協和キリン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

協和キリン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

協和キリンは東京証券取引所プライム市場に上場し、医療用医薬品の製造および販売を主力とする企業です。2025年12月期の連結売上収益は、グローバル戦略品や技術収入の伸長により4,968億円と前期比で増収となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益も670億円となり、増収増益を達成しています。


※本記事は、協和キリン株式会社の有価証券報告書(第103期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月10日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 協和キリンってどんな会社?


同社は医療用医薬品の製造および販売を主力事業とし、グローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要


1937年に協和化学研究所が設立され、1949年に協和醱酵工業として設立および東証上場を果たしました。2008年にキリンファーマを完全子会社化して協和発酵キリンへ、2019年に協和キリンへ商号変更しています。2024年に英国のOrchard Therapeuticsを完全子会社化するなど、事業基盤を拡大しています。

従業員数は連結5,161名、単体3,503名です。筆頭株主は親会社のキリンホールディングスで過半数の株式を保有しています。第2位および第3位は資産管理業務などを行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
キリンホールディングス 55.17%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.57%
日本カストディ銀行(信託口) 3.77%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性4名の計14名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役会長は宮本昌志氏、代表取締役社長はアブドゥル・マリック氏が務めています。社外取締役比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
宮本 昌志 代表取締役会長Chief Executive Officer(CEO) 1985年麒麟麦酒入社。2011年協和発酵キリン信頼性保証本部薬事部長。執行役員等を経て、2018年代表取締役社長、2024年CEOに就任。2025年より現職。
アブドゥル・マリック 代表取締役社長Chief Operating Officer(COO) 1999年Hoechst Marion Roussel等で要職を歴任。2018年Kyowa Kirin International副社長。2024年CIBOを経て2025年より現職。
山下 武美 取締役副社長Chief Scientific Officer (CSciO) 1987年麒麟麦酒入社。2010年協和発酵キリン研究本部次世代研究所長。執行役員等を経て、2024年CMO。2025年より現職。
藤原 大介 取締役 1995年麒麟麦酒入社。理化学研究所訪問研究員などを経て、2023年キリンホールディングス執行役員。2025年取締役およびキリンホールディングス常務執行役員。


社外取締役は、小山田隆(元三菱東京UFJ銀行頭取)、鈴木善久(元伊藤忠商事社長COO)、中田るみ子(元三菱ケミカル取締役)、菅野寛(早稲田大学大学院教授)、伊藤由希子(慶應義塾大学大学院教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医薬」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 医薬


同社グループは、医療用医薬品の製造および販売を行っています。骨・ミネラル領域、血液がん・難治性血液疾患領域、希少疾患(造血幹細胞遺伝子治療)などの疾患領域に注力し、グローバルに事業を展開して世界中の患者へ医薬品を届けています。

収益は、主に医療機関や卸売業者に対する医療用医薬品の販売によるものです。また、パートナー企業への技術導出によるライセンス収入等も得ています。運営は協和キリンおよびKyowa Kirin Internationalをはじめとする国内外の連結子会社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益は一貫して増加傾向にあり、順調な事業拡大が伺えます。税引前利益や当期利益についても、年度により一時的な変動はあるものの、高水準の利益率を維持しつつ安定的な収益を確保しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 3522億円 3984億円 4422億円 4956億円 4968億円
税引前利益 601億円 676億円 972億円 835億円 872億円
利益率(%) 17.0% 17.0% 22.0% 16.8% 17.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 523億円 536億円 812億円 599億円 670億円

(2) 損益計算書


売上高は前期から微増と同水準を維持していますが、売上総利益は増加しており、売上総利益率も向上しています。収益性の高いグローバル戦略品の伸長やコストコントロールの成果が表れています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 4956億円 4968億円
売上総利益 1815億円 2101億円
売上総利益率(%) 36.6% 42.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が801億円(構成比48%)、その他が561億円(同34%)、販売促進費が166億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は医薬事業の単一セグメントですが、地域別に見ると、北米において主力製品が大きく伸長し増収を牽引しています。一方、日本では薬価基準引き下げなどの影響により減収となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
日本 1347億円 1225億円
北米 1744億円 1925億円
EMEA 849億円 837億円
その他 1015億円 981億円
連結(合計) 4956億円 4968億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFもマイナスとなっており、本業で稼いだ資金で投資を行い、かつ借入金の返済や株主還元を実施する健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 679億円 966億円
投資CF -1424億円 -892億円
財務CF -847億円 -369億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「協和キリングループは、ライフサイエンスとテクノロジーの進歩を追求し、新しい価値の創造により、世界の人々の健康と豊かさに貢献します。」を経営理念として掲げています。社会課題への取り組みによる社会的価値と経済的価値の創造を両立するCSV経営を実践し、企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社グループで働くすべての人々が行動の拠り所とする中心概念「Commitment to Life」と、「Innovation(イノベーション)」「Integrity(インテグリティ)」「Teamwork/Wa(チームワーク/和・輪)」の3つの価値観を共有しています。また、コンフォートゾーンから一歩踏み出し挑戦する「KABEGOE」を企業文化として浸透させています。

(3) 経営計画・目標


2030年に向けたビジョン達成後の継続した成長を見据え、中長期構想として2030年代前半までに以下の財務目標の達成を目指しています。

* ROE(自己資本利益率):10%台前半
* コア営業利益率:30%

(4) 成長戦略と重点施策


自社で注力する疾患領域(骨・ミネラル、血液がん・難治性血液疾患、希少疾患)と先進的モダリティを明確化し、革新的な医薬品の創出を加速させます。また、戦略的投資による外部アセットの獲得やパートナー連携の強化を推進し、適切なビジネスモデルを選択することで、創出した価値の最大化と最速での患者への提供を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材をイノベーションの源泉と位置付け、「協和キリングループ人材マネジメント基本方針」を定めています。グローバル共通の人事基盤整備やジョブ型の等級・報酬制度の導入を通じて、適材適所の人材配置とキャリアオーナーシップの醸成を推進し、多様な人材が能力を最大限引き出せる組織づくりを行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 42.4歳 15.5年 9,866,204円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 17.1%
男性育児休業取得率 129.4%
男女賃金差異(全従業員) 78.3%
男女賃金差異(正規雇用) 79.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 68.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員エンゲージメントの肯定回答率(70%)、社員を活かす環境の肯定回答率(70%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) サイバーセキュリティのリスク


同社グループは研究開発や製造、販売に関わる重要情報システムをグローバルに運用しており、機密性の高いデータを保有しています。サイバー攻撃やセキュリティ対策の不備によりシステム停止や情報漏えいが発生した場合、事業の継続が困難となり、社会的信用の低下や重大な経済的損失を被るリスクがあります。

(2) 医薬品の安定供給および品質リスク


多様なモダリティの製品や治験薬を製造・供給していますが、製造や品質に関するトラブル、原材料の調達不安、自然災害などにより供給不足が発生する恐れがあります。特に重要品目での欠品や出荷制限は、患者への治療継続を困難にし、社会的信用の失墜や売上減少などの影響を及ぼす可能性があります。

(3) パートナー企業に関する管理リスク


原材料調達や委託製造、流通などの重要なプロセスを多数のビジネスパートナーに依存しています。これらのパートナーにおいて人権・環境問題、贈収賄、規制違反などの問題が発生し、管理体制が不十分であった場合、事業活動の制限や罰金、社会的信用の失墜などにつながるリスクがあります。

(4) 米国の医療・貿易政策による影響リスク


米国での事業展開において、政権の政策変更が直接的な影響を及ぼします。薬価規制の法制化による米国での価格引き下げや、医薬品への高関税導入による米国向け製造戦略への打撃などが発生した場合、同社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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