東京建物 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京建物 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京建物は東京証券取引所プライム市場に上場する総合不動産デベロッパーです。主にオフィスビル等の開発や賃貸を担うビル事業、マンション分譲等の住宅事業を展開しています。直近の業績は、投資家向け物件売却の増加等により増収、営業利益および経常利益は増益となった一方、当期純利益は減益となっています。


※本記事は、東京建物株式会社 の有価証券報告書(第208期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東京建物ってどんな会社?


同社は日本最古の総合不動産会社として、オフィスビルやマンションの開発から運営まで幅広い事業を展開しています。

(1) 会社概要


1896年に安田善次郎らの発起により設立され、住宅ローンの原型となる割賦販売方式で不動産売買を開始しました。1907年に東京株式取引所へ上場し、戦後は新宿センタービル等の開発により総合不動産会社としての地歩を固めました。近年は物流施設や海外事業など、多様なアセットタイプの開発を推進しています。

従業員数は連結で5,035名、単体で836名です。大株主については、筆頭株主が資産管理業務等を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に日本カストディ銀行(信託口)、第3位は証券金融業務等を行う日本証券金融となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 18.49%
日本カストディ銀行(信託口) 11.59%
日本証券金融 2.29%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性3名の計16名で構成され、女性役員比率は18.8%です。代表取締役社長執行役員は小澤克人氏です。社外取締役は5名在籍しています。

氏名 役職 主な経歴
小澤克人 代表取締役社長執行役員 1987年同社入社。RM事業部長、企画部長、海外事業本部長等を経て、2025年4月より現職。
野村均 代表取締役会長 1981年同社入社。ビルマネジメント部長、ビル企画部長等を経て、2025年1月より現職。
和泉晃 代表取締役副社長執行役員ビル事業本部長 1987年同社入社。商業施設事業部長、都市開発事業部長等を経て、2025年1月より現職。
秋田秀士 取締役専務執行役員住宅事業本部長 1987年同社入社。RM事業部長、人事部長等を経て、2025年1月より現職。
神保健 取締役専務執行役員住宅事業本部副本部長 1988年同社入社。住宅情報開発部長等を経て、2025年1月より現職。
古林慎二郎 取締役常務執行役員ビル事業本部副本部長 1988年同社入社。ビル事業企画部長、都市開発事業第一部長等を経て、2025年1月より現職。
種橋牧夫 取締役取締役会議長 1979年富士銀行入行。みずほ銀行代表取締役副頭取などを経て、2025年1月より現職。


社外取締役は、恩地祥光(元レコフ代表取締役会長)、服部秀一(服部総合法律事務所設立)、木下由美子(現千葉興業銀行社外取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ビル事業」「住宅事業」「アセットサービス事業」および「その他」事業を展開しています。

ビル事業


オフィスビル、商業施設、物流施設等の開発から販売、賃貸および運営までを総合的に提供しています。主に法人顧客やテナント企業を対象に、好立地で高スペックな不動産空間を創出しています。

収益源は、テナントからの賃貸収入や施設運営に伴う管理収入、ならびに投資家向けの不動産売却収入です。運営は主に東京建物が担うほか、建物管理等を東京不動産管理や新宿センタービル管理などの子会社が行っています。

住宅事業


分譲マンションの開発・販売を中心に、賃貸マンションの開発・運営などを展開しています。「Brillia(ブリリア)」ブランド等の良質な住まいを個人顧客や不動産投資家向けに提供しています。

収益源は、個人顧客へのマンション分譲代金や賃貸収入、物件の売却収入、およびマンション管理受託に伴う管理料です。運営は主に東京建物のほか、マンション管理を東京建物アメニティサポートが担当しています。

アセットサービス事業


不動産の仲介やコンサルティング、不動産の買取再販、および時間貸しや月極駐車場の開発・運営などを幅広く手掛けています。個人から法人まで多様な不動産ニーズに対応しています。

収益源は、不動産売買の仲介手数料や買取再販による売却益、および駐車場の利用料収入です。不動産仲介等は東京建物不動産販売が担い、駐車場事業は日本パーキングが運営を行っています。

その他事業


ホテルや温浴施設、ゴルフ場などを運営する体験型施設運営事業のほか、ファンド事業や海外事業などを展開しています。米国やアジア地域等において多様な不動産開発に参画しています。

収益源は、施設利用客からの利用料、不動産ファンドの運用受託報酬、海外での不動産開発・販売に伴う収益などです。運営は東京建物リゾートや東京建物不動産投資顧問などの各事業会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、大規模再開発プロジェクトの進展や投資家向け物件売却の増加を背景に、売上高および経常利益ともに概ね右肩上がりの成長を続けています。収益性の改善も進んでおり、安定した利益基盤を構築していることが伺えます。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 3,405億円 3,499億円 3,759億円 4,637億円 4,746億円
経常利益 463億円 635億円 695億円 717億円 782億円
利益率(%) 13.6% 18.2% 18.5% 15.5% 16.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 256億円 320億円 323億円 576億円 535億円

(2) 損益計算書


売上高は安定的に推移しており、売上総利益率および営業利益率ともに前期から改善しています。物件売却等による高収益な取引の増加が、全体の利益率向上に寄与している傾向が読み取れます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 4,637億円 4,746億円
売上総利益 1,266億円 1,423億円
売上総利益率(%) 27.3% 30.0%
営業利益 797億円 958億円
営業利益率(%) 17.2% 20.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が141億円(構成比30.0%)、租税公課が48億円(同10.0%)を占めています。また、営業原価については、ビル事業原価が1,097億円(構成比33.0%)、住宅事業原価が1,036億円(同31.0%)を占めています。

(3) セグメント収益


ビル事業は投資家向け売却用物件の収益計上等により大幅な増収となりました。一方、住宅事業は前期に大型マンションを収益計上した反動などにより減収となっています。アセットサービス事業やその他事業も堅調に推移し、全体として増収を確保しました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
ビル事業 1,766億円 2,202億円
住宅事業 2,115億円 1,651億円
アセットサービス事業 547億円 635億円
その他事業 209億円 258億円
連結(合計) 4,637億円 4,746億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 189億円 321億円
投資CF -1,421億円 -974億円
財務CF 1,056億円 1,042億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.4%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は26.0%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


企業理念「信頼を未来へ」のもと、持続的成長と中長期的な企業価値の向上を図り、経営の健全性・透明性を確保しつつ効率性を高めることを主眼としています。また、長期ビジョン「次世代デベロッパーへ」を掲げ、事業を通じて「社会課題の解決」と「企業としての成長」をより高い次元で両立することを目指しています。

(2) 企業文化


チームでの成果が重視され、質の高いチームプレーや円滑なコミュニケーションがとれる風土や価値観が根付いており、これによる競争優位性の発揮を強みとしています。また、カルチャーデザインプログラム「TASUKI」を通じ、「温故知新のタスキリレー」をコンセプトに歴史や文化の継承に努めています。

(3) 経営計画・目標


「グループ中期経営計画(2025~2027年度)」において、最終年度の利益指標や資本効率指標を定めるとともに、適切なバランスシートコントロールを図るための財務指針を掲げ、持続的かつ安定的な利益成長を目指しています。

* 連結事業利益:950億円(2027年度目標)
* ROE:10.0%
* D/Eレシオ:2.4倍程度
* 有利子負債/EBITDA倍率:12倍程度

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画の基本方針として「強靭かつしなやかな事業ポートフォリオの構築により、成長加速・資本効率向上を実現する」ことを掲げています。重点戦略として、「資産回転型事業の加速・拡大」「安定収益基盤の強靭化」「規律あるバランスシートコントロール」に取り組み、成長を支える経営インフラの高度化を推進していく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人事理念「会社は社員の貢献に応え、社員の成長を会社の成長につなげる」のもと、「信頼される人」「未来を切り拓く人」を求める人材像としています。事業戦略と連動した人材戦略として、独自の企業風土を土台に「人材ポートフォリオの構築」および「多様な人材の活躍」に取り組み、働きがいのある職場の実現を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 41.8歳 11.3年 11,859,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.7%
男性育児休業取得率 87.5%
男女賃金差異(全労働者) 55.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 61.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 46.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(総合職)の目標(40.0%)、キャリア採用比率(総合職)の目標(30.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 不動産開発の遅延・コスト増リスク


天候不順や自然災害の発生、許認可取得の遅延、土壌汚染等の予期せぬ事象により、不動産開発プロジェクトのスケジュール遅延やコスト増加が発生した場合、同社グループの経営成績および財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 金利変動リスク


同社グループは有利子負債の大部分を長期の借入等とし、金利の固定化を図ることで影響の抑制に努めています。しかし、金利が上昇した場合には支払利息の増加を通じて業績に影響を及ぼすほか、保有不動産の価値低下につながる可能性があります。

(3) 不動産市況の変動リスク


国内外の景気動向や不動産市況の急速な変動により、オフィスニーズの減退や分譲住宅市場における顧客の購買意欲の低下、不動産投資市場での投資需要の低下が生じた場合、同社の事業戦略および業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 情報漏洩・セキュリティリスク


個人情報や機密情報を扱う情報システムに対するサイバー攻撃、システム障害、または役職員の不注意等により情報漏洩が生じた場合、業務の停滞や社会的信用の失墜、損害賠償の発生等を招き、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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