ニチリン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニチリン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場するニチリンは、自動車用ホース類を主とするゴム製品の製造販売をグローバルに展開する企業です。直近の業績は、国内販売が堅調に推移し増収となった一方で、為替や北米での関税等の影響により減益となりました。次世代モビリティへの対応や新領域への展開を進めています。


※本記事は、株式会社ニチリンの有価証券報告書(第142期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ニチリンってどんな会社?


自動車用ホース類を主力とするゴム製品メーカーで、グローバルに事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1914年に日本輪業合資会社として創立し、自動車用ホース類の製造を開始しました。1997年に大阪証券取引所市場第二部(現東京証券取引所スタンダード市場)に上場しています。近年では、2024年に協働ロボットの研究開発機能を備えた新設備棟を建設し、2025年には米国企業を完全子会社化しました。

従業員数は連結で2,440名、単体で354名です。筆頭株主はその他の関係会社である太陽鉱工で、第2位は総合商社の双日、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
太陽鉱工 22.11%
双日 8.67%
日本カストディ銀行(信託口) 3.11%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役社長社長執行役員は曽我浩之氏が務めています。取締役8名のうち社外取締役は3名で、社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
曽我浩之 代表取締役社長社長執行役員 1988年入社。スペイン現地法人CEOや取締役上席執行役員等を経て2023年より現職。
前田龍一 取締役会長 1981年入社。生産本部長、海外本部長、代表取締役社長等を経て2025年より現職。
難波宏成 取締役専務執行役員 1991年入社。財務経理部長や取締役常務執行役員等を経て2024年より現職。
菊元秀樹 取締役常務執行役員 1988年入社。上海現地法人の総経理や神戸営業部長等を経て2021年より現職。
遠藤真一郎 取締役執行役員 1989年入社。タイおよびインドネシアの現地法人社長等を経て2024年より現職。


社外取締役は、矢野進(元日本精化社長)、鈴木一史(太陽鉱工社長)、木村美樹(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「北米」「中国」「アジア」「欧州」の報告セグメントで事業を展開しています。

日本


国内市場において自動車用ホース類の製造・販売を行っており、国内自動車メーカーを中心に製品を供給しています。
収益源は製品の販売対価です。運営はニチリンおよび国内子会社である日輪機工やニチリン白山などが担当しています。

北米


北米市場において自動車用ホース類の製造・販売を行っており、米国での大型トラック・バス向け部品なども展開しています。
収益源は製品の販売対価です。運営は米国の各子会社およびメキシコの子会社などが担当しています。

中国


中国市場において自動車用ホース類の製造・販売を行っており、現地自動車メーカー向けに製品を供給しています。
収益源は製品の販売対価です。運営は蘇州および上海の各子会社が担当しています。

アジア


インド、ベトナム、インドネシア、タイなどのアジア市場において、二輪車用を含む自動車用ホース類の製造・販売を行っています。
収益源は製品の販売対価です。運営は各地域の現地子会社が担当しています。

欧州


欧州市場において自動車用ホース類の製造・販売を行っており、欧州の自動車メーカーや二輪車メーカーに製品を供給しています。
収益源は製品の販売対価です。運営はスペインおよびブルガリアの各子会社が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が継続的に拡大し成長基調にあります。一方、利益面では原材料価格や物流コストの変動などの影響を受け、直近は減益となっています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 583億円 642億円 706億円 714億円 737億円
経常利益 75億円 85億円 105億円 104億円 92億円
利益率(%) 12.9% 13.2% 14.9% 14.5% 12.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 35億円 49億円 55億円 56億円 50億円

(2) 損益計算書


売上高は増加したものの、コスト増や為替の影響等により営業利益は微減となりました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 714億円 737億円
売上総利益 177億円 181億円
売上総利益率(%) 24.8% 24.6%
営業利益 92億円 91億円
営業利益率(%) 12.9% 12.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が11億円(構成比12.2%)、運賃及び荷造費が9億円(同9.7%)を占めています。

(3) セグメント収益


アジアおよび日本が売上の中心を担っています。中国やアジアでは利益を伸ばしていますが、北米では関税措置などの影響により減益となりました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
日本 186億円 194億円 38億円 32億円 16.4%
北米 144億円 146億円 11億円 3億円 1.8%
中国 99億円 91億円 14億円 17億円 18.2%
アジア 218億円 227億円 33億円 35億円 15.4%
欧州 66億円 79億円 0.4億円 2億円 2.2%
連結(合計) 714億円 737億円 92億円 91億円 12.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入返済を行いつつ投資も手元資金で賄う健全型です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 87億円 84億円
投資CF -62億円 -37億円
財務CF -58億円 -38億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.4%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も68.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「価値を創り、形にし、社会に届けるフローエンジニアリングで、人々の歓びと世界の豊かな明日を育む」を掲げています。部品提供にとどまらず、顧客製品の性能向上とユーザーの安全・快適性を追求し、人・モノ・情報などあらゆる流れを最適に設計・管理することを目指しています。

(2) 企業文化


従業員の多様性・人格・個性および自主性を尊重し、チャレンジできる組織風土を重視しています。世界情勢の激しい変化に速く気付き、戦略的かつ誠実に乗り越えることができる人材の育成や、ハラスメントのない互いに尊重され活気ある職場環境づくりに取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2026年を初年度とする中期経営計画「NICHIRIN Flow Engineering Challenge 2030」を策定し、持続的な成長を目指しています。2026年12月期の連結目標は以下の通りです。

・売上高:780億円
・営業利益:93億円
・営業利益率:11.9%

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業の競争力を深化させつつ、成長ドメインの創出とグローバル深耕を進めます。

・空調用配管の軽量化や低炭素排出などを通じた製品競争力の向上
・ブレーキホースのプレミアム仕様の拡販推進
・EV用部品の販売拡大および非自動車領域の製品群拡大
・デジタルとAIの活用によるDX戦略の推進

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的成長と企業価値向上に向けて、人材の獲得・育成・活用を戦略的に推進しています。「人材獲得」「挑戦を促進する企業風土の醸成」「健康経営の推進」「ダイバーシティ&インクルージョン」の4つを重点領域と定め、多様な生き方を尊重し、時間や場所にとらわれない働き方が可能な環境作りに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 42.9歳 17.9年 6,990,530円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.9%
男性育児休業取得率 87.5%
男女賃金差異(全労働者) 58.7%
男女賃金差異(正規雇用) 78.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 66.1%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性雇用比率(19.2%)、外国人雇用比率(15.0%)、喫煙率(23.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自動車産業への依存度


同社の事業は自動車産業への依存度が90%以上を占めています。自動車業界の動向や顧客企業の業績、調達方針の変更、EV化等の技術革新が業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は新製品の開発や非自動車領域の拡大によってリスク軽減を図っています。

(2) 海外事業展開と為替変動


海外9か国で生産・販売を行っており、予期せぬ法規制の変更、政治経済の変動、社会的混乱などが事業に影響を与えるリスクがあります。また、海外取引の比率が高いため、現地通貨建ての項目が為替レートの変動による影響を受ける可能性があります。

(3) 部品・原材料の調達リスク


製品の製造に不可欠な合成ゴムや金属部品などの価格は、原油などの国際相場により大きく変動します。また、品質や価格の面から特定の仕入先に依存する部品もあり、物流問題等による調達難が生産活動に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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