※本記事は、山崎製パン株式会社 の有価証券報告書(第77期、自 2024年1月1日 至 2024年12月31日、2025年3月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 山崎製パンってどんな会社?
国内シェアトップクラスを誇る製パン企業です。「ロイヤルブレッド」や「ランチパック」など多数のロングセラー商品を持ち、製造から物流、販売までを一貫して手がけています。
■(1) 会社概要
1948年に創業者飯島藤十郎氏により千葉県市川市で開業し、1966年に東京証券取引所市場第一部に上場しました。コンビニエンスストア事業の展開や、2007年の不二家との業務資本提携、2016年の総合クリエイションセンター竣工など、事業拡大と技術革新を推進してきました。2023年には神戸屋から包装パン事業を譲り受け、YKベーキングカンパニーとして子会社化しています。
連結従業員数は33,393名、単体では19,291名が在籍しています。筆頭株主は創業家の資産管理会社である飯島興産で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は公益財団法人飯島藤十郎記念食品科学振興財団となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 飯島興産 | 9.44% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.83% |
| 公益財団法人飯島藤十郎記念食品科学振興財団 | 6.28% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.7%です。代表取締役社長は飯島延浩氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 飯島 延浩 | 代表取締役社長 | 1964年入社。取締役、常務取締役を経て、1979年3月より代表取締役社長。1999年3月よりヤマザキビスケット取締役会長を兼務。 |
| 飯島 幹雄 | 代表取締役副社長営業部門、総務、人事担当 | 1997年入社。埼玉工場長、専務取締役等を経て、2018年3月取締役副社長。2024年3月より代表取締役副社長。東ハト社長、不二家副会長も歴任。 |
| 横濱 通雄 | 専務取締役経理、財務担当 | 1967年入社。経理本部経理部長、取締役、常務取締役を経て、2018年3月より専務取締役。 |
| 会田 正久 | 専務取締役総務、総合クリエイションセンター担当総務本部長兼社史編纂室長 | 1966年入社。総務本部総務部長、取締役、常務取締役を経て、2018年3月専務取締役総務本部長。2022年3月より現職。 |
| 犬塚 勇 | 専務取締役営業担当営業統括本部長 | 1985年入社。営業統括本部長兼営業部長、取締役、常務取締役を経て、2018年3月より専務取締役営業統括本部長。 |
| 関根 治 | 専務取締役広域流通営業担当 | 1970年入社。横浜第二工場長、常務取締役等を経て、2018年3月より専務取締役。日糧製パン代表取締役会長も歴任。 |
| 吉田谷 良一 | 専務取締役生産、食品安全衛生管理、中央研究所担当生産統括本部長 | 1978年入社。執行役員生産企画室長、常勤監査役、常務執行役員生産統括本部長等を経て、2024年3月より専務取締役生産統括本部長。 |
| 酒井 光 政 | 常務取締役生産(和洋菓子)担当 | 1977年入社。安城工場長、執行役員等を経て、2019年日糧製パン代表取締役副社長。2024年3月より常務取締役。 |
| 吉田 修康 | 常務取締役人事担当 | 1998年入社。熊本工場長、神戸工場長、武蔵野工場長、生産管理部門統括執行役員を経て、2025年3月より常務取締役。 |
| 島田 秀男 | 取締役 | 1975年住友銀行入行。三井住友銀行副頭取、三井住友フィナンシャルグループ取締役、三井住友カード社長・会長を経て、2018年3月より取締役。 |
| 畑江 敬子 | 取締役 | お茶の水女子大学名誉教授。日本調理科学会会長、内閣府食品安全委員会委員等を歴任し、2016年3月より取締役。 |
社外取締役は、島田秀男(元三井住友カード社長)、畑江敬子(お茶の水女子大学名誉教授)、松田道弘(元エスエムビーシーキャピタル社長)、齋藤昌男(弁護士)、馬場久萬男(元林野庁長官)です。
2. 事業内容
同社グループは、「食品事業」「流通事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 食品事業
パン、和・洋菓子、調理パン・米飯類、製菓・米菓などを製造販売しています。「ロイヤルブレッド」「ランチパック」等のパン類、「まるごとバナナ」等の洋菓子、「カントリーマアム」等の菓子類が主力製品です。
収益は、量販店やコンビニエンスストア等への製品販売代金が主となります。運営は、パン・和洋菓子等は山崎製パン、YKベーキングカンパニー等が、調理パン等はサンデリカが、製菓はヤマザキビスケット、東ハト、不二家等が行っています。また、海外では米国や東南アジアでベーカリー事業等を展開しています。
■(2) 流通事業
コンビニエンスストア「デイリーヤマザキ」や食品スーパーマーケット「スーパーヤマザキ」を経営しています。店内で調理した焼きたてパンやお弁当などを提供する「デイリーホット」などが特徴です。
収益は、直営店での商品販売代金や、フランチャイズ加盟店からのロイヤリティ収入等です。運営は、コンビニエンスストア事業については山崎製パンのデイリーヤマザキ事業統括本部が、スーパーマーケット事業についてはスーパーヤマザキが行っています。
■(3) その他事業
物流事業、食品製造設備の設計・施工、損害保険代理業、洗浄剤の製造販売などを行っています。
収益は、物流業務の受託料、工事請負代金、保険手数料、製品販売代金等です。運営は、ヤマザキ物流、サンロジスティックス、ヤマザキエンジニアリング、ヤマザキ、ヤマザキクリーンサービスなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に右肩上がりで推移しており、特に直近2期は1兆円台後半から1兆2,000億円台へと伸長しています。利益面でも、原材料価格の高騰等の影響を受けつつも、価格改定や高付加価値製品の販売強化により、経常利益、当期利益ともに大幅な増益トレンドを維持しています。
| 項目 | 2020年12月期 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 10,147億円 | 10,530億円 | 10,770億円 | 11,756億円 | 12,445億円 |
| 経常利益 | 197億円 | 214億円 | 261億円 | 455億円 | 563億円 |
| 利益率(%) | 1.9% | 2.0% | 2.4% | 3.9% | 4.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 75億円 | 98億円 | 111億円 | 230億円 | 295億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。売上原価率は依然として高い水準ですが、増収効果により売上総利益の額は増加しました。営業利益率は前期から上昇しており、収益性の向上が見られます。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 11,756億円 | 12,445億円 |
| 売上総利益 | 3,790億円 | 4,053億円 |
| 売上総利益率(%) | 32.2% | 32.6% |
| 営業利益 | 420億円 | 519億円 |
| 営業利益率(%) | 3.6% | 4.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1,116億円(構成比31.6%)、運搬費が714億円(同20.2%)を占めています。売上原価においては、詳細な内訳データはありませんが、原材料費や労務費が主要な構成要素であると推察されます。
■(3) セグメント収益
主力の食品事業は、食パンや菓子パン等の販売が好調で増収増益となり、全社の業績を牽引しました。流通事業は増収となったものの、営業損失を計上していますが、赤字幅は縮小しました。その他事業も堅調に推移し、増収増益となりました。
| 区分 | 売上(2023年12月期) | 売上(2024年12月期) | 利益(2023年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 食品事業 | 10,938億円 | 11,535億円 | 407億円 | 498億円 | 4.3% |
| 流通事業 | 680億円 | 762億円 | -18億円 | -12億円 | -1.6% |
| その他事業 | 138億円 | 148億円 | 27億円 | 30億円 | 20.4% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | 4億円 | 3億円 | -% |
| 連結(合計) | 11,756億円 | 12,445億円 | 420億円 | 519億円 | 4.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスとなっており、本業で稼いだ現金を設備投資や借入金の返済、株主還元に充てている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 737億円 | 740億円 |
| 投資CF | -457億円 | -435億円 |
| 財務CF | -188億円 | -150億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.9%で市場平均(9.4%)をやや下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.6%でプライム市場製造業平均(46.8%)とほぼ同じ水準です。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
創業以来、「良品廉価・顧客本位」の精神を掲げ、技術革新を通じて高品質な製品を安定供給することで社会に貢献することを使命としています。具体的には、「企業経営を通じて社会の進展と文化の向上に寄与することを使命とし、自主独立の協力体制を作り、もって使命達成に邁進する」という基本方針を掲げています。
■(2) 企業文化
ピーター・ドラッカー博士の経営理論と、創業者の精神的支柱である「いのちの道」の教えを融合させた独自の経営手法を実践しています。「知恵と知識によって変化に挑戦し、新しい価値と新しい需要を創造する」という考えのもと、科学的根拠に基づいた合理的な業務運営と、現場での「なぜなぜ改善」等の小委員会活動を通じた全員参加型の改善活動を重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
持続的な成長と企業価値向上を目指し、積極的な設備投資と財務基盤の安定化に取り組んでいます。具体的な数値目標として、連結売上高経常利益率4%以上、連結ROE7%以上の達成を掲げています。また、株主還元については連結配当性向30%を目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「すべての仕事を種蒔きの仕事から開始する」という方針のもと、営業と生産が一体となった部門別製品施策を推進しています。特に、新規技術を活用した品質向上や、顧客ニーズの多様化に対応する「2極化・3極化戦略」により、高付加価値製品と低価格製品の両面でラインアップを強化します。また、労働安全衛生管理体制の充実強化にも取り組み、安全安心な職場環境の実現を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「新しい価値の創造」を実現するため、本社だけでなく全国の各工場が地域ニーズに合わせた新製品開発を競い合う体制を構築しています。この過程を通じて従業員のやりがいとエンゲージメントを高めることを重視しています。また、研修施設「総合クリエイションセンター」を活用し、製造技術の伝承や経営理念の浸透を図るとともに、女性の活躍推進や多様な人材が活躍できる環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均(763万円)を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2024年12月期 | 39.3歳 | 15.3年 | 6,010,848円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 3.0% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 30.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 63.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 75.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 80.4% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 食品安全衛生
製品の品質や安全性に関わる問題が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は食品安全衛生管理本部を設置し、HACCPに基づく衛生管理やAIBの国際検査統合基準を活用した異物混入防止対策を徹底しています。また、製品表示についても専門部署によるチェックシステムで管理を強化しています。
■(2) 原材料の調達及び価格高騰
主要原料である小麦粉、油脂、砂糖等の価格高騰や、需給逼迫による調達難が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、調達先の多様化や代替原材料の検討、コスト削減の取り組みを進めるとともに、製品価格の改定等の対策を講じています。
■(3) 自然災害
地震や台風等の大規模な自然災害により工場が被災した場合、操業停止等による業績への影響が懸念されます。同社は緊急時の生産代替体制や自社物流網を活用した供給体制を構築しており、被災地への緊急食糧供給という社会的使命を果たすための事業継続体制の整備を進めています。



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