安川電機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

安川電機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

安川電機は東京証券取引所プライム市場および福岡証券取引所に上場し、モーションコントロール、ロボット、システムエンジニアリング事業をグローバルに展開する企業です。直近の業績は、売上収益が増加したものの、為替影響や間接費の増加により営業利益および親会社の所有者に帰属する当期利益は減益となっています。


※本記事は、株式会社安川電機の有価証券報告書(第110期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 安川電機ってどんな会社?


モーションコントロールやロボットなどの産業用自動化機器の開発から製造、販売、保守までを担う企業です。

(1) 会社概要


1915年に合資会社安川電機製作所として設立され、1919年に株式会社となりました。1949年に東京および福岡の証券取引所に上場し、1991年に安川電機へ社名を変更しています。近年では2018年に安川オートメーション・ドライブを完全子会社化するなど、組織再編を通じて事業基盤の強化を図っています。

同社グループは、連結で12,483名、単体で3,114名の従業員を擁しています。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も信託業務を行う日本カストディ銀行となっています。第3位には証券業務を行うJPモルガン証券が名を連ねており、国内外の機関投資家が高い割合を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 19.02%
日本カストディ銀行(信託口) 11.66%
JPモルガン証券 3.23%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役会長は小笠原浩氏、代表取締役社長は小川昌寛氏が務めており、社外取締役比率は50.0%となっています。

氏名 役職 主な経歴
小笠原 浩 代表取締役会長 1979年同社入社。モーションコントロール事業部長などを歴任。2016年に代表取締役社長に就任し、2022年に代表取締役会長兼社長を経て、2023年より現職。
小川 昌寛 代表取締役社長人づくり推進担当ICT戦略担当 1987年同社入社。米国安川取締役会長などを歴任。2023年に代表取締役社長となり、2026年より現職。
森川 泰彦 取締役渉外担当 1985年第一勧業銀行入行。みずほ銀行五反田支店長等を経て、2015年同社入社。経営企画本部副本部長などを歴任し、2026年より現職。
生山 武史 取締役監査等委員 1986年同社入社。人事総務部長、安川電機(中国)董事長、ベスタクト・ソリューションズ取締役社長等を経て、2023年より現職。


社外取締役は、真茅久則(富士フイルムビジネスイノベーション元代表取締役社長)、松橋香里(ルミナス・コンサルティング代表取締役)、西尾啓治(雪印メグミルク元代表取締役社長)、穂高弥生子(一色法律事務所・外国法共同事業パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「モーションコントロール」「ロボット」「システムエンジニアリング」および「その他」の事業を展開しています。

モーションコントロール


ACサーボドライブ、コントローラ、インバータや太陽光発電用パワーコンディショナなどの各種モーションコントロール機器やパワー変換機器の開発、製造、販売、および保守サービスを提供しています。主に半導体、電子部品、工作機械や空調用途等の幅広い産業向けに展開しています。

収益は顧客への製品販売や保守サービスから得ています。運営は同社のほか、安川オートメーション・ドライブ、米国安川、欧州安川、安川電機(中国)などの国内外のグループ各社が連携して行っています。

ロボット


アーク溶接、スポット溶接、塗装、ハンドリングロボットのほか、半導体製造装置用ロボットや人協働ロボットなど、多様な産業用ロボットの開発、製造、販売、保守サービスを提供しています。自動車産業や一般産業、食品・医療分野などでの自動化ニーズに応えています。

収益は製品の販売に加え、顧客仕様に基づいた請負工事やシステムの提供、保守サービスなどから得ています。同社を中心に、安川メカトレック末松九機や安川アジアパシフィック、韓国安川電機などが運営を担っています。

システムエンジニアリング


鉄鋼プラントや上下水道、各種産業および港湾荷役向けの電気システム、高圧インバータなどの開発、製造、販売、保守サービスを提供しています。社会インフラや大型プラントなど、脱炭素や自動化が求められる分野の企業や官公庁が主な顧客です。

収益は製品の販売や、顧客仕様に合わせた長期の請負工事によるシステム提供から得ています。同社のほか、安川オートメーション・ドライブや安川メカトレック末松九機などが事業の運営を行っています。

その他


報告セグメントに含まれない事業分野として、グループ内の物流サービスや各種周辺業務を提供しています。グループ全体の効率的なサプライチェーン構築を支援しています。

収益は、製品の輸送、荷役、保管などの物流サービスに関する手数料から得ています。運営は主に安川ロジステックなどが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は直近5期間において5000億円前後の水準で安定的に推移しており、堅調な事業基盤を維持しています。税引前利益は2025年2月期に過去最高水準を記録しましたが、直近の2026年2月期は為替影響等の要因により減少に転じており、利益水準の改善が今後の焦点となります。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上収益 4791億円 5560億円 5757億円 5377億円 5421億円
税引前利益 554億円 711億円 691億円 785億円 496億円
利益率(%) 11.6% 12.8% 12.0% 14.6% 9.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 384億円 518億円 507億円 570億円 352億円

(2) 損益計算書


売上収益は前年度から微増となりましたが、売上総利益および営業利益は減少しました。これにより、利益率もやや低下傾向にあり、増収を確保しつつもコスト増などの影響により収益性が圧迫されている状況が見て取れます。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上収益 5377億円 5421億円
売上総利益 535億円 509億円
売上総利益率(%) 9.9% 9.4%
営業利益 502億円 473億円
営業利益率(%) 9.3% 8.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が162億円(構成比11%)、運賃諸掛が65億円(同5%)、減価償却費が32億円(同2%)を占めています。

(3) セグメント収益


ロボット部門は一般産業分野における設備投資需要により売上が増加しましたが、大口案件の付加価値影響で利益は減少しました。モーションコントロール部門は売上が微減となったものの、付加価値の改善により増益を達成し、全体の利益水準を下支えしています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期) 利益(2025年2月期) 利益(2026年2月期) 利益率
モーションコントロール 2550億円 2542億円 230億円 244億円 9.6%
ロボット 2402億円 2487億円 238億円 204億円 8.2%
システムエンジニアリング 392億円 392億円 46億円 50億円 12.7%
その他 390億円 377億円 16億円 20億円 5.3%
調整額 -357億円 -377億円 -28億円 -45億円 -
連結(合計) 5377億円 5421億円 502億円 473億円 8.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.4%で市場平均を上回っています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 565億円 522億円
投資CF -213億円 -442億円
財務CF -157億円 -86億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「事業の遂行を通じて広く社会の発展、人類の福祉に貢献すること」を存在意義としています。最先端のメカトロニクス技術によるイノベーション創出で社会に価値を提供し、ステークホルダーとの対話を通じて透明性の高い経営を実現することで、持続可能な社会の発展を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「品質重視の考えに立ち、常に世界に誇る技術を開発、向上させる」「経営効率の向上に努め、企業の存続と発展に必要な利益を確保する」「市場志向の精神に従い、そのニーズにこたえるとともに、需要家への奉仕に徹する」という価値観を掲げています。技術への強いこだわりと社会課題解決への意識が文化として根付いています。

(3) 経営計画・目標


長期経営計画「2035年ビジョン」において、営業利益率を最も重要な経営指標と位置づけており、2035年度の目標として以下の数値を掲げています。また、現在進行中の中期経営計画「Dash 35」では過去最高となる1,000億円の営業利益を目指しています。

* 営業利益率:20.0%以上
* 配当性向:40.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


ソリューションコンセプトである「i³-Mechatronics(アイキューブ メカトロニクス)」を軸に、自動化ソリューションの価値向上と、AIを活用したフィジカルAIの社会実装を進めています。医療・農業分野などの新メカトロニクス応用領域の拡大や、AIロボットの市場開拓を通じて競争力を強化します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「従業員一人ひとりが自己実現できるよう、チャレンジできる成長の機会の提供」を掲げています。プロフェッショナル人材の育成と最適配置に注力し、自律的なキャリア形成を支援しています。また、多様な人材の強みを発揮するため、ダイバーシティ推進や柔軟な働き方、健康経営にも積極的に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 42.7歳 17.6年 8,599,531円


※平均年間給与は賞与および基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.1%
男性育児休業取得率 72.0%
男女賃金差異(全労働者) 72.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 75.6%
男女賃金差異(臨時雇用者) 54.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、単体の休業災害度数率(0.32)、プロフェッショナル人材比率(11%)、働きがい・成長機会の肯定回答率(83%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 地政学リスクの顕在化


同社グループはグローバルに事業を展開しているため、米中関係の緊張や中東・アジア地域における紛争などの地政学的緊張が事業に影響を及ぼす可能性があります。輸出規制の拡大や関税引き上げなどの保護主義的措置により、製品の生産や物流、供給網に支障をきたすリスクがあります。

(2) 原材料・部品調達の停滞


鋼材や各種部品をグローバルに調達しているため、価格の高騰や需要増、国際関係の変化により安定的な確保が困難になる可能性があります。また、取引先における自然災害や感染症、経営悪化などにより部品の供給が途絶し、生産活動に遅れが生じるリスクを抱えています。

(3) 為替相場の変動


世界各地で事業を展開し、現地通貨建てでの販売や原材料の調達を行っているため、為替相場の変動リスクにさらされています。想定を超える急激な為替変動は、海外市場での製品競争力の低下を招き、円建てで報告される業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 競合他社との競争激化


事業の各分野において強力な競合相手が存在しており、将来にわたって競争優位性を維持できる保証はありません。価格競争の激化や、技術および品質面での優位性の喪失、製品の市場投入タイミングの遅れなどが生じた場合、収益やシェアの低下につながるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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