ツルハホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ツルハホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のドラッグストア大手。「ツルハドラッグ」「くすりの福太郎」などを全国展開し、医薬品や化粧品、食品等を販売しています。第63期は決算期変更に伴う9.5ヶ月の変則決算であったことなどから、前期比で減収減益となりましたが、実質的な収益力向上に取り組んでいます。


※本記事は、株式会社ツルハホールディングス の有価証券報告書(第63期、自 2024年5月16日 至 2025年2月28日、2025年5月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ツルハホールディングスってどんな会社?


北海道を起点に全国へ展開するドラッグストアチェーン。「お客様第一主義」を掲げ、地域密着型の店舗運営と積極的なM&Aで成長を続けています。

(1) 会社概要


1929年に北海道旭川市で鶴羽薬師堂として創業し、1963年に法人化しました。1995年にはジャスコ(現イオン)と業務・資本提携を締結し、2005年に東京証券取引所第一部に上場しました。その後、くすりの福太郎やレデイ薬局などを子会社化し、2015年に持株会社体制へ移行しました。直近では2024年にイオン、ウエルシアホールディングスとの資本業務提携契約を締結し、業界再編の中心に位置しています。

連結従業員数は11,298名、単体では209名です。筆頭株主は事業提携先である流通大手のイオンで、第2位は信託銀行です。創業家出身者も大株主として名を連ねていますが、資本業務提携によりイオングループとの関係が強化されています。

氏名 持株比率
イオン 19.88%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.55%
CEP LUX-ORBIS SICAV 5.29%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は鶴羽 順氏が務めています。社外取締役は5名で、取締役会の過半数を占めています。

氏名 役職 主な経歴
鶴羽 順 代表取締役社長 1998年ツルハ入社。同社北海道店舗運営本部長などを経て、2014年ツルハ社長。2020年6月より現職。
村上 正一 取締役 1992年ウェルネス湖北入社。同社社長を経て、2019年ツルハグループドラッグ&ファーマシー西日本社長。2015年8月より現職。
八幡 政浩 取締役 1991年ツルハ入社。同社北海道店舗運営本部長などを経て、2020年ツルハ社長。2020年8月より現職。
遠山 和登 取締役 1982年ツルハ入社。同社執行役員店舗開発本部長などを経て、2014年執行役員グループ店舗開発部門担当。2024年8月より現職。


社外取締役は、田中若菜(リンクトイン・ジャパン日本代表)、奥野宏(KTSS創設者)、佐藤はるみ(アンカー税理士法人札幌事務所所長)、岡崎拓也(岡崎拓也法律事務所代表)、浅田龍一(元ジェイアール西日本伊勢丹社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「物販事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) ドラッグストア運営事業


「ツルハドラッグ」「くすりの福太郎」「ウォンツ」「ウェルネス」「レデイ薬局」「杏林堂薬局」「ドラッグイレブン」などの屋号で、ドラッグストアおよび調剤薬局を全国に展開しています。医薬品、化粧品、雑貨、食品などを一般消費者向けに販売するとともに、処方箋に基づく調剤業務を行っています。

収益は、一般消費者からの商品販売代金および調剤報酬によって構成されています。運営は、株式会社ツルハ、株式会社くすりの福太郎、株式会社ツルハグループドラッグ&ファーマシー西日本、株式会社レデイ薬局、株式会社杏林堂薬局、株式会社ドラッグイレブンなどの各事業会社が行っています。

(2) その他事業


グループ全体のマーチャンダイジング機能やプライベートブランド商品の企画開発、通信販売、保険代理店業務などを手がけています。また、自動販売機の賃貸や飲料販売なども行っています。

主な収益源は、グループ内企業への商品供給や経営指導料、一般顧客への通信販売売上、保険手数料などです。運営は、株式会社ツルハグループマーチャンダイジング、株式会社ツルハフィナンシャルサービス、株式会社セベラルなどが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


第59期から第62期にかけて売上高は増加傾向にあり、1兆円を超える規模へと成長しました。利益面では安定して推移していましたが、第63期は決算期変更により9.5ヶ月の変則決算となったため、数値上は前期を下回っています。経常利益率は4%台後半で推移しており、底堅い収益性を維持しています。

項目 2021年5月期 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年2月期
売上高 9,193億円 9,157億円 9,701億円 10,275億円 8,456億円
経常利益 477億円 401億円 457億円 475億円 378億円
利益率(%) 5.2% 4.4% 4.7% 4.6% 4.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 148億円 131億円 118億円 142億円 161億円

(2) 損益計算書


決算期変更の影響で対象期間が異なるため単純比較はできませんが、売上総利益率は30%台を維持しています。営業利益率は4%台半ばで推移しており、変則決算下でも一定の利益率を確保しています。

項目 2024年5月期 2025年2月期
売上高 10,275億円 8,456億円
売上総利益 3,123億円 2,575億円
売上総利益率(%) 30.4% 30.5%
営業利益 472億円 379億円
営業利益率(%) 4.6% 4.5%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が790億円(構成比36.0%)、地代家賃が432億円(同19.7%)を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ現金を借入金の返済や株主還元に充てつつ、新規出店などの投資も行っている健全型企業です。

項目 2024年5月期 2025年2月期
営業CF 520億円 646億円
投資CF -361億円 -197億円
財務CF -363億円 -109億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.1%で市場平均(非製造業平均)を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「お客様の生活に豊かさと余裕を提供しよう」という経営理念を掲げています。創業以来、「お客様第一主義」を基本的な経営方針とし、地域社会の健康で快適な生活に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「親切・第一」「信用・第一」をモットーとし、お客様に対して常に感謝の気持ちを持ち、誠意ある対応を心がける文化があります。礼儀と規律を重んじつつ、信念を持って業務に取り組む姿勢が共有されています。

(3) 経営計画・目標


2026年2月期に向けて、以下の数値目標を掲げています。また、新規出店120店舗、閉店62店舗を行い、期末店舗数を2,716店舗とする計画です。

* 売上高:1兆1,134億円
* 営業利益:511億円

(4) 成長戦略と重点施策


収益性を重視したドミナント戦略の推進や、調剤薬局の新規開設によるヘルスケア機能の強化に取り組んでいます。また、プライベートブランド商品の開発強化や、デジタル技術を活用したマーケティングにより競争力を高める方針です。

* 収益性を重視した店舗展開戦略(ドミナント推進、スクラップ・アンド・ビルド)
* 調剤薬局の新規開設推進と機能向上
* プライベートブランドを通じた企業価値・競争力向上
* デジタル戦略の推進とIT基盤の強化
* イオン株式会社およびウエルシアホールディングス株式会社との経営統合

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


約5万人の社員を人的資本と位置づけ、「人材育成」「職場環境」「心身の健康」の3つの視点で施策を展開しています。地域社会への貢献とともに、社員自身の自律的な成長を図ることを目指し、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 46.3歳 20.1年 6,043,342円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.2%
男性育児休業取得率 71.4%
男女賃金差異(全労働者) 58.7%
男女賃金差異(正規雇用) 63.3%
男女賃金差異(非正規雇用) -%


※男女賃金差異(非正規雇用)については、HTML原文にデータがないため記載を省略しています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(24.3% ※係長級含む)、男性育児休業取得率(73.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制について


医薬品医療機器等法に基づき、店舗ごとに許可や登録が必要です。また、大規模小売店舗立地法により、新規出店や増床の際に届け出が義務付けられており、これらの法的規制や法令改正が事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 資格者確保について


店舗において医薬品を販売するためには、薬剤師や医薬品登録販売者の配置が義務付けられています。これらの有資格者を十分に確保できない場合、新規出店計画や営業体制に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 調剤業務について


調剤過誤防止システムの導入などで安全管理に努めていますが、万が一、調剤過誤や医薬品の欠陥により健康被害が発生した場合、損害賠償請求や社会的信用の失墜を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 出店政策について


特定の地域に集中出店するドミナント戦略を採用していますが、出店場所が十分に確保できない場合や、競合激化によりドミナント形成に想定以上の時間を要する場合、店舗収益が悪化し、グループ全体の業績に影響する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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