#ホクシン転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、ホクシン株式会社 の有価証券報告書(第75期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ホクシンってどんな会社?
MDF(中密度繊維板)の製造販売における国内のパイオニア企業であり、木質資源の有効活用を通じて環境貢献を目指す素材メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1950年に合板の製造販売を目的に設立され、1972年にMDFの製造販売を開始しました。1995年には大阪証券取引所および東京証券取引所市場第一部に上場を果たしています。その後、2022年の市場区分見直しに伴い、東京証券取引所スタンダード市場へ移行しました。長年にわたり木質ボードの専業メーカーとして技術を蓄積しています。
2025年3月31日現在の従業員数は182名(単体)です。筆頭株主は総合商社の兼松であり、第2位株主は住宅建材大手の大建工業です。商社機能とメーカー機能の両面から強力なバックアップを受ける体制となっており、安定した事業基盤を有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 兼松 | 26.53% |
| 大建工業 | 14.91% |
| 永大産業 | 3.53% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性2名、計7名で構成され、女性役員比率は28.0%です。代表取締役社長執行役員は高橋英明氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 高橋英明 | 代表取締役社長執行役員 | 1993年同社入社。技術開発部長、製造部長などを歴任し、2022年より現職。 |
| 寺田恭久 | 取締役上席執行役員 | 1985年兼松江商(現兼松)入社。同社審査部長などを経て、2022年より現職。 |
| 廣田昌俊 | 取締役上席執行役員 | 1996年同社入社。経営企画室長、営業業務部長などを歴任し、2022年より現職。 |
社外取締役は、永田武(大建工業海外事業統括担当)、山田公徳(元兼松ケージーケイ取締役)、澤由美(澤・太田法律事務所代表)、桂川恵利子(桂川公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社は「MDF事業」の単一セグメントですが、製品・商品区分として「スターウッド」「スターウッドTFB」「商品」を展開しています。
**スターウッド事業**
木材チップを繊維状に解繊し、接着剤を加えて成型したMDF(中密度繊維板)の製造販売を行っています。主な用途は住宅建材、家具、木工製品などで、均質で加工性に優れる点が特徴です。住宅建材メーカーや建材商社が主な顧客です。
**収益モデルと運営**
顧客への製品販売による対価が収益源です。主力工場である岸和田工場にて製造を行い、ホクシンが運営しています。
**スターウッドTFB事業**
薄物MDFを中心とした製品群です。フロアの裏打ち材やドアの面材など、より薄く精密な加工が求められる用途に使用されます。
**収益モデルと運営**
製品販売による売上収益を得ています。運営はホクシンが行っています。
**商品事業**
自社製造以外の他社製MDFや関連商品の仕入販売を行っています。顧客の多様なニーズに対応するためのラインナップ補完としての役割を担っています。
**収益モデルと運営**
商品を仕入れ、顧客へ販売することで収益を得ています。運営はホクシンが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの5期間(単体)の推移を見ます。売上高は2023年3月期をピークに減少傾向にあります。利益面では、原材料価格やエネルギーコストの高騰により利益率が低下し、直近では経常損失を計上するなど苦戦しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 91億円 | 108億円 | 129億円 | 110億円 | 102億円 |
| 経常利益 | 2億円 | 4億円 | 5億円 | 2億円 | -0.6億円 |
| 利益率(%) | 2.5% | 4.2% | 3.8% | 1.7% | -0.6% |
| 当期利益 | 1億円 | 4億円 | 3億円 | 2億円 | 0.2億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較します。売上高の減少に加え、物流費や労務費等のコスト負担増により、営業損益が黒字から赤字に転落しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 110億円 | 102億円 |
| 売上総利益 | 16億円 | 14億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.1% | 13.2% |
| 営業利益 | 1億円 | -0.7億円 |
| 営業利益率(%) | 1.2% | -0.7% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃荷役費が6億円(構成比41%)、給与賃金手当が2億円(同16%)を占めています。売上原価においては、原材料費が47億円(構成比53%)、経費が23億円(同26%)、労務費が8億円(同9%)となっています。
■(3) セグメント収益
各区分の売上状況を分析します。主力のスターウッドおよびスターウッドTFBともに、住宅着工戸数の減少等の影響を受けて減収となりました。特に輸入販売を行う「商品」区分は大幅な減収となっています。なお、同社は単一セグメントのため利益情報は開示されていません。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| スターウッド | 55億円 | 54億円 |
| スターウッドTFB | 40億円 | 36億円 |
| 商品 | 15億円 | 12億円 |
| 合計 | 110億円 | 102億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、本業で得た現金を借入金の返済や設備投資に充てる「健全型」の傾向を示しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3億円 | 3億円 |
| 投資CF | -0.8億円 | -2億円 |
| 財務CF | -1億円 | -1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「社会の進歩向上に寄与する製品を供給する」「相互信頼にもとづく安定した取引を確立する」「社員とその家族の生活の安定向上をはかる」を経営基本理念として掲げています。メーカーとしての効率化を促進し、市場変化に柔軟に対応できるガバナンスと揺るぎない収益基盤の確立を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「環境への貢献」「省エネルギー・リサイクル」を事業戦略の中心に据えています。働き方改革の推進による人材確保と業務効率改善をベースとし、環境配慮型商品であるMDFの付加価値追求に取り組む姿勢を重視しています。また、SDGsを背景とした安定的なサプライチェーンの維持と生産性向上にも注力しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画「H-CHALLENGE2025」において、以下の経営指標を掲げています。
* 2025年度 営業利益:6.1億円
* 2025年度 EBITDA:10.9億円
* 2025年度 ROIC:3.9%
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画の最終年度に向け、ラワン合板代替品としてのMDF販売推進や、気候変動対応を通じた製品価値の向上に注力しています。また、住宅関連アイテムの開発に加え、非住宅分野への進出や新製品開発も推進しています。
* ラワン合板代替品としてのMDF販売推進
* MDF製造を通じた気候変動対応
* 住宅関連アイテムの販売促進及び開発
* 既存市場の深耕
* 新市場進出と新製品開発
* 原材料価格変動の抑制及び製造に関するCO2排出量の削減
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「Sustainability Vision 2030」のもと、「持続可能なものづくりを支えるひとづくり」を掲げています。「安心で安全な職場環境づくり」「多様な働き方への対応推進」「未来を担う人づくり」を重要テーマとし、DX推進を通じて誰もが成長できる環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.6歳 | 17.0年 | 5,535,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表項目として選択していないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給取得率(68.6%)、健康診断2次健診受診率(55.8%)、採用した労働者に占める女性労働者の割合(7.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済の状況
同社の事業は住宅市場の動向に強く影響を受けます。景気後退による個人消費の低迷や、海外メーカーからの低価格品の輸入拡大による競争激化が、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料及びエネルギー価格の変動
接着剤原料となる石化製品や、製造に必要な電力・LNGなどのエネルギー価格の変動リスクがあります。産出国の情勢や需給バランスにより価格が高騰した場合、製造原価が上昇し、業績を圧迫する恐れがあります。
■(3) 木材チップの供給
原材料である木材チップの約73%を海外からの輸入に依存しています。資源国の伐採規制強化や産業構造の変化により調達が困難になった場合、生産活動に支障をきたし、事業継続に重大な影響を与える可能性があります。
■(4) 自然災害及び感染症
大規模な地震、台風、洪水等の自然災害や新たな感染症の拡大により、生産・物流拠点が被災したりサプライチェーンが寸断されたりした場合、操業停止や供給遅延が発生し、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。