※本記事は、ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社の有価証券報告書(第29期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ガンホー・オンライン・エンターテイメントってどんな会社?
スマートフォンゲームやPCオンラインゲームの企画・開発・運営を主要事業として展開するエンターテインメント企業です。
■(1) 会社概要
1998年にネットオークションサービスの提供を目的に設立され、2002年にガンホー・オンライン・エンターテイメントへ商号変更しオンラインゲームサービスへ事業転換しました。2005年に新興市場へ上場後、2015年には東京証券取引所市場第一部へ市場変更し、2024年にはエイリムを子会社化しています。
現在の従業員数は連結で1,614名、単体で459名です。筆頭株主は資産管理業を行うSON Financialで、第2位および第3位は信託業務等を行う金融機関や信託関連法人が続いており、安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| SON Financial | 18.41% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.15% |
| INTERTRUST TRUSTEES(CAYMAN)LIMITED SOLEL Y IN ITS CAPACITY AS TRUSTEE OF JAPAN-UP(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) | 7.65% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長CEOは坂井一也氏が務めています。社外取締役の比率は30.8%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 坂井一也 | 代表取締役社長CEO | 九州相互銀行入行後、エクス・ツールス代表取締役社長を経て同社に入社。CFOや経営管理本部長を歴任し、2026年2月より現職。ゲームアーツ代表取締役社長等を兼任。 |
| 森下一喜 | 取締役会長最高開発責任者 | パルテック入社後、ソフトクリエイト等を経て同社に入社。COOや代表取締役社長を務め、2026年2月より現職。ゲームアーツ取締役会長等を兼任。 |
| 北村佳紀 | 取締役GV事業本部長 | 学生援護会入社後、エヌ・シー・ジャパン等を経て同社に入社。マーケティング本部長や国際本部長を歴任し、2015年10月より現職。Gravity理事等を兼任。 |
| 吉田康二 | 取締役CCO兼CCMO経営管理本部長 | アラビア石油入社後、任天堂の取締役等を務め、同社に入社。経営管理本部長代行を経て、2011年7月より現職。Gravity理事等を兼任。 |
| 市川彰彦 | 取締役パートナー・パブリッシング本部長 | 横浜フリューゲルス入団後、ソフトクリエイト等を経て同社に入社。開発本部第1企画開発本部長等を歴任し、2015年10月より現職。 |
| 大庭則一 | 取締役 | 三菱銀行入行後、ソフトバンク財務部財務企画グループ長を経て同社に入社。2011年3月より現職。ソフトバンクグループ財務企画部長等を兼任。 |
社外取締役は、大西秀亜(元ファーストリテイリング執行役員)、宮川圭治(元ドイツ証券投資銀行部門副会長)、田中晋(元任天堂取締役)、原悦子(アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、スマートフォンゲームなどのオンラインゲームサービスを中心に複数の事業を展開しています。
■(1) スマートフォンゲーム事業
スマートフォン向けゲームアプリの企画・開発・運営・配信を行っており、一般ユーザーを主な顧客としています。主力商品には「パズル&ドラゴンズ」や「ラグナロク マスターズ」などがあり、多様なコンテンツを提供しています。
ユーザーからゲーム内で使用できるアイテムの購入代金として、プラットフォーム企業を通じた各種決済や集金代行により利用料を徴収しています。運営は同社やGravityなどの連結子会社が行っています。
■(2) コンシューマゲーム事業
家庭用ゲーム機および携帯型ゲーム専用機向けのゲームソフトの企画・開発・運営・配信・販売を行っています。開発したゲームソフトは、卸商社や小売店、プラットフォーム企業を通じてお客様に提供されています。
ソフトの販売収益に加え、利用者からのアイテム課金による利用料を徴収するモデルを採用しています。同社を中心に、コンシューマゲーム市場向けに多様な作品をグローバルに展開しています。
■(3) PCオンラインゲーム事業
同社グループが企画・開発したPC向けオンラインゲームの配信および運営を行っており、主力タイトルとして「ラグナロクオンライン」などを提供しています。一般ユーザーが主な顧客層となります。
オンラインゲームの利用者から、月額利用料またはアイテム課金による利用料を徴収しています。他社からのライセンス使用許諾を受けたゲームの場合はライセンス料を支払い、運営は同社や子会社のゲームアーツ等が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績を見ると、売上高は2023年12月期にピークを迎えましたが、その後は減少傾向にあります。利益面でも、経常利益率が継続的に低下しており、直近の2025年12月期には開発費の増加などの影響により大幅な減益となり、最終赤字を計上する結果となりました。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1046億円 | 1055億円 | 1253億円 | 1036億円 | 932億円 |
| 経常利益 | 336億円 | 290億円 | 293億円 | 200億円 | 68億円 |
| 利益率(%) | 32.1% | 27.5% | 23.4% | 19.3% | 7.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 185億円 | 91億円 | 75億円 | 54億円 | -37億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に伴い、売上総利益率および営業利益率ともに悪化しています。特に当期は、新規開発タイトルに係る業務委託費を中心としたコスト増加が響き、営業利益が前年から大幅に縮小する結果となりました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1036億円 | 932億円 |
| 売上総利益 | 534億円 | 423億円 |
| 売上総利益率(%) | 51.6% | 45.4% |
| 営業利益 | 175億円 | 51億円 |
| 営業利益率(%) | 16.9% | 5.4% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が108億円(構成比28.9%)、給料及び手当が75億円(同20.0%)、業務委託費が74億円(同19.9%)を占めています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ガンホー・オンライン・エンターテイメントのキャッシュ・フローの状況は、営業活動による資金は税金等調整前当期純利益と法人税等の支払額により減少しました。投資活動では、定期預金の預入及び払戻による支出が主な要因となりました。財務活動では、自己株式の取得及び配当金の支払いにより資金が使用されました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 171億円 | -4億円 |
| 投資CF | -476億円 | -287億円 |
| 財務CF | -122億円 | -88億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「挑戦・創造する経営」を経営理念に掲げ、「感動と楽しい経験」をお客様に提供することを使命としています。お客様や株主、従業員をはじめとするステークホルダーと良好な関係を築き、健全な遊びの文化の創造と発展のために情熱を持った事業活動を行うことを重視しています。
■(2) 企業文化
同社は、「直感的」「革新的」「魅力的」「継続的」「演出的」という開発5原則を基に、新しい価値の創造に挑戦する文化を持っています。また、ゲーム開発においては「アメーバ開発体制」と呼ばれる柔軟な組織を形成し、必要に応じた人員配置により機動的に事業を運営する風土が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、「ゲームの面白さ」を追求することで幅広いユーザーの支持を集め、結果としてMAU(Monthly Active User:月に1回以上ゲームにログインしている利用者)を拡大することを最重要の経営指標として位置付けています。事業環境の変化に柔軟に対応し、中長期的な収益拡大を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、「既存価値の最大化」と「新規価値創造への挑戦」を成長戦略の柱としています。「パズル&ドラゴンズ」などの既存ブランドの多面的な展開を通じて生涯顧客を獲得する一方、マルチプラットフォーム向けの新作開発を推進しています。また、グローバル市場での収益基盤拡大や柔軟な組織体制の構築にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、性別や国籍、年齢、障碍の有無などの属性に関係なく適材適所の配置や登用を行うなど、多様な人材の確保と育成を推進しています。入社時研修や各部門でのOJT、専門分野に関する研修を通じて優秀な人材を育成するとともに、福利厚生の拡充を図り、従業員にとって働きやすい環境の整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 41.8歳 | 10.2年 | 7,570,000円 |
※平均年間給与は基準外賃金等を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.2% |
| 男性育児休業取得率 | 120.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 80.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 81.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 97.5% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員における女性比率(約22.5%)、中途採用者比率(約91.7%)、育児休業からの復職率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定ゲームタイトルへの収益依存
同社の売上高において「パズル&ドラゴンズ」シリーズが占める割合は低下傾向にあるものの、依然として一定の比率を占めています。競合タイルの台頭やユーザーの嗜好変化により同タイトルのMAU(月間アクティブユーザー数)が減少し、競争力が低下した場合には、同社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 新規ゲームの開発負担と不確実性
同社は中長期的な成長のためにオリジナルゲーム等の新規開発を推進していますが、技術の高度化に伴い多額の開発資金と長期の開発期間を要する傾向にあります。多額の投資を行ったにもかかわらず、ユーザーの支持を得られず開発を延期・中止した場合や想定通りの収益を確保できなかった場合には、業績に影響を与えるおそれがあります。
■(3) プラットフォーム企業の動向や手数料率の変動
同社の提供するスマートフォン向けゲームは、AppleやGoogleなどの決済代行業者(プラットフォーム企業)に対する収益依存やシステム利用への依存度が高い水準にあります。これらの企業との契約継続が困難になった場合や、事業戦略の転換によって手数料率の大幅な変更などが行われた場合には、同社の収益性に影響を及ぼす可能性があります。



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