東京応化工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京応化工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京応化工業は東京証券取引所プライム市場に上場し、エレクトロニクス機能材料や高純度化学薬品の製造・販売を主力とする化学メーカーです。当期は生成AI関連需要の好調や高付加価値製品の販売増加により、売上高2,370億円、経常利益493億円と大幅な増収増益を達成し、過去最高益を更新しました。


東京応化工業転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、東京応化工業の有価証券報告書(第96期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 東京応化工業ってどんな会社?


同社はエレクトロニクス機能材料や高純度化学薬品の製造・販売を主力とし、半導体向け微細加工技術に強みを持つ企業です。

(1) 会社概要


同社は1940年に設立され、1986年に東京証券取引所市場第二部へ上場、1990年に同市場第一部に指定替えされました。1987年の米国子会社設立や1998年の台湾子会社設立などグローバル展開を推進し、2022年にはプライム市場へ移行しました。2025年にはドイツの企業を完全子会社化しています。

現在の従業員数は連結で2,132名、単体で1,555名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主および第2位は資産管理業務を行う信託銀行となっており、第3位には生命保険会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.77%
日本カストディ銀行(信託口) 6.48%
明治安田生命保険相互会社(常任代理人 日本カストディ銀行) 4.57%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は種市順昭氏が務めています。社外取締役は4名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
種市順昭 代表取締役取締役社長執行役員社長 1986年入社。新事業開発部長等を経て、2019年より現職。
土井宏介 取締役専務執行役員営業本部長 1986年入社。米国子会社プレジデント等を経て、2025年より現職。
山本浩貴 取締役常務執行役員材料事業本部長 1992年入社。韓国子会社工場長等を経て、2025年より現職。
大森克実 取締役執行役員開発本部長 1991年入社。韓国子会社副社長等を経て、2025年より現職。
佐藤晴俊 取締役 1984年入社。品質保証部長や開発本部長等を経て、2022年より現職。
鳴海裕介 取締役(常勤監査等委員) 1988年入社。市場開発部長等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、安藤尚(元デクセリアルズ代表取締役)、一柳和夫(元帝国通信工業代表取締役)、池田綾子(原後綜合法律事務所弁護士)、中島功(元東京瓦斯専務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「材料事業」の単一セグメントの下、複数の製品分野で事業を展開しています。

(1) エレクトロニクス機能材料

半導体やディスプレイなどの最先端エレクトロニクス分野に向けた機能性高分子材料の開発と製造を行っています。極端紫外線用フォトレジストなど、半導体の微細加工に不可欠な製品を顧客に提供しています。

半導体メーカー等の顧客に対する製品の販売代金が主な収益源です。製品の製造と販売は、同社およびTOKYO OHKA KOGYO AMERICA, INC.、台湾東應化股份有限公司、TOK尖端材料などの海外子会社が展開しています。

(2) 高純度化学薬品

半導体製造プロセスにおいて、フォトレジストの性能を最大限に引き出すための関連薬品や各種の微細加工に使用される高純度な化学薬品を提供しています。国内外の電子デバイスメーカーが主な顧客です。

顧客である半導体やディスプレイ等のメーカーから製品の販売代金を受け取る収益モデルです。事業の運営は同社および海外の製造・販売子会社が担っています。

(3) その他

エレクトロニクス機能材料や高純度化学薬品の製造・販売に付随する関連事業を展開しています。同社グループのコア技術を活用した周辺サービスなどを提供しています。

関連製品の販売やサービスの提供による手数料が収益源です。主に同社およびティーオーケーエンジニアリングなどの国内子会社が運営を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、需要の変動による一時的な減益の時期はあったものの、全体として売上高と利益は拡大傾向にあります。特に当期は高付加価値製品の販売増加などにより、大幅な増収増益を達成しました。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 1,401億円 1,754億円 1,623億円 2,010億円 2,370億円
経常利益 217億円 310億円 243億円 346億円 493億円
利益率(%) 15.5% 17.7% 15.0% 17.2% 20.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 170億円 158億円 103億円 210億円 276億円

(2) 損益計算書


売上高と売上総利益がともに増加しており、収益性が向上しています。営業利益率も上昇しており、本業における稼ぐ力が強化されていることがうかがえます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 2,010億円 2,370億円
売上総利益 734億円 894億円
売上総利益率(%) 36.5% 37.7%
営業利益 331億円 474億円
営業利益率(%) 16.5% 20.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が107億円(構成比25%)、研究用消耗品費が56億円(同13%)を占めています。売上原価の内訳に関する具体的なデータは記載されていません。

(3) セグメント収益


主力の材料事業を構成する各部門において、先端向け材料の販売好調などにより、全ての分野で前年を上回る売上を記録し、全体の成長を牽引しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
エレクトロニクス機能材料 1,075億円 1,247億円
高純度化学薬品 915億円 1,094億円
その他 20億円 29億円
連結(合計) 2,010億円 2,370億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 301億円 352億円
投資CF -27億円 -253億円
財務CF -154億円 32億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.9%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「自由闊達」、「技術のたゆまざる研鑽」、「製品の高度化」、「社会への貢献」の4つの経営理念の下、高度化する顧客からの要望に応える製品の創出を通じた社会への貢献と企業価値の向上に取り組んでいます。また、「豊かな未来、社会の期待に化学で応える“The e-Material Global Company”」という経営ビジョンを掲げています。

(2) 企業文化


従業員一人ひとりが心身ともに安心安全に働ける環境を重視しています。コミュニケーションの活性化による心理的安全性の確保や、労働安全教育を通じて、「皆が活き活きと誇りをもって働ける」という企業像の実現を目指しています。また、SDGsに貢献できる企業文化の深耕にも注力しています。

(3) 経営計画・目標


「tok中期計画2027」において、2027年12月期の定量目標を以下の通り上方修正しています。過去最高益の更新を目指し、収益性と資本効率の向上を重視しています。

・連結売上高:2,950億円
・連結営業利益:580億円
・連結EBITDA:720億円
・連結ROE:14.0%

(4) 成長戦略と重点施策


中長期的な成長に向けて、電子材料分野の深耕と開拓を進めるとともに、微細加工技術や高純度化技術を活用した新領域の創出に挑戦しています。具体的には、先端レジストのグローバルシェアNo.1を目指したマーケティング力の向上や、いかなる市場変動にも即応できる強固なサプライチェーンの構築などを重点施策として掲げて推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業の原点は常に「人」であるとする「人財活用方針」のもと、人財一人ひとりの「幸福度の追求」を起点としています。全ての働く人たちがいきいきと、安心して働ける環境を整備し、積極的な挑戦を奨励することで意欲を高め、イノベーションの創出につなげる方針です。従業員エンゲージメントの向上やダイバーシティの推進にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 40.7歳 16.7年 9,729,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.2%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 68.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 68.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 88.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメント肯定回答率(対2024年比+1.9ポイント)、DXレディネス研修受講者数(500名超)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) エレクトロニクス業界の景気変動リスク

半導体やディスプレイ向け材料の需要は市場状況に大きく左右され、技術革新のスピードやユーザーニーズの変化が速いため、価格変動などが業績に影響を与える可能性があります。

(2) 重要な原材料の調達リスク

生産活動において多様な原材料を使用しており、調達先を複数確保していますが、事故や地政学的リスクによる供給遅延・中断、価格上昇が発生した場合、生産活動や業績に支障をきたす恐れがあります。

(3) 海外事業活動に関するリスク

北米やアジア、欧州などグローバルに事業を展開しているため、予期しない法令や規制の変更、産業基盤の脆弱性、人材確保の困難さなどのリスクが顕在化した場合、事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 知的財産権に関するリスク

多数の知的財産権を保有・利用していますが、権利の保護や取得が予定通り行われなかった場合、紛争や訴訟に発展し、費用負担等を通じて業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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