※本記事は、タダノの有価証券報告書(第78期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. タダノってどんな会社?
同社は建設用クレーンや高所作業車など、抗重力・空間作業機械の製造販売をグローバルに展開しています。
■(1) 会社概要
1948年に多田野鉄工所として設立され、1955年に日本初の油圧式トラッククレーンを開発しました。1971年に東京証券取引所市場第二部に上場し、翌年に第一部へ指定替えされました。近年はグローバル展開を加速させており、2019年のデマーグ買収に続き、2025年にはマニテックス社などを買収しています。
同社グループの従業員数は連結で5,997名、単体で1,755名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は投資ファンドのJAPAN ACTIVATION CAPITAL I L.P.、第3位は日本生命保険相互会社となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 11.31% |
| JAPAN ACTIVATION CAPITAL I L.P. | 6.18% |
| 日本生命保険相互会社 | 4.95% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長・CEOは氏家俊明氏です。社外取締役比率は55.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 氏家俊明 | 代表取締役社長・CEO | 1984年丸紅入社。建設機械部長や輸送機グループCEOなどを経て、2019年に同社へ入社。取締役執行役員専務等を経て、2021年より現職。 |
| 多田野宏一 | 代表取締役会長 | 1977年丸紅入社。1988年に同社へ入社し、社長室長や海外子会社社長などを経て、2003年に代表取締役社長に就任。2021年より現職。 |
| 合田洋之 | 取締役執行役員常務 | 1992年に同社入社。開発部門の部長やインド子会社の取締役などを経て、2017年に執行役員に就任。2022年より現職。 |
| 八代倫明 | 取締役執行役員常務 | 1986年住友商事入社。海外事業会社のCEO等を歴任後、2021年に同社へ入社して執行役員に就任。2023年より現職。 |
社外取締役は、村山昇作(元日本銀行調査統計局長)、石塚達郎(元日立製作所代表執行役執行役副社長)、大塚聡子(元東芝)、金子順一(元厚生労働事務次官)、蓼沼宏一(元一橋大学学長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「欧州」「米州」「オセアニア」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 日本
建設用クレーン、車両搭載型クレーン、高所作業車、運搬機械などの製造販売を行っています。また、部品の販売や修理、中古車販売などのアフターサービスも提供しており、日本の建設現場やインフラ整備を支えています。
顧客に対する製品の販売や修理などのサービス提供から収益を得ています。運営は同社のほか、タダノアイレックやタダノエステック、運搬機械を扱うタダノインフラソリューションズなどの子会社が行っています。
■(2) 欧州
欧州市場向けに建設用クレーンを中心とした製造販売を展開しています。近年は企業買収により、車両搭載型クレーンや高所作業車なども製品ラインナップに加わり、多様な顧客ニーズに対応しています。
欧州地域の顧客に対する製品販売およびアフターサービスを通じて収益を得ています。主な運営主体は、ドイツのタダノ・ファウンGmbHやタダノ・デマーグGmbH、イタリアのピーエム・オイルアンドスチールS.p.A.などです。
■(3) 米州
北米や中南米の市場に向けて、建設用クレーン、車両搭載型クレーン、高所作業車などの販売を展開しています。大型クレーンの需要が高い市場環境に合わせて、クローラクレーンなどの製造販売も行っています。
現地の建設業者やレンタル会社などに対する製品販売から収益を得ています。米国テキサス州を拠点とするタダノ・アメリカCorp.や、タダノ・マンティスCorp.、マニテックスInc.などの子会社が運営を担っています。
■(4) オセアニア
オーストラリアやニュージーランドなどのオセアニア地域を対象に、建設用クレーン等の販売とアフターサービスを展開しています。現地のインフラ工事や資源開発向けに最適な製品を提供しています。
現地顧客に対するクレーン等の製品販売およびサービス提供から収益を得ています。オーストラリアに拠点を置く販売子会社のタダノ・オセアニアPty Ltdが中心となって事業を運営しています。
■(5) その他
アジアや中東などの新興国市場を中心に、建設用クレーン等の販売とサービスを展開しています。また、台湾やインドネシアなどでの製造事業も含まれており、グローバルな需要拡大に対応しています。
新興国地域の顧客に対する製品販売およびサービス提供により収益を得ています。中国や韓国、タイ、シンガポール、中東、インドなどに販売拠点を持つ多数の現地子会社が、それぞれの地域で事業を運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、決算期変更の影響による変則決算期を除き、全体として売上高の拡大基調が続いています。一方、利益面では原材料価格や人件費の高騰、買収関連費用の計上などが影響し、変動が見られます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2057億円 | 1929億円 | 2803億円 | 2915億円 | 3495億円 |
| 経常利益 | 55億円 | 65億円 | 164億円 | 211億円 | 151億円 |
| 利益率(%) | 2.7% | 3.4% | 5.8% | 7.2% | 4.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 92億円 | 225億円 | 73億円 | 109億円 | 229億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加していますが、原価率の上昇等により売上総利益率は低下しています。また、販売費及び一般管理費の増加が影響し、営業利益および営業利益率は前年度を下回る結果となっています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2915億円 | 3495億円 |
| 売上総利益 | 845億円 | 932億円 |
| 売上総利益率(%) | 29.0% | 26.7% |
| 営業利益 | 238億円 | 186億円 |
| 営業利益率(%) | 8.2% | 5.3% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が240億円(構成比32%)、研究開発費が108億円(同14%)、荷造運搬費が99億円(同13%)を占めています。売上原価は2563億円で、売上高に対する売上原価率は73%となっています。
■(3) セグメント収益
主力の日本および米州セグメントが売上高の大部分を牽引しており、特に米州と欧州では企業買収の効果も加わり大幅な増収となっています。一方で、オセアニアやその他の地域では建設用クレーンなどの売上が減少し、減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 1328億円 | 1477億円 |
| 欧州 | 324億円 | 445億円 |
| 米州 | 1041億円 | 1407億円 |
| オセアニア | 156億円 | 106億円 |
| その他 | 67億円 | 58億円 |
| 連結(合計) | 2915億円 | 3495億円 |
営業CF、投資CF、財務CFのすべてがマイナスとなっており、資金繰りに注意が必要な局面(末期型)に分類されます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.3億円 | -24億円 |
| 投資CF | -251億円 | -6億円 |
| 財務CF | 216億円 | -21億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.3%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も44.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「創造・奉仕・協力」の経営理念のもと、企業価値の最大化と持続可能な事業活動を行うことで、地球環境の保全と持続可能な社会の実現に貢献し、世界にそして未来に誇れる企業を目指しています。また、事業領域を「抗重力・空間作業機械=Lifting Equipment(LE)」と定め、「LE世界No.1」の実現を長期目標として掲げています。
■(2) 企業文化
人種、宗教、性別、年齢、障がい、国籍等のあらゆる違いを尊重し、多様な人材の雇用と育成を強化する文化があります。多様な人材一人ひとりが自らの能力や個性を活かした組織パフォーマンスの最大化を実現するため、公平な成長機会の提供と組織文化の醸成に努めています。変化を捉え、チームでイノベーションを起こし続ける「学習し、成長し続ける組織文化」を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2026年度を最終年度とする「中期経営計画(24-26)」において、「Reaching new heights ~新たなステージへ~」をスローガンに掲げています。同計画の最終年度である2026年度において、以下の数値目標を設定しています。
- 売上高:3,300億円
- 営業利益:300億円(営業利益率9.1%)
- ROIC(投下資本営業利益率):8.0%
- ROE(自己資本利益率):9.5%
■(4) 成長戦略と重点施策
成長戦略の骨子として、「脱炭素化を加速」「新たな領域への挑戦」「強みを活かしたものづくり改革」「変革を支える足場固め」の4本柱を推進しています。環境対応製品の拡充や、M&Aで獲得した車両搭載型クレーン・高所作業車などの海外展開加速、定置式クレーン等の新領域への参入を進めています。また、日欧米の強みを活かした最適生産体制の構築により、コスト競争力と品質の向上を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材は競争力の源泉であり、「持続可能な経営」を実現する重要な要素と位置付けています。専門性の高い技術人材やグローバル人材の採用・育成を強化し、適材適所の人材ポートフォリオ再構築を進めています。また、「タダノグループ社内環境整備方針」の下、安全を第一に、心身ともに健康で活力に満ちた職場環境を築き、仕事と生活のバランスが取れた働き方を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 40.8歳 | 15.1年 | 6,949,736円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.3% |
| 男性育児休業取得率 | 58.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 72.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 95.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(10.9%)、高ストレス者率(10.4%)、エンゲージメントスコア(51.7)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建設機械の需要変動リスク
同社グループが製造販売する移動式クレーン等の製品は耐久性に優れ製品寿命が長いため、景気変動による需要の波が大きくなる特性があります。世界各国の景気や政治・社会情勢などの影響を受けやすく、想定を超える需要変動が生じた場合、受注減少や在庫増加等により業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 製品競争力低下のリスク
IoTやAIをはじめとする急速な技術革新が進む中、同社は商品競争力の維持・強化に向けて研究開発を推進しています。しかし、開発の遅れや予期せぬ技術革新の進展、市場ニーズとの不一致などによって製品の競争力が低下した場合、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 原材料価格高騰と調達リスク
同社は製品開発段階からのコストダウンや生産性向上に取り組んでいますが、予測を超える原材料価格の高騰や部品不足が発生した場合、利益率の低下を招くリスクがあります。また、取引先の供給能力不足や品質問題などによって生産や出荷に遅延が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 法的規制や環境規制への対応リスク
同社製品は日本および海外の仕向地において、自動車やクレーンに関する独自の法規制(排出ガス規制など)の適用を受けています。また、事業活動全体において環境法令への対応が求められており、これらの規制が改正された場合、追加の対応費用が発生し、研究開発や生産に支障をきたす可能性があります。



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