日本アクア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本アクア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本アクアは東京証券取引所プライム市場に上場し、建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォームや防水材の開発・販売・施工を主力事業としています。戸建住宅や建築物向けの断熱施工で実績を重ね、直近の業績は売上高337億円、経常利益28億円と増収増益を達成しており、堅調な成長を続けている企業です。


※本記事は、株式会社日本アクアの有価証券報告書(第22期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本アクアってどんな会社?


同社は、戸建住宅や建築物向けに優れた断熱・気密性能を持つウレタンフォーム断熱材を提供しています。

(1) 会社概要


2004年11月に硬質ウレタンフォームの現場吹付発泡による住宅用断熱材の施工・販売を目的として設立されました。2009年にヒノキヤグループの連結子会社となり、2013年には東京証券取引所マザーズへ上場を果たしました。2020年には防水材事業に参入し、現在はヤマダホールディングスの連結子会社です。

現在の従業員数は単体で710名体制となっています。筆頭株主は親会社のヒノキヤグループで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は同社創業社長の中村文隆氏です。全国に広がる施工ネットワークを活用し、継続的な成長基盤を構築しています。

氏名 持株比率
ヒノキヤグループ 54.94%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.56%
中村 文隆 3.12%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.1%です。代表取締役社長は中村文隆氏が務めており、社外取締役は6名で構成されています。

氏名 役職 主な経歴
中村 文隆 代表取締役社長 シンコーホーム、イノアックコーポレーション等を経て、2004年に日本アクアを設立し代表取締役社長に就任。
村上 友香 専務取締役 セントラルホームズ等を経て2004年に日本アクア入社。総務部長等を経て2013年に専務取締役に就任。
永田 和久 常務取締役 日清紡ケミカル等を経て2016年に日本アクア入社。原料開発部長等を経て2025年より現職。
藤井 豪二 取締役 ハウステック等を経て2013年に日本アクア入社。ブロック長や執行役員を経て2024年より現職。
宇佐美 計史 取締役 住友林業ツーバイフォー等を経て2008年に日本アクア入社。建築営業部長等を経て2025年より現職。


社外取締役は、剱持健(タカヨシ元代表取締役副社長)、小松健次(ベルシステム24元社長)、内海統之(博展元取締役)、柗田由貴(弁護士)、樋口尚文(公認会計士)、仁科秀隆(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、断熱材および防水材の施工販売などの事業を展開しています。

(1) 戸建住宅向け断熱材の施工販売


全国のハウスメーカーや地域の工務店向けに、木造戸建住宅用の現場発泡ウレタン断熱材「アクアフォーム」などの施工・販売を提供しています。

同事業は、戸建住宅の断熱工事の請負代金および断熱材の販売代金を収益源としています。施工に際しては、同社が定めた一定基準を満たす全国の認定施工店網を活用し、運営は日本アクアが行っています。

(2) 建築物向け断熱材の施工販売


マンションや病院、オフィスビル、データセンター、工場といった戸建住宅以外の建造物(建築物)向けに、専用の断熱材の施工・販売を提供しています。

同事業は、主に総合建設業者(ゼネコン)からの工事請負代金を収益源としています。鉄筋コンクリート造等に合わせた専用のポリオール原料を使用し、運営は日本アクアが行っています。

(3) 戸建・建築物向け防水材の施工販売


戸建住宅の屋根やバルコニー、建築物の屋上や立体駐車場のスロープ向けに、超速硬化と長寿命性能を有するポリウレア防水材「アクアハジクン」の施工・販売を提供しています。

同事業は、新築および改修物件における防水工事の請負代金を収益源としています。防火・準防火地域にも対応する飛び火認定を取得しており、運営は日本アクアが行っています。

(4) 商品販売


認定施工店や施工業者向けに、吹付施工機械やウレタン原料の販売を行うほか、遮熱材や透湿・防水材といった断熱関連の副資材や全館空調システムなどの販売を提供しています。

同事業は、施工機械・機械部品やウレタン原料、自社ブランドの関連資材などの商品販売代金を収益源としています。断熱材の施工販売に留まらない総合的な提案営業を通じて、運営は日本アクアが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して成長を続けており、市場の需要拡大や施工体制の強化を背景に堅調な伸びを示しています。経常利益などの各利益項目も安定した水準を維持しており、着実な事業基盤の拡大がうかがえます。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 239億円 257億円 283億円 303億円 337億円
経常利益 14億円 24億円 29億円 26億円 28億円
利益率(%) 6.0% 9.2% 10.3% 8.6% 8.3%
当期利益 10億円 15億円 20億円 18億円 19億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しており、売上総利益率も微増傾向にあります。事業の拡大に向けた人員増や体制強化への投資を行いつつも、安定した営業利益率を確保しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 303億円 337億円
売上総利益 69億円 77億円
売上総利益率(%) 22.7% 23.0%
営業利益 26億円 28億円
営業利益率(%) 8.5% 8.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が17億円(構成比34%)、実習生関連費が6億円(同13%)を占めています。また、売上原価の内訳としては、材料費が136億円(構成比53%)、外注費が89億円(同35%)を占めています。

(3) セグメント収益

日本アクアは単一セグメントなので、セグメント利益はありませんが、「戸建」「建築物」「防水」「原料販売」などの品目別売上高が開示されています。

直近の2025年12月期は、主力の戸建向けや建築物向けの断熱材施工販売が全体を強力に牽引し、売上高は前期比約11.2%増の336億円、経常利益も約27億円へと手堅く成長する非常に好調な決算となりました。

戸建住宅向け断熱材が大手ビルダーからの受注拡大等により好調に推移したほか、防水材も大型物流センターなどの案件を獲得して売上を倍増させています。商品販売等も含め、全体として堅調な増収を達成しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
戸建住宅向け断熱材 137億円 158億円
建築物向け断熱材 95億円 99億円
戸建及び建築物向け防水材 7億円 15億円
原料販売 22億円 21億円
商品販売 41億円 44億円
合計 303億円 337億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動で十分なキャッシュを創出し、その資金を基に積極的な設備投資や株主還元、借入金の返済等を行っている健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -5億円 15億円
投資CF -3億円 -6億円
財務CF 11億円 -8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.1%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も45.1%でプライム市場の非製造業平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「人と地球に優しい住環境を創ることで社会に貢献」することを経営理念として掲げています。この理念のもと、サプライチェーン全体における温室効果ガス排出量の削減に取り組むなど、環境に配慮した持続可能な住環境の提供を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「ESG委員会」を設置し、全社的なサステナブル経営を推進しています。また、性別や国籍、年齢、障がいの有無にかかわらず多様な人材の採用と活用を進めており、ITシステムやAI技術を活用した働きやすい環境づくりを通じて、多様性と包摂性のある企業文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


2024年度から2026年度までの中期経営計画「3 Pillars of Stability(安定した3本柱)」において、スケールメリットを活かした高い収益性の維持を目指しています。

* サステナブル成長率10%
* 営業利益率10%
* 自己資本利益率(ROE)20%
* 配当性向50%以上および累進配当制度の導入

(4) 成長戦略と重点施策


主力事業である断熱材施工に加え、防水部門の早期黒字化と事業規模拡大を図り、新たな収益の柱として確立することを目指しています。また、認定施工店以外の施工業者への原料販売を強化し、メーカーとしての認知度向上と全国物流拠点の整備により事業領域の拡大を進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は強固な施工体制の構築とデジタル技術を活用した業務効率化を推進しています。中途採用を中心に人材を確保しつつ、新卒採用や技能実習生・特定技能生の受け入れを通じた人材の多様化を図っており、時差出勤制度の導入などワーク・ライフ・バランスの改善にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 35.0歳 3.9年 5,563,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.0%
男性育児休業取得率 71.0%
男女賃金差異(全労働者) 81.7%
男女賃金差異(正規雇用) 75.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 136.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 住宅建築市場の悪化リスク


同社の断熱工事需要は新設住宅着工件数の影響を強く受けます。金融危機の発生、金利の上昇、感染症の発生等により住宅建築市場が悪化した場合、同社の業績に影響が及ぶ可能性があります。これに対し、営業所の新設や建築物向け分野の強化などの施策を実行しています。

(2) 原料・素原料の調達環境悪化リスク


ウレタン原料の主成分は石油製品であるため、原油価格の高騰や円安により原料価格が上昇するリスクがあります。また、自然災害等で調達が困難になった場合は工期遅延の可能性があります。同社は調達先を多様化し、中核拠点に原料備蓄倉庫を設置することでリスクを最小限に抑えています。

(3) 施工体制構築の遅れリスク


持続的な成長には施工人員の増強と強固な施工体制が不可欠です。工務社員の新規採用や認定施工店の拡大が困難になった場合、受注機会を逸して業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は新規採用の強化や認定施工店の独立支援など包括的な体制強化に取り組んでいます。

(4) 高性能断熱材市場への新規参入リスク


同社の主力製品は高い断熱性能を有していますが、性能等で優位性のある競合製品が現れた場合や、新素材を用いた強力な断熱材が商品化された場合、競争力低下につながる可能性があります。同社はテクニカルセンターでの継続的な新製品開発により優位性の維持に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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