ツルハホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ツルハホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ツルハホールディングスは、東京証券取引所プライム市場に上場し、医薬品や化粧品、日用雑貨などを販売するドラッグストア事業を中核に展開する企業です。直近の業績では、店舗網の拡大や調剤併設の推進、ウエルシアホールディングスの完全子会社化などにより、売上高1兆4,506億円、当期純利益65億円を計上しています。


※本記事は、ツルハホールディングスの有価証券報告書(第64期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月21日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. ツルハホールディングスってどんな会社?


同社は、医薬品や化粧品、食品などを扱うドラッグストアチェーンを全国規模で展開する小売企業です。

(1) 会社概要


同社は1963年にツルハ薬局として設立されました。2001年に東京証券取引所市場第二部に上場し、翌年第一部銘柄に指定されました。2005年に持株会社体制へ移行し、現在のツルハホールディングスに商号を変更しています。その後も積極的なM&Aを進め、2025年にはウエルシアホールディングスを子会社化しました。

同社の従業員数は連結で27,681名、単体で245名体制となっています。大株主については、筆頭株主は事業会社であり資本業務提携先でもあるイオンで、第2位および第3位はそれぞれ資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
イオン 50.33%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.82%
日本カストディ銀行(信託口) 4.48%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.1%です。代表取締役社長は鶴羽順氏が務めています。社外取締役は6名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
鶴羽順 代表取締役社長 1998年ツルハ入社。同社北海道店舗運営本部長等を経て、2014年ツルハ代表取締役社長に就任。2018年同社代表取締役専務などを経て、2020年より現職。
桐澤英明 取締役 ウエルシア薬局商品部長や同社代表取締役副社長などを経て、2024年ウエルシアホールディングス代表取締役兼社長執行役員に就任。2025年より現職。
村上正一 取締役 1992年ウェルネス湖北(現ツルハグループドラッグ&ファーマシー西日本)入社。2009年同社代表取締役社長などを経て、2019年より現職。
八幡政浩 取締役 1991年ツルハ入社。同社東北店舗運営本部長や北海道店舗運営本部長などを経て、2020年にツルハ代表取締役社長に就任。同年より現職。
遠山和登 取締役 1982年ツルハ入社。同社店舗開発室第一店舗開発部長や執行役員店舗開発本部長などを経て、2020年ツルハ執行役員店舗開発本部長に就任。2024年より現職。


社外取締役は、田中若菜(リンクトイン・ジャパン日本代表)、奥野宏(KTSSマネージングパートナー)、浅田龍一(ITOI文化生活研究所顧問)、佐藤はるみ(アンカー税理士法人札幌事務所所長)、岡崎拓也(岡崎拓也法律事務所代表)、中山泰男(東京都公立大学法人理事長)です。

2. 事業内容


同社グループは、物販事業の単一セグメントで事業を展開しています。

ドラッグストア事業


医薬品、化粧品、雑貨、食品などを販売するドラッグストアおよび調剤薬局を展開しています。地域に密着した店舗づくりを進めており、一般消費者を主な顧客として、健康で快適な生活に貢献するための商品と専門的なサービスを提供しています。

収益源は、店舗での医薬品や日用品、食品などの商品販売代金、および調剤薬局での調剤報酬などです。運営はツルハ、くすりの福太郎、レデイ薬局、ウエルシアホールディングスなどの子会社が行い、ツルハホールディングスが持株会社としてグループの経営管理や戦略立案を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、直近の期では1兆4,506億円と大きく規模を拡大しています。経常利益も売上拡大に伴い増加していますが、利益率は4%台で安定的に推移しています。当期利益については直近の期で一時的に減少しています。

項目 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 9,157億円 9,701億円 10,275億円 8,456億円 14,506億円
経常利益 401億円 457億円 475億円 378億円 631億円
利益率(%) 4.4% 4.7% 4.6% 4.5% 4.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 131億円 118億円 142億円 161億円 65億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益を見ると、売上高が大きく増加しており、売上総利益も拡大しています。売上総利益率は約30%を維持しており、営業利益率も4%台で安定して推移しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 8,456億円 14,506億円
売上総利益 2,575億円 4,440億円
売上総利益率(%) 30.5% 30.6%
営業利益 379億円 630億円
営業利益率(%) 4.5% 4.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が1,399億円(構成比37%)、地代家賃が713億円(同19%)を占めています。売上原価は1兆66億円であり、売上原価合計に対する構成比として商品仕入等が大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループは物販事業の単一セグメントであるため、ここでは主な品目別の売上高の状況を分析します。食品や雑貨の販売が堅調に推移したほか、調剤併設の推進により調剤部門も拡大しています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
医薬品 - 1,445億円
化粧品 - 1,862億円
雑貨 - 3,479億円
食品 - 3,936億円
調剤 - 2,376億円
その他 - 1,361億円
連結(合計) - 14,506億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 646億円 846億円
投資CF -197億円 -198億円
財務CF -109億円 -390億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「お客様の生活に豊かさと余裕を提供する」という経営理念を掲げています。この理念のもとに利便性と専門性を追求し、お客様の健康で快適な生活に貢献するため、身近で買い物しやすい店舗づくりに取り組んでいます。社会と環境の課題に向き合い、ステークホルダーとの対話を通じて持続可能な社会の発展に貢献する企業を目指しています。

(2) 企業文化


「お客様第一主義」を創業以来の基本的な経営方針とし、これを重視する企業文化が根付いています。全てのお客様の人生に寄り添うライフストアを目指し、専門性とホスピタリティを兼ね備えた人材の育成や、多様な人材が能力を最大限に発揮できる環境の整備に力を入れています。地域医療を支える専門性の向上と、店舗運営における生産性向上を追求しています。

(3) 経営計画・目標


2029年2月期に向けた中期経営計画において、以下の経営指標(KPI)を掲げています。ウエルシアホールディングスとの統合シナジーを着実に具現化することで、中長期的な成長および企業価値の向上を目指しています。

・売上高 2兆7,000億円
・営業利益 1,350億円
・営業利益率 5.0%
・EBITDA 2,025億円
・EBITDAマージン 7.5%

(4) 成長戦略と重点施策


収益性を重視した店舗展開戦略として、新規出店中心から改装やスクラップ&ビルド重視へと転換し、店舗網の質的向上を進めます。また、調剤薬局の併設強化やオンライン対応を進めるほか、プライベートブランドの統合・再編を通じた競争力向上を図ります。さらにデジタル戦略による店舗作業の効率化や、ASEAN地域での海外事業の基盤構築にも注力していきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


約11万人超の従業員を最も重要な「人的資本」と位置づけています。「人材投資・育成」「成長・活躍」「働きやすさ」「職場環境」「心身の健康」の視点で構成した総合的な施策を展開し、従業員の自律的な成長を促す方針です。また、エンゲージメントサーベイの結果をもとに待遇や制度の改善を進め、事業会社間での共通化を図ることで働きやすさの向上を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 44.3歳 18.6年 7,439,918円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 16.4%
男性育児休業取得率 75.8%
男女賃金差異(全労働者) 63.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 65.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 50.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率目標(30.0%)、男性育児休業取得率目標(80.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 資格者の確保と調剤業務の遂行


医薬品の販売において、薬剤師や医薬品登録販売者の配置が義務付けられています。これらの有資格者を十分に確保できない場合、店舗展開に影響を及ぼす可能性があります。また、調剤業務において調剤過誤などが発生し訴訟に至った場合、社会的信用を損ない業績に影響を与えるリスクがあります。

(2) 出店に関する法的規制と店舗展開


売場面積が1,000㎡を超える新規出店などは「大規模小売店舗立地法」による届出や審査が必要です。法的規制により計画通りの出店や増床ができない場合、ドミナント戦略による出店政策に影響が生じ、店舗の収益悪化につながる可能性があります。

(3) 情報システムと個人情報保護


ポイントカードシステムの運用や調剤業務に伴い、顧客および患者の個人情報を多数保持しています。サイバー攻撃などの犯罪行為やシステムの不具合により情報漏洩のインシデントが発生した場合、社会的信用の低下を招き、グループの業績に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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