 129億円 110億円 102億円 103億円
経常利益 4億円 5億円 2億円 -0.6億円 -0.4億円
利益率(%) 4.2% 3.8% 1.7% -0.6% -0.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 3億円 2億円 0.2億円 -0.3億円

(2) 損益計算書


売上高および売上総利益率は前年と同水準を維持して微増となりました。営業利益は価格改定や生産面でのコストダウン効果により、赤字幅が縮小しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 102億円 103億円
売上総利益 14億円 14億円
売上総利益率(%) 13.2% 13.5%
営業利益 -0.7億円 -0.4億円
営業利益率(%) -0.7% -0.4%


販売費及び一般管理費のうち、運賃荷役費が6億円(構成比45%)、給与賃金手当が2億円(同15%)を占めています。売上原価のうち、原材料費が49億円(構成比55%)、経費が23億円(同26%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社はMDF事業の単一セグメントですが、製品区分ごとの売上動向を見ると、構造用途への拡販が進んだスターウッドが増収に貢献した一方、需要が低迷したスターウッドTFBおよび輸入品は減収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
スターウッド 54億円 57億円
スターウッドTFB 36億円 35億円
商品 12億円 10億円
連結(合計) 102億円 103億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で得た資金で設備投資と借入金の返済を進める「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 3億円 9億円
投資CF -2億円 -4億円
財務CF -0.9億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-0.5%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も45.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「社会の進歩向上に寄与する製品を供給する」「相互信頼にもとづく安定した取引を確立する」「社員とその家族の生活の安定向上をはかる」を経営基本理念としています。「環境への貢献」と「省エネルギー・リサイクル」を事業戦略の中心に据え、市場変化に柔軟に対応できるガバナンスと揺るぎない収益基盤の確立を目指しています。

(2) 企業文化


Sustainability Vision 2030「木と向き合い、未来を拓く」をスローガンに掲げています。木材の有効活用による地球環境への貢献を重視するとともに、持続可能なモノづくりを支える「ひとづくり」を推進しています。デジタルトランスフォーメーションを通じて多様な働き方を支援し、社員一人ひとりが長所を活かして成長し続けられる職場環境づくりを重んじています。

(3) 経営計画・目標


2026年4月にスタートした中期経営計画「REBUILD & CREATE VALUE 2028」において、同社は装置産業である特性を踏まえ、中長期的な視点で設備投資の効果を評価できる以下の指標を重視しています。

・営業利益:3.3億円(2028年度目標)
・EBITDA:7.3億円(2028年度目標)
・ROIC:2.5%(2028年度目標)

(4) 成長戦略と重点施策


環境配慮型商品であるMDFのさらなる付加価値追求により、住宅建材市場のみならず非住宅分野向けの製品開発や販路開拓に取り組んでいます。また、省エネ・リサイクルを反映させたプロセス改善を実施し、安定した収益基盤の構築を図ります。

・構造用MDFの拡販
・海外MDF工場との連携強化によるOEM生産への切り替え
・廃棄衣類などを主原料としたPANECO board Mの量産・販売

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「社会の進歩向上に寄与する製品を供給する」という理念の実現に向け、多様な人材の確保と育成に取り組んでいます。「安心で安全な職場環境づくり」「多様な働き方への対応推進」「未来を担う人づくり」を重点テーマに設定し、評価制度や教育プログラムを充実させることで、従業員が能力を最大限に発揮できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.6歳 17.6年 5,309,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.5%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 72.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 62.0%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給取得率(70.5%)、労働者に占める女性労働者の割合(10.1%)、採用した労働者に占める女性労働者の割合(25.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 住宅市場への依存と競合リスク

同社の事業に直結する住宅市場や関連市場は、国内景気や個人消費の動向に大きく左右されます。また、海外から低価格な木質素材や建材の輸入が拡大し、国内メーカーが競争に敗れるような事態が生じた場合、同社の業績に甚大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料及びエネルギー価格の変動リスク

接着剤の原料となる石化製品や、電力・天然ガスなどのエネルギー価格は、産出国の情勢や国際的な需給バランスで大きく変動します。これらの価格高騰により製造原価が上昇し、販売価格への転嫁が十分に進まない場合、同社の利益を圧迫するリスクがあります。

(3) 木材チップの調達・供給リスク

製品の原材料となる木材チップの約67%を海外からの輸入に依存しています。東南アジア等の木材資源国で伐採規制が強化され、木材産業が縮小した場合、安定的な原材料の確保が困難になります。同社は代替品の開拓やリサイクルチップの活用によりリスク緩和に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。