横浜ゴム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

横浜ゴム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

横浜ゴムは東京証券取引所プライム市場に上場し、乗用車から産業・農業機械用までの各種タイヤと、コンベヤベルトなどのMB事業を展開しています。直近の業績は、高付加価値商品の販売好調や事業買収効果などにより5期連続の増収増益を達成し、過去最高の売上と利益を更新して成長を続けています。


※本記事は、横浜ゴム株式会社の有価証券報告書(第150期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 横浜ゴムってどんな会社?


乗用車から産業機械まで幅広いタイヤ製品と、ホースなどの工業製品を展開するグローバル企業です。

(1) 会社概要


1917年に設立され、1950年に株式上場を果たしました。近年は生産財タイヤ事業の強化を進めており、2016年のアライアンス・タイヤ・グループ買収、2023年のトレルボルグ・ホイール・システムズ買収に続き、2025年には米国グッドイヤー社の鉱山・建設車両用タイヤ事業を買収するなど事業を拡大しています。

従業員数は連結で34,471名、単体で5,559名規模の企業です。大株主の構成は、筆頭株主が資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同種の信託銀行、第3位は生命保険会社です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 19.01%
日本カストディ銀行(信託口) 15.86%
朝日生命保険相互会社 6.91%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役会長兼CEOは山石昌孝氏、代表取締役社長兼COOは清宮眞二氏が務めています。社外取締役は6名であり、役員全体の半数を占めています。

氏名 役職 主な経歴
山石昌孝 代表取締役会長兼CEO(経営全般/地域事業/企画・管理/MB/経営企画本部長) 1986年同社入社。経営企画本部長、タイヤ企画本部長等を経て、2017年3月代表取締役社長。2024年3月より現職。
清宮眞二 代表取締役社長兼COO(技術/生産/品質保証/IT/TBR事業/プロギア/タイヤ生産本部長) 1989年同社入社。タイヤ製品開発本部長、技術・生産統括等を歴任し、2023年3月常務執行役員。2024年3月より現職。
Nitin Mantri 取締役兼Co-COO(OHT事業/インド事業) 2001年ボストンコンサルティング入社。カミンズ等を経て、2017年ATC Tires CEO。2024年3月より現職。
宮本知昭 取締役タイヤ国内リプレイス営業本部長兼 経営管理本部担当兼 CSR本部担当兼 平塚製造所長 1990年同社入社。タイヤ国内リプレイス営業企画部長等を経て2022年3月常務執行役員。2023年3月より現職。
結城正博 取締役経理部・IR室担当兼 タイヤ企画本部長 1991年同社入社。秘書室長、タイヤ企画本部長等を経て2023年3月取締役。2025年1月より現職。
松尾剛太 取締役監査等委員(常勤) 1989年同社入社。プロギア取締役副社長、経理部長等を経て、2019年3月常務執行役員。2023年3月より現職。


社外取締役は、清水恵(西村あさひ法律事務所パートナー弁護士)、古河潤一(古河林業社長)、高田寿子(アドバンテスト経営執行役員CFO)、佐々木伸彦(日中経済協会理事長)、河野宏和(慶應義塾大学名誉教授)、木村博紀(朝日生命保険会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、タイヤ、MBおよびその他の事業を展開しています。

タイヤ


乗用車用、トラック・バス用、小型トラック用のほか、農業機械・産業車両・鉱山・建設車両向けなどの各種タイヤやアルミホイールなどの自動車関連用品を製造・販売しています。一般消費者向けの消費財タイヤから事業者向けの生産財タイヤまで、グローバルなニーズに対応する幅広い製品ラインナップを持っています。

収益源は、自動車メーカーへの新車装着タイヤの納入代金や、一般消費者・事業者向けの市販用タイヤの販売代金です。事業の運営は、製造を横浜ゴムや杭州優科豪馬輪胎などが担い、販売をヨコハマタイヤジャパンなどの国内外の販売子会社が行っています。

MB(マルチプル・ビジネス)


コンベヤベルト、各種ホース、防舷材、オイルフェンス、マリンホース、航空部品などの工業用ゴム製品を幅広く製造・販売しています。インフラ整備や資源開発、建設機械、航空機向けなど、多岐にわたる産業分野を支える高品質な製品群を提供しています。

収益源は、建設機械メーカーやインフラ事業者、航空機メーカーなどに対する製品の販売代金です。事業の運営は、製造を横浜ゴムやヨコハマインダストリーズアメリカズなどのグループ会社が担い、販売は横浜ゴムMBジャパンなどの国内外販売子会社が行っています。

その他


スポーツ用品や情報処理サービスなどを展開しています。主にゴルフクラブ等のスポーツ用品の企画・製造・販売を通じて、多様な顧客ニーズに応える事業を行っています。

収益源は、一般消費者向けのスポーツ用品の販売代金や、システム開発等に伴う情報処理サービス料です。スポーツ用品事業の運営は主にプロギアが行い、情報処理サービスはハマゴムエイコムなどの子会社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、売上収益は右肩上がりで拡大を続けており、順調に成長しています。税引前利益および当期利益も着実に成長しており、直近では高付加価値商品の販売好調や事業買収の効果が寄与し、大幅な増益を達成しました。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 6,708億円 8,605億円 9,853億円 10,947億円 12,350億円
税引前利益 852億円 716億円 1,060億円 1,154億円 1,572億円
利益率(%) 12.7% 8.3% 10.8% 10.5% 12.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 655億円 459億円 672億円 749億円 1,054億円

(2) 損益計算書


売上収益が前期比で大きく成長するなか、売上総利益率も改善傾向にあります。事業ポートフォリオの変革や高付加価値商品への注力、抜本的なコスト削減などの内部努力が奏功し、営業利益ベースでも大幅な増益を果たし、高い収益性を確保しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 10,947億円 12,350億円
売上総利益 3,898億円 4,468億円
売上総利益率(%) 35.6% 36.2%
営業利益 1,192億円 1,529億円
営業利益率(%) 10.9% 12.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が944億円(構成比34%)、運賃及び保管費が874億円(同31%)を占めています。売上原価は7,882億円で、売上収益に対する構成比は64%となっています。

(3) セグメント収益


主力のタイヤ事業は、国内外での新車・市販用タイヤの販売増やオフハイウェイタイヤ事業における企業買収が寄与し、大幅な増収増益を牽引しました。MB事業も、コンベヤベルトや海洋商品の安定的な需要を取り込むとともに構造改革が進み、増収および高い増益率を記録しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
タイヤ 9,821億円 1,1225億円 1,272億円 1,550億円 13.8%
MB 1,054億円 1,057億円 86億円 111億円 10.5%
その他 277億円 299億円 -14億円 5億円 1.7%
調整額 -205億円 -231億円 0億円 -0億円 -
連結(合計) 10,947億円 12,350億円 1,344億円 1,666億円 13.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

横浜ゴムは、積極的な事業投資と借入による資金調達で、財務活動によるキャッシュ・フローを増加させています。営業活動では、前年度比で大幅な収入増を達成し、事業の好調さを示しました。一方、投資活動では、子会社の取得を含む事業譲受や有形固定資産の取得に多額の支出があり、キャッシュ・フローは大きく減少しました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 945億円 1,356億円
投資CF -14億円 -2,413億円
財務CF -632億円 683億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「心と技術をこめたモノづくりにより幸せと豊かさに貢献します」を基本理念として掲げています。世界各地のステークホルダーと協調し、事業活動を通じた社会課題の解決と持続的な企業価値の向上を目指しています。サステナビリティ・スローガンとして「未来への思いやり」を定め、社会に貢献する経営を追求しています。

(2) 企業文化


基本方針として「技術の先端に挑戦し、新しい価値を創り出す」「独自の領域を切り拓き、事業の広がりを追求する」「人を大切にし、人を磨き、人が活躍する場をつくる」「社会に対する公正さと、環境との調和を大切にする」という4つの価値観を掲げており、挑戦と人材育成、環境・社会との調和を重視する文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


2024年から2026年までの3カ年計画である中期経営計画「Yokohama Transformation 2026(YX2026)」に基づき、既存事業の深化と新たな探索による変革の「総仕上げ」を行い、「Hockey Stick Growth(うなぎ昇りの成長)」を目指しています。

* 売上収益:1兆3,000億円
* 事業利益:1,880億円
* 自己資本比率:50%を目安
* ROE:10%超

(4) 成長戦略と重点施策


タイヤ消費財分野では高付加価値品比率の最大化と「1年工場」による低コスト・高効率な生産体制の構築を推進しています。タイヤ生産財分野ではオフハイウェイタイヤ(OHT)事業に注力し、マルチブランド戦略と「Programmatic M&A」戦略により市場シェアの拡大を図っています。MB事業ではバリューチェーンの再構築により収益基盤の安定化を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「世代・性別・国籍に関わらず、厳しくとも結果にコミットし、自らの成長をもって会社の成長に貢献できる人材」を求める人材像として掲げています。プロ人材の育成や若手の早期登用制度を導入するとともに、場所・時間にとらわれないフレックスタイム制度やホームオフィス制度など、多様な働き方を認める組織風土の醸成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 41.1歳 17.4年 6,928,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.5%
男性育児休業取得率 100.7%
男女賃金差異(全労働者) 75.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 78.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 66.8%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員の65歳到達後継続雇用率(78.5%)、MBA等経営教育受講率(8.1%)、DXリーダー育成教育受講率(5.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 為替レートの影響


同社グループはグローバルに事業を展開し、外国通貨建てでの取引を行っているため、米ドルやユーロなどの外国為替相場の変動により、業績や財務状況が影響を受けるリスクがあります。為替予約などでリスクの最小化を図っていますが、完全に回避することは困難です。

(2) 季節変動の影響


業績は下半期に売上が偏重する傾向があります。特に寒冷地域でのスタッドレスタイヤ(冬用タイヤ)の販売が下半期に集中するため、暖冬による降雪時期の遅れや降雪量の減少が、同社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 原材料価格の影響


同社製品の主要な原材料は天然ゴムおよび石油化学製品です。そのため、天然ゴム相場の大幅な上昇や国際的な原油価格の高騰が発生した場合、製造コストが上昇するリスクがあります。これらの変動を企業努力で吸収できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) M&A、資本・業務提携による影響


さらなる成長の実現に向けて海外事業の買収(M&A)や業務提携を積極的に行っています。しかし、買収した事業の業績が想定を下回る場合や、事業環境の変化により期待する成果が得られない場合には、のれんの減損損失が発生し、財務状況に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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