※本記事は、久光製薬株式会社の有価証券報告書(第123期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月23日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 久光製薬ってどんな会社?
「サロンパス」などの鎮痛消炎貼付剤を主力とする医薬品メーカー。世界的な「貼る治療文化」の普及を目指しています。
■(1) 会社概要
1903年に久光兄弟合名会社として設立し、1934年に「サロンパス」を発売。1962年に東証二部等へ上場し、1972年に東証一部へ指定替えしました。海外展開を積極的に進め、1987年に米国子会社設立、2009年には米国ノーベン ファーマシューティカルスを買収。2022年に東証プライム市場へ移行しました。
連結従業員数は2,799名、単体では1,488名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に資産管理業務を行う日本カストディ銀行(りそな銀行再信託分・西日本シティ銀行退職給付信託口)です。第3位は金融・保険業の日本生命保険です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.25% |
| 日本カストディ銀行(りそな銀行再信託分・西日本シティ銀行退職給付信託口) | 5.96% |
| 日本生命保険(相) | 5.33% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は中冨一榮氏です。社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中 冨 一 榮 | 代表取締役社長 | 1999年同社入社。経営企画本部長を経て、取締役執行役員、常務、専務、副社長を歴任。2015年5月より現職。 |
| 齋 藤 久 | 常務取締役国内営業管掌 | 1987年同社入社。2009年執行役員、2013年取締役執行役員を経て、2025年5月より現職。ヒサミツユーエスインコーポレイテッド取締役社長を兼務。 |
| 堤 信 夫 | 取締役法務担当兼生産環境・信頼性保証管掌兼コンプライアンス担当 | 1988年同社入社。2010年執行役員、2014年取締役執行役員を経て、2025年5月より現職。久光ウエルネス取締役を兼務。 |
| 村 山 進 一 | 取締役内部統制担当兼国内子会社担当 | 1991年同社入社。2012年執行役員、2014年取締役執行役員を経て、2025年5月より現職。久光-サノフィ社外監査役(非常勤)を兼務。 |
| 瀧 山 浩 二 | 取締役社長室長兼人事担当兼研究開発担当兼DX担当兼サステナビリティ推進管掌 | 1994年同社入社。2017年執行役員を経て、2025年5月より現職。 |
| 磯 部 雄 一 | 取締役経営企画本部長 | 1994年同社入社。2023年執行役員を経て、2025年5月より現職。久光-サノフィ社外取締役(非常勤)を兼務。 |
社外取締役は、安西祐一郎(慶應義塾学事顧問)、松尾哲吾(松尾建設代表取締役社長)、渡邊珠子(いつき会計労務事務所代表)、野口みどり(オフィス野口代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「医薬品事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 医薬品事業
「サロンパス」や「フェイタス」等の一般用医薬品や、「モーラス」等の医療用医薬品の研究開発、製造、販売を行っています。また、米国子会社を通じて医療用医薬品の製造販売も行っています。国内及び海外の顧客に対して、貼付剤を中心とした医薬品を提供しています。
医薬品の販売による対価や、販売を第三者に認めたライセンス契約等による契約一時金、マイルストン、ロイヤリティ等が収益源です。運営は、同社、久光ウエルネス、久光-サノフィ、祐徳薬品工業が国内で行い、海外ではヒサミツ アメリカ インコーポレイテッドやノーベン ファーマシューティカルス等が担っています。
■(2) その他
都市型有線テレビ放送事業、インターネット接続サービス業、損害保険代理業、バレーボールチームの運営、広告取次業、包装資材の製造販売等を行っています。これらは医薬品事業を補完または地域社会への貢献を目的とした事業を含みます。
有線テレビ放送の視聴料やインターネット接続料、広告取次手数料、包装資材の販売代金などが収益源です。運営は、CRCCメディア、佐賀シティビジョン、タイヨー、SAGA久光スプリングス、久光エージェンシー、丸東産業等の関係会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあります。特に直近の2025年2月期は増収となり、利益面でも経常利益、当期利益ともに増加しています。利益率は10%台を維持し、さらに上昇傾向にあり、安定した収益性を確保しながら成長を続けています。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,145億円 | 1,202億円 | 1,283億円 | 1,417億円 | 1,560億円 |
| 経常利益 | 118億円 | 126億円 | 161億円 | 196億円 | 240億円 |
| 利益率(%) | 10.3% | 10.5% | 12.5% | 13.9% | 15.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 83億円 | 72億円 | 104億円 | 99億円 | 164億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も増加しています。売上総利益率は上昇しており、収益性が向上しています。営業利益も大幅に増加しており、本業の儲けを示す営業利益率も改善しています。全体として、増収効果が利益拡大に寄与していることが読み取れます。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,417億円 | 1,560億円 |
| 売上総利益 | 790億円 | 912億円 |
| 売上総利益率(%) | 55.7% | 58.5% |
| 営業利益 | 132億円 | 189億円 |
| 営業利益率(%) | 9.3% | 12.1% |
販売費及び一般管理費のうち、販売促進費が154億円(構成比21.3%)、広告宣伝費が146億円(同20.2%)、研究開発費が109億円(同15.1%)を占めています。売上原価については、労務費や経費を含む製造コストが計上されています。
■(3) セグメント収益
報告セグメントである医薬品事業は、国内での薬価改定の影響を受けつつも、海外での販売好調や円安効果により増収となりました。その他事業も微増収となっていますが、全体業績への影響は限定的です。調整額を含めた連結全体としても増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) |
|---|---|---|
| 医薬品事業 | 1,417億円 | 1,560億円 |
| 連結(合計) | 1,417億円 | 1,560億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
パターン:健全型
営業活動によるキャッシュ・フローはプラスで安定しており、投資活動はプラスに転じています。財務活動はマイナスで、自己株式の取得や配当金の支払いを行っています。豊富な手元資金を活用しつつ、株主還元も実施している健全な財務状態と言えます。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 182億円 | 188億円 |
| 投資CF | -25億円 | 176億円 |
| 財務CF | -167億円 | -159億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は80.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
TDDS(経皮薬物送達システム)に基づく貼付剤の創薬・育薬と製剤技術の向上に努め、製造・販売を通じて、「世界の人々のQOL(生活の質)向上を目指す」ことを経営理念としています。また、『「手当て」の文化を、世界へ。』を企業使命と定め、健やかな社会の形成に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループが大切にするのは「手当て」の文化です。これは相手への思いやりを込めて癒やす行為であり、「貼る」の原点となる治療文化です。また、「無形の貯蓄」を創業の精神と位置づけ、高い倫理観を持った行動による信頼の積み重ねが企業価値であるという考え方を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
「第7期中期経営方針 ~HX2025(Hisamitsu Transformation 2025)~」において、2025年度を最終年度とする目標を掲げています。売上高の回復と収益性の向上による変革を目指し、以下の数値目標を設定しています。
* 連結売上高CAGR(年平均成長率):5%以上
* ROE(自己資本利益率):8%以上
* 海外売上高比率:50%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
国内医療用医薬品では新製剤開発や営業・生産・研究開発機能の強化を図り、一般用医薬品では新商品開発や改良を進めます。海外では「サロンパス」ブランドを中心にシェア拡大を目指し、研究開発機能を集約した「SAGAグローバルリサーチセンター」を活用して開発スピードを向上させます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「相手をいたわることのできる人材」「仕事が自分事となった人材」の育成を基本戦略としています。グローバル展開や変革に対応するため、次世代リーダーの発掘、働きがいの向上、専門技術やDX人材の確保・育成に注力しています。また、DE&I推進や女性活躍、柔軟な働き方の環境整備にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 39.2歳 | 15.7年 | 7,533,418円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.4% |
| 男性育児休業取得率 | 54.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 73.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 89.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(69.3%)、自己申告書提出率(99.2%)、働きがいスコア(4.9)、自己研鑽実施率(38.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法的規制及び医療政策
薬価制度や医療保険制度等の規制変更が業績に影響を及ぼす可能性があります。薬事関連規制の改正動向を早期に捉え、追加対応の要否検討など事前に備えることで対応しています。
■(2) 品質及び副作用
品質問題の発生や予期せぬ副作用等により、製品回収や発売中止に至る可能性があります。関係法令や社内規定を遵守し徹底した品質管理を行うとともに、有害事象への迅速な対応体制を整備しています。
■(3) 研究開発活動
新製品等の研究開発において期待した効果が得られず開発を中止し、投資を回収できない可能性があります。開発パイプラインの拡充によるリスク分散や、ステージ移行時の事業性確認等のポートフォリオ管理を行っています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。