※本記事は、株式会社ポーラ・オルビスホールディングスの有価証券報告書(第20期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ポーラ・オルビスホールディングスってどんな会社?
マルチブランドで国内外に展開する化粧品メーカーです。
■(1) 会社概要
1929年に創業者が静岡市で個人事業として創業し、訪問販売を開始したのが原点です。1940年にポーラ化成工業の前身、1946年にポーラの前身が設立されました。1984年にオルビスを設立して通信販売事業を展開し、2006年に持株会社としてポーラ・オルビスホールディングスが設立されました。2010年に東京証券取引所に上場しています。
同社グループの従業員数は連結で3,898名、単体で278名です。筆頭株主は財団法人のポーラ美術振興財団で、第2位は創業家出身で同社代表取締役会長を務める鈴木郷史氏、第3位は信託業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ポーラ美術振興財団 | 35.48% |
| 鈴木 郷史 | 18.60% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 4.69% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性4名の計14名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役会長は鈴木郷史氏、代表取締役社長は横手喜一氏が務めています。取締役10名のうち、半数にあたる5名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鈴木 郷史 | 代表取締役会長 | 本田技術研究所を経てポーラ入社。ポーラ代表取締役会長等を経て2023年より現職。 |
| 横手 喜一 | 代表取締役社長 | ポーラ入社後、ポーラ瀋陽董事長、ポーラ代表取締役社長等を経て2023年より現職。 |
| 久米 直喜 | 常務取締役財務・法務・総務・IR・サステナビリティ推進担当 | ポーラ経理部長等を経て、オルビスやポーラ化成工業等の取締役を歴任。2014年より現職。 |
| 小川 浩二 | 取締役総合企画・IT・HR・事業開発担当 | ポーラ入社後、ポーラ・オルビスホールディングス広報・IR室長等を歴任。2022年より現職。 |
| 小林 琢磨 | 取締役 | DECENCIA代表取締役社長、オルビス代表取締役社長等を経て、2025年よりポーラ代表取締役社長。2020年より現職。 |
社外取締役は、小宮一慶(小宮コンサルタンツ代表取締役)、牛尾奈緒美(明治大学教授)、山本晶(慶應義塾大学教授)、田中加陽子(IGPIグループ顧問)、谷口博基(Sakana AI事業開発本部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ビューティケア事業」「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。
■ビューティケア事業
スキンケア、メイクアップ、健康食品等の研究開発、製造および販売を行う主力事業であり、多様な顧客ニーズに応えるためマルチブランド戦略を推進しています。POLA、ORBIS、Jurlique、DECENCIA、THREE、FUJIMIといった独自性のあるブランドを国内外で展開しています。
収益源は、顧客への化粧品や健康食品の販売代金です。ブランドの運営や販売は、ポーラ、オルビス、Jurlique International Pty.Ltd.等の各事業会社が担い、ポーラ化成工業が主に化粧品の研究開発と製造を行っています。
■不動産事業
都市部のオフィスビルや、子育て支援に特化した賃貸マンション等の不動産物件を保有し、賃貸サービスを提供しています。
収益源は、保有する物件に入居するテナントや居住者からの賃料です。運営および管理は、ピーオーリアルエステートが行っています。
■その他
グループ内部および外部の顧客を対象としたビルメンテナンス事業や、グループ内における保険代理店業務などを提供しています。
収益源は、ビルの運営管理や補修・リニューアル工事による業務収入、および保険代理店としての手数料収入です。運営は、ピーオーテクノサービスやシノブインシュアランスサービスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、売上高が1,600億円台後半から1,700億円台で安定して推移しています。経常利益も140億円から190億円の間で推移し、利益率は概ね9%から10%台を維持しています。当期利益は堅調な推移を見せ、直近では増益を達成しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,786億円 | 1,663億円 | 1,733億円 | 1,704億円 | 1,703億円 |
| 経常利益 | 190億円 | 149億円 | 185億円 | 161億円 | 170億円 |
| 利益率(%) | 10.6% | 9.0% | 10.7% | 9.4% | 10.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 94億円 | 120億円 | 111億円 | 120億円 | 125億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前年と同水準で推移する一方、適切な費用コントロールを実施したことにより営業利益は改善し、営業利益率は上昇しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,704億円 | 1,703億円 |
| 売上総利益 | 1,385億円 | 1,383億円 |
| 売上総利益率(%) | 81.3% | 81.2% |
| 営業利益 | 138億円 | 157億円 |
| 営業利益率(%) | 8.1% | 9.2% |
販売費及び一般管理費のうち、販売手数料が314億円(構成比26%)、給料手当及び賞与が227億円(同19%)、販売促進費が128億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力であるビューティケア事業は、海外市場の減速等の影響で売上は微減したものの、利益面では改善が見られます。不動産事業は新規稼働のオフィスビルが寄与し、大幅な増収増益を記録しました。その他の事業は前年と同水準で推移しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ビューティケア事業 | 1,651億円 | 1,641億円 | 149億円 | 159億円 | 9.7% |
| 不動産事業 | 22億円 | 30億円 | 1億円 | 4億円 | 13.3% |
| その他 | 31億円 | 31億円 | 2億円 | 2億円 | 6.5% |
| 連結(合計) | 1,704億円 | 1,703億円 | 138億円 | 157億円 | 9.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスのため、「改善型」に該当します。営業利益や資産売却等で得た資金を活用し、借入金の返済や配当支払い等を進めている改善局面と言えます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 262億円 | 185億円 |
| 投資CF | -121億円 | 79億円 |
| 財務CF | -134億円 | -124億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は82.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
Missionとして「感受性のスイッチを全開にする」、Visionとして「ブランドひとつひとつの異なる個性を生かして、世界中の人々の人生を彩る企業グループ」を掲げています。マルチブランド戦略を展開し、各事業の成長を通じてグループ全体の企業価値向上を図り、美と健康に関わる事業を通じて社会に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同グループでは、「A Person-Centered Management」を人材マネジメントポリシーとして掲げています。人を最も重要な資産と位置づけ、個性を尊重し、性別や国籍、年齢等に関わらず、一人ひとりが自身の持つ能力を最大限に発揮できる環境づくりを推進する文化が醸成されています。
■(3) 経営計画・目標
2029年の創業100周年に向けた長期経営計画の第2段階として、2024年から2026年までの現中期経営計画を「再挑戦と成長基盤確立の3年間」と位置づけています。2026年時点で以下の経営指標の達成を目指しています。
・連結売上高 2,000億円
・連結営業利益率 12~13%
・ROE 10%以上
・配当性向 60%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
国内事業における顧客基盤の強化による持続的成長と収益性改善、海外事業の更なる成長と新市場での基盤確立を推進しています。また、育成ブランドの黒字化による収益貢献や、ブランドポートフォリオの拡充にも注力します。経営基盤の面では、新価値創出に向けた研究開発力の強化やサステナビリティの推進に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
グループの多彩なブランドの成長を牽引する個性豊かなリーダー人材の創出を目指しています。グループ横断の次世代リーダー育成プログラムや、希望部署への異動に挑戦できるFA制度、新規事業の社内公募制度等を整備し、従業員が自律的にキャリアを構築できる環境を提供しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 43.1歳 | 4.9年 | 7,662,268円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 29.7% |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 79.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 57.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、働きがい・エンゲージメントスコア(66.0%)、女性役員比率(13.9%)、経営人材候補者の充足率(131.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) ブランド価値の毀損
マルチブランド戦略を展開する中で、事業活動に対する否定的な評判等が流布し信用が低下した場合、ブランドイメージが毀損され、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) グループ内の競合
複数のブランドをターゲットや価格帯別に展開していますが、各ブランドの価値最大化やマルチブランド化を推進する過程でグループ内での競合が発生し、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 販売パートナーの確保
委託販売契約に基づく事業展開において、規制強化や労働環境の変化等により十分な販売パートナーの人材が確保できなくなった場合、事業活動や業績に支障をきたす可能性があります。



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