THECOO 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

THECOO 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

THECOO(ザクー)は東証グロース市場に上場し、ファンコミュニティアプリを提供するファンビジネスプラットフォーム事業と、インフルエンサーを活用したデジタルマーケティング事業を展開しています。直近の業績では各事業の収益性が改善し、売上高が増加するとともに営業黒字へ転換、増収増益を達成しています。


※本記事は、THECOO株式会社の有価証券報告書(第12期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. THECOOってどんな会社?


ファンビジネスプラットフォーム事業とデジタルマーケティング事業を展開し、クリエイターとファンをつなぐサービスを提供しています。

(1) 会社概要


2014年にルビー・マーケティングとして設立され、翌年よりインフルエンサーセールス事業を開始しました。2016年にTHECOOへ社名変更し、2017年には主力サービスとなるファンコミュニティプラットフォームのアプリ「Fanicon」をリリースしました。その後事業を拡大し、2021年に株式を上場しています。

現在の従業員数は単体で115名です。筆頭株主は代表取締役CEOである平良真人氏の資産管理会社であり、第2位は同氏個人が名を連ねています。また第3位には投資事業組合が入っており、創業者と投資ファンドが上位を占める株主構成となっています。

氏名 持株比率
ハイアンドドライ 19.95%
平良 真人 5.48%
YJ2号投資事業組合 5.42%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役CEOは平良真人氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
平良 真人 代表取締役CEO 1997年伊藤忠商事入社。ソニー、グーグル等を経て2014年1月より現職。
下川 弘樹 取締役 2005年東日本電信電話入社。グーグル等を経て2014年1月同社取締役。2024年12月より現職。
野澤 俊通 取締役 1996年リクルート入社。グーグル、フリー等を経て2015年6月より現職。
滝島 知樹 取締役 2003年エスネットワークス入社。トライグループ等を経て2024年4月同社入社。2025年3月より現職。


社外取締役は、会田容弘(元ソニーネットワークコミュニケーションズ取締役執行役員専務)、久保田雅也(元SMBC日興証券)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ファンビジネスプラットフォーム事業」および「デジタルマーケティング事業」を展開しています。

ファンビジネスプラットフォーム事業


アーティストやインフルエンサー等のアイコンとコアなファンをつなぐ、完全会員制・完全有料制のファンコミュニティアプリ「Fanicon」の提供および運営管理を行っています。双方向コミュニケーションのほか、グッズやチケット販売などの機能を統合的に提供しています。

収益源は、ユーザーからの月額利用料金(サブスクリプション売上)およびアプリ内でのポイント購入・消費による手数料等です。運営は同社が行っており、カスタマーサクセス機能を通じて魅力的なコミュニティの形成とマネタイズの支援を推進しています。

デジタルマーケティング事業


広告主や広告代理店に対し、YouTuberなどのインフルエンサーを活用したプロモーション施策の企画立案やデジタル広告のコンサルティングを行っています。膨大なインフルエンサーネットワークとデータを活用した最適なソリューション提案が強みです。

収益源は、広告主および広告代理店からプロモーション支援の対価として受領する手数料等です。運営は同社が行っており、最適なインフルエンサーの選定からSNSへの投稿管理、効果測定、報告までの一連の業務をワンストップで支援しています。

3. 業績・財務状況


同社の単体業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、プラットフォームの利用者増加に伴い売上高は右肩上がりで拡大しています。一方で開発や人材への投資が先行し経常赤字が続いていましたが、収益性の改善が進んだ結果、直近の期では増収とともに経常黒字および最終黒字への転換を果たしています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 34.8億円 42.8億円 38.1億円 43.3億円 48.3億円
経常利益 -1.2億円 -2.1億円 -5.5億円 -0.6億円 2.2億円
利益率(%) -3.4% -4.9% -14.6% -1.5% 4.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -1.1億円 -4.9億円 -7.6億円 -0.7億円 1.7億円

(2) 損益計算書


増収による増益効果に加え、原価および販管費の適切なコントロールにより売上総利益率および営業利益率がいずれも改善しています。これにより、営業損益段階からの黒字化を実現し、強固な収益基盤が整いつつあります。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 43.3億円 48.3億円
売上総利益 18.3億円 22.3億円
売上総利益率(%) 42.3% 46.2%
営業利益 -0.7億円 2.0億円
営業利益率(%) -1.6% 4.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が7.0億円(構成比34%)を占めています。売上原価については、Fanicon仕入原価が14.9億円(構成比57%)、外注費が6.5億円(同25%)を占めています。

(3) セグメント収益


ファンビジネスプラットフォーム事業は、新規アイコンの獲得と各種施策が奏功し、増収ならびに大幅な増益を達成しました。デジタルマーケティング事業は採算性重視の案件見直しにより減収となったものの、収益性の改善により赤字幅が縮小しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
ファンビジネスプラットフォーム事業 31.9億円 37.7億円 0.6億円 2.9億円 7.7%
デジタルマーケティング事業 11.4億円 10.6億円 -1.3億円 -1.0億円 -9.4%
単体(合計) 43.3億円 48.3億円 -0.7億円 2.0億円 4.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金で投資と財務活動のマイナスをカバーする「健全型」の傾向を示しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 2.3億円 5.5億円
投資CF -1.3億円 -1.0億円
財務CF -0.2億円 -0.0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は39.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は16.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「“できっこない”に挑み続ける」ことを会社として最も重要な価値観として掲げています。人々が自分自身の可能性の芽をつむことをやめ、第一歩を踏み出すことで自ずと道は開けるという想いの実現を目指し、テクノロジーの力を最大限に活かして挑戦し続ける企業・組織・人を目指しています。

(2) 企業文化


理念である「“できっこない”に挑み続ける」姿勢を「THECOO DNA」として定義し、役員および従業員が実践すべき行動指針としています。具体的には、「知的好奇心を持つ(Get Interested!)」、「個性を受け入れる(Respect and Accept)」、「楽しみ続ける(Keep the Passion and Enjoy Much!)」の3つを掲げています。

(3) 経営計画・目標


同社はストック型の収益モデルであるファンビジネスプラットフォーム事業において、ファン数に直結するアイコン数を主要なKPI(重要業績評価指標)として位置付けています。また、1ファンあたりの平均売上金額であるARPUも主要な経営指標としています。デジタルマーケティング事業では、取扱件数と案件単価を指標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


成長事業であるファンビジネスプラットフォーム事業を中心に据え、エンターテインメント市場において不可欠なプラットフォーマーとしての地位を国内外で築くことを目指しています。スポーツなど幅広いジャンルでのアイコン獲得を進めるほか、新機能の開発やカスタマーサクセスの強化によりマネタイズ機会の創出を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「THECOO DNA」に共感し、高い意欲を持つ優秀な人材の確保と育成に注力しています。多様な人材を受け入れ、幅広い視点やスキルを活用して組織の競争力を強化しています。また、全従業員が快適に働けるよう、フレックスタイム制や時短勤務など柔軟な働き方を支援し、働きがいのある職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 34.2歳 3.5年 5,879,000円


※平均年間給与は賞与、基準外賃金及び譲渡制限付株式による株式報酬費用を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 63.5%
男女賃金差異(正規雇用) 78.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 409.6%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.51%)、新規採用におけるジェンダー比率(エンジニア除く・男性)(57%)、新規採用におけるジェンダー比率(エンジニア除く・女性)(43%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ファンビジネスの業界動向


同社と同様のサービスを提供する事業者の参入増加や、資本力・ブランド力を持つ大手企業の参入等により優位的に事業展開できない可能性があります。また、アイコンの人気低下や活動休止が発生した場合、収益が減少し業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) コミュニティ内でのトラブルの発生


ファンコミュニティ内で何らかのトラブルが発生し、同社の対応が遅れる等により炎上状態となった場合、サービスのレピュテーション低下やユーザー離れを引き起こし、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 個人情報および機密情報の管理


ユーザーやインフルエンサー、顧客の個人情報および機密情報を保有しており、万が一外部へ情報が漏洩した場合には、損害賠償費用の発生や社会的信用の失墜により、事業運営に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

(4) システム障害の発生


クラウドサービスを利用して安定したサービス提供に努めていますが、災害や事故による通信ネットワークの切断、急激なアクセス増大によるサーバー不具合等が発生した場合、ユーザーの不利益や信用低下を招く可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。