Terra Drone 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Terra Drone 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Terra Droneは東証グロース市場に上場し、産業用ドローンの測量・点検・農業向けソリューション提供や、運航管理システム(UTM)の開発を行う企業です。直近の業績は、主力事業の順調な拡大により増収を達成した一方で、先行的な体制拡充やM&A、火災事故等の特別損失の影響により赤字幅が拡大しています。


※本記事は、Terra Droneの有価証券報告書(第10期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. Terra Droneってどんな会社?


ドローンを活用した産業課題解決と運航管理システムの構築をグローバルに展開する企業です。

■(1) 会社概要


2016年に設立され、同年ベルギーのUnifly NVへ出資しUTM事業に参入しました。2019年にドローン搭載型レーザの販売を開始し、同年インドネシアとオランダのUAVサービス企業へ出資し海外展開を加速させています。2023年にはサウジアラビアやマレーシアに子会社を設立し、2024年に上場しました。

従業員数は連結で551名、単体で134名です。筆頭株主は創業者である德重徹氏の資産管理会社であるテラで、第2位は德重徹氏自身、第3位はサウジアラビアのアラムコ社系ベンチャーキャピタルであるSAUDI ARAMCO ENTREPRENEURSHIP VENTURES COMPANY LIMITEDです。

氏名 持株比率
テラ 39.67%
德重徹 13.57%
SAUDI ARAMCO ENTREPRENEURSHIP VENTURES COMPANY LIMITED 4.69%

■(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は德重徹氏です。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
德重徹 代表取締役社長 元住友海上火災保険。2010年Terra Chargeを設立し代表取締役社長就任。2016年同社を設立し代表取締役社長より現職。
関鉄平 取締役 元Terra Charge。2017年同社に入社し、2021年に取締役へ就任。現在はHR、IR、事業担当役員より現職。
神取弘太 取締役 元Terra Charge。海外法人の代表等を経て2019年同社入社。2023年に取締役就任し、現在は新規事業開発担当より現職。


社外取締役は、深田啓介(エンジェルナビ・キャピタル代表取締役)、前田信敏(NV Ventures代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ドローンソリューションセグメント」および「運航管理セグメント」を展開しています。

■ドローンソリューションセグメント


建設・電力・農業などの産業向けに、測量、点検、農薬散布などのドローンソリューションを提供しています。自社開発のレーザ測量機器や超音波で板厚点検が可能なドローンなどのハードウェア販売から、データ解析等のソフトウェア提供、現場でのサービス実施までを一気通貫で展開し、業務効率化や安全性向上を支援しています。

収益源は、ハードウェアおよびソフトウェアライセンスの販売代金、クラウド解析のシステム利用料、ならびにドローンを用いたサービスの提供料金です。事業運営は、同社に加え、インドネシアのPT. Terra Drone IndonesiaやオランダのTerra Inspectioneering B.V.など国内外の子会社が担っています。

■運航管理セグメント


ドローンや空飛ぶクルマが飛び交う低空域での安全で効率的な運航を実現するため、無人航空機運航管理システム(UTM)の開発と提供を行っています。欧州の規制に準拠したシステムを構築しており、政府機関や航空管制局などの公的セクターを中心に、交通規則や信号機に相当する「空のインフラ」として導入を進めています。

収益源は、システムの初期導入に伴うスポット料金に加え、年間ライセンス料や飛行回数に応じた従量課金などの継続的な収益、および顧客要望に応じた追加機能の開発費用です。事業の運営は、主にUTM技術のリーディングカンパニーであるベルギーのUnifly NVや同社が中心となって展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

■(1) 業績推移


主力事業のグローバル展開と積極的なM&Aにより、売上高は継続的な成長を遂げています。一方で利益面については、今後の事業拡大を見据えた先行投資や体制強化に伴う費用の増加に加え、直近では関連会社の損失や一時的な特別損失の発生もあり、経常赤字が継続して先行投資フェーズにあることが伺えます。

項目 2022年1月期 2023年1月期 2024年1月期 2025年1月期 2026年1月期
売上高 14.2億円 19.5億円 29.6億円 44.4億円 47.8億円
経常利益 -4.9億円 -8.6億円 -1.1億円 -6.1億円 -12.8億円
利益率(%) -34.8% -43.9% -3.7% -13.7% -26.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -5.9億円 1.6億円 -5.6億円 -4.7億円 -25.0億円

■(2) 損益計算書


売上高は着実に拡大しており、売上総利益も増加傾向にありますが、売上総利益率はやや低下しています。また、事業成長に向けた積極的な販管費の投下を行っているため、営業損失の幅は拡大しており、現在は成長投資を優先して収益基盤の拡大を図る段階にあります。

項目 2025年1月期 2026年1月期
売上高 44.4億円 47.8億円
売上総利益 22.9億円 23.1億円
売上総利益率(%) 51.7% 48.3%
営業利益 -6.3億円 -11.4億円
営業利益率(%) -14.1% -23.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が9.3億円(構成比27%)、減価償却費が5.1億円(同15%)を占めています。

■(3) セグメント収益


ドローンソリューションセグメントは、点検サービスや農業向け事業が牽引し増収となった一方、開発費やM&Aに伴う販管費増により損失が拡大しました。運航管理セグメントは、為替の悪影響や開発先行の体制などから損失が拡大しています。

区分 売上(2025年1月期) 売上(2026年1月期) 利益(2025年1月期) 利益(2026年1月期) 利益率
ドローンソリューションセグメント 38.1億円 41.6億円 -1.9億円 -4.3億円 -10.4%
運航管理セグメント 6.3億円 6.2億円 -4.3億円 -7.1億円 -114.4%
連結(合計) 44.4億円 47.8億円 -6.3億円 -11.4億円 -23.9%

■(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは「営業CF:マイナス、投資CF:マイナス、財務CF:プラス」となっており、本業は赤字ですが、将来の成長に向けて資金調達を行いながら積極的な投資を継続している勝負型の局面と言えます。

項目 2025年1月期 2026年1月期
営業CF -9.3億円 -7.2億円
投資CF -21.3億円 -17.2億円
財務CF 21.3億円 0.0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出されていませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

■(1) 経営理念


同社グループは、「Unlock “X” Dimensions(異なる次元を融合し、豊かな未来を創造する)」をミッションに掲げています。ドローンや空飛ぶクルマといった新しい産業領域で空の産業革命を起こし、世界をリードできる存在となることで、リスクに挑戦する精神を宿した日本社会を取り戻すことを目指しています。

■(2) 企業文化


同社は、新産業において世界で勝てる人材の育成支援を進めるため、社員の行動指針として「Terra Way」を掲げています。具体的には、「Center Pin & Speed(センターピンとスピード)」、「Ownership & Grit(経営者意識とやりきる力)」、「Inspire & Inspired(インスパイア)」、「Challenge as Global NO.1(志高く世界へ挑め)」の4つを重視した組織運営を行っています。

■(3) 経営計画・目標


同社グループは、成長性およびキャッシュ・フロー創出を把握するための重要な経営指標として、売上高、営業利益、および調整後営業利益を位置付けています。また、中長期的な拡大を目指すため、外部環境変化に対して経営をコントロールする指標として営業利益および当期純利益を据えていますが、具体的な数値目標についての記載はありません。

■(4) 成長戦略と重点施策


同社は、ドローンソリューションによる産業課題の解決と、運航管理システム(UTM)の社会実装を通じた「低空域経済圏」の構築を中長期的な事業構想としています。具体的には、既存の測量・点検事業での新規顧客獲得や自社開発ハードウェアの販売強化を進めるほか、世界規模でのUTM提供地域の拡大を図ります。さらに、M&Aを活用した事業推進「テラ群戦略」を展開し、多様な人材の確保・育成に注力する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

■(1) 人材戦略・方針


同社は、グローバルでの経営・事業戦略を実現するため、多様なバックグラウンドを持つ多国籍な人材の採用と育成を推進しています。求める人物像として、行動指針「Terra Way」を体現し、自己成長を通じて会社の成長に貢献できる人材を掲げています。育成環境として「テラの寺子屋」を提供し、各人事制度を整備することで、次世代経営人材や専門人材の育成を図っています。

■(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年1月期 33.0歳 2.4年 4,972,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

■(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.1%
男性育児休業取得率 91.7%
男女賃金差異(全労働者) 80.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 83.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 27.2%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、次世代経営人財の採用・育成実績(3名)、PMIに関わる専門人財の採用・育成実績(4名)、エンジニアの採用・育成実績(5名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

■(1) 経営環境の変化と法規制・許認可


国内外における政府の方針転換や関連法令の改正が行われた場合、事業領域の制限や市場成長の鈍化が生じるリスクがあります。また、海外拠点等における法規制の変更に伴うコンプライアンス対応コストの増加が、同社グループの事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は専門家を通じて政府方針や法令をタイムリーに把握し、事業の分散化等で対応しています。

■(2) M&Aに伴うのれんの減損リスク


同社は事業拡大のためにM&Aを積極的に活用していますが、買収後に想定外の事象が発生した場合や、黎明期市場の企業買収において事業計画が予定通りに進まない場合、のれん等の減損損失が発生するリスクがあります。これに対し、実行前に詳細なデュー・デリジェンスを行い、段階出資によりリスクを最小化する等の対策を講じています。

■(3) 代表取締役社長の兼任と特定人物への依存


代表取締役社長である德重徹氏は、Terra Charge等の代表を兼任しており、同氏の強い牽引力や信用力に依存する面があります。業務執行時間の配分や利益相反のリスクに対し、任意の指名・報酬委員会によるモニタリングや権限委譲による組織体制の強化を進めていますが、何らかの理由で同氏の業務執行が困難になった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

■(4) サイバー攻撃等の情報セキュリティ


事業運営において情報システムやネットワークに大きく依存しているため、不正アクセスやランサムウェアなどのサイバー攻撃を受けた場合、重要情報の漏えいやデータの毀損、システム停止等が発生するリスクがあります。同社はISMS認証を取得し、情報セキュリティ対策の強化や従業員教育に努めていますが、リスクを完全に排除することは困難です。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。