古野電気 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

古野電気 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場し、舶用電子機器及び産業用電子機器の製造販売を主要事業としています。直近の業績は、売上高1,270億円、経常利益142億円と増収増益を達成しました。主力である舶用事業において商船向け機器販売や保守サービスが好調に推移し、大幅な利益成長を実現しています。


※本記事は、古野電気株式会社 の有価証券報告書(第74期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 古野電気ってどんな会社?

世界で初めて魚群探知機の実用化に成功した企業で、舶用電子機器を中心に産業用電子機器なども展開しています。

(1) 会社概要

1948年に世界初の魚群探知機の実用化に成功し、合資会社古野電気工業所を創立しました。1955年に古野電気を設立し事業を継承しました。1982年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、2013年には東京証券取引所市場第一部へ上場しました。2022年の市場区分見直しにより、現在はプライム市場に上場しています。

同社グループの従業員数は連結3,368名、単体1,927名です。筆頭株主は創業家関連の資産管理会社である古野興産で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位も同様に信託銀行となっており、安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
古野興産 13.25%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.57%
日本カストディ銀行(信託口) 4.41%

(2) 経営陣

同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長執行役員 兼 CEOは古野幸男氏です。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
古野幸男 代表取締役社長執行役員兼CEO安全保障輸出管理本部長、特定輸出申告最高責任者 1984年同社入社。管理本部副本部長、専務取締役管理担当等を経て、2007年代表取締役社長に就任。2021年3月より現職。
石原眞次 取締役常務執行役員兼CTO研究開発・生産・品質、環境、技術研究所、品質統括監理室、知的財産部、IT部、技術統括部担当、エネルギー管理統括者 1985年同社入社。舶用機器事業部開発部長、開発設計統括部長等を経て、2021年3月より現職。
和田豊 取締役常務執行役員兼CFO 経営企画部、経理部、人事総務部、法務室、調達・物流、D&I担当 1982年同社入社。舶用機器事業部船舶営業部長、東京支社長、常勤監査役等を経て、2023年5月より現職。
矮松一磨 取締役常務執行役員舶用機器事業部担当舶用機器事業部長 1984年同社入社。舶用機器事業部営業企画部長、同副事業部長等を経て、2024年5月より現職。


社外取締役は、樋口英雄(元オムロン執行役員常務)、香川進吾(元富士通総研社長)、久保雅子(元オムロンエキスパートリンク社長)です。

2. 事業内容

同社グループは、「舶用事業」「産業用事業」「無線LAN・ハンディターミナル事業」および「その他」事業を展開しています。

舶用事業

航海機器、漁労機器、無線通信装置等を主要製品として提供しています。顧客は商船、漁船、プレジャーボート等の運航者や造船所など多岐にわたります。世界各地に販売・サービス拠点を有し、グローバルに事業を展開しています。

製品の販売および保守メンテナンス等のサービス提供の対価として収益を得ています。運営は、同社が製造・販売を行うほか、FURUNO FINLAND OY等が製造し、FURUNO U.S.A., INC.などの各国の販売子会社がそれぞれの地域で販売を行っています。

産業用事業

医療機器、ITS(高度道路交通システム)機器、GPS機器、航空機用電子装置等を主要製品として提供しています。医療機関や自動車関連企業、航空機メーカーなどが主な顧客となります。

製品の販売対価を主な収益源としています。運営は、主に同社および中国の孚諾科技(大連)有限公司が製造・販売を行っています。

無線LAN・ハンディターミナル事業

主に無線LANアクセスポイントやハンディターミナル等の製造・販売を行っています。教育機関や物流企業、小売業などが主な顧客であり、特に文教市場で高いシェアを持っています。

製品の販売対価およびシステムソリューションの提供対価を収益源としています。運営は、主に子会社のフルノシステムズが行っています。

その他

上記報告セグメントに含まれない事業として、主に電磁環境試験事業を行っています。電子機器の電磁波測定や試験サービスを提供しています。

試験サービスの提供対価等を収益源としています。運営は、主に子会社のラボテック・インターナショナルが行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

2021年2月期から2025年2月期までの5期間を見ると、売上高は増加傾向にあり、特に直近2期で大きく伸長しています。利益面では、2023年2月期に一旦落ち込みましたが、その後V字回復し、2025年2月期は過去最高水準の利益を計上しました。利益率も大幅に改善しています。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 823億円 848億円 913億円 1,149億円 1,270億円
経常利益 48億円 37億円 26億円 82億円 142億円
利益率(%) 5.8% 4.4% 2.8% 7.1% 11.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 39億円 28億円 13億円 62億円 115億円

(2) 損益計算書

直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加し、売上総利益率も改善しています。販売費及び一般管理費も増加しましたが、増収効果が上回り、営業利益は前期比で倍増しました。高い収益性を確保しています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 1,149億円 1,270億円
売上総利益 426億円 530億円
売上総利益率(%) 37.1% 41.7%
営業利益 65億円 132億円
営業利益率(%) 5.7% 10.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賃金が133億円(構成比33%)、研究開発費が63億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益

舶用事業は、商船市場での新造船・既存船向け機器販売や保守サービスが好調で増収増益となりました。産業用事業は、ITS・GNSS事業や防衛装備品事業が伸長し増収増益でした。無線LAN事業も増収増益を確保しています。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
舶用事業 982億円 1,087億円 71億円 133億円 12.3%
産業用事業 128億円 142億円 2億円 5億円 3.5%
無線LAN・ハンディターミナル事業 36億円 37億円 1億円 2億円 5.3%
その他 3億円 4億円 -1億円 -1億円 -34.2%
調整額 -10億円 -12億円 -8億円 -7億円 -
連結(合計) 1,149億円 1,270億円 65億円 132億円 10.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

古野電気グループは、営業活動によるキャッシュ・フローを安定した収益確保と将来成長に向けた投資の源泉としています。当連結会計年度は、営業活動によるキャッシュ・フローが大幅に増加しました。一方で、投資活動では有形・無形固定資産の取得により資金が減少しました。また、財務活動では配当金の支払いにより資金が減少しました。これらの結果、期末の資金残高は増加しました。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 27億円 108億円
投資CF -36億円 -46億円
財務CF -36億円 -27億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「会社存立の原点は社会の役に立つことである」「経営は創造である」「社員の幸福は会社の発展と共にある」との経営理念を掲げています。創業以来、事業を通じた社会的課題の解決を使命とし、顧客提供価値と企業価値の両面を持続的かつ発展的に高めることを基本方針としています。

(2) 企業文化

社員の行動指針として「未来に向かう」「最良に挑む」「独創を貫く」「率直を好む」を謳っています。2030年に向けた経営ビジョン「FURUNO GLOBAL VISION“NAVI NEXT 2030”」のもと、グローバルマインドセットの醸成や迅速かつ柔軟な判断と行動を重視する企業風土を目指しています。

(3) 経営計画・目標

フェーズ2となる中期経営計画(2024年2月期~2026年2月期)を推進中です。体質改善による利益水準の向上と、売上規模拡大による利益確保を目指しています。長期ビジョンで掲げた2031年2月期の売上高1,200億円、営業利益率10%の目標を前倒しで達成したため、今後はこの水準の安定継続を目指します。

* 2026年2月期目標:自己資本経常利益率10%以上
* 2026年2月期目標:配当性向30%以上

(4) 成長戦略と重点施策

「利益水準の向上」「売上規模の拡大」「サステナブル経営の実行」を基本施策としています。舶用事業ではライフサイクルサポートの強化や舶用DXの推進、自律航行支援技術の普及に取り組みます。産業用事業では、防衛装備品やGNSS時刻同期事業など成長期待事業へリソースを集中させます。

* 利益水準の向上:品質向上、在庫適正化、開発・モノづくり機能の最適化によるコストダウン。
* 売上規模の拡大:リモートサービス、舶用DX、成長期待事業への投資。
* サステナブル経営:新規事業創出、人財投資、ダイバーシティ推進。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「VALUE through GLOBALIZATION and SPEED」を人財・企業風土ビジョンとし、高い自律性を持ちグローバルに活躍できる人財の育成を目指しています。新人事ビジョンに基づき、個々の能力最大化と適性配置、経営人財の育成、ダイバーシティ&インクルージョンの推進に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 44.7歳 15.4年 7,043,103円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.0%
男性育児休業取得率 46.7%
男女賃金差異(全労働者) 67.1%
男女賃金差異(正規雇用) 80.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 70.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントサーベイ「バリューの実践」のポジティブ回答(グループ全体 75%)、ストレスチェックの受験率(98.3%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国際情勢等の影響

同社グループは世界各地に商品を供給しており、各国の経済状況や地政学リスクの影響を受けます。特に米中貿易摩擦やウクライナ情勢等による政策・法規制の変更、関税引き上げ等が、生産・物流・営業活動に制限を与え、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 舶用事業の市場環境変化

連結売上の8割以上を占める舶用事業は、漁業における資源管理強化や商船市場の需給変動、プレジャーボート市場の景気動向の影響を受けます。また、自律航行などの技術革新や業界構造の転換に対応できない場合、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 調達・生産リスク

原材料や部品の供給不足、価格変動、仕入先の経営悪化等が生産活動に支障をきたす可能性があります。また、サプライチェーン全体でのCSR対応不備や地政学リスクによる供給網の寸断も、製品供給能力やコストに影響を与え、業績悪化の要因となり得ます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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