三井ハイテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三井ハイテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三井ハイテックは東京証券取引所プライム市場および福岡証券取引所に上場し、金型・工作機械、電子部品、電機部品の製造・販売を主力事業として展開しています。直近の業績トレンドは売上高が微増となった一方で、先行投資の増加や特損計上等の影響により営業利益および当期純利益が減少する増収減益となっています。


※本記事は、株式会社三井ハイテックの有価証券報告書(第92期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月17日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三井ハイテックってどんな会社?


同社は超精密加工技術を核に、金型・工作機械、電子部品、電機部品をグローバルに提供する企業です。

(1) 会社概要


1949年に金型の製造販売業として創業し、1957年に三井工作所を設立しました。1969年にはICリードフレームの製造販売を開始して事業を拡大し、1984年に現在の三井ハイテックへと商号を変更しました。同年から1991年にかけて福岡証券取引所や東京証券取引所へ順次上場を果たしています。

現在の従業員数は連結で4,858名、単体で2,449名です。筆頭株主は代表取締役社長の三井康誠氏が代表を務める関連会社の三井クリエイトで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は金融機関の福岡銀行となっています。

氏名 持株比率
三井クリエイト 32.66%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.61%
福岡銀行 4.24%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.7%です。代表取締役社長は三井康誠氏が務めており、取締役における社外取締役比率は33.3%となっています。

氏名 役職 主な経歴
三井康誠 代表取締役社長 1993年同社入社。2000年に取締役、常務執行役員等を経て2006年に代表取締役副社長に就任。2007年より三井クリエイト代表取締役社長を兼任し、2010年より現職。
三井宏蔵 常務取締役モーターコア事業本部長 1996年三井物産入社。2019年に同社へ入社し取締役管理本部長に就任。2020年に常務取締役となり、経営企画本部長等を経て2024年より現職。
草野敏昭 取締役品質保証本部長 1981年同社入社。IC事業部長やシンガポール現地法人社長を歴任し、2016年に取締役、2017年にリードフレーム事業本部長に就任。2019年より現職。
舟越知巳 取締役管理本部長 1990年同社入社。台湾の現地法人社長、リードフレーム事業本部長等を歴任。2019年に取締役となり、2024年より現職。
京昌英 取締役技術本部長 1985年同社入社。上海の現地法人社長等を経て、2021年に取締役モーターコア事業本部長に就任。2024年より現職。
清水孝司 取締役リードフレーム事業本部長 1984年同社入社。リードフレーム事業本部事業企画統括部長を経て、2024年2月に同事業本部長に就任。同年4月より現職。
泉雅宏 取締役金型事業本部長 1989年同社入社。2018年に金型事業本部金型事業部長に就任。その後、2024年2月に同事業本部長となり、同年4月より現職。
鵜池正清 取締役経営企画本部長 1993年北九州コカ・コーラボトリング入社。2020年に同社へ入社し、2021年に管理本部財務管理部長、2024年2月に同事業本部長に就任。同年4月より現職。
久保田千秋 取締役(常勤監査等委員) 1983年同社入社。2012年に管理本部財務管理部長、2018年に執行役員に就任。2021年に常勤監査役となり、2022年4月より現職。
白川裕之 取締役(常勤監査等委員) 1981年同社入社。執行役員、経営企画部長、取締役管理本部長等を歴任。2019年に常勤監査役に就任し、2022年4月より現職。


社外取締役は、熊丸邦明氏(元東芝セミコンダクター社生産統括責任者)、吉田修己氏(吉田公認会計士事務所所長)、前田葉子氏(シティユーワ法律事務所入所)、福本智之氏(元日本銀行国際局長)、元田達弥氏(元田会計事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「金型・工作機械」「電子部品」「電機部品」事業を展開しています。

金型・工作機械

プレス用金型や平面研削盤などの製造・販売を行っています。顧客の潜在的なニーズを具現化する技術の確立や、技術提案営業の強化を通じて価値を提供し、基盤事業として他事業の競争力向上にも貢献しています。

収益源はこれらの金型や工作機械の販売代金です。事業の運営は主に三井ハイテック本体が行うほか、上海の現地法人などが製造や販売の拠点を担い、グローバルに製品を供給する体制を構築しています。

電子部品

リードフレームなどの電子部品の製造・販売を展開しています。車載や情報通信機器向けのパッケージに加え、電力変換の高効率化・低損失化に寄与するパワー半導体分野向けにも精密加工技術を活かした製品を提供しています。

収益源はリードフレームをはじめとする電子部品の販売代金です。運営は三井ハイテック本体のほか、シンガポール、マレーシア、天津、上海、台湾などの現地法人が担っており、需要変動への対応力を強化しています。

電機部品

ハイブリッド車や電気自動車などの電動車向け駆動・発電用モーターコア製品の製造・販売を行っています。独自の積層工法による省資源化や、モーターの高効率化要求に応えるコア形状の開発などを推進しています。

収益源はモーターコア製品などの販売代金です。運営は三井ハイテック本体のほか、三井スタンピングや、上海、広東、タイ、カナダ、欧州、メキシコなどの多数の連結子会社が担い、グローバルな需要拡大に対応しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績推移を見ると、売上高は着実な増加傾向にあり、持続的なトップラインの成長を実現しています。一方で、経常利益および当期利益は2023年1月期をピークに減少傾向に転じており、利益率も直近では低下しています。事業規模の拡大に伴う先行投資やコストの増加が利益面を下押ししている状況が伺えます。

項目 2022年1月期 2023年1月期 2024年1月期 2025年1月期 2026年1月期
売上高 1,394億円 1,746億円 1,959億円 2,149億円 2,183億円
経常利益 157億円 227億円 217億円 169億円 138億円
利益率(%) 11.2% 13.0% 11.1% 7.9% 6.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 84億円 125億円 117億円 92億円 3億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構造を比較すると、売上高は微増したものの、売上総利益は横ばいから微減となり、売上総利益率は低下しています。これに加えて販売費及び一般管理費が膨らんだ結果、営業利益は減少し、営業利益率も悪化する結果となりました。

項目 2025年1月期 2026年1月期
売上高 2,149億円 2,183億円
売上総利益 324億円 322億円
売上総利益率(%) 15.1% 14.7%
営業利益 160億円 127億円
営業利益率(%) 7.5% 5.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与・賞与が63億円(構成比32%)、運搬費が38億円(同19%)を占めています。また、売上原価は1,861億円で、売上原価合計に対する構成比などの詳細は開示されていません。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、電子部品事業は増収を確保し全体のトップライン成長を牽引しました。一方で、金型・工作機械事業および電機部品事業は前年から微減となっています。特定の事業分野での成長が他のセグメントの伸び悩みを補う形で、全体として安定した売上規模を維持しています。

区分 売上(2025年1月期) 売上(2026年1月期)
金型・工作機械 43億円 41億円
電子部品 554億円 596億円
電機部品 1,552億円 1,546億円
連結(合計) 2,149億円 2,183億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年1月期 2026年1月期
営業CF 244億円 241億円
投資CF -265億円 -288億円
財務CF 111億円 71億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「世界の人々に役立つ製品をつくる」「互恵互善の理念に徹し相互の利益をはかる」「平等の精神を基本とし働く者の楽園を築く」という社是を経営理念としています。また、「超精密加工でしあわせな未来を」というスローガンのもと、開発型ものづくり企業として価値をグローバルに供給することを使命としています。

(2) 企業文化


同社は「Save energy. Save earth. Save life.」を経営指針の柱に掲げており、地球環境の保全と事業活動の調和を重視しています。また、社是の「平等の精神を基本とし働く者の楽園を築く」に基づき、性別や国籍、社歴に関係なく個々の能力を最大限に発揮し、自律的に学び成長できる組織文化の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標


中期的な財務目標(2028年1月期)として以下の数値を設定し、収益性と資本効率の向上を目指しています。

* 売上高:2,630億円
* 営業利益:150億円
* 売上高営業利益率:5.7%
* ROE:8.0%以上
* ROIC:5.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


カーボンニュートラルの進展やデジタル技術の高度化を成長機会と捉え、主力の「電動車分野」と「半導体分野」での供給能力増強に取り組んでいます。また、金型設計から製品供給までの一貫生産という強みを活かして他社との差別化や生産性向上を図り、各事業・拠点間のシナジー拡大によって経営基盤を強化する戦略を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材は資本である」との考えのもと、「必要人材の確保と成長機会の提供」「働きやすい職場づくり」を重点施策としています。多様な人材を活用するダイバーシティ&インクルージョンを推進し、研修体系の充実や適正な評価を通じて従業員の自発的な成長を促すとともに、エンゲージメントの向上を図り優秀な人材の定着を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年1月期 38.9歳 12.9年 7,122,727円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.9%
男性育児休業取得率 60.0%
男女賃金差異(全労働者) 65.2%
男女賃金差異(正規雇用) 80.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 60.6%


また、同社は「サステナビリティ」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員採用比率(21.0%)、離職率(2.7%)、有給休暇取得率(74.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外事業展開におけるカントリーリスク

同社グループはグローバルに生産・販売拠点を展開しており、海外売上高比率も約半数を占めています。そのため、進出先各国における投資優遇策の変更や輸出入規制、為替レートの大幅な変動、人件費・物価の上昇、さらにはテロや感染症による社会的混乱などが発生した場合、サプライチェーンの分断等により事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 環境・気候変動の影響

自動車業界等における脱炭素への急速なシフトを成長機会とする一方で、気候変動を巡る各種規制への対応が求められています。温室効果ガスの排出規制強化に伴う炭素税等の負担増や、自然災害の激甚化による工場設備の被災、水資源の不足による操業停止リスクが存在しており、これらの対応が遅れた場合には企業価値を毀損する懸念があります。

(3) 人材の確保と育成に関するリスク

労働力人口の減少や人材獲得競争が激化する中、事業運営に必要な専門人材や優秀な人材を安定的に確保・育成することが重要課題となっています。期待する人材の採用・定着が計画通りに進まない場合、技術や技能の伝承が滞り、組織の競争力低下を招くリスクがあります。これに対し、働きがいのある職場づくりや研修等の人的資本投資を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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