※本記事は、恵和株式会社の有価証券報告書(第79期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 恵和ってどんな会社?
同社は、独自のシーティングやコーティング技術を活かし、顧客ニーズに合わせた高機能フィルムを提供するメーカーです。
■(1) 会社概要
1948年に神戸市にて、米国製ターポリン紙等の販売を目的に設立されました。1992年に主力となる光拡散シートの製造・販売を開始し事業を拡大させ、2019年に東京証券取引所市場第二部へ上場を果たしました。近年は、2022年に淡路ベースを建設し、2025年には米国ミシガン州やベトナムのハノイ市に拠点を新設するなど、グローバル展開を推進しています。
従業員数は連結で409名、単体で299名です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の長村惠弌氏であり、第2位と第3位には資産管理業務などを行う信託銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 長村惠弌 | 38.00% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.90% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 2.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性4名の計13名で構成され、女性役員比率は30.8%です。代表取締役社長は長村惠弌氏が務めており、社外取締役比率は38.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 長村 惠弌 | 代表取締役社長 | 1970年入社。取締役、常務、専務等を経て1991年代表取締役社長に就任。2024年より現職。 |
| 藤井 一将 | 専務取締役生産本部本部長 | 2023年入社。執行役員等を経て2025年専務取締役に就任し、生産本部本部長として現職。 |
| 野口 順次郎 | 専務取締役FL本部本部長 | 1995年入社。取締役、常務取締役等を経て2025年専務取締役に就任し、FL本部本部長として現職。 |
| 川島 直子 | 常務取締役ESL室室長 | 1996年入社。人事総務部長、常務取締役管理本部本部長等を経て、2026年より現職。 |
| 太田 俊介 | 常務取締役マーケティング本部本部長 | IMV等の要職を経て2024年取締役就任。2026年より常務取締役マーケティング本部本部長として現職。 |
| 吉岡 佑樹 | 取締役執行役員ロジスティクス本部財務部部長 | 商工組合中央金庫等を経て2012年入社。2020年取締役就任。2026年より現職。 |
| 上地 聡 | 取締役執行役員マーケティング本部本部長代理兼光学製品部部長 | 1994年入社。執行役員、取締役等を経て2026年より現職。米国子会社の役員も兼任。 |
| 青山 英一 | 取締役常勤監査等委員 | 日本製紙等を経て2019年入社。常務取締役等を経て2025年より取締役(監査等委員)として現職。 |
社外取締役は、梅村俊和(元菱江化学代表取締役社長)、米田紀子(神戸グレース法律事務所開設・弁護士)、南野歌子(j.union入社・個人事業主)、大保政二(大保公認会計士事務所所長・公認会計士)、山本美愛(弁護士法人法円坂法律事務所・弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「光学製品事業」および「機能製品事業」の2つの報告セグメントを展開しています。
■光学製品事業
ノートパソコン、タブレット、車載ディスプレイ、スマートフォン等の液晶ディスプレイに利用される光拡散フィルム、複合拡散板、偏光制御フィルム等の光学シート部材を開発・製造・販売しています。光源のムラをなくし光を均一に拡散させるフィルムや、直下型ミニLED向けの複合拡散板などを提供し、省電力化や高画質化に貢献しています。
各製品の販売による収益をモデルとしています。運営は主に同社が行い、中国や台湾、韓国、米国の各現地子会社を通じて、グローバルなディスプレイ関連メーカーへの販売活動や先端技術の情報収集を広範に展開しています。
■機能製品事業
紙やフィルム等にコーティングやラミネーティング加工を施し、特定の機能を付加した産業用資材を製造・販売しています。クリーンエネルギー車や太陽電池向けの特殊フィルム、医療・衛生分野の透析用機材、アパレルや自動車シートの製造に用いる工程紙、建材、防錆資材など、多様な最終用途に対応する製品群を取り扱っています。
各用途向け資材の販売によって収益を得ています。事業の運営は同社が主体となって行い、近年はコモディティ化による価格競争を避けるため、医療・衛生分野や次世代電池用特殊フィルムなど、より高い成長や収益が期待できる分野への経営資源の集中を進めています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高と経常利益は市場の需要変動等により増減を繰り返しています。直近の当期は、一部製品の期ずれによる影響などにより、売上高・経常利益ともに前期比で減少する結果となりました。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 181億円 | 211億円 | 176億円 | 211億円 | 205億円 |
| 経常利益 | 35億円 | 62億円 | 28億円 | 52億円 | 42億円 |
| 利益率(%) | 19.1% | 29.4% | 15.7% | 24.7% | 20.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 23億円 | 40億円 | 15億円 | 31億円 | 15億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較すると、売上高の減少とともに売上原価率が上昇し、売上総利益率は低下しています。これに伴い、販売費及び一般管理費を削減したものの、営業利益率も低下する結果となりました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 211億円 | 205億円 |
| 売上総利益 | 99億円 | 88億円 |
| 売上総利益率(%) | 46.8% | 42.9% |
| 営業利益 | 47億円 | 43億円 |
| 営業利益率(%) | 22.4% | 20.9% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が14億円(構成比32%)、給与手当及び賞与が8億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上高を見ると、主力である光学製品事業は一部製品の期ずれなどにより前期比で減少しています。機能製品事業についても、医療用工程フィルムが好調だったものの、建材分野の受注減などにより減少しました。なお、地球の絆創膏事業からは当期に撤退を決定しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 光学製品事業 | 171億円 | 168億円 |
| 機能製品事業 | 38億円 | 37億円 |
| 地球の絆創膏事業 | 2億円 | - |
| 連結(合計) | 211億円 | 205億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 59億円 | 35億円 |
| 投資CF | -27億円 | -30億円 |
| 財務CF | -14億円 | -27億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.7%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.1%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「自然と産業の調和を創造する」を経営理念に掲げ、人と自然にやさしい製品やサービスの提供を通じて社会に貢献することを使命としています。「自然に感謝し、自然と産業とが矛盾しない存在にする」ための製品・技術・サービスの提供を同社の存在意義として位置づけています。
■(2) 企業文化
同社は「自然と社会との共通価値を『高品質の提供』を通じて実現するCSV(共有価値創造)グループを目指す」という経営ビジョンを掲げています。バリュー(行動規範)として、社会貢献や自然貢献、イノベーションの継続、高品質の追求、社員の幸福と多様性の尊重などを重視する文化が醸成されています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、事業本来の収益力を客観的に評価できることから、連結営業利益を重要な指標と位置づけています。また、中期経営計画においては資本効率をより重視した経営を浸透させるため、投下資本利益率(ROIC)を重要な経営指標として掲げ、営業利益と資本効率の向上を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
顧客ニーズに適合した高付加価値製品を提供するグローバルニッチ戦略を推進しています。光学製品事業では直下型ミニLED向け複合拡散板「オパスキ」等の販売拡大を狙い、機能製品事業ではクリーンエネルギー車や医療・衛生分野向け特殊フィルムの開発に注力します。また、人的資本の強化や自動化による生産性向上も進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社の継続的な発展に向け、グローバル市場で活躍できる人材や研究開発職の育成と確保を重要課題としています。変化の激しい市場環境に対応できる経営幹部やビジネスリーダーの育成を階層別研修等を通じて進めるほか、多様な人材の採用やダイバーシティマネジメントによりイノベーションを創出する組織づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 42.0歳 | 15.5年 | 5,931,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.8% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 90.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 84.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 98.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、海外従業員比率(約24.5%)、女性在籍比率(19.7%)、フルタイム労働者の法定時間外・法定休日労働時間平均(16.2時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 環境関連の法規制による影響
同社の製造工程では有機溶剤を使用しており、環境関連の法規制を受けています。将来的にこれらの規制が強化・改正された場合、現有設備が利用できなくなり追加の設備投資が必要となるなど事業活動が制約を受け、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 大規模な自然災害等による影響
同社グループは国内に4工場、中国に1工場の生産拠点を有しており、光学シートのコーティング等は和歌山の拠点で集中的に行っています。大規模な自然災害により各工場建屋や生産設備が被災し、生産能力や物流機能に大きな支障が生じた場合、業績に深刻な影響を与える可能性があります。
■(3) 機密情報の漏洩リスク
新製品の開発等において機密性の高い顧客情報に直接関与する業務があるため、厳格な情報管理が求められます。万が一、第三者による不正アクセス等で機密情報が漏洩した場合、同社の社会的信用が低下し、多額の対応費用が発生するなど業績に影響を及ぼすリスクがあります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。