ミルボン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ミルボン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ミルボンは東京証券取引所プライム市場に上場し、美容室専売のヘアケア用剤や染毛剤など化粧品の製造および販売を主力事業として展開しています。直近の業績トレンドをみると、海外市場での売上成長や国内ヘアケア製品の好調により増収を達成した一方で、人件費や広告宣伝費、物流費の増加により減益となっています。


※本記事は、株式会社ミルボンの有価証券報告書(第66期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ミルボンってどんな会社?


ミルボンは、美容室向けのヘアケア製品や染毛剤などの製造販売に特化した化粧品メーカーです。

(1) 会社概要


1960年に化粧品の製造販売を目的にユタカ美容化学を設立、1965年にミルボンへ商号変更しました。1996年に店頭登録し、2001年に東証第一部に上場しました。2004年の米国法人設立以降、中国や韓国など海外進出を加速し、2017年にはコーセーと合弁会社を設立するなど、美容室専売メーカーとして成長を続けています。

従業員数は連結1,237名、単体941名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は資産管理会社の鴻池資産管理、第3位は事業会社のコーセーとなっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.66%
鴻池資産管理 8.75%
コーセー 4.18%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表取締役社長執行役員は坂下秀憲氏です。社外取締役比率は35.7%です。

氏名 役職 主な経歴
坂下秀憲 代表取締役社長執行役員 2001年同社入社。米国子会社プレジデントや経営戦略部長を経て、2022年取締役に就任。2024年に代表取締役社長、2026年より現職。
佐藤龍二 取締役会長 1981年同社入社。マーケティング部長などを歴任し、2002年取締役に就任。2008年より代表取締役社長を務め、2024年より現職。
鴻池一信 取締役常務執行役員 1992年同社入社。米国子会社プレジデントや経営戦略部長などを経て、2012年取締役に就任。生産本部長などを歴任し、2026年より現職。
森本淳二 取締役常務執行役員 1992年同社入社。東京・大阪支店長、FP本部長を歴任し、2022年取締役に就任。管理・品質保証などを担当し、2026年より現職。
岡崎晴通 取締役常務執行役員 1996年同社入社。タイ・米国子会社プレジデントや北米・欧州リージョン長を歴任。国際FP本部長を経て、2024年取締役に就任し、2026年より現職。
緒方博行 取締役常務執行役員 1999年同社入社。財務部長、経営戦略部長を歴任し、コーセーミルボンコスメティクス取締役副社長を経て2024年取締役に就任、2026年より現職。


社外取締役は、村田恒子(元パナソニック特命担当理事)、高藤悦弘(元味の素代表取締役)、早川知佐(カルビー執行役員)、福本ともみ(元サントリーホールディングス執行役員)、鍋島昭久(元帝人代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、化粧品の製造、販売の単一セグメントであるため、主要な品目ごとに事業を展開しています。

(1) ヘアケア用剤および染毛剤


シャンプーやヘアトリートメント、各種整髪料などのヘアケア用剤と、酸化染毛剤やヘアブリーチなどの染毛剤を製造・販売しています。美容室やヘアデザイナーを通じて、一般消費者(エンドユーザー)へ提供されるプロフェッショナル向け製品が主力です。

美容室および販売代理店への製品卸売により収益を獲得しています。事業の運営は同社および、米国や中国、韓国、タイ、欧州などの現地連結子会社がグローバルに担当しています。

(2) パーマネントウェーブ用剤および化粧品・その他


パーマネントウェーブ用剤や縮毛矯正剤に加え、スキンケアやメイクアップなどの化粧品、健康食品、美容器具などの製造・販売を行っています。美容室での施術や提案を通じて付加価値の高いサービスを顧客に提供しています。

美容室や代理店を通じた製品の販売代金が主な収益源です。運営は同社や各国の連結子会社が行っており、独自のフィールドパーソンを通じた美容室への教育・提案活動によって販売促進と収益拡大を図っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して右肩上がりで推移しており、直近5年間で継続的な増収を達成しています。一方、経常利益および当期利益は増減を繰り返しており、特に直近では原材料費や物流費、人件費の増加などのコスト上昇が影響し、利益率が低下傾向にあります。海外市場の成長が売上を牽引する一方で、収益性の改善が課題となっています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 416億円 452億円 478億円 513億円 529億円
経常利益 72億円 78億円 56億円 70億円 55億円
利益率(%) 17.2% 17.3% 11.7% 13.6% 10.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 50億円 56億円 32億円 48億円 31億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しているものの、売上総利益率はわずかに低下しています。また、営業利益は減少しており、営業利益率も低下傾向にあります。海外での売上成長がトップラインを押し上げた一方で、国内染毛剤市場の競争激化や事業基盤強化に伴うコスト増加が利益を圧迫している状況がうかがえます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 513億円 529億円
売上総利益 326億円 332億円
売上総利益率(%) 63.5% 62.8%
営業利益 68億円 57億円
営業利益率(%) 13.3% 10.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が72億円(構成比26%)、物流費が42億円(同15%)を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、運転資金や設備投資といった資金需要に対し、安全性を第一に考慮した余剰資金運用を行っています。
営業活動では、事業活動を通じて資金を生み出しており、投資活動では、将来の成長に向けた設備投資等に資金を使用しています。また、財務活動では、株主還元や自己株式の取得等に資金を充当しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 76億円 54億円
投資CF -25億円 -30億円
財務CF -29億円 -49億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「すべては、美しく生きるために。」というコーポレートステートメントや、「美しさを拓く。(Find Your Beauty)」というスローガンを掲げています。ヘアデザイナーを通じて美しい生き方を応援し、一人ひとりに自分らしさ、心の豊かさ、人生の彩りを価値にして届けることを目指し、今ここにない未来を創り続けることを使命としています。

(2) 企業文化


美容室と徹底的に寄り添う独自のビジネスモデルである「フィールドパーソンシステム」や、現場で成功しているヘアデザイナーと顧客から学ぶ「TAC(Target Authority Customer)製品開発システム」を強みとしています。顧客との長期的な信頼関係を重視し、現場の課題発見から提案、教育支援まで伴走する営業活動を重視しています。

(3) 経営計画・目標


中期事業構想(2022-2026)「Stage for the Future」において、「本質的な社会・生活者視点でのプロフェッショナル価値を生み出し、グローバルメーカーとしての企業体を創造し、アジアNo.1、世界ベスト5をめざす」という中期目標を掲げています。見直し後の2026年度目標は以下の通りです。

* 売上高:548億円
* 営業利益:63億円
* 経常利益:62億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:43億円

(4) 成長戦略と重点施策


グローバル戦略では、世界を7つのリージョンに分け、各地域の髪質や文化に対応した開発・生産体制を構築します。日本市場では「サロンソーシャルイノベーション」を掲げ、デジタルとリアルが融合したスマートサロン戦略やビューティライフケア戦略を推進します。さらに、再生・循環型の生産や人にやさしい調達など、5つのサステナビリティ最重要課題に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「社員一人ひとりが、自主自立の精神で、やりがいをもって、ミルボンの持続的成長を支え、働き続けられる企業風土を醸成する」という人材戦略基本方針を掲げています。「人の成長こそが企業の成長につながる」という信念のもと、次期後継リーダーの育成、働きがいの醸成、対話の増進、DE&Iの推進、そして提供価値向上に向けた人・組織の強化の5つの重要テーマに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 36.0歳 11.2年 7,583,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.7%
男性育児休業取得率 58.8%
男女賃金差異(全従業員) 69.8%
男女賃金差異(正規雇用) 59.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 71.5%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、若手社員の離職率(12.8%)、有給休暇取得率(75.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 地政学リスクとサプライチェーン


社会情勢や外交関係の緊張により、事業や生産拠点を展開する国・地域で不安定な状況が長期化した場合、人的被害の発生やサプライチェーンの寸断によって事業継続が困難となるリスクがあります。各国の関税引き上げが業績に影響を及ぼす可能性もあるため、情報収集体制の見直しや調達・生産の分散化を検討しています。

(2) グループガバナンスと人材管理


グループ全体での人材・資金・情報の統制が機能しない場合、意思決定の遅延や資源の最適配分が阻害されるリスクがあります。また、人事制度の未整備や働き方の多様化に対応できない場合、優秀な人材の流出やコンプライアンス意識の低下を招くおそれがあるため、社内教育や現地法に準拠した体制の整備を進めています。

(3) 海外事業・海外物流と薬事規制対応


貿易ルートにおける異常気象や現地状況の変化で物流が停滞し、輸送費の増加や販売網の混乱が生じるリスクがあります。また、各国における薬事規制の変更により製品の処方変更を余儀なくされ、廃棄増や欠品による販売機会の損失につながる懸念があり、規制対象成分の回避や現地生産の強化で対応を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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