※本記事は、バリューコマース株式会社の有価証券報告書(第30期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. バリューコマースってどんな会社?
アフィリエイト広告をはじめとするマーケティングソリューションを通じ、顧客の販売促進を支援する企業です。
■(1) 会社概要
1996年に設立され、1999年にバリューコマースへ商号変更し日本初のアフィリエイトサービスを開始しました。2006年に東証マザーズへ上場し、2012年に東証一部へ市場変更しています。2019年には宿泊施設向けシステムを提供するダイナテックを子会社化し、トラベルテック領域へ参入しました。
現在の従業員数は連結・単体ともに381名体制で事業を運営しています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に日本カストディ銀行となっており、信託銀行等の機関投資家が上位を占める株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.14% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 2.45% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505103 | 2.04% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長最高経営責任者は香川仁氏が務めており、取締役における社外取締役の比率は40.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 香川 仁 | 代表取締役社長最高経営責任者 | アイダエンジニアリング、ヤフー等を経て、2013年同社取締役副社長執行役員に就任。2014年より現職。 |
| 遠藤 雅知 | 取締役最高財務責任者コーポレート本部長 | 熊谷組、ヤフー等を経て、2013年同社取締役。2014年最高財務責任者就任。2024年より現職。 |
| 長谷川 拓 | 取締役マーケティングソリューションズ事業管掌 | ブリヂストン、セブン-イレブン・ジャパン、ヤフー等を経て、2016年同社執行役員。2025年より現職。 |
| 田邉 浩一郎 | 取締役グローバルマーケティングソリューションズ管掌 | 朝日生命保険相互会社、ヤフー等を経て、2014年同社社外取締役。2019年同社取締役就任。2025年より現職。 |
| 粕谷 吉正 | 取締役事業開発管掌事業開発室長 | マッキンゼー、楽天、ヤフー等を経て、2020年B-SLASH代表取締役社長。2020年同社取締役就任。2024年より現職。 |
| 安房 正浩 | 取締役トラベルテック事業管掌 | 全日本空輸、楽天、ヤフー等を経て、2022年同社入社。最高マーケティング責任者等を経て2024年より現職。 |
社外取締役は、髙橋敏夫氏(元ローソン社外監査役)、池田明霞氏(元ジャフコ広報部長)、渡辺絢氏(元野村證券)、塩川直子氏(元監査法人トーマツ)です。
2. 事業内容
同社グループは、「マーケティングソリューションズ事業」「ECソリューションズ事業」および「トラベルテック事業」を展開しています。
■(1) マーケティングソリューションズ事業
コマース事業者の集客と販売促進を支援する事業です。主力サービスである成果報酬型広告「アフィリエイト」を通じて、広告主のウェブサイトへ消費者を誘導し、実際の成果に応じた費用対効果の高いマーケティング活動をサポートしています。
広告主から受け取る成果報酬やシステム利用に係る基本管理費等を主な収益源としています。同社独自のトラッキングシステムを活用し、広告主とメディア運営者を結ぶネットワークを提供しており、事業の運営は同社が行っています。
■(2) ECソリューションズ事業
オンラインモールのストア向けにクリック課金型広告「StoreMatch」およびCRMツール「STORE's R∞」を提供する事業です。ストアの集客向上や顧客関係の強化を支援する各種ソリューションを展開していました。
ストアからのクリック課金やツール利用料を収益源として同社が運営を行っていましたが、取引契約の終了に伴い、両サービスとも2025年7月末日をもって提供を終了しています。
■(3) トラベルテック事業
ホテルや旅館などの宿泊施設向けに、集客とデジタルトランスフォーメーションを支援する事業です。公式サイトへの集客を向上させる宿泊予約システムと、フロント業務や顧客管理を効率化するホテル管理システムを提供しています。
宿泊施設から受け取るシステム導入の初期費用や継続的な利用・保守料などを主な収益源としています。2025年4月に子会社のダイナテックを吸収合併し、現在は同社が中心となって事業を運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、数年前までは増収増益基調で推移していましたが、直近では減収減益の傾向が続いています。特に当期は一部サービスの提供終了や固定資産の減損損失計上などの影響により、売上高および各段階利益ともに大きく落ち込んでおり、利益率も低下するなど厳しい経営状況となっています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 336億円 | 357億円 | 294億円 | 304億円 | 242億円 |
| 経常利益 | 79億円 | 83億円 | 52億円 | 41億円 | 15億円 |
| 利益率(%) | 23.7% | 23.3% | 17.7% | 13.6% | 6.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 32億円 | 57億円 | 35億円 | 29億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高および売上総利益はともに前期比で減少しています。原価率は上昇傾向にあり、売上総利益率も低下しています。販売費および一般管理費の削減に努めているものの、売上高の大幅な減少を補うには至らず、本業の儲けを示す営業利益および営業利益率も大きく悪化する結果となりました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 304億円 | 242億円 |
| 売上総利益 | 100億円 | 73億円 |
| 売上総利益率(%) | 32.8% | 30.4% |
| 営業利益 | 42億円 | 20億円 |
| 営業利益率(%) | 13.7% | 8.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が18億円(構成比33.0%)、業務委託費が7億円(同13.8%)、システム利用料が6億円(同11.2%)を占めています。一方、売上原価においては広告媒体費が160億円(構成比95.6%)、経費が7億円(同4.4%)を占めており、メディア運営者へ支払う成果報酬等の広告媒体費が原価の大部分を占める構造となっています。
■(3) セグメント収益
主力のアフィリエイトを含むマーケティングソリューションズ事業や、宿泊施設向けのトラベルテック事業では、需要の回復や各カテゴリの伸長により前期比で増収となりました。一方で、ECソリューションズ事業はサービスの提供を終了した影響で大幅な減収となり、全体の業績を押し下げる主な要因となっています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| マーケティングソリューションズ事業 | 127億円 | 130億円 |
| ECソリューションズ事業 | 165億円 | 98億円 |
| トラベルテック事業 | 13億円 | 13億円 |
| 連結(合計) | 304億円 | 242億円 |
営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動と財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」を示しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 35億円 | 19億円 |
| 投資CF | -7億円 | -14億円 |
| 財務CF | -125億円 | -12億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社はスローガンとして「Your Success is Our Value」を掲げ、ミッションに「正しい情報を効率的につなぐ」、ビジョンに「最先端の技術で多様な選択ができる社会を創る」と定めています。情報技術を用いて正しい情報を効率的につなぐことで、コマース事業者のパフォーマンスの向上に貢献するとともに、消費者の意思決定をサポートし、多様な選択ができる社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「激しく変化する事業環境の中で本質的課題をとらえ、変革を恐れず、自律的に動いて結果にコミットする」ことを重視する企業文化の醸成に取り組んでいます。未知の領域に果敢に挑む姿勢を大切にし、挑戦を奨励する組織風土や、成功体験を積むことができる環境づくりを推進しながら、事業の持続的な成長に向けた基盤の強化を図っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、事業の持続的成長と収益性の改善を経営の重要課題として位置づけています。具体的な数値目標は設定されていませんが、中長期的な経営戦略の下で限られた経営資源を選択と集中によって成長領域に重点投入し、戦略的な成長投資を実施することで、売上高の継続的な拡大および営業利益の改善に努める方針を掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は各事業において以下の重点施策を掲げています。マーケティングソリューションズ事業では、良質なメディアの拡充やソーシャルコマース領域への取り組みを強化し、集客の質への転換を図ります。トラベルテック事業では、AIを活用した業務の省力化・自動化支援や、集客手法の多様化を支援するソリューションの高度化に注力し、宿泊施設の中長期的な競争力強化に貢献していきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、今後の持続的な成長と「モノづくり体制」の強化に向けて、従業員のキャリア志向に合わせた人材開発を推進しています。変革を恐れず自律的に結果にコミットする人材を育成・確保するため、教育制度の充実や多様なキャリアパスの提供、公正な評価と処遇の実現に取り組むとともに、ハイブリッドワークを前提とした柔軟な職場環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 38.0歳 | 8.1年 | 5,887,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外給与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 30.0% |
| 男性育児休業取得率 | 90.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 78.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 81.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 34.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 収益基盤の変化による利益確保リスク
同社は従来の収益基盤が変化した場合、従来の利益構造を維持できず、利益の確保が困難になるリスクがあります。これに対し、コスト構造を最適化した利益計画の策定や柔軟な運営体制の構築、新規事業の検討などを進めることで、収益構造の多様化を図っています。
■(2) Cookie規制等によるトラッキング制限
成果報酬型広告の効果計測において、Cookieを利用したトラッキングが制限されることで、広告効果の正確な計測が困難になるリスクがあります。同社はトラッキング規制やブラウザーベンダー等の動向を継続的に調査し、独自技術の開発や回避策の検討に努めています。
■(3) 事業戦略における環境変化への対応遅れ
市場環境や競争環境の急激な変化に対し、データ活用やプロダクトの高度化による対応が遅れた場合、収益性が低下するリスクがあります。同社は差別化戦略の推進や重点領域への選択的投資を行い、高付加価値化を図ることで事業基盤の強化に取り組んでいます。
■(4) サイバー攻撃等によるシステム障害・情報漏洩
サイバー攻撃やマルウェア感染、システム不具合などにより、重要データの暗号化や情報漏洩が発生し、サービスが停止するリスクがあります。同社はシステム管理体制の構築や定期的なバックアップ、脆弱性対策、外部からの不正アクセスの監視・防御を徹底し、事業継続体制を強化しています。



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