#記事タイトル:安川電機転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社安川電機の有価証券報告書(第109期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 安川電機ってどんな会社?
サーボモータやインバータ、産業用ロボットなど、工場の自動化を支えるメカトロニクス製品を世界的に展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1915年に合資会社として設立され、1919年に株式会社となりました。1949年には東京証券取引所および福岡証券取引所に株式を上場しています。1971年には安川エンジニアリングを設立するなど事業を拡大し、2019年には安川モートルのサーボモータ・EVモータ生産機能等を吸収分割により承継しました。
2025年2月末時点の連結従業員数は12,833名、単体では3,170名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行です。第3位は常任代理人を通じて株式を保有する外国法人であり、上位株主は主に機関投資家によって構成されています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 18.65% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 9.75% |
| THE BANK OF NEW YORK 133969 | 3.45% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は小川昌寛氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小川昌寛 | 代表取締役社長人づくり推進担当ICT戦略担当技術開発本部長 | 1987年入社。ロボット事業部長を経て2022年代表取締役専務執行役員。2023年3月より現職。 |
| 小笠原浩 | 代表取締役会長 | 1979年入社。技術開発本部長を経て2016年代表取締役社長。2022年代表取締役会長兼社長を経て2023年3月より現職。 |
| 森川泰彦 | 取締役上席執行役員東京支社長 | 元みずほコーポレート銀行執行役員。2015年同社入社。経営企画本部副本部長、総務・リスクマネジメント本部長を経て2024年3月より現職。 |
| 生山武史 | 取締役監査等委員 | 1986年入社。人事総務部長、安川電機(中国)有限公司董事長、ベスタクト・ソリューションズ取締役社長を経て2023年5月より現職。 |
社外取締役は、真茅久則(元富士フイルムビジネスイノベーション社長)、松橋香里(公認会計士)、西尾啓治(元雪印メグミルク社長)、穂高弥生子(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「モーションコントロール」「ロボット」「システムエンジニアリング」および「その他」事業を展開しています。
■(1) モーションコントロール
ACサーボドライブ、コントローラ、リニアモータ、インバータ、太陽光発電用パワーコンディショナなどを製造・販売しています。半導体・電子部品製造装置や工作機械などの顧客に対し、装置の高速・高精度化を実現するコンポーネントを提供しています。
収益は、製品の販売対価および保守サービス料です。製品販売は引渡または検収時点で収益を認識し、保守契約は契約期間にわたり収益を認識します。運営は主に同社が行い、海外では米国安川や欧州安川、安川電機(中国)有限公司などの現地法人が製造・販売を担っています。
■(2) ロボット
アーク溶接、スポット溶接、塗装、ハンドリング、半導体・液晶製造装置用搬送ロボット、自律ロボット、人協働ロボットなどを製造・販売しています。自動車関連市場や一般産業市場の顧客に対し、生産工程の自動化・省力化に貢献するロボットを提供しています。
収益は、製品の販売対価および保守サービス料です。請負工事等は進捗度に応じて収益を認識します。運営は主に同社が行い、海外では米国安川や欧州安川、安川電機(中国)有限公司などの現地法人が製造・販売を担当しています。
■(3) システムエンジニアリング
鉄鋼プラント用電気システム、上下水道用電気計装システム、高圧インバータ、産業用モータ・発電機などを製造・販売しています。鉄鋼プラントや社会インフラ関連の顧客に対し、電気システムや環境エネルギー機器を提供しています。
収益は、製品の販売対価および請負工事等の対価です。請負工事等は、原価の発生に基づく進捗度に応じて収益を認識します。運営は主に同社が行い、製造・販売・サービスの一部を安川オートメーション・ドライブなどが担っています。
■(4) その他
物流サービスや情報処理業務などを提供しています。
収益は、サービスの提供対価です。運営は同社および安川ロジステックなどの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年2月期から2025年2月期までの業績推移です。売上収益は2024年2月期まで増加傾向にありましたが、2025年2月期は前期比で減少しました。利益面では、2023年2月期をピークに営業利益は減少傾向にありますが、2025年2月期は関連会社株式売却益等の計上により税引前利益および当期利益が増加しています。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 3,897億円 | 4,791億円 | 5,560億円 | 5,757億円 | 5,377億円 |
| 税引前利益 | 272億円 | 554億円 | 711億円 | 691億円 | 785億円 |
| 利益率(%) | 7.0% | 11.6% | 12.8% | 12.0% | 14.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 189億円 | 384億円 | 518億円 | 507億円 | 570億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上収益は6.6%減少しました。売上総利益率は36.3%から35.6%へ低下し、営業利益率は11.5%から9.3%へ低下しています。これは主に売上減少に伴う利益減の影響によるものです。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 5,757億円 | 5,377億円 |
| 売上総利益 | 2,091億円 | 1,915億円 |
| 売上総利益率(%) | 36.3% | 35.6% |
| 営業利益 | 662億円 | 502億円 |
| 営業利益率(%) | 11.5% | 9.3% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が796億円(構成比56%)、減価償却費及び償却費が105億円(同7%)を占めています。売上原価においては、材料費などが含まれる棚卸資産の金額が3,440億円で、売上原価の99%を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの状況を見ると、主力のモーションコントロールは半導体市場等の回復遅延により減収減益となりました。ロボットは売上収益が微増したものの、先行投資等により減益でした。システムエンジニアリングは子会社売却影響等で減収となりましたが、事業構造改革効果により利益率は改善しました。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) | 利益(2024年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| モーションコントロール | 2,850億円 | 2,550億円 | 390億円 | 230億円 | 9.0% |
| ロボット | 2,372億円 | 2,402億円 | 251億円 | 238億円 | 9.9% |
| システムエンジニアリング | 470億円 | 392億円 | 49億円 | 46億円 | 11.8% |
| その他 | 412億円 | 390億円 | 4億円 | 16億円 | 4.1% |
| 調整額 | -348億円 | -357億円 | -32億円 | -28億円 | - |
| 連結(合計) | 5,757億円 | 5,377億円 | 662億円 | 502億円 | 9.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得た資金の一部を投資に回しつつ、借入金の返済や配当支払いも行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 546億円 | 565億円 |
| 投資CF | -293億円 | -213億円 |
| 財務CF | -294億円 | -157億円 |
企業の収益力を測るROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)は13.7%で市場平均を上回っています。財務の安定性・安全性を測る親会社所有者帰属持分比率は58.0%で、市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「事業の遂行を通じて広く社会の発展、人類の福祉に貢献すること」を存在意義としています。サステナビリティ方針として、最先端のメカトロニクス技術によるイノベーション創出で社会への価値創造に貢献することや、SDGs達成を目指しグローバルでの社会的課題の解決に取り組むことを掲げています。
■(2) 企業文化
同社は、「品質重視の考えに立ち、常に世界に誇る技術を開発、向上させる」「経営効率の向上に努め、企業の存続と発展に必要な利益を確保する」「市場志向の精神に従い、そのニーズにこたえるとともに、需要家への奉仕に徹する」という3つの価値観を掲げ、その実現に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画「Realize 25」を推進しており、「i3-Mechatronics」の展開とロボティクスの進化により新たな価値を創出し、収益および生産性を高めることを目指しています。
* 2024年度実績
* 売上収益:5,376億円
* 営業利益:501億円
* 営業利益率:9.3%
* ROE:13.7%
* ROIC:12.2%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「i3-Mechatronics」コンセプトを軸に、顧客の課題解決に貢献するソリューションの価値を最大化することを目指しています。また、世界一・世界初の自動化コンポーネントによるグローバル市場の攻略や、省エネ・創エネ・食農・医療等のメカトロニクス応用領域での事業拡大、DXとサステナビリティ経営の深化による経営基盤強化に取り組んでいます。
* 2025年度の重点実施項目
* “コト”を実現するi3-Mechatronics活動の成果最大化
* 市場・地域の変化を俯瞰的に捉えた網羅的な活動による収益最大化
* パートナー連携によるメカトロニクス応用領域の事業化
* 「YDX-Ⅱ」実践による付加価値創造と持続可能な経営基盤の構築
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、事業を通じて社会貢献できる人材の確保・育成・最適配置を目指しています。「2025年ビジョン」実現に向け、「経営理念の理解深化」「ダイバーシティとインクルージョンの進化」「プロフェッショナル人材の育成と最適配置」「働きやすい職場環境の実現」を重点項目としています。自律的なキャリア形成支援や、成果に基づく評価、中長期インセンティブの導入などを進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 42.0歳 | 18.4年 | 8,699,250円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.5% |
| 男性育児休業取得率 | 60.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 73.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 52.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、プロフェッショナル人材比率(13%)、ES(従業員満足度)アンケートの働きがい・成長機会の肯定回答率(80%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 地政学リスク(国際関係変化)
同社グループはグローバルに拠点を持ち事業展開しているため、米中やロシア・ウクライナ情勢などの国際関係の変化、輸出規制や関税引き上げ等の法規制変更が事業活動に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、各拠点で政治・経済情勢等をモニタリングし、危機管理委員会を通じた迅速な対応体制を整備しています。
■(2) 部材調達・物流環境に係るリスク
原材料や部品をグローバルに調達しているため、価格高騰や供給不足、取引先の被災等により調達が困難になる可能性があります。これに対し、取引先との関係強化、調達先の分散、適正在庫の確保、現地生産・調達の推進、BCP策定などによりサプライチェーンの強化に努めています。
■(3) 為替相場の変動に係るリスク
グローバル事業展開に伴い、現地通貨建ての取引や資産・負債を保有しているため、為替変動が業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、先物為替予約や為替ヘッジの実行に加え、現地生産や現地調達の推進を通じて、為替変動に強い収益構造の構築に取り組んでいます。
■(4) 競争の激化に係るリスク
各事業分野で強力な競合が存在し、価格競争の激化や製品競争力の低下が業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、i3-Mechatronicsを通じたソリューション提供による差別化や、安川テクノロジーセンタを中心とした研究開発強化により、高付加価値でコスト競争力の高い製品のタイムリーな市場投入に努めています。



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