ユニ・チャーム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ユニ・チャーム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するユニ・チャームは、紙おむつ等のパーソナルケア事業とペットケア事業をグローバルに展開しています。直近の業績はアジア市場でのeコマースへの投資や競争激化により前年度比で減収減益となりましたが、高付加価値商品の提供等を通じて安定的な成長と収益性の改善を目指しています。


※本記事は、ユニ・チャーム株式会社の有価証券報告書(第66期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ユニ・チャームってどんな会社?

同社はパーソナルケア製品とペットケア製品の製造・販売をグローバルに展開する日用品メーカーです。

(1) 会社概要

1961年大成化工として設立し建材製造販売開始。1963年生理用ナプキンの製造販売を開始。1974年にユニ・チャームへ社名変更。1976年東証二部上場、1981年幼児用紙おむつ販売開始、1985年東証一部指定。その後台湾、タイ、オランダ、中国など海外展開を加速し、現在はプライム市場に上場しています。

従業員数は連結で16,542名、単体で1,429名です。筆頭株主は創業者一族の資産管理会社であるユニテックで、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は高原基金となっています。

氏名 持株比率
ユニテック 26.72%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.06%
高原基金 4.84%

(2) 経営陣

同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長執行役員は高原豪久氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
高原豪久 代表取締役社長執行役員 1991年同社入社。購買本部長、サニタリー事業本部長などを経て、2001年に代表取締役社長に就任。2004年より現職。
高久堅二 取締役専務 1983年同社入社。ベビー事業本部ディレクター、グローバルマーケティング本部長などを歴任。2026年より現職。
志手哲也 取締役専務執行役員共同CIO (Chief Inclusion Officer) 1985年同社入社。グローバル人事総務本部長等を経て、2024年に専務執行役員共同CIOに就任。2025年より現職。
淺田茂 取締役(監査等委員) 1973年松下電器産業入社。同社監査部長等を経て、2013年同社執行役員経理財務本部長に就任。2021年より現職。


社外取締役は、杉田浩章(元ボストン・コンサルティング・グループ日本代表)、ルゾンカ典子(コスモエネルギーホールディングス常務執行役員)です。

2. 事業内容

同社グループは、「パーソナルケア」「ペットケア」および「その他」事業を展開しています。

パーソナルケア

同セグメントでは、大人用排泄ケア用品、生理用品、ベビー用紙おむつなどのウェルネス・フェミニン・ベビーケア関連商品の製造・販売を行っています。幅広いラインアップで多様なニーズに対応し、海外ではアジア、中東、北米などで事業を展開しています。

収益は、卸売業者や小売店を通じた消費者への製品販売により得ています。事業の運営は同社のほか、ユニ・チャームプロダクツや海外の各現地子会社などが担っています。

ペットケア

同セグメントでは、犬や猫向けのペットフード、システムトイレ用取替サンドやペット用吸収ウェアなどのペットトイレタリー関連商品の製造・販売を行っています。国内のみならず、北米や中国、東南アジア地域においても製品を展開しています。

収益は、卸売業者や小売店、eコマースを通じた製品の販売により得ています。運営は同社のほか、ユニ・チャームプロダクツや米国のザ・ハーツ・マウンテン・コーポレーションなどが担っています。

その他

同セグメントでは、不織布や吸収体の加工・成形技術を活かし、産業用資材を中心とした業務用関連商品の製造および販売を行っています。

収益は、法人顧客に対する産業用資材などの販売により得ています。運営はユニ・チャーム国光ノンウーヴンなどが担っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5年間の業績推移を見ると、売上収益は2024年12月期まで順調に拡大していましたが、2025年12月期は減収となりました。利益面でも、原材料価格の高騰や競争激化、eコマースへの投資等の影響を受け、2025年12月期は減益となっており、利益率も11%台に低下しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 7827億円 8980億円 9418億円 9890億円 9453億円
税引前利益 1220億円 1157億円 1323億円 1345億円 1054億円
利益率(%) 15.6% 12.9% 14.0% 13.6% 11.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 727億円 676億円 861億円 818億円 652億円

(2) 損益計算書

売上高は前年度比で減少しており、それに伴い売上総利益も減少しています。売上総利益率は約11%台で推移しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 9890億円 9453億円
売上総利益 1128億円 1051億円
売上総利益率(%) 11.4% 11.1%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が128億円(構成比19%)、広告宣伝費が102億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益

主力であるパーソナルケア事業は、大人用おむつ等が好調だったものの、アジアでのeコマース投資や価格競争の影響により減収減益となりました。一方、ペットケア事業は北米での新商品展開などが寄与して増収となりましたが、利益面では減益となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
パーソナルケア 8261億円 7744億円 1109億円 832億円 10.7%
ペットケア 1487億円 1561億円 258億円 241億円 15.4%
その他 143億円 149億円 17億円 16億円 10.7%
調整額 -1億円 -1億円 - - -
連結(合計) 9890億円 9453億円 1385億円 1089億円 11.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 1371億円 1315億円
投資CF -738億円 -587億円
財務CF -668億円 -839億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は83.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

「市場と顧客に対し、常に第一級の商品とサービスを創造し、日本及び海外市場に広く提供することによって、人類の豊かな生活の実現に寄与する」ことを経営理念に掲げています。ステークホルダーに対して常に新しい価値創造に努め、社会的責任を果たすことを目指しています。

(2) 企業文化

「NOLA & DOLA」(Necessity of Life with Activities & Dreams of Life with Activities:さまざまな負担からの解放を促し、生きる楽しさを満足すること)を事業の基盤とし、従業員一人ひとりが革新の震源となる「共振の経営」を実践しています。現場と経営陣が目的を共有し、一体感を持って価値創造に取り組む風土があります。

(3) 経営計画・目標

2026年から開始する「第13次中期経営計画」において、以下の目標を掲げています。事業成長に加えて資本政策の再構築を推進し、資本効率の高い経営体質の構築を目指しています。

・2030年度の連結売上高1.5兆円
・コア営業利益率17%
・ROE(自己資本利益率)17%

(4) 成長戦略と重点施策

「3つのR」を通じた事業モデルの進化を推進し、収益性と資本効率の向上を図ります。AIやデジタルを活用した「Renaissance(高付加価値化)」、外部パートナーを活用する「Rebirth(脱・製造業)」、全社横断的なデータ基盤の構築による「Resonance(共振)」に取り組み、グローバル市場での競争力強化を目指しています。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「BOP-Ship」を体現できる「共振人材」を世界中で育成することを基本戦略としています。社員一人ひとりの「志・経済・心と体」の「三つの豊かさ」を追求し、主体的なキャリア開発を支援するプラットフォーム「KYOSHIN」の導入や、多様な人材が活躍できるダイバーシティの推進などに注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 40.7歳 14.7年 8,754,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 19.5%
男性育児休業取得率 102.7%
男女賃金差異(全労働者) 65.5%
男女賃金差異(正規労働者) 76.6%
男女賃金差異(非正規労働者) 52.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、仕事を通じた成長実感における肯定的な回答の比率(90.1%)、一人当たり研修日数(4.8日)、一人当たり研修時間(38時間)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 消費者ニーズやマクロ経済の急激な変化

価値観や購買行動の急激な変化や、世界的なインフレ圧力による低価格品への需要シフトなどに適切に対応できない場合、ブランド価値の毀損や市場シェアの低下を招くリスクがあります。同社はデジタル技術を活用したインサイト分析や製品化のリードタイム短縮を進めています。

(2) eコマースなど流通チャネルの変化

オンライン販売の急拡大やデジタルチャネルでの販売手法の多様化に伴い、販売戦略やサプライチェーンの再構築が遅れた場合、既存チャネルでの存在感低下や収益減少の恐れがあります。同社はプラットフォーマーとの提携強化や直接販売チャネルの強化を図っています。

(3) グローバル市場での競争環境の激化

グローバル大手メーカーの巨大化や新興国メーカーの台頭による価格競争の激化、技術革新によるコモディティ化などにより、収益性の低下やシェア縮小のリスクがあります。同社は独自の特許技術やサステナビリティ対応による品質優位性の確保や事業ポートフォリオの見直しを推進しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

ユニ・チャームの転職研究 2025年12月期3Q決算に見るキャリア機会

ユニ・チャームの2025年12月期3Q決算は、アジアの収益性が回復軌道に乗り、親会社利益は前年比2.0%の増益。新中長期目標「2035」の策定や生成AIの全社導入など、「社会価値」と「テック」を融合させた独自の成長戦略を推進しています。転職希望者がどの事業で、どんな役割を担えるのかを整理します。