アイ・エス・ビー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アイ・エス・ビー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するアイ・エス・ビーは、ソフトウェア開発やインフラ構築などを手掛ける情報サービス事業と、出入管理システム等のセキュリティシステム事業を展開しています。直近の業績は、情報サービス事業での受注拡大などにより増収となったものの、成長投資等の費用増により減益となっています。


※本記事は、株式会社アイ・エス・ビー の有価証券報告書(第56期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アイ・エス・ビーってどんな会社?


同社は、情報サービス事業とセキュリティシステム事業を軸に、幅広いITソリューションを提供する企業です。

(1) 会社概要


同社は1970年にコンピュータ室の運用管理を目的として設立され、同年ソフトウェア開発事業に進出しました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2015年には東京証券取引所市場第一部銘柄に指定されました。2017年にはアートを子会社化し、セキュリティシステム事業を本格的に展開しています。

現在の従業員数は連結で2,246名、単体で992名です。筆頭株主は代表取締役社長の関連会社である若尾商事で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は同社グループの従業員持株会となっています。

氏名 持株比率
若尾商事 17.45%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.99%
アイ・エス・ビー・グループ従業員持株会 3.54%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は若尾一史氏が務めており、社外取締役の比率は36.4%となっています。

氏名 役職 主な経歴
若尾 一史 代表取締役社長 1999年若尾商事入社。2002年ソフトウエアメインテナンス(現エス・エム・シー)を経て同社へ転籍。関連企業部長などを経て2016年取締役就任。専務取締役などを歴任し、2021年より現職。
小笠原 芳市 常務取締役 1987年コスモ企業入社、1988年同社入社。我孫子システム部長、執行役員第一事業部長などを経て2019年取締役就任。事業本部長や営業本部長などの要職を歴任し、2026年より現職。
関本 祥文 取締役セキュリティシステム事業担当 1988年和光証券(現みずほ証券)入社。2010年同社入社。経理部長などを経て2017年取締役就任。アート代表取締役社長や同社経営企画担当などを歴任し、2023年より現職。
牧田 甲希 取締役営業本部長 1986年フジソフトウェアサービス入社、1988年同社入社。ビジネスシステム部長、執行役員ビジネス・インフラソリューション事業部長などを経て、2022年より現職。AMBC代表取締役社長も兼務。
廣瀬 雅也 取締役管理本部長 1990年同社入社。総務部長、総務・人事部長などを経て2017年執行役員管理本部副本部長に就任。グループ経営企画室長や関連企業部長などの要職を歴任し、2024年より現職。
山本 年朗 取締役グループ経営担当 1991年三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2021年同社入社。総務部長、法務部長、執行役員グループ統制室長やグループ経営企画室長などを経て、2026年より現職。
竹田 陽一 取締役(常勤監査等委員) 1985年三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2002年同社入社。海外事業部長、執行役員第一事業本部長などを経て2014年取締役就任。営業本部長や管理本部長を歴任し、2024年より現職。


社外取締役は、渡邊芳樹(税理士法人WATANABE代表社員)、清水亜希(明哲綜合法律事務所パートナー弁護士)、佐藤香代(法律事務所たいとう代表弁護士)、長谷川智彦(Dエンジン代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報サービス事業」および「セキュリティシステム事業」を展開しています。

(1) 情報サービス事業


車載、医療、モバイル、情報家電などの組込み・制御ソフトウェア開発や検証、基幹システムや金融・公共ソリューションのソフトウェア開発を提供しています。また、データセンターサービスやクラウド環境の構築、運用保守などのフィールドサービスも手掛けています。

顧客からの受託開発やシステム構築、運用保守サービスに係る対価、機器の販売代金などを主な収益源としています。運営は同社のほか、エス・エム・シー、ノックスデータ、スリーエス、テイクスなどが共同で担っています。

(2) セキュリティシステム事業


オフィスビルや施設向けに、出入管理システム、電気錠、テンキーなどのセキュリティ関連機器の開発、販売、および保守サービスを提供しています。ハードウェアの販売だけでなく、設置工事やソフトウェアとの連携提案も行います。

セキュリティ機器の販売代金や施工費用、ならびに保守サービスに伴う月額利用料などのリカーリングビジネスを収益源としています。本事業の運営は主にアートおよびアートサービスが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで成長を続けています。一方、経常利益は着実な増加傾向にありましたが、直近の期では成長投資やコスト増加の影響により減益へと転じました。利益率も直近では低下傾向にあり、中長期的な収益性の向上が今後の課題となっています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 262億円 290億円 324億円 340億円 370億円
経常利益 19億円 24億円 28億円 29億円 24億円
利益率(%) 7.4% 8.3% 8.7% 8.5% 6.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 11億円 8億円 11億円 4億円

(2) 損益計算書


売上高は順調に拡大しており、それに伴い売上総利益も増加しています。しかし、営業活動の強化や人材投資などによって販売費及び一般管理費が膨らみ、営業利益および営業利益率は低下する結果となりました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 340億円 370億円
売上総利益 82億円 85億円
売上総利益率(%) 24.3% 22.9%
営業利益 28億円 23億円
営業利益率(%) 8.2% 6.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が18億円(構成比29%)、従業員賞与が6億円(同10%)を占めています。売上原価の内訳については、有価証券報告書に詳細な記載がありません。

(3) セグメント収益


情報サービス事業は、既存顧客からの継続的な受注やクラウド移行案件などが好調に推移し増収となりましたが、不採算プロジェクトの発生やコスト増により減益となりました。一方、セキュリティシステム事業は、月額課金型のビジネスの拡大により増収増益を達成し、高い利益率を確保しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
情報サービス事業 290億円 315億円 21億円 15億円 4.8%
セキュリティシステム事業 50億円 55億円 7億円 8億円 13.8%
連結(合計) 340億円 370億円 28億円 23億円 6.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 19億円 17億円
投資CF -14億円 -10億円
財務CF -5億円 -6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.2%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も67.2%といずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「夢を持って夢に挑戦」を企業理念とし、「卓越した技術と魅力ある製品・サービスで心豊かに暮らす笑顔溢れる社会づくりに貢献します」をミッションに掲げています。知恵とITの融合により、時代の変化に適応しながら未来を切り拓く新たな価値を創造していくことを目指し、社会に必要とされ続ける永続する企業を目標としています。

(2) 企業文化


「誇り」「誠実」「挑戦」をバリュー(価値観)として定めています。プロフェッショナルとして自らの技術とアイデアを磨き続け、透明性の高い経営のもとでお取引先と誠実に向き合う姿勢を重視しています。また、夢のある未来へ向けて情熱をもって新たな価値の創造に取り組み、常に進化し続ける風土が根付いています。

(3) 経営計画・目標


2030年度を最終年度とする「ISBグループ中長期経営計画2030」を策定し、以下の数値目標の達成を目指しています。

* 連結売上高:500億円以上
* 連結営業利益:45億円以上
* ROE(自己資本利益率):14.0%以上
* 連結配当性向:50%以上

(4) 成長戦略と重点施策


社会課題の解決と経済価値の創出を目指し、情報サービス事業ではAIドリブン開発チームへの変革やコンサル・プライム案件の拡大を図り、高収益化を進めます。セキュリティシステム事業では、リカーリング(継続課金)製品の拡大とハード・ソフト両面での営業体制の構築によるグループシナジーを強化し、事業領域の拡大に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業における最大の強みである人材を最重要要素と位置づけ、人的資本経営を推進しています。多様な価値観を尊重し、専門性を高めるための継続的な教育・トレーニング環境の整備、マネジメント層の育成、自律的なキャリア形成支援を実施しています。これにより、従業員エンゲージメントを高め、主体的に挑戦できる働きがいのある企業文化を醸成します。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 37.0歳 11.3年 6,113,061円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.7%
男性育児休業取得率 71.4%
男女賃金差異(全労働者) 76.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 76.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 60.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒女性比率(17%)、従業員エンゲージメントスコア(3.2)、GHG排出量(Scope1+2)(593.8 t-CO2)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ソフトウェア開発における競合激化


情報サービス業界には多数の競合企業が存在しており、他社との競争が激化した場合や、景気低迷によりソフトウェア開発需要が減少した場合には、技術者の稼働率や受注単価が低下し、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定分野の受託開発への依存


同社グループは、携帯端末やそのインフラ開発など、特定のメーカーからのソフトウェア受託開発を主力事業の一つとして基盤を拡大してきました。そのため、これら特定分野における顧客の需要が減少した場合には、収益に影響が及ぶリスクがあります。

(3) 不採算プロジェクトの発生と品質問題


ソフトウェア受託開発では、受注時の見積もりの難しさや仕様変更により、プロジェクトの採算が悪化するリスクがあります。また、提供するソフトウェアやサービスに不具合が発生した場合、追加コストの負担や損害賠償が生じる可能性があります。

(4) 買収企業の統合とのれん減損


企業買収や資本参加を通じた技術力の向上と顧客拡大を推進していますが、計画通りのシナジー効果が得られないリスクがあります。また、事業環境の変化等によりM&Aに伴って計上したのれんの減損処理が必要となった場合、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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