※本記事は、株式会社サンバイオ の有価証券報告書(第12期、自 2024年2月1日 至 2025年1月31日、2025年4月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. サンバイオってどんな会社?
中枢神経系疾患を対象とした再生細胞薬の開発を行うバイオベンチャーです。
■(1) 会社概要
2001年に米国カリフォルニア州でSanBio, Inc.が設立され、2013年に日本でサンバイオが設立されました。その後、2014年の三角合併によりSanBio, Inc.を完全子会社化し、2015年に東証マザーズへ上場しました。2024年7月には、細胞治療薬「アクーゴ」が条件及び期限付き製造販売承認を取得しました。
連結従業員数は29名(単体29名)です。筆頭株主は創業者で会長の川西徹氏、第2位は同じく創業者で社長の森敬太氏であり、創業者2名で主要な持分を保有しています。第3位には資産管理業務を行うモルガン・スタンレーMUFG証券の顧客口座が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 川西 徹 | 17.23% |
| 森 敬太 | 8.45% |
| MSIP CLIENT SECURITIES | 2.32% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は森敬太氏です。社外取締役比率は約16.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 森 敬太 | 代表取締役社長執行役員 | 1993年麒麟麦酒入社。2001年SanBio,Inc.設立しCEO就任。2013年同社設立に伴い代表取締役社長就任。2023年よりSanBio,Inc.取締役CEOも兼務。 |
| 川西 徹 | 代表取締役会長執行役員 | 1993年ボストン・コンサルティング・グループ入社。2001年SanBio,Inc.設立しChairman就任。2013年同社設立に伴い代表取締役会長就任。 |
社外取締役は、古谷昇(ドリームインキュベータ創業者・元代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「他家幹細胞を用いた細胞治療薬事業」の単一セグメントを展開しています。
■(1) 再生医療用細胞治療薬
同社グループは、主に中枢神経系の疾患(外傷性脳損傷、脳梗塞等)を対象とした細胞治療薬の研究、開発、製造及び販売を行っています。主力製品である「SB623」は、健康なドナーの骨髄液から採取した細胞を加工・培養して製造する他家由来の細胞治療薬であり、脳内の損傷した神経組織の再生を促す効果が期待されています。
開発段階においては製薬会社からの契約一時金やマイルストン収入、開発協力金を得る収益モデルですが、条件及び期限付き承認を取得した「アクーゴ(SB623)」については自社販売を想定しています。製品上市後は製品売上やロイヤルティ収入が主な収益源となります。運営はサンバイオおよび米国子会社SanBio, Inc.が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間において売上収益の計上はありません。これは同社が開発段階にあるバイオベンチャーであり、製品販売による収益がまだ発生していないためです。利益面では、研究開発費の支出により経常損失および当期純損失が継続していますが、損失幅は変動しつつ推移しています。
| 項目 | 2021年1月期 | 2022年1月期 | 2023年1月期 | 2024年1月期 | 2025年1月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | - | - | - | - | - |
| 経常利益 | △65億円 | △46億円 | △47億円 | △28億円 | △30億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | △34億円 | △47億円 | △56億円 | △26億円 | △29億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間において売上計上はなく、営業損失および経常損失が続いています。損失額は前期と比較して縮小傾向にあります。研究開発活動が主であるため、費用先行の構造となっています。
| 項目 | 2024年1月期 | 2025年1月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | - | - |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | △45億円 | △35億円 |
| 営業利益率(%) | - | - |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が1.4億円(構成比12.0%)、支払手数料が5.6億円(同48.4%)を占めています。なお、営業費用の大半は研究開発費(24億円)が占めています。
■(3) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年1月期 | 2025年1月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | △48億円 | △36億円 |
| 投資CF | △0.2億円 | △0.0億円 |
| 財務CF | 24億円 | 21億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は算出不能(赤字)であり、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.1%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「再生医療の開発を通して、患者さんをはじめとしたステークホルダーの皆さまへ価値を提供する」ことをコーポレート・ミッションに掲げています。アンメットメディカルニーズを抱える患者さんの治療生活に希望をもたらし、QOL(Quality of Life)向上に寄与することで、豊かで幸せな社会の実現に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「日本発の再生医療を世界へ」という創業時から変わらぬビジョンを持っています。日米を含むグローバルな視点で開発を進め、研究開発から臨床開発、製造販売体制の樹立まで一連のプロセスを確実かつスピーディに推進する姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は現在、ROAやROEといった経営指標を目標とはせず、開発プログラムの進捗およびパイプラインの拡充に目標を置き事業活動を推進しています。最大の経営課題として、SB623のポテンシャル最大化を掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は再生医療のグローバルリーダーを目指し、「米国事業の再始動」「脳梗塞への再チャレンジ」「日本のマザー拠点化」を三本柱としています。中長期的には、SB623の適応疾患を慢性期外傷性脳損傷以外(慢性期脳梗塞、脳出血、網膜疾患等)へ拡大することや、米国・日本以外の地域への展開を推進する予定です。
重点施策として以下に取り組んでいます。
* アクーゴの製造販売承認事項一部変更承認取得および出荷開始
* 市販後の製造・物流・販売体制の構築
* 米国での慢性期外傷性脳損傷臨床試験の再開に向けた協議
* 慢性期脳梗塞プログラムの臨床試験開始に向けた検討
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、性別や年齢にとらわれず有能な人材を迎え入れ、適所適材の登用を行うことでダイバーシティを推進する方針です。高度な専門知識や経験を持つ人材が活躍できるよう、再雇用社員規程の制定や特別専門職採用枠を設けています。また、Culture Ambassador Team(CAT)を通じて組織風土改革に取り組み、多様な社員のエンゲージメント向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年1月期 | 48.2歳 | 3.2年 | 16,412,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性比率(24.1%)、男女の管理職比率(女性内管理職比率57.1%、男性内管理職比率95.4%)、男女の離職率(女性内離職率28.6%、男性内離職率9.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 新薬開発の不確実性
医療用医薬品の開発には多額の投資と長い期間を要しますが、臨床試験で有効性や安全性が確認できない等の理由で開発が中止・延期される可能性があります。また、各国の規制当局による厳格な審査を経て承認を取得する必要があり、想定通りに上市できない場合、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 細胞治療薬の開発・製造に関するリスク
細胞治療薬は先端医療分野であり、技術革新や法規制の変化が激しい領域です。技術的な陳腐化や、想定外の副作用の発現、製造・安定供給面での課題が生じるリスクがあります。また、ヒト細胞・組織や動物由来原料を使用することによる未知のウイルス感染等のリスクも完全には排除できません。
■(3) 業績および資金繰りに関するリスク
同社は現在開発段階にあり、先行投資による赤字が継続しています。事業収益はライセンス契約一時金やマイルストン収入に依存しており、計上時期や金額によって業績が大きく変動する可能性があります。また、研究開発資金を確保するための資金調達が必要であり、計画通りに資金確保ができない場合、事業継続に懸念が生じる可能性があります。



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