サンバイオ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サンバイオ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するサンバイオは、中枢神経系の疾患を対象とした他家由来の細胞治療薬の研究、開発、製造および販売を手掛ける再生医療事業を展開しています。業績面では、製品上市前の開発段階にあるため事業収益は計上されておらず、研究開発費用の先行投資により営業赤字が継続し、赤字幅が拡大しています。


※本記事は、サンバイオ株式会社の有価証券報告書(第13期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サンバイオってどんな会社?


同社は、慢性期外傷性脳損傷などのアンメットメディカルニーズに応える独自の細胞治療薬を開発・製造するバイオ企業です。

(1) 会社概要


2013年、医療関連技術の研究開発を目的にサンバイオを設立し、翌年に米国のSanBio, Inc.を完全子会社化しました。2015年に東証マザーズへ上場し、2024年には細胞治療薬「アクーゴ」が外傷性脳損傷の運動麻痺改善薬として条件及び期限付き製造販売承認を取得しました。

従業員数は連結で33名、単体で33名です。筆頭株主は創業者で代表取締役会長の川西徹氏で、第2位は同じく創業者で代表取締役社長の森敬太氏です。第3位は金融商品取引業者であるSBI証券です。

氏名 持株比率
川西 徹 15.66%
森 敬太 7.68%
SBI証券 1.65%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は森敬太氏が務めています。取締役における社外取締役の比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
森 敬太 代表取締役社長執行役員 1993年麒麟麦酒入社。2001年SanBio,Inc.を設立しCEO就任。2013年同社代表取締役社長に就任。
川西 徹 代表取締役会長執行役員 1993年ボストン・コンサルティング・グループ入社。1996年ケアネット設立。2001年SanBio,Inc.設立。2013年より同社代表取締役会長。


社外取締役は、古谷昇(元ドリームインキュベータ代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「他家幹細胞を用いた細胞治療薬事業」を展開しています。

他家幹細胞を用いた細胞治療薬事業


健康なドナーから採取した細胞を大量培養する他家由来の細胞治療薬の研究開発・製造を行っています。主力品のSB623は慢性期外傷性脳損傷などの脳神経疾患を対象とし、損傷した神経組織の再生を促す世界初の治療薬として、アンメットメディカルニーズを抱える患者を顧客としています。

収益モデルは、パートナー製薬会社に開発・販売権をライセンス許諾して契約一時金やマイルストン、ロイヤルティ等を得るモデルと、自社で製造販売体制を構築して医療機関等へ直接販売する自社販売型モデルの2つです。事業の運営は同社および米国子会社のSanBio, Inc.が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、製品上市前の研究開発段階にあるため事業収益は計上されていません。一方で、細胞治療薬の研究開発や製造販売体制の構築に向けた先行投資が継続的に発生しており、毎期経常赤字を計上しています。当期はアクーゴの製造販売承認事項一部変更承認取得に関連する費用などにより、赤字幅が拡大しました。

項目 2022年1月期 2023年1月期 2024年1月期 2025年1月期 2026年1月期
売上高 - - - - -
経常利益 -46億円 -47億円 -28億円 -30億円 -43億円
利益率(%) - - - - -
当期利益(親会社所有者帰属) -64億円 -89億円 -41億円 -35億円 -34億円

(2) 損益計算書


売上高および売上総利益は計上されておらず、営業損失を計上しています。同社は再生医療分野のグローバルリーダーを目指し、アクーゴの承認取得や米国事業展開、脳梗塞プログラムの推進に向けた研究開発や体制整備に注力しており、事業費用が先行して発生する収益構造となっています。

項目 2025年1月期 2026年1月期
売上高 - -
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 -35億円 -38億円
営業利益率(%) - -


販売費及び一般管理費のうち、支払手数料が4億円(構成比34%)、給料手当が2億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は「他家幹細胞を用いた細胞治療薬事業」の単一セグメントであるため、セグメントごとの業績開示は行っていません。日米において細胞治療薬の研究、開発、製造および販売を手掛ける再生医療事業に経営資源を集中させており、アクーゴの実用化や適応疾患の拡大に向けた取組みを推進しています。

区分 売上(2025年1月期) 売上(2026年1月期)
他家幹細胞を用いた細胞治療薬事業 - -
連結(合計) - -

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、研究開発型企業として多額の研究開発資金を必要とし、先行投資期間においては営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなる傾向があります。将来の利益拡大を目指すパイプライン開発を進める一方で、収益計上はライセンスアウト時の契約一時金や開発進捗に伴うマイルストン収入に影響されるため、事業収益は不安定に推移する可能性があります。安定的な収益源確保までの期間は、必要に応じて資金調達等を実施し、財務基盤の強化を図る方針です。

項目 2025年1月期 2026年1月期
営業CF -36億円 -38億円
投資CF - -2億円
財務CF 21億円 160億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「再生医療の開発を通して、患者さんをはじめとしたステークホルダーの皆さまへ価値を提供する」ことをコーポレート・ミッションに掲げています。アンメットメディカルニーズを抱える患者の治療生活に希望をもたらし、QOL(Quality of Life)の向上に寄与することで、豊かで幸せな社会の実現に貢献し、再生医療分野でのグローバルリーダーとなることを目指しています。

(2) 企業文化


年齢差別やジェンダー・ギャップが生じない制度を実現し、高度な専門知識や技能、経験を有した多様な人材が積極的に活躍できるダイバーシティの推進を方針としています。また、長期間活躍する人材の定着を図るため組織風土改革に力を入れており、多様な背景をもつ社員が一体感を持って業務に取り組むことで、会社へのエンゲージメントを高められるような環境づくりを重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、適応拡大の可能性のある疾患を多数パイプラインとして持つSB623のポテンシャルを最大化することこそが最も重要な経営課題であると考えています。そのため、現在はROAやROEといった経営指標を目標とはせず、開発プログラムの進捗、パイプラインの拡充および地域展開の進捗に目標を置いて事業活動を推進しています。

(4) 成長戦略と重点施策


日本で条件および期限付き承認を取得したアクーゴの実績を踏まえ、「米国事業の実現」「脳梗塞の成功」「日本のマザー拠点化」の三本柱でグローバルリーダーを目指しています。中長期的には、慢性期外傷性脳損傷以外の中枢神経疾患への適応拡大や、欧州・アジアなど他地域への拡大を推進します。さらに、アクーゴの実用化に向けた製造・物流・販売体制の本番稼働を着実に進めるとともに、安定的かつ戦略的な資金調達体制の構築にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「誰もが、生涯に亘る健康を手にし、豊かで幸せな人生を送ることができる社会」の実現には、人材のマネジメントが鍵であると考えています。性別や年齢にとらわれず有能な人材を迎え入れ、適所適材の登用を行う方針です。最長65歳までの再雇用制度や、60歳以上の専門人材を活用する特別専門職採用、自己の目標達成を通じて経営に貢献する人事評価制度を整備し、専門性の高い人材が活躍できる労働環境の構築に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年1月期 47.8歳 3.3年 20,229,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性比率(21.2%)、女性内管理職比率(57.1%)、女性内離職率(11.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 新薬開発と細胞治療薬の不確実性


医療用医薬品の開発には多額の投資と長い時間を要し、臨床試験で有効性や安全性が確認できず開発が延期や中止となる可能性があります。また、同社の細胞治療薬は新規性の高い再生医療技術であり、技術革新による陳腐化や、製造・安定供給面での問題、予期せぬ副作用の発現、法規制の変更などが生じるリスクがあります。

(2) 外部協力業者と収益モデルへの依存


同社は研究開発や製造プロセスのデザインを自社で行う一方、非臨床試験や臨床試験、細胞治療薬の製造業務を外部の受託機関に委託しています。外部協力業者から十分な支援が得られない場合、事業活動に支障をきたす恐れがあります。また、パートナー製薬会社との共同開発やライセンスアウトによる収益は、相手先の経営状況や開発の進捗に依存しており、期待通りの収益を得られない可能性があります。

(3) アクーゴの製造・物流・販売体制の構築


同社は、外傷性脳損傷治療薬「アクーゴ」の日本における条件および期限付き製造販売承認を取得し、市販後の製造・物流・販売体制の構築を進めています。しかし、アクーゴはヒトまたは動物由来の原材料を使用する新規性の高い再生医療等製品であるため、一連の体制構築において予期せぬ事態が生じ、想定通りに事業が進展しない場合、経営成績や今後の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。