※本記事は、東亞合成株式会社の有価証券報告書(第113期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 東亞合成ってどんな会社?
東亞合成は、基礎化学品から瞬間接着剤などの高機能製品まで、幅広い化学製品を展開するメーカーです。
■(1) 会社概要
1942年に矢作工業として設立され、1944年に東亞合成化学工業へ改称しました。1949年に東京証券取引所へ上場しています。1960年に日本初のアクリル酸エステルの企業化に成功し、1963年には瞬間接着剤「アロンアルフア」の生産を開始しました。1994年に現在の東亞合成へ社名を変更しています。
現在の従業員数は連結で2,680名、単体で1,444名です。大株主の状況は、筆頭株主が資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に日本カストディ銀行(信託口)となっています。第3位には取引先で構成される東亞合成取引先持株会が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.54% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.43% |
| 東亞合成取引先持株会 | 4.77% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。
代表取締役会長CEOの髙村美己志氏と代表取締役社長COOの小淵秀範氏が経営を牽引しています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 髙村美己志 | 代表取締役会長CEO | 1980年同社入社。管理部人事・総務グループリーダー兼IR広報室長、取締役管理本部長、代表取締役副社長兼経営戦略本部長、代表取締役社長などを経て、2025年より現職。 |
| 小淵秀範 | 代表取締役社長COO | 1988年同社入社。執行役員ポリマー・オリゴマー事業部長、MTアクアポリマー代表取締役社長、取締役業務本部長兼本社営業部長などを経て、2025年より現職。 |
| 丸本悦造 | 取締役 | 1987年同社入社。技術生産本部品質保証部長、徳島工場製造部長、執行役員横浜工場長、同名古屋工場長、取締役技術生産本部長兼研究開発本部長などを経て、2026年より現職。 |
| 髙山昭二 | 取締役MTアクアポリマー代表取締役社長 | 1985年同社入社。TGコーポレーション代表取締役社長、執行役員基幹化学品事業部長、取締役グループ業務本部長兼本社営業部長などを歴任し、2026年より現職。 |
| 松田明彦 | 取締役アロン化成代表取締役社長 | 1986年同社入社。接着材料事業部コンシューマ部長、グループ管理本部コーポレートコミュニケーション部長、取締役グループ経営管理本部長CFOなどを経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、加藤隆史(東京大学名誉教授)、伊藤雅彦(元フジクラ代表取締役社長CEO)、石山麗子(国際医療福祉大学大学院教授)、髙野信彦(税理士・元熊本国税局長)、寺本敏之(元三井住友銀行取締役)、小町谷育子(弁護士・放送倫理検証委員会委員長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「基幹化学品事業」「ポリマー・オリゴマー事業」「接着材料事業」「高機能材料事業」「樹脂加工製品事業」および「その他の事業」を展開しています。
■基幹化学品事業
カセイソーダ、カセイカリ、次亜塩素酸ソーダなどの電解製品をはじめ、硫酸、工業用ガス、アクリル酸などのアクリルモノマー等を提供しています。幅広い産業分野の基礎素材として顧客企業に供給しています。
収益はこれらの基礎化学品の販売対価として顧客から得ています。運営は同社のほか、東亞テクノガスやTOAGOSEI SINGAPORE PTE. LTD.などの子会社・関連会社が担っています。
■ポリマー・オリゴマー事業
アクリルポリマー、高分子凝集剤、光硬化型樹脂などのアクリルオリゴマー等を提供しています。自動車、二次電池、半導体、電子材料、医薬・化粧品分野など、幅広い分野の顧客へ高付加価値製品を供給しています。
収益は機能性高分子材料や光硬化型樹脂の販売対価として得ています。運営は同社を中心に、MTアクアポリマー、台湾のTaiwan Toagosei Co., Ltd.などがグローバルに展開しています。
■接着材料事業
「アロンアルフア」で知られる瞬間接着剤や、機能性接着剤等を提供しています。一般消費者向けの家庭用製品から、自動車、電子材料、高速通信などの成長分野に向けた産業用製品まで幅広く展開しています。
収益は各種接着剤の販売によって得ています。運営は同社をはじめ、アロン包装や米国のToagosei America Inc.などのグループ会社が国内外で行っています。
■高機能材料事業
高純度無機化学品や、消臭剤、抗菌・抗ウイルス剤、防カビ剤などの無機機能材料を提供しています。半導体や電子材料の製造プロセスで使われる高純度な酸・アルカリなどを顧客企業に供給しています。
収益はこれらの高機能な無機化学品や機能材料の販売によって得ています。運営は同社や子会社が主体となって行っています。
■樹脂加工製品事業
管工機材製品等の環境インフラシステム製品、建材・土木製品、介護用品等のライフサポート製品、エラストマーコンパウンド等のエコマテリアルを提供しています。社会インフラから一般消費者の生活支援まで幅広く対応しています。
収益はこれらの各種樹脂加工製品の販売によって得ています。運営は主に子会社のアロン化成が担い、タイのAronkasei (Thailand) Co., Ltd.なども事業を展開しています。
■その他の事業
化学製品等の商社事業や、グループ製品の包装充填業務、輸送業務等の物流事業、ならびに不動産管理やシェアードサービスなどの業務受託を提供しています。
収益は商品の販売益や輸送・管理などのサービス提供による手数料として得ています。運営はTGコーポレーション、東亞物流、東亞興業、東亞ビジネスアソシエなどの関係会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は1500億円台から1600億円台で底堅く推移していますが、経常利益率は低下傾向にあります。当期は販売数量の減少や固定費の増加が影響し減収減益となりましたが、投資有価証券の売却益などにより最終利益は増益を確保しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1563億円 | 1608億円 | 1594億円 | 1676億円 | 1623億円 |
| 経常利益 | 190億円 | 164億円 | 145億円 | 160億円 | 151億円 |
| 利益率(%) | 12.1% | 10.2% | 9.1% | 9.5% | 9.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 113億円 | 116億円 | 142億円 | 124億円 | 127億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で減少したものの、売上総利益は増加し、売上総利益率も改善しています。一方で、労務費や減価償却費などの固定費増加により販売費及び一般管理費が膨らみ、営業利益は横ばいにとどまりました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1676億円 | 1623億円 |
| 売上総利益 | 457億円 | 471億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.3% | 29.0% |
| 営業利益 | 142億円 | 142億円 |
| 営業利益率(%) | 8.5% | 8.7% |
販売費及び一般管理費のうち、運送費が89億円(構成比27.0%)、従業員給与が59億円(同17.9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上高を見ると、アクリルポリマーなどが好調だったポリマー・オリゴマー事業や、環境インフラ向けが伸びた樹脂加工製品事業は増収となりましたが、販売数量が減少した基幹化学品事業が大きく落ち込み、全体として減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 基幹化学品事業 | 791億円 | 718億円 |
| ポリマー・オリゴマー事業 | 352億円 | 362億円 |
| 接着材料事業 | 133億円 | 136億円 |
| 高機能材料事業 | 102億円 | 102億円 |
| 樹脂加工製品事業 | 277億円 | 282億円 |
| その他の事業 | 20億円 | 24億円 |
| 連結(合計) | 1676億円 | 1623億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態となっています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 202億円 | 223億円 |
| 投資CF | -136億円 | -296億円 |
| 財務CF | -145億円 | -45億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「素材と機能の可能性を追求し、化学の力で新しい幸せをあなたへ届けます。」を企業理念として掲げています。この理念のもと、既存事業の拡大と新たな柱となる新製品・新事業の創出により、持続的な成長を目指すことを基本方針として事業を展開しています。
■(2) 企業文化
「未来の子供たちに幸せが届くよう、新しい価値創造に挑戦します」というサステナビリティ方針を掲げています。同社が持つ化学企業としての技術や人財などの多様な経営資源を最大限に活用し、将来世代にわたる豊かな社会の持続的な発展を目指し、環境対応を重視した事業活動に取り組む姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2026年から2028年の3年間を対象とする中期経営計画「Connect and Create 2028(共創で未来を拓く)」を策定し、以下の目標を掲げています。
* 連結売上高 1,800億円
* 連結営業利益 180億円
* 自己資本当期純利益率(ROE) 6.5%
* 株価純資産倍率(PBR) 1.0倍以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画における重要施策として、モビリティ、半導体、メディカル、環境インフラなどの注力分野への積極的な開発と投資を継続します。また、事業ポートフォリオの最適化による既存事業の収益性向上やグローバル展開の推進、DXを活用した業務変革を図ります。さらに、株主還元や人的資本投資などの財務・資本戦略も実施します。
* 設備投資額 590億円(2026-2028年累計)
* 売上高研究開発比率 4%以上(72億円以上)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
価値創造の源泉は人財であるとの認識のもと、多様な人財が能力を最大限に発揮し活躍できる環境づくりを推進しています。時代や環境の変化に対応できる自律的キャリアを持った人財や、グローバルに活躍できる人財の育成に注力するほか、適材適所の配置や多様な働き方を支援する各種制度改革にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 43.7歳 | 18.8年 | 7,398,744円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.1% |
| 男性育児休業取得率 | 73.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 76.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 76.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 46.1% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、アブセンティーズム(2.1%)、女性採用比率・総合職(32.4%)、有給休暇取得率(93.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内外の拠点における自然災害の影響
同社グループは国内外に生産・営業拠点を有しており、地震や台風、洪水などの自然災害に被災した場合、建屋や設備の損壊、操業の停止といった被害が発生する可能性があります。特に東海地方を中心とする主要拠点において大規模な地震が発生した場合、業績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 化学工場における事故発生リスク
主な事業が化学製品の製造であるため、設備トラブルやヒューマンエラーによる火災、爆発、化学物質の漏えいなどの事故が発生する可能性があります。これにより、建屋や設備の損壊、操業停止、周辺地域への賠償が生じるおそれがあり、各工場では緊急時自動停止装置の設置や防災訓練の実施などの対策を講じています。
■(3) 汎用化学製品などの市場競争激化
産業の基礎素材となる汎用化学製品から最終製品まで幅広く展開していますが、世界的・地域的な需給環境の変動や代替素材の登場により、販売数量や価格が変動するリスクがあります。特に汎用製品は他社との差別化が難しく、激しい価格競争によって同社グループの優位性が維持できなくなる可能性があります。



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