※本記事は、株式会社オプトランの有価証券報告書(第27期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. オプトランってどんな会社?
オプトランは、スマートフォンや車載カメラ等に不可欠な光学薄膜装置の開発・製造・販売を手掛ける企業です。
■(1) 会社概要
1999年に各種光学成膜装置の製造販売を目的に設立されました。2000年に中国・上海に子会社を設立して生産体制を構築し、その後台湾や米国、フィンランド、ベトナム等にも拠点を展開しグローバル化を推進しています。2017年には東京証券取引所市場第一部(現プライム市場)への株式上場を果たしました。
従業員数は連結で620名、単体で87名体制です。筆頭株主は事業会社の浙江水晶光電科技で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は創業者の孫大雄氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 浙江水晶光電科技 | 16.33% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.73% |
| 孫大雄 | 6.22% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長執行役員は範賓氏が務めています。社外取締役比率は約33%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 範賓 | 代表取締役社長執行役員 | 1994年に中国科学院上海技術物理研究所に入所。2000年に同社に入社し、技術開発部長や技術開発本部長等を経て、2024年3月より現職。 |
| 林為平 | 取締役会長 | 1981年に中国上海半導体デバイス研究所に入所。2000年に同社に入社し、生産技術本部長や代表取締役社長執行役員等を経て、2022年3月より現職。 |
| 近藤宏治 | 取締役 | 1997年に監査法人トーマツに入所。2023年に同社に入社し、執行役員経理財務部長や経営管理部長等を経て、2026年1月より現職。 |
社外取締役は、林敏(浙江水晶光電科技董事)、瀧口匡(ウエルインベストメント代表取締役社長)、島岡未来子(早稲田大学教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「成膜装置事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
スマートフォンや車載カメラ、LED、生体認証センサ、AR/VR機器等に用いられる各種光学部品の表面にコーティングを施し、反射防止や赤外線カット等の機能を持たせる光学薄膜装置の開発・製造・販売を行っています。顧客の多様なニーズに対応し、成膜プロセスに関するソリューションを提供しています。
収益源は、顧客である光学薄膜成膜メーカーや最終製品メーカーに対する成膜装置の販売代金及び保守サービス料です。主要な製品はイオンビームアシスト蒸着方式やスパッタリング方式、原子層堆積方式を用いた装置です。事業の運営は同社および、光馳科技(上海)などの海外製造・販売子会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は300億円台で安定して推移していますが、経常利益及び利益率は市場環境の変化や製品ミックスの影響を受けて変動が見られます。当期は売上高が回復基調にあるものの、経常利益は減少傾向となっており、事業環境の不透明感を受けた収益性の改善が今後の課題となっています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 309億円 | 343億円 | 368億円 | 324億円 | 339億円 |
| 経常利益 | 79億円 | 88億円 | 61億円 | 82億円 | 32億円 |
| 利益率(%) | 25.6% | 25.5% | 16.4% | 25.3% | 9.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 63億円 | 69億円 | 46億円 | 64億円 | 30億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しているものの、売上総利益率は大きく低下しています。それに伴い、営業利益および営業利益率も低下しており、当期における収益性の低下が確認できます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 324億円 | 339億円 |
| 売上総利益 | 145億円 | 114億円 |
| 売上総利益率(%) | 44.7% | 33.8% |
| 営業利益 | 66億円 | 33億円 |
| 営業利益率(%) | 20.3% | 9.8% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が38億円(構成比47%)、給料及び手当が14億円(同17%)を占めています。売上原価に関する当期総製造費用のうち、材料費が283億円(構成比98%)と大部分を占め、労務費が3億円(同1%)となっています。
■(3) セグメント収益
同社は成膜装置事業の単一セグメントであるため、ここでは当該事業の売上高を記載します。当期は自動車向けディスプレイ・カメラや半導体光学の光電子向け装置が好調に推移し、前年を上回る売上を計上しました。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 成膜装置事業 | 324億円 | 339億円 |
| 連結(合計) | 324億円 | 339億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業利益と資産の回収等による資金で借入の返済等を進める改善局面(改善型)となっています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 50億円 | 85億円 |
| 投資CF | -77億円 | 3億円 |
| 財務CF | -38億円 | -63億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「薄膜技術の限界にチャレンジすることを通じ、高度情報化社会への貢献を実現する」という使命を掲げています。また「オプトナノテクノロジーをコア技術とし、お客様にトータルソリューションを提供する」というビジョンのもと、光学薄膜装置のリーディングカンパニーとしてグローバルに事業を展開しています。
■(2) 企業文化
同社は「国際性ある経営陣・社員が知識創造型企業を目指す」を信条としています。グローバルなバックグラウンドを持つ経営陣による事業運営のもと、年齢や性別、人種・国籍等を問わず優秀な人材を抜擢し、プロフェッショナル同士が協働する文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中長期経営目標として以下の数値目標を掲げ、収益拡大と高効率経営の実現を目指しています。
* ROE(自己資本利益率)10%以上
* 光電融合に関連するシリコンフォトニクス売上高構成比20%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は今後の持続的な成長に向けて、光学・半導体光学・電子デバイスの3つのコア事業領域を成長の柱と位置づけています。市場動向に合わせた事業領域別のグローバル運営体制を構築するとともに、日本と中国の両地域に本部機能を設置し、持続可能なサプライチェーンの構築を図ります。また、SDGs・ESGへの取り組みを重視したサステナブル経営を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は継続的成長の実現に向け、専門性の高い人材の確保と人的資本への投資を重要視しています。多様な社員構成を最大限に生かし、適材適所の要員配置を行うとともに、2026年からはジョブ型人事制度を導入します。報酬制度の改善を通じたエンゲージメント向上や、株式報酬の付与などの各種施策を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 41.8歳 | 9.0年 | 7,939,477円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 56.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 55.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 145.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、1人当たり研修時間(6時間)、健康診断受診率(85%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料の仕入価格の影響
光学薄膜装置は多くの部品や化合材料を使用しており、真空部品メーカーの売り手市場化等により原材料価格が高騰した場合、装置原価の上昇を招き、同社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定の地域情勢への依存リスク
同社の売上高や生産活動の多くは中国市場に依存しています。当社の顧客である光学部品メーカー等の製造拠点が中国に集中しているため、中国の経済・政治・社会情勢の変化が事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 特定技術への依存リスク
同社はイオンビームアシスト蒸着方式やALD技術などの成膜方法を提供していますが、技術革新により他社がより優れた技術を提供したり、最終製品の形状変化等により同社の技術が陳腐化した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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