※本記事は、株式会社ネクソンの有価証券報告書(第24期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. ネクソンってどんな会社?
同社グループは、世界的なファン基盤を持つマルチプレイヤーオンラインゲームの制作と配信を手掛けています。
■(1) 会社概要
1994年12月に韓国で創業し、2000年に日本へ進出しました。2002年に同社を設立し、日本でのオンラインゲーム事業を本格化させています。その後、米国、中国、欧州などへ拠点を拡大し、2008年にはネオプルを買収しました。2011年に東京証券取引所市場第一部へ上場を果たしています。
現在の従業員数は連結で9,834名、単体で233名です。筆頭株主は投資事業などを行うその他の関係会社であるエヌエックスシーコーポレーションで、第2位はエヌエックスエムエイチビーブイ、第3位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| NXC Corporation | 31.30% |
| NXMH BV | 14.90% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は李政憲氏が務めており、社外取締役比率は62.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 李政憲 | 代表取締役社長 | 2003年ネクソンコーポレーション入社。ネオプル統制室室長やネクソンコリアコーポレーション社長等を歴任。2024年3月より同社代表取締役社長に就任。ネクソンコリアコーポレーション取締役等を兼任。 |
| パトリック・ソダーランド | 取締役会長 | エレクトロニックアーツのチーフデザインオフィサーなどを歴任。2018年エンバークスタジオのチーフエグゼクティブオフィサーに就任。2019年7月より同社取締役に就任し、2026年2月より同社会長。 |
| 植村士朗 | 代表取締役最高財務責任者兼管理本部長 | 監査法人やパシフィックゴルフマネジメント等を経て、2011年同社入社。2014年最高財務責任者兼経営管理本部長に就任。2015年同社代表取締役、2021年10月より最高財務責任者兼管理本部長。 |
| 姜大賢 | 取締役 | 2004年ネクソンコーポレーション入社。ライブ開発本部本部長等を経て、2020年ネクソンコリアコーポレーションのチーフオペレーティングオフィサーに就任。2025年3月より同社取締役。 |
社外取締役は、鶴見尚也(元セガ代表取締役社長兼COO)、アレクサンダー・イオシロビッチ(元UBSセキュリティーズマネージングディレクター)、本多慧(元アイドスインタラクティブ代表取締役)、国谷史朗(元環太平洋法曹協会会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「韓国」「中国」「北米」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 日本
日本市場向けにPCオンラインゲームおよびモバイルゲームの配信を行っています。また、国内の同業他社との業務提携や、他社開発ゲームを同社グループを通じて各国市場に展開する際の提携推進などの役割も担っています。
ユーザーがゲーム内で有料アイテムを購入する際の課金などを主な収益源としています。運営は同社が主体となって行っており、日本国内での事業展開と海外進出における中心的な役割を果たしています。
■(2) 韓国
韓国市場において、PCオンラインゲームおよびモバイルゲームの独自開発と配信事業を展開しています。「メイプルストーリー」などの代表的なタイトルを開発し、その知的財産権を保有して事業を推進しています。
自社配信によるユーザーからの課金収入や、知的財産権を保有するゲームを他社へライセンス供与する際のロイヤリティを収益源としています。運営はネクソンコリアコーポレーションやネオプルなどが担っています。
■(3) 中国
中国市場において、現地のゲーム配信会社に対して必要なインフラの提供や、事業戦略、ゲーム運営、マーケティングなどに係るコンサルティングサービスを提供しています。
現地の配信会社からコンサルティングに係る手数料などを受け取ることで収益を得ています。中国の法規制により海外資本が直接配信事業を行えないため、子会社のレクシアンソフトウェアディベロップメントが運営を支援しています。
■(4) 北米
主に北米圏のユーザーに向けて、PCオンラインゲームおよびモバイルゲームの配信事業を展開しています。多様なユーザーの特性や嗜好性に合わせたゲームサービスの提供を行っています。
ゲーム内のアイテム課金制度などを通じて、ユーザーから利用料を回収することで収益を得ています。運営は、ネクソンアメリカやトーベンスタジオなどの現地子会社が主体となって事業を展開しています。
■(5) その他
欧州や東南アジアなどの市場に向けて、PCオンラインゲームおよびモバイルゲームの開発と配信事業を展開しています。各地域の特性に合わせた戦略を立案し、ゲームサービスを提供しています。
ゲーム内での有料アイテム販売による課金収入などを主な収益源としています。スウェーデンに拠点を置くエンバークスタジオなどの現地法人が、それぞれの地域における独立した経営単位として事業運営を担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上収益は安定して拡大を続けており、堅調な成長傾向にあります。一方、税引前利益や当期利益については、年度ごとの事業環境や新作への投資状況によって増減を繰り返しており、利益率も29%台から49%台の間で変動しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 2,745億円 | 3,537億円 | 4,234億円 | 4,462億円 | 4,751億円 |
| 税引前利益 | 1,355億円 | 1,405億円 | 1,259億円 | 1,960億円 | 1,405億円 |
| 利益率(%) | 49.4% | 39.7% | 29.7% | 43.9% | 29.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1,149億円 | 1,003億円 | 706億円 | 1,348億円 | 921億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益は前期から拡大を続けていますが、営業利益は横ばいで推移しています。これは新タイトルの配信や事業拡大に向けた研究開発投資、プラットフォーム利用料などのコストが増加していることが影響していると見られます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 4,462億円 | 4,751億円 |
| 売上総利益 | 37億円 | 32億円 |
| 売上総利益率(%) | 0.8% | 0.7% |
| 営業利益 | 1,242億円 | 1,240億円 |
| 営業利益率(%) | 27.8% | 26.1% |
販売費及び一般管理費のうち、プラットフォーム利用料が363億円(構成比22%)、広告宣伝費が362億円(同22%)を占めています。また、売上原価においては、人件費が961億円(構成比50%)、ロイヤリティが550億円(同28%)と高い割合を占めています。
■(3) セグメント収益
韓国セグメントは依然として収益の柱であり、高い利益を創出しています。北米およびその他セグメントは新作タイトルの貢献などにより売上が大きく伸長しました。一方、日本セグメントは減収となり損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 74億円 | 63億円 | -26億円 | -41億円 | -64.7% |
| 韓国 | 4,214億円 | 4,224億円 | 1,544億円 | 1,329億円 | 31.5% |
| 中国 | 26億円 | 18億円 | 6億円 | -2億円 | -8.6% |
| 北米 | 190億円 | 298億円 | -41億円 | 7億円 | 2.4% |
| その他 | 86億円 | 419億円 | -92億円 | -95億円 | -22.6% |
| 調整額 | -128億円 | -271億円 | 1億円 | 1億円 | - |
| 連結(合計) | 4,462億円 | 4,751億円 | 1,392億円 | 1,201億円 | 25.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業CFと投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなる「改善型」の傾向を示しています。これは営業活動で得た資金と資産の売却等による収入をもとに、借入金の返済や株主還元などを進めている状況を表しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1,010億円 | 1,719億円 |
| 投資CF | 74億円 | 1,022億円 |
| 財務CF | -648億円 | -1,187億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は94.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「世界最高のゲーム会社」を目指すことを基本方針として掲げています。新規のゲームタイトルにおいては、楽しく独創的で他のゲームとは異なる高品質なゲームを提供することを重視しています。同時に、既存のゲームタイトルにおいては、魅力的なコンテンツのアップデートとユーザーを満足させるゲーム運用を通じて、長期間にわたり継続的にプレイを楽しんでもらうことを目指しています。
■(2) 企業文化
同社では、従業員の個性と才能を尊重し、多様なバックグラウンドを持つ人材が活躍できる企業文化を大切にしています。性別や国籍などに関わらず、多様な価値観や専門知識を持つ人材が能力を発揮できる環境を構築しています。また、「クリエイティブな人材」の育成に注力しており、創造力を刺激する文化芸術プログラムを提供するなど、クリエイティブな文化風土の醸成にも積極的に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、売上収益および営業利益を重視する経営指標として掲げており、これらの継続的な成長を通じて企業価値の向上を図ることを目指しています。また、株主への利益還元も重要な目標として位置づけており、一過性の費用を除く前年度の営業利益の一定割合を基準とした還元を実施する方針です。
・ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)目標:最低限10%、将来的には15%
■(4) 成長戦略と重点施策
売上収益と営業利益の持続的な成長を実現するため、同社独自の知的財産(IP)を軸とした未来成長戦略を推進しています。既存の主力タイトルをさらに成長させる「垂直方向への成長」として、新規タイトルの展開やプラットフォームの拡大、ハイパー・ローカライゼーション戦略に取り組んでいます。同時に「水平方向の成長」として、次世代の大ヒットIPの創出に向けた投資と育成を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、高品質でクリエイティブなコンテンツを創出するため、多様な価値観や経験を持つ人材の確保と育成を最重要視しています。知識と能力の向上を目的とした教育支援プラットフォームを整備し、職務能力やリーダーシップなどの多様な学習機会を提供しています。また、ワークライフバランスを重視し、柔軟な労働時間の選択や社内託児所の運営など、多様な人材が健康的に働ける職場環境の構築にも努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 40.1歳 | 8.1年 | 9,104,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める女性従業員の割合(22.0%)、男性従業員の育児休業取得率(7.0%)、男女別従業員比率における女性比率(34.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 主要ゲーム市場の成長と競争激化
同社グループの主力であるPCオンラインゲームやモバイルゲーム等の市場は拡大が見込まれるものの、予想通りに成長しない場合や、ゲーム開発期間の長期化による配信遅延が生じた際には業績に影響する可能性があります。また、他ジャンルのゲームや動画ストリーミングサービス等との間でユーザーの時間を奪い合う競争関係にあり、競合他社との競争が激化するリスクを抱えています。
■(2) 特定の主要フランチャイズへの売上依存
同社グループの売上収益は、「アラド戦記」や「メイプルストーリー」などの一部の主要フランチャイズへの依存度が高くなっています。ポートフォリオの多角化を進めているものの、ユーザーの嗜好の変化やシステム障害、知的財産に関する紛争などが発生し、これらの主力タイトルの人気が低下した場合には、同社グループの事業展開や業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 未成年者保護等に関する各国の法的規制
同社グループは世界各国でゲームを配信していますが、ゲーム障害の認定や未成年者保護を目的とした規制が各国で強化されています。特に中国では未成年者のゲーム利用時間や課金額の制限が厳格化されており、その他の国でも新たな法的規制や自主規制が導入される可能性があります。これらに対応するためのシステム開発や体制整備に想定以上のコストが発生するリスクがあります。



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