※本記事は、古野電気株式会社の有価証券報告書(第75期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 古野電気ってどんな会社?
舶用電子機器や産業用電子機器の製造販売を主力事業としてグローバルに展開する企業です。
■(1) 会社概要
1938年に古野電気商会を創業し、1948年に世界初の魚群探知機の実用化に成功しました。1955年に会社を設立し、1982年に大証二部に上場、2013年に東証一部へ上場しました。2022年に東証プライム市場に移行し、現在は世界各国に販売や生産の拠点を有し、「世界のフルノ」として事業を拡大しています。
従業員数は連結で3411名、単体で1954名です。筆頭株主は創業者一族の資産管理会社とみられる古野興産で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行です。第3位には第一生命保険が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 古野興産 | 13.24% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.22% |
| 第一生命保険 | 3.16% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長執行役員兼CEOは古野幸男氏が務めています。取締役7名のうち、社外取締役は3名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 古野幸男 | 代表取締役社長執行役員兼CEO安全保障輸出管理本部長、特定輸出申告最高責任者 | 帝人入社。同社入社後、取締役、常務、専務等を経て2007年に代表取締役社長。2021年より現職。 |
| 矮松一磨 | 取締役専務執行役員兼CMO航空・防衛事業部担当 | 同社入社。舶用機器事業部営業企画部長、取締役、上席執行役員等を経て2026年3月より現職。 |
| 石原眞次 | 取締役常務執行役員 社長特命事項担当 | 同社入社。舶用機器事業部開発部長、取締役、常務執行役員兼CTO等を経て2026年3月より現職。 |
| 和田豊 | 取締役常務執行役員兼CFO 経営企画部、経理部、人事総務部、IT部、法務室、調達・物流、D&I担当 | 同社入社。舶用機器事業部船舶営業部長、取締役、常勤監査役等を経て2023年より現職。 |
社外取締役は、樋口英雄(元オムロン執行役員常務)、香川進吾(元富士通執行役員専務)、久保雅子(元オムロンパーソネル代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「舶用事業」「産業用事業」「無線LAN・ハンディターミナル事業」および「その他」事業を展開しています。
■舶用事業
同事業は、航海機器、漁労機器および無線通信装置等の製造と販売を行っています。商船向けには新造船向け機器や既存船の換装、保守サービスを提供し、漁業向けには操業の効率化や安全性向上に寄与するソリューションを展開しています。プレジャーボート向けや官公庁船等のワークボート向け機器も手掛けています。
主な収益源は、各市場における舶用電子機器の販売代金や保守・メンテナンスサービスの手数料です。運営は同社のほか、電子機器の製造子会社や、欧米・アジア各国に展開する多数の海外販売子会社が分担して事業を推進しています。
■産業用事業
同事業は、医療機器、ITS機器、GPS機器および航空機用電子装置等の製造と販売を行っています。ヘルスケア分野では生化学分析装置などを提供し、インフラ分野ではETC車載器や位置情報・時刻同期機器、防衛装備品として航空機用電子機器や衛星測位・水中音響機器などを展開しています。
主な収益源は、医療機関向けや自動車・インフラ市場向けの電子機器および防衛省向けの装備品の販売代金です。運営は主に同社が担うほか、中国にある子会社の孚諾科技(大連)が一部の製造および販売を行っています。
■無線LAN・ハンディターミナル事業
同事業は、無線LANアクセスポイントやハンディターミナルなどの製造および販売を行っています。学校などの文教市場向けネットワーク機器や、物流・小売・流通市場向けの業務用携帯端末などを展開し、顧客の現場業務の効率化や通信インフラの構築を支援しています。
主な収益源は、各市場向けの無線通信機器および端末の販売代金、システム構築や関連サービスの利用料です。運営は主に子会社のフルノシステムズが行っています。
■その他
同事業では、主に各種電子機器が発する電磁波の影響や耐性を評価する電磁環境試験事業を展開しています。外部機関や顧客からの依頼に応じた試験サービスを提供しています。
主な収益源は、顧客から受け取る電磁環境の測定および試験手数料です。運営は主に子会社のラボテック・インターナショナルが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上高は安定して成長を続けており、特に直近の数期間で大きく規模を拡大しています。利益面では一時的な落ち込みがあったものの、その後は急回復し、大幅な増益を達成しています。利益率も順調に改善し、力強い成長軌道を描いています。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 848億円 | 913億円 | 1149億円 | 1270億円 | 1406億円 |
| 経常利益 | 37億円 | 26億円 | 82億円 | 142億円 | 183億円 |
| 利益率(%) | 4.4% | 2.8% | 7.1% | 11.2% | 13.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 28億円 | 13億円 | 62億円 | 115億円 | 167億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴い、売上総利益も着実に増加しています。売上総利益率および営業利益率ともに前期から改善しており、コストコントロールが適切に機能し、本業の稼ぐ力が一段と高まっていることがわかります。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1270億円 | 1406億円 |
| 売上総利益 | 530億円 | 583億円 |
| 売上総利益率(%) | 41.7% | 41.5% |
| 営業利益 | 132億円 | 162億円 |
| 営業利益率(%) | 10.4% | 11.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賃金が142億円(構成比34%)、研究開発費が60億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である舶用事業は、商船向けの新造船向け機器や既存船の換装需要、保守サービスが好調に推移し、大幅な増収増益となりました。産業用事業も時刻同期製品などの海外向け販売が順調に拡大し増益に貢献しました。一方、無線LAN・ハンディターミナル事業は文教市場の需要低迷により減収減益となっています。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益(2026年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 舶用事業 | 1087億円 | 1211億円 | 133億円 | 168億円 | 13.8% |
| 産業用事業 | 142億円 | 158億円 | 5億円 | 8億円 | 4.9% |
| 無線LAN・ハンディターミナル事業 | 37億円 | 33億円 | 2億円 | 1億円 | 4.0% |
| その他 | 4億円 | 3億円 | -1億円 | -1億円 | -33.4% |
| 連結(合計) | 1270億円 | 1406億円 | 132億円 | 162億円 | 11.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業となっています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 108億円 | 214億円 |
| 投資CF | -46億円 | -33億円 |
| 財務CF | -27億円 | -114億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.2%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「会社存立の原点は社会の役に立つことである」「経営は創造である」「社員の幸福は会社の発展と共にある」との経営理念を掲げています。社会の役に立つことを存在意義とし、事業を通じた持続可能な地球環境・社会への貢献と、持続的な企業価値の向上を基本方針として事業活動を展開しています。
■(2) 企業文化
同社グループは社員の行動指針として「未来に向かう」「最良に挑む」「独創を貫く」「率直を好む」を謳っており、これらを普遍的な価値観として尊重しています。また、多様な文化や価値観を包含した広義のグローバリゼーションを推進し、迅速かつ柔軟な判断と行動で新しい時代を創り続けることを目指す企業文化を築いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2031年2月期を最終年度とする経営ビジョン「FURUNO GLOBAL VISION“NAVI NEXT 2030”」を策定し、段階的に取り組んでいます。その一環として、2029年2月期を最終年度とする中期経営計画では以下の数値目標を掲げています。
・売上高1500億円
・営業利益率10%以上
・ROEおよびROIC10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
持続的な成長を実現するため、「収益性の確保」「さらなる売上規模の拡大」「サステナブル経営の強化」を重点施策としています。主力事業でのシェア拡大や新規領域の育成を進めるほか、自律航行技術の研究開発やデータサービス事業の拡大に取り組んでいます。また、人的資本への投資やスマート工場化などの設備投資を実行し、事業基盤の強化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは「高い目標を掲げ社会への貢献と幸福のためにグローバル視点で価値共創に挑戦する人財を育てる」を育成方針としています。人財を最も重要な経営資本と位置付け、社員一人ひとりの能力の最大化、適性に応じた配置、経営人財の育成、ダイバーシティ&インクルージョンの推進を通じて、多様な人材が活躍できる環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 44.7歳 | 15.2年 | 7,523,120円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.1% |
| 男性育児休業取得率 | 71.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 67.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 79.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 71.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用に占める女性採用割合(30.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国際情勢等の影響
同社製品はグローバルに供給されており、各国の経済状況や通商環境の変化、関税の引き上げ、安全保障に基づく輸出規制等により、生産や物流、営業活動が制限されるリスクがあります。同社は貿易管理体制の整備やサプライチェーンの見直し等で影響の低減に努めています。
■(2) 調達・生産の遅延や価格変動
自然災害や仕入先の経営悪化による部品の供給制限、需給逼迫による生産の遅延が発生するリスクがあります。また、原材料や部品の価格高騰が原価上昇を招く可能性があり、同社は仕入先との関係強化や生産管理の徹底により影響を最小限に抑える対策を講じています。
■(3) 舶用事業の市場環境変化
同社の売上の大部分を占める舶用事業は、世界的な漁獲高の管理強化や商船の需要変動、欧米の景気動向の影響を強く受けます。自律航行技術の進展など中長期的な業界構造の変化に適切に対応できなかった場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(4) 情報セキュリティ・サイバー攻撃
事業上の重要情報や個人情報、取引先の秘密情報を保有しているため、外部からのサイバー攻撃や内部過失による情報流出、システムの停止が発生するリスクがあります。同社は情報セキュリティ認証の取得や監視体制の構築により、被害の防止と早期対応に努めています。



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