大塚商会 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 大塚商会 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大塚商会は東京証券取引所プライム市場に上場し、情報システムの構築から稼働までを担うシステムインテグレーション事業と、稼働後のサポートを行うサービス&サポート事業を主力としています。直近の業績は、企業の堅調なIT投資需要を背景に、売上高や各段階利益が過去最高を更新するなど、順調な増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社大塚商会の有価証券報告書(第65期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大塚商会ってどんな会社?


企業向けの情報システム構築とオフィスサプライ通販等のサポートを総合的に展開するITソリューション企業です。

(1) 会社概要


1961年、複写機及びサプライ商品の販売を目的に設立されました。1970年に電算機事業を開始し、1979年には自社開発の業務用パッケージソフト「SMILE」を発売しました。1999年に会員制通信販売「たのめーる」を開始し、2000年に東京証券取引所市場第一部へ上場を果たしています。

現在の従業員数は連結で10,079名、単体で8,287名です。筆頭株主は同社の関連会社である大塚装備で、第2位および第3位は資産管理業務等を行う信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
大塚装備 33.54%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.76%
日本カストディ銀行(信託口) 5.91%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性0名の計14名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は大塚裕司氏が務めています。社外取締役比率は約21.4%です。

氏名 役職 主な経歴
大塚裕司 代表取締役社長MM本部長 1976年横浜銀行入行。1980年リコー入社。1981年同社入社。1992年取締役、1995年取締役副社長を経て、2006年より現職。
片倉一幸 取締役兼上席専務執行役員営業本部長 1976年同社入社。1996年CAD販売促進部長。1997年取締役、1999年常務取締役、2008年取締役兼専務執行役員を経て、2018年より現職。
鶴見裕信 取締役兼専務執行役員営業副本部長、CAD部門長、CADプロモーション部長 1979年同社入社。2004年執行役員。2010年取締役兼上席執行役員、2013年取締役兼常務執行役員などを経て、2019年より現職。
齋藤廣伸 取締役兼専務執行役員経営管理本部長、プロジェクト推進室担当、監査室担当、マルチAI研究センター担当、お客様マイページプロモーションセンター担当 1968年同社入社。2000年経営企画室長、2003年執行役員、2007年取締役兼上席執行役員などを経て、2021年より現職。
桜井実 取締役兼常務執行役員技術本部長、APソリューション部門長 1979年同社入社。2003年テクニカルソリューションセンター長。2005年執行役員、2010年上席執行役員を経て、2013年より現職。
山田耕一郎 取締役兼常務執行役員業種SI部門長、本部SI統括部長、業種SIプロモーション部長 1986年同社入社。2018年執行役員、2023年上席執行役員、2024年常務執行役員を経て、2025年より現職。
畝野一夫 取締役兼上席執行役員経理財務部長 1997年同社入社。2017年経理部長、2021年執行役員、2023年上席執行役員を経て、2025年より現職。


社外取締役は、牧野二郎(牧野総合法律事務所弁護士法人所長)、齋藤哲男(ワークツー代表取締役)、鈴村文徳(元エプソン販売代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「システムインテグレーション事業」および「サービス&サポート事業」を展開しています。

システムインテグレーション事業

コンサルティングからシステム設計・開発・搬入設置工事、ネットワーク構築まで最適なシステムを提供しています。パソコン、サーバー、ソフトウエアなどのSI関連商品の販売や受託ソフト開発など、顧客のデジタル化やDX推進を幅広く支援しています。

収益源は、顧客企業に提供する商品販売代金やシステム開発・構築に係る対価です。主に同社およびOSKやネットワールドなどの子会社が事業を展開し、顧客の生産性向上やコスト削減を実現する付加価値の高いソリューションを提供しています。

サービス&サポート事業

サプライ供給、ハード&ソフト保守、テレフォンサポート、アウトソーシングサービス等により、導入システムや企業活動をトータルにサポートしています。オフィスサプライ通信販売事業「たのめーる」やサポート事業「たよれーる」などをストックビジネスとして展開しています。

収益源は、顧客からのオフィスサプライ商品の購入代金や、保守・サポートサービスに対する利用料などです。主に同社およびアルファテクノ、アルファネットなどの子会社が運営し、顧客が安心して事業活動を継続できる環境を支えています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上高は安定して成長を続けており、特に直近では企業のデジタル化やAI導入に伴うIT投資需要を捉え、大幅な増収を達成しています。経常利益や当期純利益も増益基調が続いており、利益率も約6〜7%台で堅調に推移するなど、高収益体質を維持しながら事業規模を拡大しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 8,519億円 8,610億円 9,774億円 11,077億円 13,228億円
経常利益 576億円 566億円 645億円 759億円 915億円
利益率(%) 6.8% 6.6% 6.6% 6.9% 6.9%
当期純利益 361億円 366億円 432億円 490億円 605億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は約19〜20%を維持しており、営業利益率も6.7%から6.8%へとわずかに改善しています。増収効果がコスト増を吸収し、営業利益ベースでも大幅な増益を実現しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 11,077億円 13,228億円
売上総利益 2,245億円 2,522億円
売上総利益率(%) 20.3% 19.1%
営業利益 744億円 899億円
営業利益率(%) 6.7% 6.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が618億円(構成比38.1%)、運送費及び保管費が332億円(同20.5%)を占めています。

(3) セグメント収益


システムインテグレーション事業は、パソコンの更新需要やパッケージソフトの販売が好調に推移し、大幅な増収を牽引しました。サービス&サポート事業も、「たのめーる」や「たよれーる」といったストックビジネスへの注力が奏功し、堅調な収益拡大を続けています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
システムインテグレーション事業 7,278億円 9,029億円
サービス&サポート事業 3,799億円 4,199億円
連結(合計) 11,077億円 13,228億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

大塚商会は、営業活動によるキャッシュ・フローが大幅に増加し、事業の健全性が向上しました。これは、売上債権の増加が抑制され、棚卸資産の管理が改善されたことが主な要因です。一方、投資活動によるキャッシュ・フローは、ソフトウエア取得への支出増により増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローも増加しており、これは配当金の支払いが増加したことによります。これらの結果、フリー・キャッシュ・フローは大きく増加し、事業全体の資金創出力が高まっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 377億円 922億円
投資CF -119億円 -205億円
財務CF -259億円 -476億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「大塚商会は多くの企業に、情報・通信技術の革新によってもたらされる新しい事業機会や経営改善の手段を具体的な形で提供し、企業活動全般にわたってサポートします。そして、各企業の成長を支援し、わが国のさらなる発展と心豊かな社会の創造に貢献しつづけます」をミッション(使命)として掲げています。

(2) 企業文化


行動指針として「常にお客様の目線で考え、お互いに協力して行動する」「先達のチャレンジ精神を継承し、自ら考え、進んで行動する」「法を遵守し、社会のルールに則して行動する」を定めており、創業以来の基本方針である「顧客満足度の追求」を実践する文化が醸成されています。

(3) 経営計画・目標


中・長期的な経営目標として、取引企業数、一企業あたりの売上高、営業利益伸長率、営業利益率、自己資本当期純利益率の継続的向上を重視しています。また配当性向を重視し、安定的な配当の継続を目指しています。具体的には以下の数値を掲げています。

・取引企業数伸長率:2.0%
・一企業当たりの売上高伸長率:3.0%
・営業利益伸長率:6.0%
・営業利益率:7.0%以上の定着
・自己資本当期純利益率:13.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「お客様に寄り添い、AIとセキュリティでお客様と共に成長する」という方針のもと、「オフィスまるごと」への取り組みを進め、顧客のDX推進を支援します。多様なチャネルを組み合わせた接点強化と、AIを活用した営業プロセス支援による効率化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「従業員の成長と自己実現の支援」を推進しており、従業員エンゲージメントの向上、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進、マルチスキルを備えた高度人材の育成を重点テーマとしています。AI資格取得支援やオンライン学習プラットフォームを通じたリスキリング機会の提供にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 42.0歳 17.6年 10,276,291円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.6%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 61.4%
男女賃金差異(正規雇用) 65.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 66.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントサーベイ回答率(89.0%)、障がい者雇用率(2.76%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 顧客のIT投資動向の変化

同社の顧客は企業規模・業種ともに幅広く分散しており特定顧客への依存度は低いものの、経済情勢の変化等により多くの企業のIT投資動向が同一方向に変化した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 製品・サービスの安定供給の確保

顧客に応じた最適な問題解決を行うため、多くの調達先から製品・サービス・技術の供給を受けています。調達先の事情により十分な供給が受けられず代替品も得られない場合、顧客への提供が滞り、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 情報漏洩とサイバー攻撃への対応

業務に関連して多数の個人情報や企業情報を保有しており、ISMSやプライバシーマーク等の認証を取得し厳重な管理を行っています。しかし、サイバー攻撃や人的過誤により情報漏洩が発生した場合、損害賠償責任や社会的信用の失墜につながる可能性があります。

(4) 感染症拡大による事業活動への影響

社会経済活動全体に大きな影響を及ぼす感染症が発生した場合、営業活動・サービス活動への制約、オフィスサプライ消費量やコピー使用量の減少、特定商材の需要急増による供給不足などが生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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