新日本電工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

新日本電工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

新日本電工は東京証券取引所プライム市場に上場する総合素材メーカーです。主に合金鉄、機能材料、焼却灰資源化、アクアソリューション及び電力の各事業を幅広く展開しています。直近の業績トレンドとしては、主力である合金鉄事業におけるマンガン鉱石市況の大幅な下落などの影響により、減収減益となっています。


※本記事は、新日本電工の有価証券報告書(第126期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 新日本電工ってどんな会社?


合金鉄をはじめ機能材料や焼却灰資源化などの事業を展開する総合素材メーカーです。

(1) 会社概要


1925年に大垣電気冶金工業所として創業し、合金鉄の製造販売を開始しました。1949年に東京証券取引所へ上場し、2014年には中央電気工業と経営統合して現在の社名となりました。その後も2018年の完全統合や2024年の吸収合併を経て、事業基盤を強化しています。

現在の従業員数は連結で964名、単体で799名です。筆頭株主は事業会社の日本製鉄で、第2位及び第3位は資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本製鉄 24.29%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.41%
日本カストディ銀行(信託口) 2.79%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は青木泰氏が務めており、社外取締役比率は54.5%です。

氏名 役職 主な経歴
青木泰 代表取締役社長 1983年新日本製鐵入社。同社原料第一部長、新日鐵住金常務執行役員などを経て、2021年より現職。
小林二郎 取締役専務執行役員 1988年新日本製鐵入社。新日鐵住金欧州事務所長、日本製鉄執行役員などを経て、2025年より現職。
積田正和 取締役常務執行役員 1986年同社入社。秘書・人事部長、執行役員人材開発センター長、常務執行役員などを経て、2026年より現職。
岸川勉 取締役常務執行役員 1985年日本重化学工業入社。同社電池材料事業部高岡工場長、執行役員生産技術部長などを経て、2025年より現職。
三宅康秀 取締役執行役員 1991年日新製鋼入社。同社財務部長、日本製鉄財務部部長などを経て、2024年より現職。


社外取締役は、大見和敏氏(元ヤマギワ社長)、小野健太郎氏(元大阪製鐵取締役)、伊丹一成氏(元日鉄テクノロジー取締役)、中野北斗氏(元みずほ証券常務執行役員)、谷昌浩氏(元味の素執行役員)、末村あおぎ氏(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「合金鉄事業」「機能材料事業」「焼却灰資源化事業」「アクアソリューション事業」「電力事業」および「その他」の事業を展開しています。

(1) 合金鉄事業


同社グループの主力事業として、フェロマンガン、シリコマンガン、フェロシリコンなどの合金鉄や特殊金属製品の製造・販売を行っています。あわせて倉庫業や港湾荷役、マンガン鉱山の権益保有なども手掛けています。

収益は、主に鉄鋼メーカー等の顧客に対する製品の販売代金から得ています。事業の運営は、同社および電工興産、日電徳島などが担っており、持分法適用関連会社のPertama Ferroalloys SDN.BHD.なども参画しています。

(2) 機能材料事業


電子部品材料や電池材料などの分野に向けた機能性素材を提供しています。具体的には、酸化ジルコニウム、酸化ほう素、フェロボロン、水素吸蔵合金、リチウムイオン電池正極材料などの製造・販売を行っています。

収益は、電子部品メーカーや電池メーカー等の顧客に対する素材の販売代金から得ています。この事業の運営は、主に同社が単独で行っています。

(3) 焼却灰資源化事業


環境保全と資源循環に貢献する事業として、電気炉を活用した焼却灰の溶融固化処理などを手掛けています。自治体や地域社会と連携し、埋立処分場の延命化や資源の再利用を推進しています。

収益は、自治体などから受け取る焼却灰の処理手数料や、溶融過程で回収される有価金属の売却代金などから得ています。運営は同社および中電興産が行っています。

(4) アクアソリューション事業


長年培ってきた水処理のノウハウを活かし、イオン交換塔を用いた排水処理装置や、RO膜装置を用いた純水製造装置などの製造・販売を行っています。ほう素やニッケルなどの重金属回収ニーズに応えています。

収益は、装置の販売代金や関連するメンテナンスサービスなどの対価として顧客から得ています。本事業の運営は同社が担っています。

(5) 電力事業


再生可能エネルギーを活用した電力供給を行っています。特に水力発電によるグリーン電源の優位性を活かし、固定価格買取制度(FIT)による長期的な安定収益の確保に努めています。

収益は、発電した電力を電力会社等へ供給することによる売電収入から得ています。本事業は同社が運営しています。

(6) その他


報告セグメントに含まれない事業として、サンプラー等の鉄鋼用分析測定機器の製造・販売や、プラスチックの加工・販売などを展開しています。

収益は、各製品の販売代金から得ており、主にリケン工業や栗山興産が事業を運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上高は660億円から793億円の範囲で推移していますが、経常利益は大きく変動しています。特に当期はマンガン鉱石市況の下落や定期修繕の影響により、減収減益となりました。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 660億円 793億円 784億円 782億円 773億円
経常利益 69億円 104億円 24億円 49億円 27億円
利益率(%) 10.4% 13.1% 3.1% 6.2% 3.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 71億円 67億円 61億円 58億円 30億円

(2) 損益計算書


売上高は微減となりましたが、売上原価が高止まりした結果、売上総利益は減少し、利益率も低下しています。販売費及び一般管理費が増加したこともあり、営業利益は前期比で減少しました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 782億円 773億円
売上総利益 136億円 125億円
売上総利益率(%) 17.4% 16.2%
営業利益 69億円 52億円
営業利益率(%) 8.8% 6.7%


販売費及び一般管理費のうち、荷造運搬費が19億円(構成比26%)、給料及び手当が14億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の合金鉄事業は市況低迷の影響で減収となり赤字に転落しましたが、機能材料事業や焼却灰資源化事業は販売数量や処理量の増加により増収増益を達成し、業績を下支えしています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
合金鉄事業 518億円 484億円 11億円 -21億円 -4.4%
機能材料事業 140億円 148億円 17億円 19億円 12.8%
焼却灰資源化事業 77億円 89億円 14億円 21億円 23.6%
アクアソリューション事業 16億円 17億円 1億円 1億円 5.9%
電力事業 14億円 14億円 4億円 4億円 28.6%
その他 18億円 21億円 2億円 3億円 14.3%
連結(合計) 782億円 773億円 49億円 27億円 3.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

新日本電工は、営業活動で得た資金を積極的に活用し、事業基盤強化と将来への投資を進めています。

営業活動によるキャッシュ・フローは大幅な収入増となり、棚卸資産の減少や減価償却費の計上が主な増加要因でした。一方、投資活動では、有形・無形固定資産の取得に支出がありました。財務活動では、自己株式の取得や借入金の返済による支出がありましたが、長期借入による収入もありました。これらの活動の結果、現金及び現金同等物は増加しました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 60億円 146億円
投資CF -48億円 -56億円
財務CF -31億円 -89億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「特徴ある製品・技術・サービスを開発・提供し、持続的な成長を通じて豊かな未来の創造に貢献する」ことを経営理念として掲げています。社会課題の解決と企業価値向上の両立を目指し、高品質な製品の安定供給と新技術の開発に努めています。

(2) 企業文化


同社は、サステナビリティを重視した労働環境の整備と人への投資を通じて、従業員のエンゲージメント向上を図る企業文化を醸成しています。多様な人材が活躍できるDE&Iの推進や柔軟な働き方の導入など、ウェルビーイングの向上に注力しています。

(3) 経営計画・目標


同社は2030年の「あるべき姿」の実現に向けて、以下の具体的な業績目標を掲げています。

* 連結売上高950億円(2027年目標)
* 連結経常利益100億円(2027年目標)
* 連結売上高1,100億円以上(2030年目標)
* 連結経常利益130億円以上(2030年目標)
* ROE10%以上(2027年・2030年目標共通)

(4) 成長戦略と重点施策


各事業において収益性の向上と安定化を図る戦略を推進しています。合金鉄事業での生産性向上や、機能材料事業におけるオンリーワン商品の拡販に取り組んでいます。また、環境分野への戦略投資やDXの活用により、カーボンニュートラルの実現とオペレーションの最適化を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、中長期事業戦略を支える人材の確保と付加価値の創出を最重要課題と位置づけています。採用ブランディングの強化や処遇改善を進めるとともに、階層別研修などの教育機会を提供し、自律的で強い職場を育む人材育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 42.2歳 16.6年 7,581,785円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.6%
男性育児休業取得率 88.0%
男女賃金差異(全労働者) 76.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 77.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 35.8%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(75.6%)、障がい者雇用率(2.14%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 固定資産減損リスク


同社グループが保有する固定資産について、時価が著しく低下した場合や事業の収益性低下によって投資回収が見込めなくなった場合、固定資産の減損損失が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原燃料調達における価格・数量等の変動


マンガン鉱石やコークス、電力などの原燃料価格は国際市況に連動しており、価格高騰が製造コストを押し上げるリスクがあります。また、自然災害等による物流寸断などで調達に支障が生じた場合、生産活動が制約を受ける可能性があります。

(3) 国内外の経済状況及び需要の変動


同社の製品販売価格は国際市況を基準としており、鉄鋼をはじめとする国内外の需要動向や地政学的リスクの顕在化によって需要が落ち込んだ場合、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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