Terra Drone 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Terra Drone 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース市場に上場するドローンソリューション(測量・点検・農業)および運航管理システム(UTM)の世界的プロバイダーです。2025年1月期の業績は、海外事業の拡大やM&A効果により売上高が大幅に伸長し増収となりましたが、先行投資や事業譲受関連費用等の計上により赤字幅が拡大し減益となりました。


※本記事は、Terra Drone株式会社 の有価証券報告書(第9期、自 2024年2月1日 至 2025年1月31日、2025年4月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. Terra Droneってどんな会社?


産業用ドローンを活用した測量・点検・農業サービスや、空のインフラとなる運航管理システムを展開し、低空域経済圏の構築を目指すグローバル企業です。

(1) 会社概要


2016年に設立され、同年ベルギーのUTM(無人航空機運航管理システム)企業Unifly NVへ出資を行いました。その後、インドネシアやオランダの企業をグループ化し、グローバルに事業を拡大しています。2023年にはサウジアラビアに子会社を設立し、2024年11月に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。

2025年1月31日現在、連結従業員数は618名、単体従業員数は124名です。筆頭株主は代表取締役社長の資産管理会社であるテラで、第2位は創業者の德重徹氏、第3位はサウジアラビアの国営石油会社アラムコ系のベンチャーキャピタルです。

氏名 持株比率
テラ 41.25%
德重徹 14.43%
SAUDI ARAMCO ENTREPRENEURSHIP VENTURES COMPANY LIMITED 5.19%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.2%です。代表取締役社長は德重徹氏が務めています。社外取締役比率は約28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
德重 徹 代表取締役社長 住友海上火災保険(現三井住友海上火災保険)、米国Business Caféなどを経て、2010年Terra Motors(現Terra Charge)設立。2016年同社設立、代表取締役社長就任。
関 鉄平 取締役 2012年Terra Motors(現Terra Charge)入社。2017年同社入社。2021年取締役就任。2022年より管理担当役員。
神取 弘太 取締役 2011年Terra Motors(現Terra Charge)入社。Terra Drone India代表などを経て2019年同社入社。2021年執行役員、2023年取締役就任。


社外取締役は、深田啓介(元リーマン・ブラザーズ証券会社、現エンジェルナビ代表)、前田信敏(元ウエルインベストメント、現NV Ventures代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ドローンソリューションセグメント」および「運航管理セグメント」事業を展開しています。

(1) ドローンソリューションセグメント


産業用ドローンを活用した測量、点検、農業サービスを提供しています。測量では建設業界向けにレーザードローン等を用いた3次元計測を行い、点検では石油化学プラントやタンク等の板厚検査を実施しています。農業ではパーム油農園等での農薬散布を行っています。顧客は建設会社、電力会社、石油・ガス会社、農業事業者などです。

収益は、自社開発ハードウェアや解析ソフトウェアの販売、および測量・点検・農薬散布などのサービス提供に対する対価から得ています。運営は、同社(日本)、PT. Terra Drone Indonesia(インドネシア)、Terra Inspectioneering B.V.(オランダ)、Terra Drone Arabia for Drones(サウジアラビア)などが行っています。

(2) 運航管理セグメント


ドローンや空飛ぶクルマが安全に飛行するための運航管理システム(UTM)の開発・構築を行っています。複数の無人航空機が飛び交う空域において、飛行計画の管理や衝突回避などを支援するプラットフォームを提供しており、各国政府や航空管制機関などが主な顧客となります。

収益は、UTMシステムの初期導入料や、年間ライセンス料、飛行回数に応じた従量課金などのリカーリング収益から構成されています。運営は、主にベルギーの子会社であるUnifly NVや、米国の関連会社Aloft Technologies, Inc.などが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は順調に拡大しており、特に直近では大幅な増収傾向にあります。一方で、事業拡大に伴う先行投資や体制強化により、各利益段階では損失計上が続いています。利益率はマイナス圏で推移しており、成長フェーズ特有の投資優先の姿勢が見て取れます。

項目 2021年1月期 2022年1月期 2023年1月期 2024年1月期 2025年1月期
売上高 13.4億円 14.2億円 19.5億円 29.6億円 44.4億円
経常利益 0.0億円 -4.9億円 -8.6億円 -1.1億円 -6.1億円
利益率(%) 0.2% -34.8% -43.9% -3.7% -13.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.7億円 -5.9億円 1.6億円 -5.6億円 -4.9億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で大きく増加し、売上総利益も伸長していますが、売上総利益率は若干低下しています。営業損益は赤字幅が拡大しました。これは事業規模の拡大に伴い、販売費及び一般管理費が増加したことが主な要因です。

項目 2024年1月期 2025年1月期
売上高 29.6億円 44.4億円
売上総利益 15.4億円 22.9億円
売上総利益率(%) 51.9% 51.7%
営業利益 -2.4億円 -6.3億円
営業利益率(%) -8.2% -14.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が8.1億円(構成比28%)、減価償却費が3.3億円(同11%)を占めています。事業拡大に伴う人員増や設備投資により、これらの費用が増加しています。

(3) セグメント収益


ドローンソリューションセグメントは、サウジアラビアでの事業拡大などが寄与し大幅な増収となりましたが、損失も拡大しました。運航管理セグメントも子会社の通期寄与などで増収となりましたが、開発費等の負担により赤字が継続しています。

区分 売上(2024年1月期) 売上(2025年1月期) 利益(2024年1月期) 利益(2025年1月期) 利益率
ドローンソリューションセグメント 26.1億円 38.1億円 -0.0億円 -1.9億円 -5.1%
運航管理セグメント 3.5億円 6.3億円 -2.4億円 -4.3億円 -68.9%
連結(合計) 29.6億円 44.4億円 -2.4億円 -6.3億円 -14.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は「勝負型」です。本業の営業活動や積極的な投資活動によりキャッシュ・フローはマイナスですが、株式発行などの財務活動によって資金を調達し、成長投資を継続しています。

項目 2024年1月期 2025年1月期
営業CF -0.2億円 -9.3億円
投資CF 5.3億円 -21.3億円
財務CF 3.5億円 21.3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は赤字のため算出できませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「Unlock “X” Dimensions」(異なる次元を融合し、豊かな未来を創造する)をミッションとして掲げています。ドローンや空飛ぶクルマといった新しい産業領域で空の産業革命を起こし、世界をリードできる存在となることで、日本社会に活気を取り戻すことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、社員の行動指針として「Terra Way」を掲げています。具体的には、「Center Pin & Speed(センターピンとスピード)」「Ownership & Grit(経営者意識とやりきる力)」「Inspire & Inspired(インスパイア)」「Challenge as Global NO.1(志高く世界へ挑め)」の4つを重視し、世界で勝てる人材の育成を図っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、中長期的な経営戦略として、売上高、営業利益、および調整後営業利益(財務会計上の営業利益に国内UTM事業に係る補助金収入を加算したもの)を重要な経営指標と位置付けています。具体的な数値目標は記載されていませんが、各事業の成長により今後の黒字化を目指すとしています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、ドローンソリューションによる産業課題の解決と、UTMの社会実装による低空域経済圏の構築を目指しています。ドローンソリューションでは新興国での事業拡大やFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)等の新規案件獲得、農業事業の拡大を図ります。運航管理では欧州や中東への展開を進めるとともに、空飛ぶクルマ向けのシステム開発にも着手します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、事業領域の拡大と成長のため、多様なバックグラウンドを持つ優秀な人材の採用と育成を重視しています。特に、行動指針「Terra Way」を体現できる人間性を重視した採用を行い、グローバルベースでの人材ポートフォリオの構築を目指しています。人事考課制度の整備や採用活動の多様化に努め、組織力の強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年1月期 32.7歳 1.9年 4,828,000円

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 20.8%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 83.9%
男女賃金差異(正規雇用) 84.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 86.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ドローンパイロット(+100名)、エンジニア(+10名)、子会社経営人材(+8名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ドローンの安全性に対する社会的信用


ドローンに関する重大な事故が発生した場合、安全に対する社会的信用が低下し、需要減退や規制強化につながる可能性があります。同社グループ製品の欠陥や事故により損害が生じた場合、賠償責任やリコール費用、信用の失墜により、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 経営環境の変化


産業用ドローン市場は成長が見込まれていますが、国内外の政府方針の転換や法令改正により事業が制限される可能性があります。また、異業種からの参入による競争激化も懸念されます。同社は専門家を通じた情報収集や収益エリアの分散により対応していますが、これらが業績に影響を与える可能性があります。

(3) 法規制および許認可


同社はグローバルに事業を展開しており、各国の法令や規制の変更に対応する必要があります。新たな許認可取得やコンプライアンス体制構築のためのコスト増加が予想されます。法規制の改廃や解釈の変更が事業範囲やコストに影響を与え、業績や事業継続に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。