※本記事は、株式会社レゾナック・ホールディングスの有価証券報告書(第117期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. レゾナック・ホールディングスってどんな会社?
半導体や電子材料、モビリティ部材などを幅広く手がける世界トップクラスの機能性化学メーカーです。
■(1) 会社概要
1939年に日本電気工業と昭和肥料が合併して昭和電工として設立されました。1949年に東京証券取引所に上場しています。2020年には日立化成を買収し、2023年に持株会社体制への移行に伴いレゾナック・ホールディングスへ商号を変更しました。2025年には石油化学事業を子会社へ承継しています。
同社グループの従業員数は連結で21,525名、単体で346名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主および第2位の株主は資産管理業務などを行う信託銀行となっており、第3位には海外の金融機関が名を連ねています。機関投資家が上位を占める株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 17.33% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 8.79% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 | 4.79% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性4名の計14名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長は髙橋秀仁氏が務めており、社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 髙橋秀仁 | 取締役社長(代表取締役) | 三菱銀行や外資系企業を経て2015年入社。常務執行役員などを務め、2022年より代表取締役社長。2023年より現職。 |
| 森川宏平 | 取締役会議長 | 1982年入社。最高技術責任者や代表取締役社長などを歴任し、2022年より取締役会議長。2025年より現職。 |
| 染宮秀樹 | 取締役 | ソニーグループなどで経営企画部門長等を歴任後、2021年入社。最高財務責任者を務め、2023年より現職。 |
| 眞岡朋光 | 取締役 | ルネサスエレクトロニクス執行役員などを経て2021年入社。最高戦略責任者を務め、2024年より現職。 |
| 今井のり | 取締役 | 1995年日立化成工業入社。モビリティ事業本部の要職や最高戦略責任者を経て、最高人事責任者として2024年より現職。 |
社外取締役は、常石哲男(元東京エレクトロン代表取締役会長)、安川健司(アステラス製薬代表取締役会長)、大西賢(元日本航空代表取締役社長)、榊原泉(富士フイルム富山化学元事業開発部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「半導体・電子材料」「モビリティ」「イノベーション材料」「ケミカル」「クラサスケミカル」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 半導体・電子材料
半導体前工程で使用される高純度ガスや研磨材料、後工程向けの封止材や銅張積層板などのほか、ハードディスクやパワー半導体用エピタキシャルウェハーを製造し、世界のデバイスメーカー等に提供しています。
主に顧客企業への製品販売によって収益を得ています。事業の運営は主にレゾナックが担っており、ハードディスク関連はレゾナック・ハードディスクなどが製造・販売を行っています。
■(2) モビリティ
自動車の電動化や軽量化に貢献する樹脂成形品、摩擦材、粉末冶金製品、アルミ機能部材などを自動車メーカーや部品メーカー向けに提供しています。
主に自動車関連企業に対する部材の販売を通じて収益を上げています。運営はレゾナックのほか、レゾナック・オートモーティブプロダクツなどが中心となって行っています。
■(3) イノベーション材料
ディスプレイや電子部品向けの樹脂材料、インフラ補修用の機能性化学品、セラミックスなどを展開し、幅広い産業分野の顧客へ高機能な素材を提供しています。
顧客からの製品購入代金が主な収益源となっています。研究開発から製造・販売まで、主にレゾナックが事業運営を担っています。
■(4) ケミカル
液化アンモニアなどの基礎化学品、産業ガスのほか、鉄鋼用の黒鉛電極やリチウムイオン電池向けのカーボン負極材などを製造し、産業インフラを支える顧客に提供しています。
化学品や炭酸ガスの販売、および黒鉛電極などの製品販売により収益を得ています。運営はレゾナックを中心に、レゾナック・ガスプロダクツなどが担っています。
■(5) クラサスケミカル
石油化学事業として、オレフィンや有機化学品、合成樹脂などの基礎素材を製造し、幅広い産業分野のメーカーに対して供給しています。
ナフサなどを原料とした石油化学製品の販売を通じて収益を獲得しています。事業の運営は主にクラサスケミカルが担っています。
■(6) その他
報告セグメントに含まれない事業として、建材や各種サービスの提供、研究開発等に関連する事業を展開しています。
顧客からの製品販売やサービス提供の対価として収益を得ています。レゾナック建材やレゾナック・ビジネスサービスなどがそれぞれの専門領域で事業を運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
直近3期間の業績を見ると、売上収益は1兆2,000億円から1兆3,000億円台で推移しています。2024年12月期は半導体市況の回復などにより黒字転換と大幅な増益を達成しました。2025年12月期は、事業譲渡に伴う影響などで売上収益がやや減少したほか、減損損失の計上により税引前利益および当期利益も前年を下回る結果となっています。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 12,954億円 | 13,915億円 | 13,471億円 |
| 税引前利益 | -142億円 | 846億円 | 450億円 |
| 利益率(%) | -1.1% | 6.1% | 3.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -65億円 | 735億円 | 290億円 |
売上収益は前期比でやや減少したものの、原価率の改善により売上総利益は増加し、売上総利益率も上昇しました。一方で、一部事業の譲渡決定に伴う減損損失が計上されたことなどから、営業利益は前期の約半分の水準にとどまり、営業利益率も低下しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 13,915億円 | 13,471億円 |
| 売上総利益 | 3,111億円 | 3,238億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.4% | 24.0% |
| 営業利益 | 890億円 | 467億円 |
| 営業利益率(%) | 6.4% | 3.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が685億円(構成比25.8%)、輸送費が437億円(同16.5%)、減価償却費及び償却費が304億円(同11.4%)を占めています。
半導体・電子材料事業は、AI等の先端半導体向け後工程材料の販売増により増収増益となり、利益を牽引しています。一方、モビリティ事業やイノベーション材料事業は一部需要の減少で減収減益となりました。ケミカル事業は黒鉛電極の市況低迷の影響を受け赤字に転落し、クラサスケミカル事業も製品市況の下落により減益となっています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 半導体・電子材料 | 4,501億円 | 5,113億円 | 737億円 | 1,084億円 | 21.2% |
| モビリティ | 2,010億円 | 1,793億円 | 63億円 | 44億円 | 2.5% |
| イノベーション材料 | 1,098億円 | 1,050億円 | 113億円 | 104億円 | 9.9% |
| ケミカル | 2,152億円 | 1,854億円 | 18億円 | -55億円 | -3.0% |
| クラサスケミカル | 3,317億円 | 3,042億円 | 86億円 | 47億円 | 1.5% |
| その他 | 1,233億円 | 1,027億円 | 0億円 | 44億円 | 4.3% |
| 調整額 | -395億円 | -408億円 | -96億円 | -176億円 | - |
| 連結(合計) | 13,915億円 | 13,471億円 | 921億円 | 1,091億円 | 8.1% |
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態を示しています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.3%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も33.2%で市場平均を下回っています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1,637億円 | 1,303億円 |
| 投資CF | -523億円 | -871億円 |
| 財務CF | -205億円 | -699億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、存在意義(パーパス)として「化学の力で社会を変える」を掲げています。先端材料パートナーとして時代が求める機能を創出し、グローバル社会の持続可能な発展に貢献することを使命としています。サステナビリティを経営の根幹に据え、「世界トップクラスの機能性化学メーカー」となることを目指しています。
■(2) 企業文化
日々の活動において「プロフェッショナルとしての成果へのこだわり」「機敏さと柔軟性」「枠を超えるオープンマインド」「未来への先見性と高い倫理観」という4つの価値観(バリュー)を大切にしています。これらを基盤として、社内外のステークホルダーと連携する「共創」を重んじ、自律的な人材が活躍する文化の醸成を図っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、持続的な成長を実現するための中長期的な数値目標を設定しています。目標達成を通じて、中長期的に株主総利回り(TSR)が化学業界で上位25%の水準となることを目指して経営を進めています。
* 売上収益:1兆円超
* EBITDAマージン:20%
* ROIC:10%
* ネットD/Eレシオ:1.0倍以下
■(4) 成長戦略と重点施策
コア成長事業である半導体・電子材料への積極的な設備投資を継続し、半導体需要の拡大を取り込む戦略を進めています。同時に、石油化学を中心とする伝統的な総合化学メーカーから、顧客のニーズに応じた機能を発揮する機能性化学メーカーへの変貌を遂げるため、事業ポートフォリオの改革や共創型人材の育成に精力的に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
全従業員が心身の健康を大切にしながら個性を発揮し、志をともにする仲間とパーパスの実現に挑戦できる環境づくりを重視しています。社会課題の解決に向けて社内外と連携できる「共創型人材」の創出を掲げ、バリューに基づいたマネジメントの浸透や社内公募・社内副業制度の整備などを通じて、従業員の自律的なキャリア形成を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 46.3歳 | 16.2年 | 11,319,076円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.9% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 75.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 67.6% |
また、同社は「人的資本に関する指標及び目標」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員のエンゲージメントスコア(60.0%)、心理的安全性のサーベイスコア(63.0%)、障がい者雇用率(2.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 半導体・電子材料事業の需要変動
モバイル機器やデータセンター向けの半導体材料等の需要は、世界のマクロ経済や最終製品需要の変動に大きく影響を受けます。また、急激な技術変化や価格低下による競争激化、地政学リスクによるサプライチェーン寸断等が生じた場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) モビリティ市場における競争激化と技術変化
自動車の電動化や軽量化へのシフトが進む中、新規参入者を含む競争が激化しています。新たな技術開発やニーズ変化への対応が遅れるリスクに加え、内燃機関車市場の縮小により既存事業の収益性が低下し、財務状況に影響を与える可能性があります。
■(3) ケミカル・石油化学事業の市況変動
黒鉛電極事業は需要減少により十分な利益を確保できないリスクがあります。また、石油化学事業は原油やナフサ価格の変動、需給バランスの緩和に影響されやすく、カーボンニュートラル化への対応に伴う投資負担の増加等により業績に影響が及ぶ可能性があります。



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