※本記事は、スターツ出版株式会社の有価証券報告書(第43期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. スターツ出版ってどんな会社?
同社は、小説投稿サイトを起点とした書籍・コミックの発行と、女性向けメディア・予約サイトの運営を展開しています。
■(1) 会社概要
1983年にコミュニティ紙の発行を目的に千曲出版として設立され、1989年に現在のスターツ出版に商号変更しました。1996年には女性向けWEBサイト「オズモール」を開設しインターネット事業を開始、2004年にジャスダック証券取引所(現スタンダード市場)に上場しました。2007年の小説サイト「野いちご」オープン以降、書籍・コミック分野を拡大し、現在に至ります。
現在、従業員数は単体で240名規模の体制となっています。筆頭株主は親会社であるスターツコーポレーションで、第2位は同じく同社グループのスターツアメニティー、第3位はスターツグループ創業者の村石久二氏となっており、グループ内で強固な資本関係を構築しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| スターツコーポレーション | 48.59% |
| スターツアメニティー | 20.99% |
| 村石久二 | 2.71% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は菊地修一氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 菊地修一 | 取締役社長(代表取締役) | 1984年リクルート入社。同社住宅情報編集長などを経て、2003年同社入社。2004年より現職。 |
| 金子弘 | 常務取締役管理部長 | 1989年スターツ入社。2000年同社入社。総務人事部長、管理部長などを経て、2023年より現職。 |
| 今泉俊一 | 常務取締役書籍コンテンツ部門担当役員 | 2001年同社入社。書籍コンテンツ部担当部長、第2編集部長などを経て、2024年より現職。 |
| 関根赴治 | 常務取締役メディアソリューション部門担当役員 | 2000年同社入社。オズモールレストラン事業推進部長などを経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、福田峰夫(元オフィスM社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「書籍コンテンツ事業」および「メディアソリューション事業」を展開しています。
■書籍コンテンツ事業
同セグメントでは、「野いちご」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」といった小説投稿サイトの運営を起点に、恋愛小説から異世界ファンタジー、ライト文芸まで幅広いジャンルの作品を書籍やコミックとして発行しています。読者ニーズを捉えた迅速なコンテンツ開発と、映像化などのIP展開を行っています。
収益は主に、取次店や書店を通じた紙の書籍の販売代金、および電子書店などのプラットフォームを通じた電子書籍の売上に連動したロイヤリティ収入から得ています。事業の運営は同社が行っています。
■メディアソリューション事業
同セグメントでは、厳選したレストランや宿泊施設の予約サービス「オズのプレミアム予約」のほか、「オズモール」「オズマガジン」等の東京地域密着メディアとSNS、リアルイベントを組み合わせたPR・販促ソリューションを展開しています。
収益は主に、予約サービスを通じた送客実績に応じた契約施設からの送客手数料収入、雑誌の販売代金、および特定の誌面やWEBメディアへの広告掲載に伴う広告主からの広告収入から得ています。事業の運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は83億円から86億円へ増加した後、当期は81億円へと減少しています。利益面でも、経常利益が24億円で推移した後、当期は19億円へ減少しており、直近は減収減益の傾向にあります。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 83億円 | 86億円 | 81億円 |
| 経常利益 | 24億円 | 24億円 | 19億円 |
| 利益率(%) | 28.4% | 28.4% | 23.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 18億円 | 18億円 | 14億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で減少する一方、物価高による印刷費などの製造原価上昇により売上原価率は上昇し、売上総利益は減少しました。減収とコスト増の影響により、営業利益および営業利益率は低下しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 86億円 | 81億円 |
| 売上総利益 | 47億円 | 42億円 |
| 売上総利益率(%) | 55.3% | 51.3% |
| 営業利益 | 23億円 | 18億円 |
| 営業利益率(%) | 27.2% | 21.6% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が8億円(構成比34%)、給与手当が7億円(同29%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の書籍コンテンツ事業は、前年のヒット作品の反動減や発行点数の計画未達により減収減益となりました。一方、メディアソリューション事業は、レストラン予約の堅調な推移や商業施設向けPRの受注増により安定した増収増益を維持しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 書籍コンテンツ事業 | 53億円 | 48億円 | 23億円 | 16億円 | 34.3% |
| メディアソリューション事業 | 33億円 | 33億円 | 2億円 | 2億円 | 7.0% |
| 連結(合計) | 86億円 | 81億円 | 23億円 | 18億円 | 21.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
スターツ出版は、営業活動により資金を獲得し、投資活動ではシステム開発等に資金を使用しました。財務活動では配当金の支払い等で資金を使用しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 17億円 | 8億円 |
| 投資CF | 0.3億円 | -10億円 |
| 財務CF | -3億円 | -5億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「感動プロデュース企業へ」を経営ビジョンとして掲げています。メッセージやストーリーの詰まったコンテンツを創造し、感動の輪を広げることにより、コンシューマーやクライアントに感動体験と需要創造を提供することが、同社の最大の価値であると考えています。
■(2) 企業文化
同社が属するスターツグループは、創業以来変わることのない企業理念「人が、心が、すべて。」のもと、「個を活かしながら、全体の調和を重んじる」という人事戦略を重視しています。穏やかで伸び伸びとした、社員の成長を持続できる企業風土を大切にし、社内チームワークの醸成を重要視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、経営上の目標の達成状況を判断するための重要な客観的指標として、売上高、営業利益、営業利益率を重視しています。事業環境の変化に対応するため、ローリング方式で見直した「中期経営計画(2026~2028年度)」を公表し、持続的な成長を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
出版事業の領域では、読者の嗜好性を捉えた迅速なコンテンツ開発や電子書籍販売の拡大、自社コンテンツの映像化などのIP展開を強化しています。ネットビジネスの領域では、良質なコンテンツの創出とともにデジタルマーケティングを強化し、SNS等の活用によるリーチ拡大やCRMによるユーザーのロイヤルティ向上を図っています。AIを活用したサービス開発やM&A等の成長投資も推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「さがし-育て-活かす」という一連のサイクルを事業展開にリンクさせ、多様な働き方や価値観が求められる中、社員一人ひとりの個性を尊重し、働きがいを感じながら自分らしく働ける環境整備を推進しています。業種と職種を横断した柔軟なキャリア形成を支援する制度も設けています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 34.8歳 | 9.5年 | 6,111,246円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 47.8% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | - |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | - |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | - |
※男性育児休業取得率は配偶者が出産した男性労働者がいなかったため「-」としています。労働者の男女の賃金の差異については公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 出版業界における委託販売制度と返品リスク
出版物の委託販売制度により、約定期間内の返品を受け入れる販売条件を採用しています。返品率の低減を目指し、計画刊行や電子書籍販売の拡大に努めていますが、予想を超える返品が発生した場合、返金負債の計上等を通じて業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 紙の出版市場の縮小と電子メディアとの競争
デジタルデバイスの普及や少子高齢化を背景に、紙の書籍・雑誌市場は縮小傾向にあります。他メディアとの競争激化や物流費・印刷コストの上昇が継続した場合、業績に悪影響が生じる懸念があり、同社はマーケティング強化と迅速なコンテンツ開発で対応しています。
■(3) インターネット関連事業におけるシステムトラブル
同社のインターネット事業は、通信ネットワークやサーバーシステムに依存しています。自然災害やクラウドサービスの停止、サイバー攻撃などによりサービス提供が一時的に困難となった場合、ユーザーからの信頼低下や直接的な損害が生じ、事業運営に影響を与えるリスクがあります。



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