ノーリツ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社ノーリツ の有価証券報告書(第76期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ノーリツってどんな会社?
温水空調機器や厨房機器の製造および販売を主力事業とし、国内外で広く事業を展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1951年に能率風呂工業として設立され、1968年に現在のノーリツへ商号変更しました。1987年に東京証券取引所市場第一部に指定されました。1993年の中国進出を皮切りにグローバル展開を加速し、2001年にはハーマンを子会社化して厨房分野を強化し、現在の事業基盤を確立しています。
現在の従業員数は連結で5,934名、単体で1,985名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は同社の取引先で構成される持株会、第3位は主要取引金融機関である三井住友銀行となっており、安定した株主基盤を有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.77% |
| ノーリツ取引先持株会 | 5.23% |
| 三井住友銀行 | 3.79% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役会長の腹巻知氏、代表取締役社長の竹中昌之氏が経営を牽引し、社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 腹巻 知 | 代表取締役会長 | 1983年入社。信和工業代表取締役社長、研究開発本部長等を経て、2020年代表取締役社長に就任。2025年7月より現職。 |
| 竹中 昌之 | 代表取締役社長 | 1992年入社。ハーマン常務取締役、経営管理本部長、国内事業統括本部長等を経て、2025年7月より現職。 |
| 吉本 厚志 | 取締役兼専務執行役員プロダクツ統括本部長 | 1989年入社。新エネルギー事業推進部長、研究開発本部長等を経て、2025年3月より現職。 |
| 池田 英礼 | 取締役兼専務執行役員国内事業統括本部長 | 1996年入社。ハーマン代表取締役社長、海外事業統括本部長等を経て、2025年7月より現職。 |
| 平野 直樹 | 取締役常勤監査等委員 | 1988年入社。関東産業代表取締役社長、ノーリツリビングクリエイト代表取締役社長等を経て、2024年3月より現職。 |
社外取締役は、谷保廣(公認会計士 谷会計事務所代表)、野田いづみ(元ビーウィズ人事部長)、伊藤三奈(Mina Arai-Ito外国法事務弁護士事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内事業」「海外事業」の2つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
■(1) 国内事業
日本国内において、温水空調機器や厨房機器などの生活設備機器の製造および販売を行っています。顧客は主に一般消費者や住宅事業者、設備業者などであり、高効率給湯器やハイブリッド給湯機、ビルトインコンロなどを提供しています。
製品の販売および修理・保守などのアフターサービスから収益を得ています。同社を中心に、大成工業、信和工業、ハーマン、多田スミス、アールビーなどが製品や部品の製造を行い、同社やハーマン、ノーリツリビングクリエイトなどが販売やサービスを提供しています。
■(2) 海外事業
中国、北米、オーストラリアなどの海外市場において、温水空調機器や厨房機器の製造および販売を展開しています。各地域のニーズに合わせたタンクレス給湯器やヒートポンプ商材などを一般消費者や現地の設備業者向けに提供しています。
現地での製品販売を主な収益源としています。中国では能率(上海)住宅設備や櫻花衛厨(中国)股份有限公司が製造・販売を行い、北米ではNORITZ AMERICA CORPORATION、オーストラリアではDUX MANUFACTURING LIMITEDなどが運営しています。
■(3) その他
報告セグメントに含まれない事業として、グループ内のシェアードサービス業務や温水機器の部品類の製造などを手掛けています。
グループ各社へのサービス提供による手数料や部品供給から収益を得ており、運営は主にエスコアハーツなどが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の売上高は概ね2,000億円規模で安定して推移しています。経常利益は資材価格の高騰等により一時落ち込んだものの、その後の価格改定や高付加価値商品の販売拡大、原価改善の進展などにより収益性の回復が進み、直近では利益率も上昇傾向にあります。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,781億円 | 2,110億円 | 2,019億円 | 2,022億円 | 2,020億円 |
| 経常利益 | 40億円 | 79億円 | 12億円 | 36億円 | 55億円 |
| 利益率(%) | 2.2% | 3.7% | 0.6% | 1.8% | 2.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 55億円 | 65億円 | -11億円 | 56億円 | 17億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期と同水準を維持していますが、高付加価値商品へのシフトや原価低減の取り組みにより、売上総利益および営業利益は増加しています。特に営業利益は大幅な増益を達成し、収益体質の改善が顕著に表れています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,022億円 | 2,020億円 |
| 売上総利益 | 631億円 | 637億円 |
| 売上総利益率(%) | 31.2% | 31.5% |
| 営業利益 | 24億円 | 43億円 |
| 営業利益率(%) | 1.2% | 2.1% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が171億円(構成比29%)、荷造運搬費が59億円(同10%)を占めています。売上原価は1,383億円で、売上原価合計に対する構成比は68%となっています。
■(3) セグメント収益
国内事業は、環境配慮型商品や高付加価値商品の販売増および価格改定効果により増収増益となりました。海外事業は、中国市場の低迷で減収となったものの、北米や豪州での好調な販売と費用コントロールにより大幅な増益を記録しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内事業 | 1,335億円 | 1,367億円 | 14億円 | 21億円 | 1.6% |
| 海外事業 | 687億円 | 653億円 | 10億円 | 22億円 | 3.3% |
| 連結(合計) | 2,022億円 | 2,020億円 | 24億円 | 43億円 | 2.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 86億円 | 100億円 |
| 投資CF | -60億円 | -111億円 |
| 財務CF | -25億円 | -37億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
創業の原点「お風呂は人を幸せにする」を大切にしつつ、今後の事業展開を見据えてグループミッション「新しい幸せを、わかすこと。」を策定しています。暮しに寄り添い、より豊かな未来を創造するための挑戦を続け、「幸せ」をわかす企業として、人々の毎日に温もりと笑顔を届けることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、理念体系の中でValues(価値観)として「すべては挑戦から始まる」を掲げています。主体的な「挑戦」を通じて従業員一人ひとりのやりがいを醸成することを重視し、個人の挑戦を評価する仕組みや、全従業員の投票で決まる表彰制度を構築するなど、「挑戦」を組織文化として定着させる取り組みを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
2024年度から2026年度までの中期経営計画「Vプラン26」を推進し、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。同計画の最終年度となる2026年12月期の業績目標として、以下の数値を掲げています。
* 売上高:2,100億円
* 営業利益:45億円
* ROE:6%超
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画では、住宅向け温水分野に偏重した国内の事業構造を変革し、非住宅・厨房分野の拡大や環境配慮型商品の拡販に注力します。海外では北米と東南アジアでの事業展開を加速し、中国への依存構造からの脱却を図ります。また、生産システムのスマート化によるコストダウンを進めるとともに、成長事業や戦略課題への積極的な投資を行う方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人的資本を最も大切な資本と捉え、「多様な人材を活かす」「成長実感を生み出す」「挑戦を後押しする」をテーマに掲げています。女性、シニア、障がい者、外国人など多様な人材の活躍を推進するとともに、サクセッションプランに基づく次世代経営者の育成や、1on1ミーティング等を通じた個人の成長支援とエンゲージメント向上に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 43.8歳 | 18.1年 | 6,502,178円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.3% |
| 男性育児休業取得率 | 52.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 64.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 72.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、経験者採用比率(49.1%)、障がい者のGr適用実雇用率(3.9%)、総合エンゲージメントスコア(69)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) カーボンニュートラルへの対応遅れ
同社グループはガス・石油機器の製造・販売を主力としているため、カーボンニュートラルへの対応が重要な課題です。環境目標の未達やESG評価の低下が事業活動や持続的成長に重大な影響を及ぼす可能性があります。そのため、環境配慮型商品や次世代型給湯器の開発など、サプライチェーン全体での取り組みを推進しています。
■(2) 事業活動復旧の長期化
自然災害や事故、パンデミック等の不測の事態に加え、ランサムウェア等のサイバー攻撃によるシステム障害で事業停止が長期化するリスクがあります。同社は事業継続計画(BCP)の整備を進めるとともに、多様化する事業停止リスクに対応する体制を構築し、影響の最小化と早期復旧を目指しています。
■(3) サプライチェーンの分断
感染症の流行や地政学的リスク、大規模な自然災害の発生などにより、部品調達先からの供給が停止し、サプライチェーンが分断される可能性があります。これにより生産や製品出荷が困難となり、業績に悪影響を及ぼすおそれがあるため、部品の複社購買や調達拠点の分散化など、安定的な供給体制の構築に取り組んでいます。
■(4) IT・情報セキュリティ
事業活動の多くを情報システムに依存しているため、サイバー攻撃や通信障害等により生産・出荷が停止するリスクがあります。また、個人情報や技術情報の漏洩が発生した場合、損害賠償やブランド価値の低下に繋がるため、セキュリティ監視体制の強化やバックアップ体制の整備など、適切な情報管理を徹底しています。



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