セレス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

セレス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

セレスは東京証券取引所プライム市場に上場し、ポイントサイト「モッピー」などのモバイルサービス事業と、暗号資産関連のフィナンシャルサービス事業を展開しています。直近の業績は、ポイント事業が好調に推移し増収を達成した一方で、暗号資産の評価損計上などにより経常減益、最終増益となりました。


※本記事は、セレスの有価証券報告書(第21期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. セレスってどんな会社?


ポイントサイト「モッピー」を中核としたモバイルサービスと、ブロックチェーン関連の金融サービスを展開しています。

(1) 会社概要


2005年に設立され、同年ポイントサイト「モッピー」のサービスを開始しました。2014年に東京証券取引所マザーズへ上場し、2016年に同市場第一部へ市場変更しています。2017年には暗号資産関連事業を行う子会社マーキュリーを設立し、2025年には「Point Income」の事業譲受を実施しました。

現在の従業員数は連結で351名、単体で291名です。筆頭株主は信託業務を行う日本カストディ銀行で、第2位は代表取締役が設立し取締役を務めるジュノー・アンド・カンパニー、第3位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行となっています。

氏名 持株比率
日本カストディ銀行(信託口) 10.48%
ジュノー・アンド・カンパニー 10.22%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.06%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は都木聡氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
都木聡 代表取締役社長 1994年野村證券入社。2000年サイバーエージェント入社。2005年セレスを設立し代表取締役に就任。マーキュリー、アポロ・キャピタルの代表取締役社長なども務める。
野﨑哲也 取締役副社長メディア事業本部長 2005年インタースペース入社。2007年セレス入社、執行役員を経て2009年取締役に就任。バッカス等の子会社代表を経て2024年より現職。
小林保裕 常務取締役管理本部長 1994年第一生命保険入社。2004年三菱証券を経て、2006年セレス入社。取締役兼管理本部長を経て2017年より現職。ハンモック社外取締役等も務める。
志賀勇佑 取締役マーケティング事業本部長 2010年セレス入社。執行役員、事業部長を経て2019年取締役に就任。ディアナ、サルース等の子会社代表を経て2024年より現職。
千歳香奈 取締役(常勤監査等委員) 2006年アストマックス入社。2010年コムチュア入社。2015年セレスに入社し、管理本部マネージャーを経て、2023年に現職に就任。


社外取締役は、多田斎氏(元野村證券執行役副社長)、佐藤祥子氏(THE BIGLE代表取締役社長)、髙橋由人氏(元野村総合研究所取締役副社長)、上杉昌隆氏(弁護士・桜田通り総合法律事務所シニアパートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「モバイルサービス事業」および「フィナンシャルサービス事業」を展開しています。

モバイルサービス事業


日本最大級のポイントサイト「モッピー」やアフィリエイトプログラム等のメディア運営と、自社の広告運用ノウハウを活用した化粧品や健康食品等の企画・製造・販売を行うD2Cサービス、ピルのオンライン診療サービスを提供しています。

収益源は主に広告主から受け取るアフィリエイト広告料と、D2Cにおける個人ユーザーへの商品販売代金です。運営は親会社であるセレスのほか、バッカス、ディアナ、サルース、DINETTEなどの各子会社が行っています。

フィナンシャルサービス事業


暗号資産販売所「CoinTrade」などのブロックチェーン関連事業や、フリーランス向けのAIファクタリングサービス、カード決済サービス、およびベンチャー企業等への投資を行う投資育成事業を提供しています。

収益源は暗号資産の運用サービス手数料やファクタリングの買取手数料、投資先企業の企業価値向上による投資リターン等です。運営はマーキュリー、ラボル、アポロ・キャピタル等の子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近4期間の連結業績を見ると、売上高は着実な成長を続けており、ポイント事業の好調などを背景に右肩上がりの推移となっています。一方、利益面では暗号資産価格の変動による評価損益等の影響を受け、年度によって経常利益率が上下する傾向が見られます。

項目 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 205億円 241億円 277億円 297億円
経常利益 7億円 12億円 27億円 21億円
利益率(%) 3.3% 5.1% 9.7% 7.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.5億円 5億円 15億円 25億円

(2) 損益計算書


売上高が増加した一方で売上総利益は微減となり、売上総利益率は低下しています。しかし、広告宣伝費をはじめとする販売費及び一般管理費の抑制に努めた結果、営業利益および営業利益率は前年度を上回る水準に改善しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 277億円 297億円
売上総利益 133億円 130億円
売上総利益率(%) 48.1% 43.9%
営業利益 22億円 23億円
営業利益率(%) 8.0% 7.9%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が36億円(構成比34%)、給料及び手当が18億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


モバイルサービス事業は、ポイントサイトの会員数増加や自社アフィリエイトプログラムとの連携強化により、増収および大幅な増益を達成しました。フィナンシャルサービス事業はオンラインファクタリングの好調で増収となったものの、暗号資産価格の下落に伴う評価損の計上によりセグメント損失が拡大しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
モバイルサービス事業 262億円 280億円 44億円 49億円 17.5%
フィナンシャルサービス事業 15億円 17億円 -10億円 -11億円 -63.9%
連結(合計) 277億円 297億円 22億円 23億円 7.9%


同社のキャッシュ・フローは、営業活動による収入と資産売却等による投資活動の収入を借入金の返済などに充てる「改善型」の傾向を示しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 7億円 17億円
投資CF -5億円 7億円
財務CF 33億円 -8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.4%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.5%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「インターネットマーケティングを通じて豊かな世界を実現する」を経営理念に掲げています。また、「価値の開花、未来豊穣」をミッションとし、ポイント経済圏とブロックチェーンからなる「トークンエコノミー(代用通貨経済圏)」の創造を通じて、社会経済活動を活性化させるプラットフォームとなることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、5つのバリュー(本質・挑戦・循環・没頭・感情)を全ての活動の源泉として掲げています。多様なバックグラウンドを持つ従業員がパフォーマンスを最大化できるよう、失敗を恐れず新しいことに取り組む「挑戦」の文化を重視し、組織のイノベーションを促進する自由闊達で創造性のある風土を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2026年2月に策定した「中期経営計画2030(5ヵ年計画)」において、事業の持続的な成長に向けた中長期的な数値目標を設定しています。計画の最終年度である2030年12月期における連結経営目標として、以下の指標の達成を目指しています。

・売上高:60,000百万円(600億円)
・EBITDA:12,000百万円(120億円)

(4) 成長戦略と重点施策


モバイルサービス事業における垂直統合型モデルの価値拡大と、暗号資産交換業を中心としたブロックチェーン領域でのポジション確立を重点戦略に位置づけています。既存事業とのシナジーを見据えたM&Aや新規事業開発も積極的に推進し、非連続な成長と持続的な企業価値の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、ジェンダーや国籍などの枠を超えた「多様性」を確保し、変化に強く競争力の高い組織を構築することを人材戦略の基本方針としています。目標管理制度(MBO)による自律的な成長支援や、マネジメント職とプロフェッショナル職のキャリアパス整備に加え、AIリテラシーの向上と業務変革を通じた生産性向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 32.4歳 2.8年 5,962,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 19.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 72.4%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 75.6%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(72.1%)、育児休業取得率(女性)(66.7%)、時間外・休日労働の各月平均時間(5.9時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) メディア運営ノウハウと人材の流出リスク


「モッピー」などのポイントサイトは参入障壁が低く競合が激しいため、広告の表示コントロールなどのメディア運営ノウハウが差別化の源泉となっています。人材獲得競争が激化する中、優秀な人材が流出した場合、ノウハウの喪失や組織体制のバランス崩壊により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) ブロックチェーン関連事業の変動リスク


フィナンシャルサービス事業では、子会社のマーキュリーや関連会社のビットバンクを通じて暗号資産交換業を展開しています。これらは中長期的な成長が期待される一方、経済環境や暗号資産の相場変動による影響を直接的に受けるため、短期的には業績が大きく変動するリスクを抱えています。

(3) 不正アクセスとシステム障害のリスク


ポイントサイトでの現金交換可能なポイントの発行や、暗号資産の預り業務を行っているため、悪意ある第三者からの不正アクセスやサイバー攻撃の標的となる可能性があります。万が一、顧客の個人情報や暗号資産が流出した場合、損害賠償や社会的信用の失墜につながるおそれがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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